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寄附行動とメディア Mass media and contribute action ーホワイトバンドが映し出した日本人の寄附意識ー. 東洋大学 社会学部 メディアコミュニケーション学科 4年 杉浦美奈子. 問題意識. 2005 年、貧困問題解消のためのアドボカシー運動のシンボルであるホワイトバンドが CM をきっかけに話題をよび、ホワイトバンドは売り始めてから 2 ヵ月後には 200 万本、最終的には465万本、約 14 億円を売り上げるほどの人気をはくした。
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寄附行動とメディアMass media and contribute actionーホワイトバンドが映し出した日本人の寄附意識ー 東洋大学 社会学部 メディアコミュニケーション学科 4年 杉浦美奈子
問題意識 2005年、貧困問題解消のためのアドボカシー運動のシンボルであるホワイトバンドがCMをきっかけに話題をよび、ホワイトバンドは売り始めてから2ヵ月後には200万本、最終的には465万本、約14億円を売り上げるほどの人気をはくした。 しかし、しばらくして「寄付ではないのか」と購入者から批判が続出する。人々は売上の一部が直接支援の寄附になると考えていたが、実際はアドボカシーをひろげる活動費に使われていたからだ。 なぜ人々は寄附だと考えたのだろうか。 なぜ寄附ではないことに批判が出たのだろうか
日本人の寄附意識とホワイトバンド (1)寄附は直接支援金 日本ではアドボカシーが根付いていなかっただけでなく、 ・ 活動費と直接支援金を分けて考える ・ 慈善活動に対する金銭の拠出は基本的に「直接支援の寄附」 アドボカシーのような「活動費」に対し寄附するという考えは持っていない
ホワイトバンドとアドボカシー 2004年、グローバルな市民キャンペーンとしてGCAP(Global Call to Action against Poverty:ジーキャップ)が結成。 2005年を『機会の年』と位置づけて世界中の市民に参加を呼びかけ、その年の5月、日本に『ほっとけない世界のまずしさ』キャンペーンが誕生する。 その活動は直接援助ではなく、世論を盛り上げて貧困解消への政策実現をめざすアドボカシーキャンペーンであり、ホワイトバンドは「それを支持します」という意思表示のシンボルである。
日本人の寄附意識とホワイトバンド (2)横並びの精神 ホワイトバンドは人の眼に見える善意のあらわれ 周りが身に着けていることで自らも善意があることを示す 他人の評価を気にする日本人ならではの横並び意識 有名人のファンによる仲間意識においてもその効果は発揮される
メディアとホワイトバンド (1)有名人の信頼性 ・話題性 CM,イベント 最初の注目はCM。『クリッキングフィルム 第一弾』 ・ファッション性 有名人が着けることでカッコイイという印象 ・ファン心理 多くの有名人が活動の「顔」となる
メディアとホワイトバンド (2)メディアの注目 CM,ポスター(新聞広告) イベント • 2005年7月、「ホワイトバンドデー」として、「LIVE8」が世界10都市で開催。ネット中継は17万5千人、ハイライト番組は290万人の視聴者。会場の観客は全世界9カ国で数百万人規模。 • 9月、「WHITEBAND映画祭」を六本木ヒルズなどで開催。
・9月9日、10日「ホワイトバンドオン東京タワー」と題し、東京タワーをスリーアスタリスクでライトアップ ・「ホワイトバンドデー2」を東京・芝公園で開催し参加者3500人を集める ・12月3日、4日には「ホワイトバンドフェス」をさいたまスーパーアリーナで開催。コンサートとともに、会場では貧困の現状についてのパネル展示や映像の上映も行なわれ、両日併せて3万人を動員。 図1 東京タワーのライトアップ 図2 芝公園でおこなわれた「ホワイトバンドデー2」
しかし、 批判が相次ぐ中で、2006年以降イベントなどの大きな目立つ活動が少なくなる メディアが取り上げることも少なくなってくる 人々の関心も次第に離れていく
メディアとホワイトバンド (3)インターネットと若者 「ホワイトバンドは若者に広まった」 NPO側 インターネットの利便性を大いに利用 ・CM,リーフレットにホームページへのアクセスを促すアナウンス ・Yahoo!で公式ブログをたちあげ、活動報告および質疑応答に常に答えられる態勢をつくる
若者側 ・ホワイトンバンドが人気のために入手困難になるとネットオークションで高値で多数売買されていた ・インターネット掲示板『2ちゃんねる』から批判がひろまった インターネットを有効活用できる世代において、 ホワイトバンドは広まりをみせたと考えられる
結 ホワイトバンドを人々が寄附だと考えていたため、寄附の特徴をあらしていた ・「活動費よりも直接支援金として使うことを望む」 ・人の眼を気にする「横並びの精神」 ・寄附の選択においては「信頼性を重視」 これらはメディアによって大きく作用される。 特にホワイトバンドにおいては有名人の力が強く、その信頼感やファン心理、ファッション性、話題性からメディアが多く取り上げ、人々の関心を惹いた。
寄附率が低い若者 NPO内閣府の調査(2006)によれば、一年間に寄附した経験の有無に対し50代が76.0%と最も高く、20代は46.5%と最も低い拠出である。 ホワイトバンドはこの若者世代に広まったこと は、決して若者がこれらの問題に無関心では ないことを示していると考える 寄附額が先進国の中で集まりづらい日本 ホワイトバンドの収益14億円という巨額に達し たことは、メディアや有名人を有効活用するこ とで運動を広めていくことができる
アドボカシーは日本人には受け入れ難いもの 日本には根付いていない活動であることにも起因。 NPOやNGOの周知度が低い日本では、同様に信頼感も低い。 図3NPOの周知度(内閣府,2006) 図4NPO法人への信頼度(内閣府,2006)
日本の寄附のルーツ 奈良時代の仏教的慈善精神 →明治時代の西洋文化の流入による募金=寄附 →戦後のGHQの介入による民間寄附機関の成立 →阪神淡路大震災後のNPO法成立 ほとんどが流入文化 NPO、NGO、アドボカシーが日本の風土に合わせて作り変えていくことで新たな寄附文化の形成となる
参考文献 ・内閣府,2006,NPO(民間非営利組織)に関する世論調査,「月刊世論調査」,Vol.38,No.3,国立印刷局. ・『NPOジャーナル』,2006,Vol.12,関西国際交流団体協議会. ・小林正弥・上村雄彦,2007,世界の貧困問題をいかに解決できたか「ホワイトバンド」の取り組みを事例として 千葉大学講義録,現代図書.