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教員免許状 更新講習(選択領域) 2012 年 8 月 1 日 ( 水 ) 講習番号: 211 (講座名) 発達障害等の理解と発達(基礎) 受講対象者: 全教員向け 担当: 会沢 勲. 講義内容 (お知らせの通り).
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教員免許状 更新講習(選択領域)2012年8月1日(水) 講習番号:211(講座名)発達障害等の理解と発達(基礎)受講対象者: 全教員向け 担当: 会沢 勲
講義内容(お知らせの通り) 発達障害の研究史は1943 年に遡るが、LD、AD/HD、PDD、等々といった障害の特性がわかり始めたのは1980 年代以降と言える。本講義では、まず発達障害とは何か、そして、発達障害の診断アルゴリズムについて知り、その上で、日本における特別支援教育体制の中で、担任教諭等が教室場面で具体的にどのように対応する必要があるかを考えたい。なお、発達障害「等」についても、maltreatment の事例を検討しつつ、境界線を考える。
Ⅰ.発達障害の概要について 発達障害研究の歴史と発達障害(文科省の言うLD、ADHD、高機能自閉症)の理解から入ります。精神医学の所見との差異についても指摘したいと思います。
発達障害という認識の始まり 軽度発達障害について、個人的には、1943年/1944年即ち大陸を隔てたカナーとアスペルガーが「自閉性」の障害を報告した時に遡ると考えています。
Kanner, L. (1943)レオ・カナー Autistic disturbances of affective contact. Nervous Child 2, 217-250.( 直訳:感情的な接触における自閉性の障害) 米国の精神科医 ・11名の子どもの事例:「早期幼児自閉症」と呼ぶ ・最初の「自閉症」の報告 ・Kannerの勤務する大学の同僚の子ども ・高学歴、知的、冷淡で孤立的な性格(分裂気質)の親 ・後天的な情緒的問題と考えられた→治療は精神療法 ・カナーにおける「自閉」の概念:統合失調症(解体型)-外界が現実的な意味を失い、現実の事象とのいきいきとした接触が失われた状態
Asperger, H. (1944)ハンス・アスペルガー Autistic Psychopathen im Kindersalter, Arch Psychiatrie, 177, 76-137.(直訳:小児期における自閉的精神病質→独語圏では15歳までが“Kinder-salter”) ・オーストリアの小児科医、ウィーン大学小児科学教授 ・「造語」「大人のような言葉遣い」などに注目 ・業績はほとんど埋もれてしまっていた。 ・英国の自閉症研究者ローナ・ウィング:言語障害の極めて軽微な群に、自閉症類似の症候群があり、これがアスペルガーの記述と一致していることを見出した(1981年→アスペルガーは1980年に死亡)
発達障害とは 「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」(文部科学省,2002)が明らかにしたことは何か? 通常の学級には、発達障害を有している子どもたちが 6.3% いるだろう、ということ
発達障害の概念をめぐって • 文科省は、発達障害をLD、ADHD、高機能自閉症というぐあいに括っているが、 ①高機能をIQ70以上とするか、IQ85以上とするか ②高機能自閉症という狭い障害の範囲ではなく、 広汎性発達障害(自閉性障害、レット障害、崩壊性障害、アスペルガー障害、等々)という広がりの中に、「高機能」を冠するタイプがあるという事実について ③今後ある程度の一致(用語法も含め)が必要である と考えられます。
一般的診断モデルと心理・社会・教育的診断モデル(例)一般的診断モデルと心理・社会・教育的診断モデル(例) 発達障害 生育史 学校の状況 心理・社会・教育的 診断モデル 一般的診断モデル 友人関係 9 家族や家庭の状況
知能或いは知的能力について 2割強という分布 +α
文科省調査の集計結果 知的発達に遅れはないものの、学習面や行動面で著しい困難を持っていると担任教師が回答した児童生徒の割合は、表1に示すように6.3%である。 注:知的発達に遅れはないものの、学習面 や行動面で著しい困難を持っている →特別支援教育の対象児童生徒
対人関係やこだわり 0.8% 全体では 6.3% 学習面での困難 4.5% 0.3% 0.2% 0.1% 0.2% 1.2% 0.9% 3.3% 不注意、多動性-衝動性 2.5%
表5男女別集計 ※男子:女子=2.41:1 ※女子については見立てにくい ※高機能自閉症の子どもについては、 他の研究者もこの点に触れている。
学習障害(LD) 学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。
学習障害への配慮 • LDの特性は人それぞれ違う。 ⇒読字障害,失読症(Dyslexia),書字障害,綴字障害(Dysgraphia),算数障害、計算障害(Dyscalculia) • 知能検査や的確な能力診断を受け、 • 特性(ニーズ)に合わせた学習プログラムを組む • 少量を毎日コツコツ続ける方が効果的 • 教科学習だけでなく、その背景にある能力を底上げする
ADHD(注意欠陥多動性障害) ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
ADHDの3タイプ 不注意 しばしば1つの事をするのに集中を持続することが困難であったり、すぐに気がそれてしまい注意散漫な状態になったり する。 多動性 しばしば一定の時間じっとしていることが出来ずに立ち歩いたり走り回ったりする。 衝動性 しばしば順番を待つことが出来なかったり、質問されて質問が終わる前に途中で答えてしまったりする 。
ADHDへの配慮 • 「落ち着きがない」「結果を考えずに思いつくままに行動してしまう」「集中が持続しない」という行動上の問題は目立ちやすく、幼児期から深刻な問題として取り上げられてきた経緯があることを忘れない。 • 問題行動自体をなくすことに目がむけられがち • 問題行動を引き金として怒られてばかりの経験→自信喪失・自尊感情低下 • 問題行動発生のメカニズムに目を向ける。
高機能自閉症(HF-PDD)-自閉症の三つ組 (同時に3つの障害がある)-高機能自閉症(HF-PDD)-自閉症の三つ組 (同時に3つの障害がある)- (1)社会性(対人関係,人との相互交渉)の障害 対人・社会面で適切で相互的な関係を作ることが困難 (2)コミュニケーションの障害 相手との相互的な意思疎通をはかることが困難 (3)イマジネーションの障害 思考や行動の柔軟性が乏しく、こだわりが強い。
(1)社会性(対人関係,人との相互交渉)の障害(1)社会性(対人関係,人との相互交渉)の障害 対人・社会場面で適切で相互的な関係を作ることが困難 ・視線の合いにくさ、顔の表情 ・体の姿勢・ジェスチャーが不自然である ・年齢相当の仲間関係ができない、友だち関係に興味を示さない ・興味のある物を見せたり、持ってきたり、指し示すことをしない ・一人遊びをする姿が頻繁に見られる、人を道具的に使う、自覚のない迷子になる
(2)コミュニケーションの障害 相手との相互的な意思疎通をはかることが困難 • 話し言葉の遅れや欠如、ジェスチャー、物まねによる代償がない • しゃべらない、逆に一方的にしゃべりまくる、話がとぶなど他人と会話を始めたり続けることの著明な障害 • 言語の常同的反復的使用、奇妙で風変わりな言語、単調、変な抑揚、年齢に応じた模倣またはごっこ遊びが出来ない
(3)イマジネーションの障害 思考や行動の柔軟性が乏しく、こだわりが強い。 ・興味のパターンに没頭(カレンダー、時刻表、気象、野球の統計、俳優のアクション、ある一定の物、形、色など物事の同一性に固執) ・決まりきったやり方、融通の利かない執着(道順、手順) ・奇妙な運動の癖(手、指を振る、くねらせるなど体全体の動き) ・物の部分に持続的に執着(ボタン、体の一部、紐、ゴムバンド、ロゴ、マーク)
以上が一般に知られている3つ組と呼ばれる内容ですが、最近次のページにあるように、より(少し)具体的に5つの障害特性が見出されています。込み入ってしまいますが、大事なことなので、示していきます。以上が一般に知られている3つ組と呼ばれる内容ですが、最近次のページにあるように、より(少し)具体的に5つの障害特性が見出されています。込み入ってしまいますが、大事なことなので、示していきます。
さらに詳しく−5つの障害特性として 1.対人的相互作用における質的問題 アイコンタクト、表情、姿勢、ノンバーバルな表現 2.音声言語コニュニケーションの質的問題 言葉の遅れと会話を始めて継続する能力の低さ(躓き)、風変わりな言葉の使用と理解の仕方 3.想像力の問題 ごっこ遊びなど 4.興味関心の限局、拘り、反復的行動 記号、道順、物体(金属、ボタンなど)への執着・拘り、体を前後に揺する、飛び跳ね、手のひらをひらひら 5.感覚知覚の過敏さ 聴覚や嗅覚の過敏、視覚認知の秀逸さ 24
HF-PDD or HF-Aへの配慮 • 「他者の気持ちが理解できない」→その場でどのような言動が望ましいのかわからない→失敗→自尊感情の低下・自信喪失(→アパシーやうつ病という二次障害も) ・・・ けなさない・怒らない。ほめる。成功体験を増やす。 • 他者の表情を見て心情理解することが苦手 ・・・ 表情を明確に! 善悪については特に。 • 想像力の欠如や認知理解の未熟さ→見通しが持てない、あるいは時間の概念に弱い→予定が変わってしまうと、大きな不安を抱え、混乱する ・・・ 耳から聞いた指示よりも、図や絵で示した方がわかりやすい。 • 図や絵での提示、統制された環境の中で指示が理解できる場合が多い ・・・ しなければならないこと、してほしいことを構造化する。 • 自分と対象(人・物)との二項関係は成立しているが、自分と他者と対象との「三項関係」について見直す!→アイコンタクト、視線、共感
Ⅱ.発達障害についての見立て-療育プランに向けて-Ⅱ.発達障害についての見立て-療育プランに向けて- 就学前、小学校、中学校、青年期後期以降、それぞれについて、事例に基づいて考えます。
就学前 • 巡回相談(県)では、幼稚園や保育所の巡回依頼が増加している。2009度、某市の公立保育所をすべて回る機会に恵まれた。 • 保育所には、1歳児も来所することから、就学前5年間の子どもたちの様子には、さまざまな点で驚かされ、毎回発見があった。 • 最大の(再)発見は、(1)見立て・療育は、小学校入学前が最も効果的な始まり方であり(子どもにとっても保護者にとっても、そして、保育士・教員にとっても)、(2)就学前療育が可能であればあるほど、予後が良いと思われる(思われてならない)。 • 脳の成熟を考えると、3歳までが最も重要な時期で、その後6歳までが次に重要である、と言われる。
HF-PDD MR等 maltreatment/abuse 不適切な養育 (虐待含む) 反応性愛着障害 PTSD 等々 ADHD LD 発達障害の重複と他の疾患と不適切な養育 28
虐 待abuse (reactive attachment disorder) 反応性愛着障害等 の 発現機序 maltreatment abuse maltreatment=不適切な養育 mal=悪・非・不十分・誤った treatment=処遇、待遇
感情の発達 わたしたち人間は、その個人が耐えられないような「負の感情」を、解離して=なかったことにして、あるいは、感じないことにして、その危機を通過しようとする傾向がある。⇒個人には負を受け止めるレベルがある。 子どもたちの発達は、まさにこの点で、未成熟である。 負の感情を「身体」が受けると、負を受け止めるレベルの低い子どもは、感情が身体を通じて外に現れる(身体化:身体を通じた表出) その「負」を受け止めている子どもは、親(や教員)にとっても、辛くなる。親がそれを回避しようとすると、子どもはそのことを通じて、親に辛い表情を見せてはならない(被虐待児の場合は、「見せない」ことでようやく生きていける)ので、ニコニコしていたり、行動上の問題が発生するような事例では、無表情となる。 ではどうしたら良いか?
CASE-A のファイルから事例特定ができないよう加工(以下どのケースも同様)CASE-A のファイルから事例特定ができないよう加工(以下どのケースも同様) 200?年5月生(6歳)、男児 診断:AD/HD 服薬:コンサータ1錠(18mg) ※服薬年齢注意 手帳:無 生育歴:普通分娩、2856g 初歩:12ヵ月 初語:16ヵ月 1:06健診・・・問題なし 3:00・・・問題なし 父 母 ? caseA
CASE-A つづき (家庭)前頁図参照 多動性・衝動性あり 言うことを聞かない場合は、体罰あり (見立て:約1年前) AD/HDの疑い 虐待の疑い 癇癪時は、視線を合わせず(無視)、加害行為の時は押さえ込む、落ち着いた時に、起きた事実を時系列で言わせる・・・ (保育所) 偏食あり 午睡まずまず(指吸いあり) 排泄:全部脱いでしまう、 一人でできる 外遊びなど大好き 順番が待てない、大声で威嚇して押しのける、気に食わないと暴言・暴力(保育士ケガ) 集中力なし 乱暴である一方急に甘える 保護者がお迎えに来ると、急におとなしくなる。
感情の発達感情に名前を付ける(感情の社会化)感情の発達感情に名前を付ける(感情の社会化) 怒りの爆発暴力 自傷行為 等 辛い 寂しい イライ ラ怒り など 身体化 言語化 安定した気持ち 否定的な感情 感情のコントロール
(小まとめ1) さまざまな事例が教えてくれることは、就学前に限らないことだが、成育史を知ることが、見立ての重要な手がかりとなると同時に、支援の方向性を見極めるのにも、必要と言える。また、就学前の場合、知能検査等のアセスメント実施が難しい。主として、行動観察で気づく必要がある。行動観察の場合、移動や食事、友人・教員との関わり、着衣、トイレ、言語活動は、もちろんのこと、視線移動や表情についてもみる必要がある。また、単に○歳児といった把握ではなく、○歳○カ月といった詳細が必要である。描画なども重要な手がかりである。
(小まとめ2) • 発達障害、特にPDD等の自閉性の問題がある場合や知的障害の場合は、初語や初歩が遅れることがある(一歳半健診以降となる場合)。ところが、こうした問題について、保護者が気づいていないこともあるし(特に第1子)、保護者によっては、記憶が曖昧で初語・初歩の時期や周産期・出生時の、特徴的な様子についてもはっきりしない場合があり、特に注意を要する。 • ADHDの選択薬として知られるコンサータⓇは、徐放性製剤であり、1日1回(朝)服用し、少しずつ、薬が漏れ出す仕組みになっている。適用年齢としては、満6歳が下限でもあり、就学前の子どもの場合、コンサータⓇによる薬物療法開始を待つことになる事例が多い。就学前でも5歳児クラスの場合は、誕生月によっては、処方されることがある。
小学校 • 巡回相談(県)で最も多い時期は、小学生である。個人的な経験では、小学3年生まで最頻であるが、小4・5・6も多い。 • 最も多い巡回依頼理由は、パニック(癇癪)、多動性・衝動性、(最近は)拘りや仲間に入れない、対人関係の問題も増えている。 • (意外な発見)依頼を受け、小学校へ赴くと、ADHD的な特性はあるものの、よくみると、PDDが背景にある事例がかなりある。 • 保護者面接の依頼が多いのも小学校であり、子どもの発達を考える上で、これはとても良い、或いは、中学年までがひとつの大きな区切りでもある。
CASE-B(新しい形) (相談内容) • 小3の春男は教室内で衝動的な行動が多く、友人への暴言も多い。担任が指導すると、自分のしてしまったことへの一応の反省はある。 • 両親は再婚。春男は母の連れ子。養子縁組もしている。現在の父は多少気性の荒さはあるが、家族が落ち着いて過ごすことを望んでいる。春男の下には、この新しい夫婦の間に弟(1歳)がいる。
CASE-B(新しい形)-2- (見立て)AD/HDの境界線事例 • クラスには、他に同様の問題行動を呈する男児が2、3名。時として一緒になって騒ぐことも。 ①まずは両親と相談員の面接:受診意思+→担任と連携して受診。 ②続いて、担任と春男を加えた面接 →ルールを決める。
(小まとめ1) • 特に、小学生の見立てについては、県教委等の巡回相談申請の際に用いられるチェックシートなど、統一・整理された確認項目が必要である。私たち人間の経験や直感的理解は鋭いが、一方で、根拠に欠ける側面がある。
(小まとめ2) • 子どもたちは小学校入学と同時に集団行動が求められ、発達障害等の子どもたちの特性が目立ち始めると言われる。些細なことで暴力となったり、順番が待てなかったり、偏食が多かったり、担任が授業を進め、子どもたちは静かに聴いている場面で、急に大声で話し始めたり、担任の質問や話にまるで自分だけに話し掛けられているかのような反応を示したり、とさまざまな特徴が認められる。
(小まとめ3) • 学級に複数の問題行動を呈する子どもたちがいる場合、担任はかなりの苦労をすることになる。特に、それらの子どもたちの間で、相乗作用があるかのように騒ぎ始める、場合によっては、喧嘩が起こる。一方で、ある子どもは、何かに納得がいかないと言って怒り始める。こうした事態に担任は苦労するのであるが、学級経営で見過ごされがちなのは、声の「表情」や実際の表情、集団に対して発していることばの中に、いかに個別対応的なことばや身振り等を交えるか、といったパフォーマンスの範疇に入る事柄である。子どもの一部が興奮すると、多く、教員も興奮しがちとなる。これをいかにコントロールするかも、教員自身の訓練が時として必要である。子どもの興奮に対して、教員や級友の興奮が同期すると、さらに興奮レベルが高まることがある。
中学校 • 中学校への巡回相談依頼は、個人的な予想に反して、多くない。教科毎に教員が変わるなどの違いがあるのかも知れないが、別の意味があるように思われてならない。 • 中学生になると、療育を受けてきた、発達障害児の成長タイプが、かなり安定してくること(特に、ADHD)、或いは、症状(状態)によっては、生徒指導の枠内で対応しているように思われる※。 • 特別支援教育のスローガンの一面が、どのような状態の子どもでも、教員等が「うまく」対応すれば大丈夫なのだとの誤解を生んでいる(私見)。
(小まとめ1) • 中学時代は、思春期の問題であるのか、発達障害のそれか、あるいは、家庭的な背景があるのか、それとも、混合しているのか、なかなか見分けがつかない。中学生になると、発達障害自体が見えにくく、2次障害や障害が違う状態に移行して、生徒指導上は非行の問題に見えたり(非行ではあるのだが)、自傷行為や摂食の問題も増えたり、さらに、不登校生徒が増加するなど、教育相談事例に含まれることが多い。背景に発達障害のある場合は、SC等の活用が必要であり、問題解決の方向付けを考えたい。その点で、従来から開かれている教育相談や生徒指導の校内委員会とコーディネーターとの連携を検討し、可能な限り、多面的なチーム編成を採ることが必要である。
(小まとめ2) • 教員によっては、自分の方法に固執するあまり、他のスタッフとの連携が滞ることもあるが、協力体制を共通の課題として捉え、対象生徒の本来の力を引き出すことを目的とすることが求められる。また、問題を抱え込んでしまうと、教員自身の本来の力が発揮されにくくなることも忘れてはならない。
高等学校及びその後 • 高等学校への巡回相談依頼は、かなり少ない。 • 発達障害等の一部生徒が中学卒業後の進路として、時として、通信教育などを利用する例があるということもあるが、中学校と同様或いは更に成長して来て、相談する必要がないと思われる例が多くなるだろうし、一方で、発達障害に派生した問題行動というより、その生徒自身の個性として捉えているようにも思われる。
保護者の祈り • 小さい頃から先生には「どこか変」と言われ、受診して確かに発達障害児であることはわかったけれど、理解してくださる先生ばかりじゃなかった。 • この子を守るのは、守ってやれるは、私たちだけなのでしょうか。 • 一番の願いは、この子が自立して幸福に生きていくことです。
(小まとめ1) • 高校時代は、中学時代と同じように、さまざまな背景があるため、発達障害か否かは見分けにくくなる。高校の特別支援教育では、卒業後の進路をどうするかが最重要内容となる。高校入学時からの進路に向けた導きが必要である。また、高等学校は、学ぶ内容が多岐にわたり、それだけで混乱することも多いので、この点での支援を心掛けたい。事例によっては、ある教科のみを勉強し、他の教科はほとんどしない、ということもある。進級のシステムを伝えるとともに、事例に合った学習支援が必要となることもある。
(小まとめ2) • 高等学校における、生徒-教員との関係性には、個性的な人格との出合(会)いとしての意味合いがある。発達障害等の有無に関わらず、青年期の人格と成人期のそれとの出合いは、生徒にとって自身のアイデンティティの方向付けに大いに影響する。
Ⅲ.対応と連携について-療育プラン- 教室内対応と保護者との連携を中心に論じます。その際、医療機関等との連携の仕方も取り上げます。
療育プランについて • 教育委員会は、一定の様式で療育計画なり指導計画を求めている。 • 様式自体は、必要な「形」ではあるが、 • 個別の事例については、すぐに「計画」が立案できないことの方が多い。 • 文科省のいう、PLAN-DO-SEEのサイクルに沿う以前の状態がある。