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日本語学会 2005年度 春季大会 シンポジウム「モダリティを どう とらえるか」 現代日本語の叙法性 (modality) ─ その中核と周辺 ─ 工藤 浩 (東京外国語大学). 文の 階層性. 太郎 花子 写真 見 素材 に を せる A が 特に は 全く ない B 多分 は だろう C
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日本語学会 2005年度 春季大会シンポジウム「モダリティを どう とらえるか」現代日本語の叙法性(modality)─ その中核と周辺 ─工藤 浩 (東京外国語大学)
文の 階層性 太郎 花子 写真 見 素材 に を せる A が 特に は 全く ない B 多分 は だろう C ねえ ね ねD ―――――――――――――――――――――――――― ねえ、多分太郎は特に花子にはね全く写真を見せないだろうね (南 不二男「4段階理論」に もとづく 概念的立体図)
陳述性 predicativity と その下位範疇 a) 叙法性 modality する/しろ/しよう a1) みとめかた (polarity) する/しない a2) ていねいさ (politeness) する/します a3) もちかけ方 (phatics) よ/ね/さ a4) 評価性 evaluativity あいにく にすぎない a5) 感情性 emotivity いやはや てならない b) 時間性 temporality した/している/する c) 題述関係 theme-rheme φ/は/が c1) とりたて (focusing) だけ/しか/さえ
ムードの主要定義(1) H. Sweet『新英文法』の <mood> 主語と述語との間の 種々に区別される諸関係 を表す文法形態 日本では 山田孝雄の「陳述」
ムードの主要定義(2) Jespersen『文法の原理』の <mood> 文の内容に対する 話し手の 心の構え (attitudes of the mind) 日本では 時枝誠記の「辞」
モダリティの主要定義(3) Vinogradov「構文論の基本的な諸問題」 の <modal'nost'> 発話内容と現実との様々な諸関係 を表わす文法的形式 日本では 奥田靖雄の「モダリティ」
ムード・モダリティの主要定義 主語と述語との間の 種々に区別される諸関係を表す文法形態 (Sweet と 山田孝雄) 文の内容に対する話し手の心の構え (Jesperse と 時枝誠記) 発話内容と現実との様々な諸関係 を表わす文法的形式 (Vinogradov と 奥田靖雄)
本発表での 叙法性の定義 話し手の立場から定められる、 文のことがら的な内容と、 場面(現実および聞き手)との 関わり合い(関係表示)についての 文法的な表現形式
定義の分析的説明(1) ・ 言語場における必須の四契機である、 話し手・聞き手・素材世界・言語内容 という 四者間の <関係表示> だ、 ということ。
定義の分析的説明(2) ・ 叙法性は、 客体面と主体面との相即(からみあい) として存在する、ということ。 客体面 : 文の <ありかた> 存 在の「様式 mode, mood」 主体面 : 文の <語りかた> 話し手の「態度・気分 mood」
助詞「か」の <疑問> 性と <不定> 性 ・「あした来られますか?」 文末の終止用法 ⇒ <疑問性> が卓越 ・「どこか遠くへ行きたい」 文中の体言化用法 ⇒ <不定性> が卓越 ・「どこからか、笛の音が聞こえてくる」 挿入的従属句 ⇒ 両性格 ほぼ拮抗
助動詞「ようだ」の <様態性> と <推定性> 「まるで山のようなゴミ」 「たとえば次のように」 連体/連用修飾 ⇒ <比喩/例示性> 「どうやらまちがったようだ」 終止述語 ⇒ <推定性> 「だいぶ疲れているようだ/ように見える」 ⇒ <様態性>~<推定性> 「副詞はまるでハキダメのようだ」 ⇒ <様態性>~<比喩性>
「ようだ」の 多義性 ・ 彼も かなり 疲れている ようだ。 彼も 見るからに 疲れている ようだ。 彼も どうやら相当 疲れていた ようだ。 ・ ふだん冷静な彼が、珍しく声を荒げた。 精神的にも、かなり疲れているようだ。 ・ ふだん 身の軽い彼が、きょうは 動きが鈍い。 かなり疲れているようだ。
モダリティ分類の基準時間性(テンス・アスペクト)との関係モダリティ分類の基準時間性(テンス・アスペクト)との関係 前接部のテンスの対立 雨が 降った/降っている/降るようだ。 雨が*降ったり/降ってい/降りそうだ。 後接部のテンスの対立 前から、あなたと一緒に来たかったのです。 ぼくだって、あの時、行きたかったのに。 あしたの遠足、ぼくも行きたかったなあ。
モダリティ分類の基準みとめかた(肯否)の対立モダリティ分類の基準みとめかた(肯否)の対立 *行かなく/なかりたい。 cf. 行かないでほしい/行ってほしくない。 ?? 行かないべきだ。 cf. 書くべきか、書かざるべきか。[対句] ? 行かないことができる。 cf. 条例で助役を置かないことができる。 [欧文直訳体の法律文:「許容」の意]
モダリティ分類の基準疑問文 化 彼も来るだろうか。 中立的質問ではなく、熟考疑問 ないし 疑念 ? 彼も来るにちがいないか。 cf. 彼も来るにちがいないのか。 ? あした行くかもしれませんか。 cf. あした行くかもしれないのですか。 いずれも 念押し もしくは 詠嘆(気づき)
「ようだ」の 疑問文 化井伏鱒二 「山椒魚」 結末部から 「空腹で動けない。」 「それでは、もうだめなようか?」 相手は答えた。 「もうだめなようだ。」 よほどしばらくしてから山椒魚は尋ねた。 「おまえは今、どういうことを考えているようなのだろうか?」 相手はきわめて遠慮がちに答えた。 「今でも別におまえのことを怒ってはいないんだ。」
モダリティ分類の基準人称性との相関 ぼくたちも行こう。(二義性) ⇒ きみたちも 行くのなら、………決意 みんなも 行くようだから、……勧誘 田中君、おしゃべりは やめましょう。 ≒ 田中君、おしゃべりは やめなさい。 「貧乏人は 麦を 食え」と蔵相が発言した。 ≒ 貧乏人は 麦を 食うべきだ/方がいい。
文の構造・陳述的なタイプ a) 独立語文 ── テンス・人称 分化せず 「ここ ・ いま ・ わたし」 b) 意 欲 文 ── テンス・人称に 制限あり 通常、主語なし文。[よびかけの独立語] c) 述 語 文 ── テンス・人称に 制限なし 主語 ・ 主題 (題述関係) が 分化。
叙述文の 叙法形式 一覧 A 基本的(主体的)叙法性 ─「叙述の様式」 テンスを持った出来事を受ける。 自らはテンスが、ないか または 変容する。 B 副次的(客体的)叙法性 ─「出来事の様相」 用言語基に接尾。連体形を受けるものも、 テンスの対立は、ないか または 中和する。 派生用言・用言複合体として自らがテンスを もつが、超時に かたより、意味変容も伴う。
B 出来事の様相 と テンス(1) 前節部のテンス * したりそうだ * したと いい * した ことができる する/した 方がいい ⇒ テンスの対立ではなく、 一般 対 個別 の 対立 比較構文 対 当為構文 へと傾斜
B 出来事の様相 と テンス(2) ・願望態の過去形 の 意味(変容) 前から、あなたと一緒に来たかったのです。 ぼくだって、あの時、行きたかったのに。 あしたの遠足、ぼくも行きたかったなあ。 ・可能態の過去形 の 意味(変容) やっと切符を手に入れることができた。 電車が混んでいたが、なんとか すわれた。 あさ6時に、ちゃんと起きられた。
文献補足 工藤浩1989「現代日本語の 文の叙法性 序章」 (『東京外国語大学論集』39号) 工藤浩2005(近刊)「文の機能 と 叙法性」 (『国語と国文学』82巻8号) 2002年度講義 「日本語構文論入門」レジュメ http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/kudohiro/syntax02.html