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「バリオン間相互作用に基づく核物質の構造」 2009 年 6 月 25 - 27 日 盛岡つなぎ温泉ホテル紫苑. 密度汎関数理論の基礎と原子核への応用. 筑波大学数理物質科学研究科 計算科学研究センター 矢花一浩. 自然界を構成するミクロな物質の世界. 原子核 強い相互作用で束縛した 陽子と中性子の多体系. 原子・分子・固体・液体 クーロン力で束縛した 電子とイオンの多体系. 基底状態を記述する理論の分類. Few-body approach
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「バリオン間相互作用に基づく核物質の構造」「バリオン間相互作用に基づく核物質の構造」 2009年6月25-27日 盛岡つなぎ温泉ホテル紫苑 密度汎関数理論の基礎と原子核への応用 筑波大学数理物質科学研究科 計算科学研究センター 矢花一浩
自然界を構成するミクロな物質の世界 原子核 強い相互作用で束縛した 陽子と中性子の多体系 原子・分子・固体・液体 クーロン力で束縛した 電子とイオンの多体系 基底状態を記述する理論の分類 Few-body approach Green function Monte Carlo (GFMC) Configuration mixing (CI) Hartree-Fock theory MBPT Many-body perturbation theory DFT (Density functional theory) 密度汎関数理論 生の相互作用か、有効相互作用か
Hartree-Fock理論と密度汎関数理論の違い (反対称化=Slater行列式) 解いているのは 似たような方程式 なのだけれど・・・ Hartree-Fock理論 エネルギー期待値を最小にする 1粒子軌道を探す。 密度汎関数理論 原理的には密度の変分により基底状態を 厳密に求めることができる。 (エネルギー汎関数が存在定理。) ・無限系に対しても近似解となる。 ・変分原理を基礎に持つ。 ・摂動の高次項を計算すれば、系統的に 解の精度を改善できる。 ・「厳密な」エネルギー密度を求める手続きは 与えられていない。 ・系統的に解の精度を上げる手段がない。
Kohn-Shamの理論 Kohn-Sham (1965) 原理的に基底状態を、ある自己無撞着な平均場方程式を 解くことにより求めることが可能 2体相互作用のない仮想的な系の エネルギー汎関数 を導入 一様無限系のエネルギー密度を出発点にとる (局所密度近似) ・無限系は定義からexact (Hartree-Fockでは近似)。 ・運動エネルギーの非局所性はKohn-Sham理論で考慮。 ・局所密度近似のもとでは、ポテンシャルはlocal (NonlocalなFockポテンシャルがないので、解くのが楽)
物質科学の世界で、密度汎関数理論が受け入れられた経緯物質科学の世界で、密度汎関数理論が受け入れられた経緯 物理の世界(物性理論)で密度汎関数理論が受け入れられた訳(1965頃) (某年長の物性理論の人から聞いた話) Slaterが原子のHartree-Fock計算を簡単化するため、交換ポテンシャルに対して 局所密度近似を行っていたが、0.7倍程度に弱めることが必要だった。(Xα法) 密度汎関数理論で、エネルギー汎関数を局所密度近似してから変分すると、 ポテンシャルを局所密度近似する場合に比べて(2/3)の因子が現れた。 化学の世界(量子化学)で密度汎関数理論が受け入れられた訳(1990頃) (某中堅の物性理論研究者から聞いた話) 当初、局所密度近似による計算は、「chemical accuracy」が無かった。 勾配補正を取り入れることにより、化学分野で意味のある答えになった。 (W. Kohnはノーベル化学賞を受賞)
物質科学のエネルギー密度(電子ガス) ・相互作用: クーロン力(2体力のみ、3体力なし) ・一様物質のエネルギー密度 無限物質計算(電子ガス):済み(1980) ・「局所密度近似」は1980年頃に完成 ・1990年頃に、勾配補正。量子化学研究者が参画。 ・精度向上の探究が続く 最も成功しているのは、「ハイブリッド」 交換項に対する局所密度近似と非局所Fockポテンシャルをブレンド(7:3)B3YLP
原子核のSkyrme Hartree-Fock計算は、 「平均場理論」か、「密度汎関数理論」か? SkyrmeHartree-Fock法では、 Skyrme力(2体力+3体力)に対するSlater行列式の 期待値 を取るが、 ・生の核力とSkyrme力は直接つながらず、Skyrme力の パラメータは、エネルギー汎関数を表現するパラメータ と見ることができる。 ・実際に使われているエネルギー汎関数は、期待値の 形に表せない項を含む。例えばρα(αは非整数) 密度汎関数理論と考えた方が良いだろう。
Skyrme-Hatree-Fock法で用いるエネルギー汎関数 スピン軌道力、∇ρを含む項は、 核物質の性質だけでは決まらない。
原子核のDFT計算の目標 全核図表にわたる記述と予言(エネルギー、密度、形、・・・) 信頼できるエネルギー汎関数の構築 ⇔核物質の状態方程式(ρ0付近) r-process核(不安定核)実験 ・弱いビーム強度、短い実験時間、限られた核種 計算の強み ・安定核と不安定核は(計算の観点からは)差がない ・計算機能力の増大
Bethe-Weizsaker mass formulaからのずれ (平均偏差2.97MeV) Skyrme-HFB mass formulaからのずれ (平均0.729MeV)
密度汎関数理論の拡張による励起状態の記述 ・時間依存密度汎関数理論 ・配位混合、射影、相関エネルギー
励起状態の記述: 時間依存密度汎関数理論 (TDDFT=Time Dependent Density Functional Theory) バネで結ばれた 質点(のつもり) 基底状態=つりあいの位置 励起状態=基準振動モード Hartree-Fockor Kohn-Sham RPA or TDDFT
時間依存密度汎関数理論+線形応答=RPA 原子核の応答関数と核物質の性質 例:圧縮率とGMR(モノポール振動) 元素合成との関わり (n,γ)反応 (光応答)
分子の光吸収スペクトル(電子の応答) 川下、中務、矢花分子の光吸収スペクトル(電子の応答) 川下、中務、矢花 N2 O2 C6H6 H2O
原子核の光応答計算 (Continuum RPA)稲倉、中務、矢花 Expt. vs. Calc.
原子核の応答関数を計算してみると、 原子分子(電子応答)に比べてまだまだ粗が目立つ。 分子C6H6 ・軽い核、高エネルギー側で顕著な差 エネルギー汎関数の問題? テンソル相関の重要性? いくつかの球形核の巨大双極共鳴(光吸収)
密度汎関数理論 殻模型 AMD 少数系厳密計算 GFMC 原子核の大きさにより違う理論が用いられているようにみえるけど・・・
核力の精緻化:有効核力から現実的核力、さらにQCD核力へ核力の精緻化:有効核力から現実的核力、さらにQCD核力へ 配位空間の拡大: 模型から非経験へ 殻模型 「模型空間」を広げていくと どの模型もAb-initioになる。 (有効核力が難問) 球形ポテンシャル中の いくつかの軌道の中で 完全対角化を目指す。 ⇒軌道を増やす。 平均場(密度汎関数) クラスター模型 変形したポテンシャル 中の一粒子軌道からなる 単一のSlater行列式 ⇒重ね合わせる いくつかのクラスター自由度で 状態を記述する。 ⇒多様な分解を取り入れる
+ + + + 01 22 02 03,4 ? 微視的クラスター計算 (延与、京大基研) GFMCによる原子核の第一原理計算 (Argonne National Lab.の理論グループ) α粒子の 直鎖分子構造? - 10 3 Excitation energy (MeV) 7.65 α粒子の ボーズ凝縮状態 0 ground states 基底状態 重元素生成の鍵になる 3α→12C反応が経由する 共鳴状態
虚時間法による基底状態探索の途中に様々な構造が現れる。虚時間法による基底状態探索の途中に様々な構造が現れる。 任意のSlater行列式 16O Local minimum Hartree-Fock
16O原子核: 計算で得られる波動関数(Slater行列式)16O原子核: 計算で得られる波動関数(Slater行列式) 様々なLocal minimum や shoulder が現れる
決まったパリティ・角運動量状態を抜き出す(射影計算)決まったパリティ・角運動量状態を抜き出す(射影計算) • 波動関数を重ね合わせる(配位混合) 軌道関数の表現: 3次元格子303程度
second 0+: 42.4% ground 0+: 94.8% 3-: 78.7% third 0+: 62.1% Input parameter: N=6, Z=6、相互作用は現象論(Skyrme力) Energy spectrum in 12C SGII
Energy spectrum in 20Ne SGII (0p1/2)-1(sd)5
Skyrme力で配位混合計算をするときに困ること ・密度汎関数理論で配位混合をしてもいい? ・ゼロレンジ力で本当の基底状態はない? ・3体力やρα依存力の行列要素はどうしたら良い?
まとめ ・密度汎関数理論(DFT)は、一様無限系のエネルギー密度を出発点として 有限・非一様物質の性質を探るアプローチである。 ・CIやMBPTに比較すると、系統的に精度を上げる手段に欠ける。 ・精度と労力のバランスが良く、物質科学・原子核ともに非常に良く 用いられている。 ・密度汎関数法の対象は、基底状態に加え、励起状態も。 ・時間依存密度汎関数法+小振幅近似=RPA 巨大共鳴⇔核物質情報、エネルギー汎関数のアセスメント、 光応答など元素合成にも重要な情報をもたらす。 ・不安定核構造研究の醍醐味の一つは、 N,Z,E3次元で眺めた構造の多様性。 模型研究⇒非経験計算へ DFT+CI+Projection,、N,Z,E3次元空間での核構造予測