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統計ソフトウェアに斜交解を要求すると以下の量が出力される: ○ 因子パターン Λ (Factor Pattern; Standardized Regression Coefficients) ○ 因子間相関 Φ (Inter-factor Correlations) ○ 因子構造 ΛS (Factor Structure; Correlations) ○ 参考構造 ΛR (Reference Structure; Semipartial Correlations) ○ 参考軸相関 ΦR (Reference Axis Correlation) 各因子によって説明される分散の割合(寄与率)が出力される: ○ Variance explained by each factor(直交解に対して) ○ Variance explained by each factor eliminating other factors ○ Variance explained by each factor ignoring other factors ここでは以上の出力について解説する 斜交解に関する出力
因子パターンΛ= (λir ) (Std Reg Coefs) λir : 因子 Frから観測変数 Xiへのパス係数の大きさ 他の因子(Fr以外)の影響を取り除いた(もしくは,影響を固定した)下での影響の大きさを評価(偏相関係数 Partial Correlation) 因子間相関Φ その名の通り因子間の相関 因子構造ΛS =(λir(s) ) (Correlations) λir(s) : 因子 Frと観測変数 Xi間の相関 他の因子を固定していないので,他の因子を経由する影響(疑似相関)を含む 因子パターンが単純構造に近くとも一般に,因子構造は単純構造にならないことが多い 解説 ①パターンと構造
因子構造の一種である(因子と観測変数との相関)因子構造の一種である(因子と観測変数との相関) λir(R)はFrとXiの相関係数であるが,他の因子(Fr以外)からFrへの影響を取り除いた下での相関である 因子パターンλir は,他の因子(Fr以外)からFrとXiへの影響を取り除いた下での相関である. 一部だけ影響を除くという意味で,Semipartial の名がある. 解説② 参考構造ΛR=(λir(R))Reference Structure (Semipartial Correlations)
他の因子(Fr以外)からFrへの影響をFrから取り除いたもの(残差)は,Fr 以外の因子に直交する. つまり,他の因子からFr への影響を取り除くことは, Fr 以外の因子に直交する因子Fr(R) を構成することである. Fr(R) を Frの reference axis という. (F1 ,….,Fk ),(F1 (R),….,Fk (R))を互いに相反系(reciprocal system)という (i.e., Fu ・Fv (R)=δuv ) 参考構造は,(F1 ,….,Fk )をreference axis (F1 (R),….,Fk (R))になるように再度回転した斜交解において,因子と観測変数との相関を求めたもの. 解説③ 参考構造ΛR=(λir(R))Reference Structure (Semipartial Correlations)
因子を回転してreference axis を作ると,因子構造が単純化される.従って, reference axis への変換は,因子構造を単純化する方法と考えることができる. その理由は,パターンΛ と参考構造Λ(r)の対応する縦ベクトルが比例関係にあるからである.つまり,Λが単純構造しているとΛ(r)も単純構造するのである. 一旦求めた斜交因子F(とパターンΛと因子相関Φ)をさらに変換してreference axis F(R) (とΛ(R) ,Φ(R) )を求める.参考構造はこの意味で,第二の斜交解とよばれることがある. SASは,Λ(R)Φ(R) (Reference Structure)と(Reference Axis Correlation) Φ(R)を出力する. 解説④ 参考構造ΛR=(λir(R))Reference Structure (Semipartial Correlations)
直交因子に対しては 各因子寄与率の和=共通性合計F1 F22.21+0.61=2.82 (初期解)1.61+1.21=2.82 (Varimax回転解)となり,各因子の寄与は明快である. 斜交因子に対しては,因子寄与率を上手く定義できない.因子ごとの寄与に分解できないのである.F1 F21.98+1.64=3.61≠2.82 (因子構造)1.18+0.84=2.02≠2.82 (参考構造) 解説⑤因子寄与率
因子寄与率のそれなりの定義 因子Fから観測変数Xへの寄与を求める際,他の因子の存在を無視して,FとXの相関係数の2乗と定義するのが,因子構造に基づく因子寄与率(Variance explained by each factor ignoring other factors)である.他の因子を経由する影響(疑似相関)がダブルで計上されるため正確でない(寄与率は過大評価されがち). 因子Fから観測変数Xへの寄与を求める際,他の因子の影響をFから取り除いた後で,FとXの相関係数の2乗で定義するのが,参考構造に基づく因子寄与率(Variance explained by each factor eliminating other factors)である.取り除かれたものの中にもXに影響する部分があるため正確でない(寄与率は過小評価されがち). 解説⑥因子寄与率
斜交解と因子寄与率の参考文献 • 柳井・繁桝・前川・市川(1990).因子分析:その理論と方法.朝倉書店.第4章. • 芝(1978).因子分析法第2版.東大出版.第5章 • 前川(1997).SASによる多変量データの解析.東大出版.3.7.5節,4.1.4節,4.2.2節など • 繁桝・柳井監修(近刊?).Q&Aで知る統計解析法.サイエンス社.