320 likes | 382 Views
西南学院大学公開講座「 現代のビジネス − 現状・理論・展望 − 」 (Friday, May 7, 2004) ビジネスと情報技術 企業財務情報の 将来予測 < ビジネス予測 >. 小 島 平 夫 KOJIMA, Hirao 経済学博士 ( 九州大学 ) M. B. A. ( 米国カーネギーメロン大学 ) 経営統計学担当(西南学院大学商学部) http://www.seinan-gu.ac.jp/~kojima/. 以下の流れで,話を進めます. はじめに : 企業の財務情報 とは どんなもの か, どこにある のか
E N D
西南学院大学公開講座「現代のビジネス−現状・理論・展望−」 (Friday, May 7, 2004) ビジネスと情報技術企業財務情報の将来予測<ビジネス予測> 小 島 平 夫 KOJIMA, Hirao 経済学博士 (九州大学) M. B. A. (米国カーネギーメロン大学) 経営統計学担当(西南学院大学商学部) http://www.seinan-gu.ac.jp/~kojima/
以下の流れで,話を進めます • はじめに: 企業の財務情報とはどんなものか,どこにあるのか • なぜ,その将来予測(ビジネス予測)をおこなうのか • 実際に,ビジネス予測をおこない,公表している企業は:キャノン • 誰が,予測を担当するのか • 将来のいつまでを,予測するのか • どのように,予測をおこなうのか <ビジネス予測の核心> • 予測から見えてくる将来の特徴は何か;予測の精度は高いのか • 精度の高いビジネス予測をどのように活かすのか • 将来が現実となったとき,予測と現実との乖離は小さいか;その乖離にどう対応していくか • まとめに代えて:ビジネス予測の Excel 演習 • ビジネス予測関連文献 • おわりに
はじめに:企業の財務情報とはどんなものか • 企業の財務情報: • 決算書(商法では計算書類,証券取引法では財務諸表) • 有価証券報告書(冊子) • このような企業情報,その入手方法,国際会計基準の読み方,企業会計全般について解説: • 企業会計向上委員会 • http://www.geocities.co.jp/WallStreet/2818/ • 注意:以下,Web ページの作成者側がURL を更新していることがあります • 有価証券報告書(有報,ともいいます) • 有報の様式(企業会計向上委員会による作成) • http://www.geocities.co.jp/WallStreet/2818/yuuhoutop.htm • 有報の実例:キャノン (2004.4.8時点: 2003年1月-12月) • http://www.canon.co.jp/ir/yuuhou/index.html
はじめに<続> :企業の財務情報とはどんなものか • 財務諸表 • 貸借対照表: • 資産;負債,自己資本 • 損益計算書: • 売上高,費用,利益(=売上高ー費用) • http://www.seinan-gu.ac.jp/~kojima/hirao/course_busstats.html#A1 • 財務諸表の実例:キャノン『有価証券報告書 』 • 前のスライドのリンクで • pp.35-96:第一部「企業情報」第5「経理の状況」にあります
はじめに<続>:企業の財務情報はどこにあるのかはじめに<続>:企業の財務情報はどこにあるのか • 各企業のホームページ:キャノンなど • イーオーエル(eol): 全株式公開企業の有価証券報告書、財務諸表、決算短信等を提供(会員制) • 西南学院大学図書館ウェブサイトからアクセス(ただし学生教職員のみ):http://www.eol.co.jp/ • EDINET:証券取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム • 金融庁:http://info.edinet.go.jp/Guide/ • Hello! IR World:インベスターリレーションズとディスクロージャーに関する総合情報。各社決算短信、有価証券報告書、事業報告書等 • http://www.hello-ir-world.com/
なぜ財務情報の将来予測 (ビジネス予測) をするのか • 将来の不確実性が大きい,と考えられる程,将来予測,そしてそれに基づく計画,が重要となるでしょう • 不安定で不確実な経済状況下で,企業経営者は意思決定する • 企業経営をひとつの流れとして捉える: • Plan - Do - See - Feedback • はじめに,予測/計画あり: • まず,予測情報の作成,「経営計画」立案,から始まる • 私の話は,Plan, See, Feedback に沿うように,進めます • 企業経営の流れ図: • http://www.seinan-gu.ac.jp/~kojima/intro_business/plan-do-seeV.gif • 日本では,経営者に予測情報の公表を義務づける制度がある • 予測情報が株価に影響を与える可能性;予測情報の公開制度の意義 • 参考文献:後藤雅敏『会計と予測情報』(中央経済社)
なぜ財務情報の将来予測 (ビジネス予測) をするのか<続;終>(5/7/04 配布資料にない追加) • 具体事例:新規事業の採否を決定するために • その事業から,将来2,3年に渡って生み出される,純キャッシュフロー • =売上などのキャッシュインフローマイナス 費用などのキャッシュアウトフロー • これを,可能な限り客観的に,将来予想/予測することが重要 • その予測値を使って,「事業の価値」を適正に測りたい • 価値=現在価値: • 将来得られるキャッシュフロー(100万円)を,現時点で評価した値のこと[<or=or> 100万円?] • その価値が,例えば事業の立ち上げ時に被る費用より大きい[小さい]と,経営者は事業を採択[棄却],という決定を下すでしょう
実際に,ビジネス予測をおこない,公表している企業は:キャノン実際に,ビジネス予測をおこない,公表している企業は:キャノン • 2003年度決算説明(2004年1月29日)での,2004年業績予想: • http://cweb.canon.jp/co-profile/ir/conf03-2/p19.html • 「業績予想(1) 〜 (4)」で,「2004年計画」を見ます • キャノンは • 売上高,利益などの業績予想(計画値)を目標において,経営計画を立て, • その計画に沿うように,今年,様々な意思決定をおこなうことになるでしょう
誰がビジネス予測を担当するか • 経営計画担当者:経営計画の策定 • 統計学,統計分析専門家 • 会計,財務担当者 • 販売担当者:売上高の予測 • 生産担当者:生産高(台数,個数など)の予測 • 環境保全担当者: • 環境経営,環境会計 • 環境保全コスト,環境保全効果の予測 • 環境活動の目標と実績 • 実例:パナソニックコミュニケーションズ(福岡市博多区美野島4丁目) • http://panasonic.co.jp/pcc/environment/keikakusuishin.html • 経営・製品の質管理関係者 • 質向上の目標とすべき国際基準:http://www.iso.ch/iso/en/iso9000-14000/index.html
将来のいつまでを予測するのか • 短期予測をしたいとき: • 来週いっぱい • 来月 • 次の四半期 • 次の半年間 • 次の1年間 • 中期予測をしたいとき: • 今後3年間
どのように将来予測するのか • おおまかな方法 • Excel(エクセル)を使う • 身近かで,図を使って,分かりやすい • しかし,荒っぽい (rough) 予測 • 将来の不確実性が小さい,と考えられるときに,適切 • 例えば,過去「右肩上がり」傾向の売上高を将来予測するとき,など • 実例で,やってみましょう:Excel でビジネス予測 • ただし,実例では,「将来の不確実性が大きい」最近の日本経済を取り上げますが
どのように将来予測するのか<続> • 緻密(ちみつ)な方法 • RATS(ラッツ)など,を使う • 専門的で難しく,経験を要する • しかし,より細やかな (sophisticated) 予測 • 将来の不確実性が大きい,と考えられるときに,適切 • 今日の日本の経済状況に当てはまりますね • 西南学院大学商学部経営学科協議会『経営学総論』 • この方法は,「経営統計」の章で取り上げていますので,そちらを参照して下さい
Excel でビジネス予測:実例 <ステップ0> • Excel で将来売上高を予測する • ステップ 0: • 短期予測を目的とする • 将来=これからの1年3か月 • 2002年第1四半期〜2003年第1四半期 • 現在までの期間を設定する • 過去から現在まで=過去7年 • 1995年第1四半期〜2001年第4四半期 • 現時点=2001年第4四半期 • 注意点:将来の不確実性が大きい,と考えられるこれらの時期については,本来,緻密な予測方法が適切でしょう • しかし,以下では,おおまかな予測方法 Excel を使ってみます
Excel でビジネス予測:実例 <ステップ1> • ステップ 1: • 現在までの売上高情報を入手する • 企業の情報源(既に触れました): • 企業ウェブサイト,有料の企業情報データベース,など • 産業別の情報源 • 財務省ウェブサイト • (A)四半期毎データのURL http://www.mof.go.jp/ssc/kihou.htm • 業種は,製造業と非製造業まで分けられています • (B)InternetExplorer 5.01以上または NetscapeNavigator 7.0以上を使った,最新のURL http://www.fabnet2.mof.go.jp/ • 業種が細分化された時系列データを入手できます • 以下では, (A) を用いて,産業=製造業,と設定し,その売上高予測を行います
Excel でビジネス予測:実例<ステップ2> • ステップ 2: • 現在までの産業別売上高を表にする • 現在まで: • 1995年第1四半期〜2001年第4四半期 • 対象産業 • 製造業 • 資本金が10億円以上の企業 • 表(次のスライド)
Excel でビジネス予測:実例<ステップ3> • ステップ 3: • 現在までの産業別売上高(ステップ2の表)をグラフにする:次のスライド
補足:過去20年間の不況期 • 長期20年間(1982年第1四半期〜2001年第4四半期)で,現在までの日本経済の景気循環を概観しておく • 3つの不況期: • 円高不況期 • 1985年第3四半期-1986年第4四半期 • 平成1次不況期 • 1991年第1四半期-1993年第4四半期 • 平成2次不況期 • 1997年第2四半期-1999年第2四半期 • 次のスライドにグラフ
Excel でビジネス予測:実例<補足:長期20年>
Excel でビジネス予測:実例<ステップ4> • ステップ 4: • 現在までの売上高情報に依りつつ,将来予測をする • ビジネス予測の核心 • 二つの方法: • Excel(エクセル)の「関数」を使って予測 • いろいろなビジネス予測方法が,「関数」として,用意されています • データの傾向を利用する「トレンド関数」,など • Excel(エクセル)の「グラフ」を使って予測 • 視覚的に分かりやすい • 以下では,こちらを使います
Excel でビジネス予測:実例<ステップ4続> • 「グラフ」で,ビジネス予測 • ステップ4ー1: • まず,現在までの売上高に沿って,直線と曲線を描く • ステップ4ー2: • 次に,それらの直線と曲線を将来に延長するような形で,将来売上高予測を描く • 次のスライドにグラフ(4ー1,4ー2について) • 後のスライドで,将来売上高予測の特徴を見ます
予測から見えてくる将来の特徴は何か:実例 • 売上高将来予測の特徴(前スライドのグラフで調べます) • 直線で予測すると • 現在までと同様に,将来売上高は平たんで,伸び悩む • 曲線で予測すると • 現在までと違って,将来売上高は上昇の傾向を示す
予測の精度は高いのか:実例 • 直線と曲線のどちらの予測が,精度はより優れているか • 将来が未知の状況下では,現在までの「予測誤差」を使って比較 • 予測誤差=予測値ー現実値 • 現在までの平均(平均二乗誤差 MSE,など)を計算し,これがより小さい方が精度が高い予測と判断される: • 直線: MSE=1,062,082,267 • 曲線: MSE=1,010,857,369 • したがって,精度のより高い,曲線を使った将来予測を採用したいと思います
(精度のより高い曲線の)売上高予測を,どう活かすか(精度のより高い曲線の)売上高予測を,どう活かすか • 曲線のビジネス予測:「これまでと違って,将来売上高は上昇する」 • この楽観的予測は経営計画に反映され,したがって,以下の将来に関する様々な経営意思決定に影響を与える: • もう一度,企業経営の流れ図 http://www.seinan-gu.ac.jp/~kojima/intro_business/plan-do-seeV.gifの頭ら辺を見て下さい: • 生産量設定 • 新製品の研究開発 • 販売:広告宣伝,価格設定 • 人的資源管理:賃金,配置転換,採用人事 • 環境保全,経営・製品の質管理のための経営管理システム改善
それでは,将来が現実となったとき,予測とその現実との乖離はどの程度か:実例それでは,将来が現実となったとき,予測とその現実との乖離はどの程度か:実例 • ここの話は,経営の流れ図 http://www.seinan-gu.ac.jp/~kojima/intro_business/plan-do-seeV.gifで • 下の方(Seeのところ)に対応 • 実例を,グラフ (次のスライド)で見てみましょう • 将来の現実は,全体的には,伸び悩んでいるようです • その限りでは,直線予測(緑)も,いいみたいです • しかし,将来の現実の後半になると,伸びる様子がうかがえる • その点,曲線予測(赤)は,その上昇トレンドをうまくとらえています
それでは,将来が現実となったとき,予測とその現実との乖離はどの程度か:実例 <続;終>それでは,将来が現実となったとき,予測とその現実との乖離はどの程度か:実例 <続;終>
予測と現実との乖離にどう対応していくか • ここの話は,経営の流れ図http://www.seinan-gu.ac.jp/~kojima/intro_business/plan-do-seeV.gifで • 最下部から先頭に戻る(Feedbackのところ)に対応します • 現実との乖離(過大予測,過小予測)は,次回の新たなビジネス予測の際に,そして,次回の経営計画策定に,反映されなければならない: • 今回,売上高の過大[小]予測であったならば • 次回は下[上]方修正するような予測と経営計画策定が望ましいと考えられます • これは,上図の先頭に戻り(フィードバック),経営コントロール(修正行動をとるための制御)を行うこと,にほかなりません • このように,経営の流れ図先頭の予測/計画に戻って,再び,新たな企業経営の流れが始まることになります
まとめに代えて:ビジネス予測の Excel 演習 • InternetExplorer 5.01以上または NetscapeNavigator 7.0以上を使って,財務省ウェブサイト http://www.fabnet2.mof.go.jp/にアクセス • 「法人企業統計四半期別調査(原数値)」をクリック • 予測対象の業種(食料品,など),期間,財務項目を選択し,続けて,データのダウンロード,Excel で保存 • ステップ 0 – 4 を踏んで,「グラフ」による財務情報の将来予測 • 予測の特徴,精度 • 将来予測を経営計画にどう反映させるか(Plan-Do-See-FeedbackのPlan) • 将来が現実となったときの,予測と現実の乖離を調べる • 現実との乖離を経営コントロールにどう活かすか(Plan-Do-See-FeedbackのSee-Feedback) • 補足:財務省ウェブサイトの使い方,Excel の細かい操作方法,などの解説は,別の機会に譲ることとします。
ビジネス予測の 関連文献 • 統計学入門 • Rowntree, D., Statistics Without Tears, Penguin Books, 1981. (加納 悟 訳『新・涙なしの統計学』新世社,2001年) • 数式を使わずに統計学を学べる入門書 • ビジネス予測入門 • 荒木勉『Excelで学ぶ経営科学入門シリーズ I:需要予測』(実教出版) • Excel の操作を丁寧に解説 • ビジネス予測中級程度 • 西南学院大学商学部経営学科協議会『経営学総論』の「経営統計」 • 新版が先月出版されました。本学生協に問い合わせください • Granger, C.W.J., Forecasting in Business and Economics, Academic Press, 1989. (宣名真勇,馬場善久訳『経営・経済予測入門』有斐閣,1994年) • Grangerは2003年にノーベル経済学賞受賞
おわりに • 以上で話を終わります。ご清聴,ありがとうございました • ビジネス予測について,みなさまの関心が深まったとすれば,とても幸いです! • この講演は,以下の URL で,いつでも,閲覧できます: • http://www.seinan-gu.ac.jp/~kojima/Ext/ • そこでは,以下の二つのヴァージョンを用意しています: • Web ページ版とパワーポイントファイル版 • パワーポイントファイル版の方は,できましたら,Macintoshではなく, Windowsでご覧ください • ご質問そして更に学習したい方など, kojima@seinan-gu.ac.jp まで,遠慮なくご連絡下さい