420 likes | 573 Views
Super-Earths の透過光分光研究の現状. 成田憲保(国立天文台). 目次. 透過光分光の原理と理論的予言 ホットジュピターに対する先行研究 スーパーアース探査の現状 スーパーアースの透過光分光の現状 今後の展望と必要なこと. トランジット惑星の大気の 観測. トランジットを利用した透過光分光・測光観測. トランジットの減光の深さは惑星大気の組成を反映して、 吸収線や観測バンドごとに異なる. -1.47% (base). -1.53% (base). -1.71% (peak). -1.70% (peak).
E N D
Super-Earthsの透過光分光研究の現状 成田憲保(国立天文台)
目次 • 透過光分光の原理と理論的予言 • ホットジュピターに対する先行研究 • スーパーアース探査の現状 • スーパーアースの透過光分光の現状 • 今後の展望と必要なこと
トランジット惑星の大気の観測 トランジットを利用した透過光分光・測光観測 トランジットの減光の深さは惑星大気の組成を反映して、 吸収線や観測バンドごとに異なる
-1.47% (base) -1.53% (base) -1.71% (peak) -1.70% (peak) Seager & Sasselov (2000) Brown (2001) 初期の理論モデルによる予言 雲がないホットジュピターHD209458bに対する透過光モデル 特に可視領域のナトリウム線や赤外の分子吸収バンドで 強い追加吸収が予想されていた
ホットジュピターで報告された大気成分 • ナトリウム • HD209458b: Charbonneau et al. (2002) Snellenet al. (2008) • HD189733b: Redfield et al. (2008) Redfield et al. (2008)
ホットジュピターで報告された大気成分 • 水蒸気 • HD209458b: Barman (2007) • HD189733b: Tinetti et al. (2007) • メタン • HD189733b: Swain et al. (2008) • その他、カリウムやCO2やCOなど ▲:観測点 赤:メタン+水蒸気 青:水蒸気のみ Swain et al. (2008)
ホットジュピターで報告された大気構造 実線:理論モデルとbinningした点 ■:観測点 • 雲 • HD209458b, HD189733b • ナトリウムの吸収量が雲がない理論モデルに比べて約1桁小さい • もや • HD189733b • 500-1000nm にのっぺりした吸収→上空に小さなの粒子? Pont et al. (2008)
系外惑星研究の現状 • 1995年に初めて発見され、既に700個以上発見されている • 2011年にNASAのKepler衛星がトランジット法により2300個を超える候補を発見 • 地球型惑星の発見数も少しずつ増えてきている
Keplerの結果 • 地球型惑星のような軽い惑星は普遍的に存在 • 低温度星はさらに地球型惑星の割合が大きい(Howard+ 2012) • 周期が短いところにも多数の地球型惑星が存在している • 生命居住可能領域にある(ハビタブルな)惑星候補も発見されてきた
Keplerの弱点と今後の展望 • Keplerの惑星候補の星は遠すぎるものが多い • 地球型惑星の存在確率など統計的な研究向き • 非常に暗いため惑星の質量や軌道の決定、その他の詳細な特徴付けは困難 • 今後の探索は太陽系に近い星がターゲットとなる • そこで世界的に注目されているのが低温度星(K型晩期星~M型星)まわりのトランジット惑星
低温度星に着目する理由 • 主星が小さい→トランジットした場合、地球型惑星でも~1%程度の大きな減光を起こす • 後述する我々が既に岡山で達成している測光精度で、地球型惑星のトランジットを検出することが可能 • 主星が低温度→ハビタブルゾーンが主星の近傍にあり、そこにある惑星がトランジットする幾何学的確率が高い • 潜在的にハビタブル地球型惑星のトランジットを検出することも可能 • 主星が軽い→地球型惑星でも視線速度変動が大きい • すばる望遠鏡の視線速度測定装置で軌道と質量の決定が可能
低温度星の問題点と解決策 • 低温度星は太陽系近傍にもたくさんあるものの、近傍にあっても可視では非常に暗い • 可視での高精度な分光・測光観測は現在の装置では難しい • そのため、まだあまり手をつけられていなかったターゲット • 低温度星は近赤外で急激に明るくなる • 近赤外の撮像装置でも高精度な測光観測が可能 • これまで近赤外の高精度視線速度測定装置は存在しなかったが、2014年度以降にすばるIRDが稼働する見込み
我々の今後の研究計画 • IRD稼働前→新しいトランジット惑星の探索 • 地上や宇宙トランジットサーベイのアーカイブをもとに候補を選定し、高精度測光観測・直接撮像観測・視線速度測定によって本物の低温度星まわりのトランジット惑星を発見する • IRD稼働後→トランジット惑星の特徴づけ • 事前に発見した惑星候補の質量と軌道を決定 • 新しいトランジット惑星の詳細な観測を世界に先駆けて行う
トランジット惑星と偽検出 grazing eclipsing binary トランジット惑星 二重星の一方に トランジット惑星 二重星の一方が 食連星
本プロジェクトの惑星探しの全体の流れ • SuperWASPアーカイブから選定したトランジット惑星候補に対して、岡山のISLEを用いて高精度測光観測を行い、その減光形状から惑星以外の現象を排除する • 1をパスした候補について、すばる望遠鏡のHiCIAOやIRCSを用いて高空間分解能な撮像観測を行い、背景星の混入がないかどうかを調べる • 1をパスした候補について、すばる望遠鏡のHDSやIRDを用いて視線速度測定を行い、減光周期に同期した視線速度変動を調べる
本プロジェクト観測の準備状況 • ターゲット選定 • 近赤外高精度測光観測の実現 • 11Bと12Aの一般枠での観測結果 • 直接撮像観測 • 視線速度測定
研究準備状況:ターゲットの選定 地上可視トランジットサーベイSuperWASPのアーカイブデータを利用 周期解析により折りたたんだ光度曲線 トランジット期間内の データ点数 Ntr 周期的減光の検出レベル 測光精度σ 減光率δ 減光率と主星・惑星半径の関係 日本で観測可能な S/N>6 or Δχ2>50 の低温度星を50個程度選定 今後これらの減光現象を高精度測光で確認し、惑星か食連星かを判別したい
研究準備状況:近赤外高精度測光の実現 岡山/ISLEで~1mmagの測光精度を達成(成田ほか:2010岡山UMなど) ~15pc以内の低温度星でトランジット地球型惑星を発見できる精度
11B-12Aの観測結果 • 25夜の割当のうち、8夜の晴天夜 • 岡山の統計的な晴天夜の割合と同程度 • 6つのターゲットを観測 • 今回のターゲットとは重複しない • 何度か観測したターゲットがあるため8つではない • 5つはSuperWASPデータの偽検出と判別
惑星の可能性を排除できなかった候補 1つの候補で惑星と矛盾しない0.17%の減光を検出 ただし、2度目の高精度測光観測ができていない また食連星などである可能性も残されている
研究準備状況:直接撮像観測 先ほどの候補に対しては5月にすばるで直接撮像観測を行い、 減光を起こしうる背景星の混入はないことを確認済み PIとCo-I(末永、高橋)は直接撮像観測の経験を有している
研究準備状況:HDSでの視線速度測定 • 先ほどの候補に対して6月末から7月初旬と8月に、すばる望遠鏡HDSでの視線速度観測を予定 • PIとCo-I(平野、Gaidos)が確保しているHDSの観測時間を利用 • PIとCo-Iはこれまでに20夜以上のすばるHDSでの視線速度測定を経験している
IRDの進捗状況 • 現在Conceptual Design Reviewが行われている • 2014年の搭載に向けて技術的・科学的検討が進んでいる 以上から、岡山を起点としたトランジット惑星探しを 遂行する準備は十分に整っている
メンバー構成 • 成田憲保(国立天文台特任助教) • 福井暁彦(岡山観測所PD) • 平野照幸(東大D3) • 末永拓也(総研大D2) • 高橋安大(東大D2) • 大貫裕史(東工大D1) • Eric Gaidos(ハワイ大教授) • Emily Chang(ハワイ大B4)
各メンバーの役割 • 日本人メンバーは全員岡山ISLEで10夜以上の観測経験を持ち、観測を実行することができる • PIは岡山からすばるまでを通した計画全体の遂行を担当 • Co-I(福井)はISLEでの測光観測と解析(特に解析の自動化)を主に担当 • Co-I(平野)はすばるHDS/IRDでの視線速度フォローアップを主に担当
各メンバーの役割 • Co-I(末永、高橋)はすばるHiCIAO/IRCSでの直接撮像確認を主に担当 • Co-I(大貫)は主にISLE観測補助を担当 • Co-I(Eric Gaidos, Emily Chang)はターゲット選定を行い、彼らも岡山と同様の高精度測光観測をアメリカの望遠鏡で実施 • Co-I(Eric Gaidos)は論文化の際の英語校正も担当
見込まれる成果 • 出版可能論文数 • 発見惑星数 x (3〜4本):惑星発見、高精度パラメータの決定、多波長観測による惑星大気組成、TTV • 偽検出の統計:最低2本 • ユニークな偽検出: • 既知の低温度星まわりのトランジット惑星の追観測:最低3本(GJ1214, KOI-254, KOI-961) ≧発見惑星数 x 4 + ユニークな偽検出数 + 5
期待するトランジット惑星発見数 • これまでのSuperWASPの観測によると • 太陽型星では食連星の混入割合は~9割、惑星が~1割 • 食連星の伴星のほとんどは低温度星 • SuperWASPは太陽型星に~70個の木星型惑星を発見しており、太陽型星に対する統計的な混入確率はある程度信頼できる • 低温度星に対する混入確率の研究はこれまで行われていないため、統計的な値は不明(この統計自身も論文化可能) • 低温度星同士の連星の場合、低温度星はサイズが小さいため、同じ距離にある連星が食連星になる確率は太陽型星より低い • 我々が期待する惑星発見数は5個前後 • cf. 1個の惑星発見で年平均3本程度の論文出版数見込み
低温度星のトランジットサーベイ他グループとの比較低温度星のトランジットサーベイ他グループとの比較
低温度星まわりのトランジット惑星 太陽系近傍(J<10)でこれまでに発見されたのは • GJ436:視線速度で発見後にトランジットを発見 • GJ1214:MEarthによる発見 の2つのみ • 1つの新たな惑星発見にも大きな意味がある
適時性 • 低温度星のトランジット惑星探しは世界的な注目を集めている • 惑星発見はゆっくりやるものではなく早いほど良い • 2014年以降にすばるIRDが稼働することを考慮すると、今年から集中的に高精度測光観測を行い、それまでに惑星候補を発見することが重要 • 同じ夜数割当の観測でも、長い時間かけた割当より早い段階の集中的な観測の方が意義が大きい
優位性 我々はMEarthのように専用望遠鏡を持っていないが、以下の点で他のグループに対する優位性がある • 近赤外の高精度測光観測を実現している • 近赤外の高精度視線速度測定装置を開発している • 高精度測光、直接撮像、視線速度測定というトランジット惑星の発見確認に必要な全ての観測経験を既に有している
なぜプロジェクト観測か? • 本研究(少なくとも今回選定した〜50個のターゲット)は、早く完了すればするほどよいテーマ • 〜10夜ごとの割当ではスピードが見込めず、また統計的にもまとめることができない • プロジェクト観測を実施することで活きる研究
まとめ • 日本で初めての低温度星まわりのトランジット惑星探し • もし本物のトランジット惑星があった場合に、実際に発見できるだけの十分な準備を行っている • 惑星が実際に発見できた場合プロジェクト観測に要求されるレベルの論文生産数(年平均3本程度)を満たすことが可能 • 本研究は今まさに集中して実施するべきテーマと考えている