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FADC を用いた μ 粒子の寿命測定. 高エネルギー物理学研究室 中牧 理絵 松下 絵理. 発表の流れ. 実験の目的 宇宙線と μ 粒子 測定原理 セットアップ 測定・解析方法 データ解析 考察. 1.実験の目的. 地上にはたくさんの原子核や素粒子が降り注いでいる。それらの粒子は宇宙線と呼ばれている。 本実験では、 FADC を用いて CsI シンチレーター内で崩壊する μ 粒子のシンチレーション光の波形を測定することにより、 μ 粒子の寿命を測定する。
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FADCを用いたμ粒子の寿命測定 高エネルギー物理学研究室 中牧 理絵 松下 絵理
発表の流れ • 実験の目的 • 宇宙線とμ粒子 • 測定原理 • セットアップ • 測定・解析方法 • データ解析 • 考察
1.実験の目的 地上にはたくさんの原子核や素粒子が降り注いでいる。それらの粒子は宇宙線と呼ばれている。 本実験では、FADCを用いてCsIシンチレーター内で崩壊するμ粒子のシンチレーション光の波形を測定することにより、μ粒子の寿命を測定する。 その過程において、素粒子物理学の実験的研究を行う、高エネルギー物理学の基礎的な実験技術を習得することを目的とする。
2.宇宙線とμ粒子 • 宇宙線とは、宇宙空間から地球に降り注ぐ高エネルギーの放射線(一次放射線)とそれが大気に入射して作る放射線(二次放射線)のことである。 • 一次宇宙線は陽子が約90%を占めており、二次宇宙線の約75%をμ粒子が占めている。 • μ粒子は第二世代のレプトンで ・質量 105.7 ・電荷 -1 ・スピン ½ ・寿命 2.2μsec 崩壊モードは以下のようになる。
3.測定原理 • μ粒子の崩壊の式 • ある時刻から t 秒後に崩壊しないで残っているμ粒子の数N(t)は上式のように表される。 • 本実験ではFADCを用いて時間 t を測定することによりμ粒子の寿命であるτの値を算出する。
μ粒子が通過するとき • μ粒子がシンチレーターを通過した場合は、μ粒子のエネルギー損失が1つの山となって現れる。
μ粒子が崩壊するとき • μ粒子がシンチレーター内で止まった場合、暫くしてから崩壊する。 • 崩壊して出てきた電子のエネルギー損失が、二つ目の山となって現れる。
ADCのQモードとVモード ADC(アナログーデジタル変換器)の一つ。 <Qモード> 荷電積分型ADC。 Gateパルス内の電圧信号を時間積分するモード <Vモード> ピークホール型ADC。 Gateパルス内の最大電圧信号を測定するモード
μ粒子が通過するとき 波形は1つ山 →QモードとVモードで同 じ波高を測定する。 μ粒子が崩壊するとき 波形は2つ山 →QモードとVモードで異なった波高を測定する。
∴比例関係から外れたイベントがμ粒子の崩壊であると考えられる。∴比例関係から外れたイベントがμ粒子の崩壊であると考えられる。 しかし・・・ ①の場合→比例関係から外れる。 ②の場合→比例関係の直線にのる。
FADCについて ADC(アナログーデジタル変換器)の一つ。 ・時間ごとに波形を測定する。 通常のADCに比べてA-D変換速度が極めて速く、時系列データを読み込むことが可能なため、信号の波形を細部まで観測することが出来る。 ・startモードとstopモードがあり、今回の実験ではstopモードを使用しているため、パルスの終わりからさかのぼり設定した時間ごとにシグナルの高さをplotしていく
FADCのサンプリング周波数 • 発振器からの信号を、t=4、5、10、20[μsec]と順に変化させてFADCに入力し、10eventずつ測定する。 • こうしてFADCがどのような時間間隔でデータを収集しているのか(サンプリング周波数)が分かる。 • 本実験では傾き0.2805μsecなので、サンプリング周波数は281nsecとする。
4.セットアップ • シンチレーター • 荷電粒子が通過する時にその粒子が失うエネルギーを光エネルギーに変換する。 • 光電子増倍管 • 光エネルギーを電気エネルギーに変換し、電流を増幅する。 • ディスクリミネーター • しきい値よりも大きなシグナルが入力された時、パルスを出力する装置。 • コインシデンス • 複数のパルスが時間的に重複して入力された時にパルスを出力する。 • ゲート・ジェネレーター • 入力信号をdelayさせたり、パルス幅を調整したりする。 • アテニュエーター • 入力信号の電圧を減衰させる装置。 • シェイパー • 波形整形をする。
反応の選別 • T1、T2はプラスチックシンチレーター • CsIはTl(タリウム)を含むCsI結晶のシンチレーター • T2,T1を通ってCsIにμ粒子が入ったときをトリガーとする。 • 本実験では、FADCのstopモードを使用しており、トリガーがかかったところから200個さかのぼった点を書き出している。
5.測定・解析方法 • プログラムを使って2つの山があるeventを見つける。 • 見つけた2つの山をグラフにして、Fitする。 • 2つの山のピーク間の距離から寿命を算出する。 • μ粒子が宇宙からやってくる。 • T1、T2、CsIに来たものをコインシデンスしてトリガーにし、約60μsec遅らせたものをFADCのstop信号にする。 • CAMACでデータ化した情報をUNIXに送る。
2つ山を探すプログラム ①傾き+4以上が2回以上続いた後、傾き-4以下が来たら山とみなす。 ②ノイズを除くためにペデスタルを設定する。 ③2つ山を見つけた時に、2つの山のピーク間が4未満の時に2つ山とみなさない。
見つかった2つ山 • 見つかった2つ山をグラフで表すと、62、63countに飛んでいる点が多数見つかる。 →原因を探ろう!!
飛んでいる点の原因を探る • 入ってくる発振器の信号(count数)を2進数で表すことで、FADCのどのアンプが壊れているかを探りました。
飛んでいる点を2進数で表し、壊れているアンプを探そうとしたが、data数が少なく原因は分からなかった。飛んでいる点を2進数で表し、壊れているアンプを探そうとしたが、data数が少なく原因は分からなかった。 2進数で表す
FADCのチャンネル • FADCは2ch同時計測であった。 • ch0→ch1に変えて、発信器から信号を入れる。 飛ぶ点がほとんどなくなる。
fly≧0.3ならば外れた点と 見なす。 ⇒ 置き換えた点の エラーバーを10とする。 ある値と、その前後の差の積を取った時に負になれば、外れた値であると判断する場合。 飛んでいる点の見つけ方
点を置き換える前後のグラフ 点を置き換える前のグラフ 置き換えた点のグラフ
6.データ解析 <全データ数> 今年度・・・296,870event 一昨年度・・・356,087event 合計・・・・・・652,957event μ粒子の崩壊で得られる2つ山のeventの総数・・・・・1,122event
2つ山のピーク間の値ごとに選別したグラフ これをμ粒子の式でFitする。
Fitの式 崩壊の式 ある時刻から t 秒後に崩壊しないで 残っているμ粒子の数N(t)。 τ:μ粒子の寿命 t:時間 Fitの式 P3の値に寿命が対応している。 P3にサンプリング周波数の281nsecを かける事でμ粒子の寿命を算出できる。
Fitの結果① ヒストグラム logスケール P5(ピーク間の値)を6~125までFit
Fitの結果② ヒストグラム logスケール P5(ピーク間の値)を6~60までFit
寿命の算出 • P1・・・76.949±48.572 • P2・・・3.8005±4.2691 • P3・・・7.5427±0.6607 τ=P3×281[nsec] =2119.5±185.66[nsec] ≒2.12±0.19[μsec] Particle Data Bookに記載されているμ粒子の寿命は 2.19703±0.00004[μsec]
7.考察 検定 • Fitの範囲を変えることでP3の値が変わる。 • どの程度関数が波形にFitしているかをあらわすものが とNDFである。 /NDF1のときFitがよくできているといえる。
・今回の測定結果からμ粒子の寿命は 寿命の測定の精度は約10%である。(Fitに使ったevent数は694event) 精度を上げるには data数を増やす τ≒2.12±0.19[μsec] data数が現在の10倍、100倍となった場合を仮想的にシミュレーションしてみる。
data数を仮想的に増やす <data数10倍> P3→7.5721±0.2335 寿命→2.13±0.07 精度→約3% <data数100倍> P3→7.61±0.0159 寿命→2.14±0.01 精度→約0.6%
data数を増やすためには・・・ <現在のdata収集システム> • T1、T2を通ってCsIに入るμ粒子の個数は1分間で約25個である。 • それに対して1分間でデータ処理できる個数は約6個である。 CAMACでのdataの読み出しのスピードを上げる事が今後の課題である。