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日常診療に IT(インテリジェンス・テクノロジー)を活かす. 鳥越恵治郎: 岡山県井原市 医療法人恵真会 鳥越医院理事長 石井修 : 有限会社 アイロムシステムサポート ( 協力 : 株式会社アイロム ). ・人は無償で何かを手に入れることはできない。 (オルダス・ハックスリー 、『すばらしい新世 界』、松村達雄訳、講談社文庫より ) ・有機械者 必有機事 有機事者 必有機心
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日常診療にIT(インテリジェンス・テクノロジー)を活かす日常診療にIT(インテリジェンス・テクノロジー)を活かす 鳥越恵治郎:岡山県井原市 医療法人恵真会 鳥越医院理事長 石井修:有限会社アイロムシステムサポート (協力:株式会社アイロム)
・人は無償で何かを手に入れることはできない。 (オルダス・ハックスリー 、『すばらしい新世 界』、松村達雄訳、講談社文庫より) ・有機械者 必有機事 有機事者 必有機心 機械有る者は必ず機事有り。機事有るものは必ず機心有り(機械を使うと、必ず機械を使わないとできない仕事をするようになってくる。機械を使わないとできない仕事をしていると、機械に頼りそれを利用しようとたくらむ人為的、作為的な心が生じてくる)。 ・視乎冥冥 聴乎無声 視えないものを視、声無き声を聞け。 (『荘子』・「天地篇」より)
コンピュータ診断支援の歴史 (1)1960年代はじめ(~1973) ● Laurence L. Weed:POS(POMR)=問題指向型システム • 「医者の勉強や記憶に依存する医療は資源浪費型医療である」 • --->★ PROMIS(バーモント大学) • 1)問題を捉える • 2)次に何をするか • 3)何をスクリーニングするか • 4)どんな疾患を鑑別するか • 5)ベストの解決方法を探る ● 心電図解析のはじまり(1960頃):ミネソタコードなど ● 沖中重雄退官記念講演(1963):解剖例750例に言及し、 何らかの誤診は14.2%にあったという。 • ○『2001年宇宙の旅』HAL-9000(1968)
(2)1970年代 • ● PROMIS(Problem Oriented Medical Information System)の開発(1976) • Jan Schultz, Larry Weedら、バーモント大学 • ● 精神科、心身症に対する問診表解析 • 例 : CMI=コーネル・メディカルインデックス • 1970~1982頃まで盛んに研究 • ● ベイズ理論、多変量解析、クラスター分析などによる診断支援の試み • MYCIN (1973):抗生剤選択:ショートリフ(スタンフォード大) • CASNET (1978):緑内障:クリコウスキ(ラトガー大) • INTERNIST(1975):内科全般:マイヤー、ポップル(ピッツバーグ大) ● 日本におけるECG自動解析、レセコンシステムの実用化と普及(1975頃) • ○ NEC PC-8801 リリース(1978頃)
(3)1980年代 • 『テキストデータ解析から画像データ処理へ』ともいえる大きな変化 • ● 古川俊之『コンピュータ診断』(1982):60年代の後半から80年代前半 • ● 超音波画像診断、CT画像診断の急速な発達 (4)1990年代以降:コンピュータを駆使した高度医療機器出現の時代 ● 『電子カルテ』時代(1999年、厚生省の電子保存容認) ● 2004年、混沌とした時代。 • PROMIS研究の目指したことを、もう一度発展させる時代。 Information Technology(情報技術)から Intelligence Technology (諜報技術)へ。
【ITの二つの意味】 コンピュータによって情報を大量に素早く伝達・収集蓄積し(インフォメーション・テクノロジー)、そしてそれを 合理的に処理し付加価値を付けて (インテリジェンス・テクノロジー) 出力する。
診断支援ツール群 1.病名思い出しツール 2.問診表自動解析 3.検査データの自動解析 4.酸塩基平衡・水分平衡解析ツール 5.その他
1. 病名思い出しツール http://mith.akira.ne.jp/irom/diagnosis/syoujou1.jsp (株式会社アイロムのHPより)
【病名思い出しツールの能力】 NEJM-MGH Case Record, 343巻(2000年)~369巻(2013)の464例に対する検証結果 1. 知識ベースの有無にかかわらずtop20以内にリストアップできたのは47.9%(知識ベースがあれば50.30%)。 2. 知識ベースの有無にかかわらずtop50以内にリストアップできたのは70.2% (知識ベースがあれば73.7%)。 3. 知識ベースの有無にかかわらず、順位に関係なくリストアップでき たのは90.5% (知識ベースがあれば95.0%) 。 4. 知識ベース充足率は95.2%。 5. 検索の完全失敗率は9.5% (知識ベースがあれば5.0%) 。 ↓ 病名を絞り込む必要がある。
症例 患者:40歳女性 現病歴: 36歳:呼吸困難 38歳:呼吸困難の増悪、咳、痰、発熱 身体所見:一見して“long-standing chronic illness” 高度な眼瞼浮腫、外頚動脈の怒張、上下肢の固い慢性浮腫 腹部膨満、肝臓腫大、血圧160/95mmHg、脈拍92/分(奔馬調律) 検査所見:WBC 4170/μl, CRP 0.3mg/dl未満, 赤沈 12mm/h BUN 6.6mg/dl, Cr 0.58mg/dl, AST(GOT) 36IU/l ALT(GPT) 10IU/l, LDH 280IU/l 動脈血ガス:PaCO2 45.8Torr,PaO2 57.9Torr 胸部X線:両側胸水。心陰影の拡大はそれほどでもなく石灰化所見なし。 肺門部の肺動脈陰影がわずかに増強。 心エコー:右心系負荷あり。弁異常なし。左心機能良好。心嚢液貯留なし。 心電図:低電位。 40歳:(右心不全の原因について、これまで曖昧模糊だった)。 利尿剤で一旦よくなっていた呼吸困難が増悪。死亡5日前の胸部CTにて 決定的な情報が得られたが、患者は死亡した。 出典:井上泰『病理形態学で疾病を読む』医学書院、pp. 92-111
自験例-1 M42/07/19生 女性 既往歴:骨粗鬆症・めまい・アレルギー性鼻炎・高コレステロール血症・心不全 現病歴:H10/1/2:◎主訴:晩にくしゃみが続いた。その後腹痛・腰痛あり来院。 ◇食欲:普通_◇睡眠:7 時間。○BP:140/70_pulse:72(●不整脈:なし) ○BW:29kg_BH:cm ●顔色:良好_・眼球結膜:正常および黄疸なし_・顔面に関する異常:なし ・・・・・(省略)・・・・・ ◇関節痛他関節異常:なし_◇四肢の筋肉痛:あり(圧痛はない) ◇下腿浮腫:_なし・跛行:なし_◇四肢筋萎縮:なし_◇四肢筋力低下:なし ◇神経学的徴候:なし_◇知覚異常:なし_◇乳房のしこり(特に女性):なし ◎初診又は診察時の印象:骨粗鬆症-->くしゃみ-->圧迫骨折? ◎検査:★腹部単純レ線は小腸ガスと便多量蓄積。★胸部レ線は異常なし。 ★胸腰椎レ線は腰椎の骨粗鬆症と骨折(?) ●一般尿検査(B(++)_P(+)_G(+)_ウロ(正)_PH:6) ◎その他重要事項:じっと立っていると痛くないが体動によりひどく痛む ことがある。 痛みで手や足を動かしにくく歩きにくい時がある。 H10/1/5:心窩部痛・背部痛が続く、痛みは同時に痛い。食欲が落ちた。食べ物 がのどにつかえて飲み込みにくいような気がするという。入院を勧めたが いやがった。★血液生化学等施行。●随時血糖(11時):103。 ●全身状態重症度(A/G:1.6_Hb:11.8↓_TP:7.6_chE:3770):貧血注意 ●一般検血(RBC:373_WBC:6700_Hb:11.8↓_Ht:36.2_Pt:14.1) ●貧血(Hb:11.8_RBC:373_Ht:36.2_網赤:11_UIBC227_Fe:58)。 ○血清蛋白分画(Tp:7.6g/dl_(Al:61.5%_α1:3.2↑%_α2:12.4↑%_ β:9.3%_γ:13.6%) ●炎症反応(WBC:6700_CRP:(2+↑)_ESR:13/h_SA:_ASK:_ASO:_発熱:なし) ●腎機能(BUN:38.8↑_Cr:0.9)。●総コレ:235↑_TG:89_UA:2.9_CPK:72 ●肝胆道系機能(GOT:24_GPT:11_ALP:161_LDH:562↑_LAP:45 γGTP:10_chE:3770_T-b:0.7_D-b:0.1_ZTT:4.6_TTT:0.8)_Pt:14.1 ●血清電解質(Na:144_K:4.0_Cl:101_Ca:10.1_P:2.8)
あらかじめ用意された症状所見の入力 ① 該当項目をチェックする ②
あらかじめ用意されていない症状所見の入力 ① ② ③
141/947 可能性のある病名を リストアップする
新しく出現した症状所見で絞り込んだ結果 18 / 38
自験例-2 S49/07/04生、女性 既往歴:なし 現病歴:H12/4/22:頭痛(前額部、後頭部のガンガンする痛み)が続く。会社 も休んでいる。BP:130/70_pulse:70。体重は減ったというが去年55kgで現在 ○BW:54kg。●一般尿検査(B(-)_P(-)_G(-)_ウロ(正)_PH:6) ●全身状態重症度(A/G:1.92_Hb:13.4_TP:6.7_chE:7087):特に問題なし。 ●一般検血(RBC:464↑_WBC:6000_Hb:13.4_Ht:40.1_Pt:23.0) ●貧血(Hb:13.4_RBC:464↑_Ht:40.1_網赤:_UIBC:_Fe:) ○血清蛋白分画(Tp:6.7g/dl_(Al:65.8%_α1:3.7↑%_α2:8.7%_β:8.6% γ:13.2%)_A/G:1.92) ●炎症反応(WBC:6000_CRP:(-)_ESR:3/h_SA:_ASK:_ASO:_発熱:なし) ●腎機能(BUN:13.9_Cr:0.8_CCr:ml/m) ●肝胆道系機能(GOT:74↑_GPT:207↑_ALP:132_LDH:331_LAP:64 γGTP:46_chE:7087_T-b:0.7_D-b:_ZTT:4.4_TTT:0.5)_Pt:23.0 ●総コレ:125↓_TG:71_UA:3.5_CPK:37(N:30-180) ●血清電解質(Na:140_K:4.0_Cl:101_Ca:10.0_P:4.8↑) H12/4/24:血液化学等データについて説明した。肝炎だと告げ、原因を探しなが ら外来で点滴することにした。●HBsAg(-)_HCAb(-)。○IgM-HA抗体:(-)。 ○EB関連(IgM-VCA抗体:10未満→_IgG-EADR抗体:10未満→_EBNA抗体:40倍↑) H12/5/11:GWあけ2日は元気だったが、ここ数日倦怠感あり仕事に行けない。便秘 気味だが食欲は普通にある。初診時より軽いが頭痛が続く、肩こり・腰痛もあ る。足が重くて歩くのが(フーフーいうくらい)しんどい。 ★心電図は異常なし。
あらかじめ用意されていない症状所見の入力 ① ② ③
可能性のある病名を リストアップする
39 / 921 2 / 16 上記全ての症状所見で絞り込んだ結果
【病名思い出しツールの能力】 NEJM-MGH Case Record, 343巻(2000年)~369巻(2013)の464例に対する検証結果 1. 知識ベースの有無にかかわらずtop20以内にリストアップできたのは47.9%(知識ベースがあれば50.30%)。 2. 知識ベースの有無にかかわらずtop50以内にリストアップできたのは70.2% (知識ベースがあれば73.7%)。 3. 知識ベースの有無にかかわらず、順位に関係なくリストアップでき たのは90.5% (知識ベースがあれば95.0%) 。 4. 知識ベース充足率は95.2%。 5. 検索の完全失敗率は9.5% (知識ベースがあれば5.0%) 。 ↓ 病名を絞り込んだ場合の能力については不明 (元の知識ベースが完璧ではないのでリストアップすべき疾患が漏 れ落ちてしまうことがある)。
2.問診表自動解析 【なぜ必要か?】 ・患者はすべてを話さ(せ)ない。 ・医者はすべてを聞き出せ(さ)ない。
【意義】 1.問診表をWeb上に展開しておけば、 来院前に主な症状を医師に伝える ことが出来る。 2.待合室で診察を待っている間に問診 表にチェックしてもらうことで、医師は あらかじめ患者さんの主な症状を、比 較的簡単に全身にわたって知ること が出来る。
3.医師はそれらを予診として、いちおう 大まかな診断をコンピュータによる自 動解析(IT)で提示させることが出来る。 4.診察で得た症状・所見を加えて「病名 思い出しツール」を利用し可能性のあ る疾患を提示させ(IT)、出来るだけ多 くの疾患を鑑別診断の対象とすること が出来る。
【症例 】 A氏 87歳 女性 主訴:全身の力が抜けて下肢の 痛みのため歩きにくい。 気分がすぐれない。
問診表 ⇒ 自動解析 チェックされた症状を リストアップしてある
A氏について、問診表からの情報を「病名思い出しツール」に渡して、更に細かく鑑別診断を A氏について、問診表からの情報を「病名思い出しツール」に渡して、更に細かく鑑別診断を 行う。
問診表⇒自動解析⇒病名判断 病名思い出しツール
【A氏症例の追加 】 A氏 87歳 女性 H19/9/13:腰痛・肩の痛み・下肢痛・筋肉痛・膝関節痛などあり。歩行障害 ・筋脱力もあって来院。熱:37.1あり。○BP:140/70_pulse:72(降圧剤服用中)。●HANP:39.4→。 ●甲状腺機能(TSH:0.49→)●RA:(-)。●RAPA:40未満。 ●一般検血(RBC:304↓_WBC:6300_Hb:8.5↓_Ht:25.8↓_Pt:39.3↑) ●貧血(Hb:8.5↓_RBC:304↓_Ht:25.8↓_網赤:10_UIBC:165_Fe:25↓)_フェリチン:159.9。 ○血清蛋白分画(Tp:6.3↓g/dl_(Al:46.5↓%_α1:6.5↑%_α2:14.2↑%_β:12.2↑%_γ:20.6%)) ●炎症反応(WBC:6300_CRP:(4+↑)_ESR:102/h_SA:_ASK:_ASO:_発熱:) ●腎機能(BUN:19.0_Cr:0.58_CCr:ml/m) ●肝胆道系機能(GOT:24_GPT:16_ALP:308_LDH:154_LAP:52 γGTP:27_chE:167↓_T-b:0.3_D-b:0.1_ZTT:5.8_TTT:0.3)_Pt:39.3↑ ●総コレ:181_TG:58_HDL-ch: ○リポ蛋白分画(型)(α:_pre-β:_β:)_UA:4.7 ●血清電解質(Na:131↓_K:4.2_Cl:92↓_Ca:9.2_P:3.7) ○白血球分類(WBC:6300(Neu:67_B:_E:1_Lym:25_Mon:7))
症例呈示:酸塩基平衡解析 48歳男性 • 慢性のアルコール中毒で昏睡状態で救急室に運びこまれた。 • vital signはほぼ安定。酒臭く着衣には吐物が付着。 • 動脈血:pH 7.14 • pCO2 30 mmHg • HCO3 10 mEq/l • 静脈血:Na 135 mEq/l • K 5.1 mEq/l • Cl 85 mEq/l • その他:血糖 110 mg/dl • BUN 30 mg/dl • Cr 1.3 mg/dl • 血清浸透圧: 353 mOsm/kgH2O • 診断:アルコール性ケトアシドーシス • (黒川清:酸塩基平衡ショートセミナー.内科 1987;60:1156-1157)
酸塩基平衡解析 Step 1. pH 7.14とacidemiaがある。 Step 2. pCO2は低値であるからacidemiaの原因はHCO3-の低下による。 従って代謝性アシドーシスがある。 Step 3. (とにかく自動的に)anion gap(AG)を計算する。 AG=Na-(Cl+HCO3)--->AG=135-(85+10)=40(mEq/l)は増加。 代謝性アシドーシスはAGを増加させるようなものである。 Step 4. 代謝性アシドーシスでHCO3- 10mEq/lと低下している。 pCO2 30mmHgと低下しているが、HCO3-低下に反応した生理的代償 なのか、そうでないのか。(予測式を使う)。 結果:HCO3- 10mEq/lに見合う生理的呼吸代償からみればpCO2は 23~26mmHgであることが期待される。--->実際のpCO2は30mmHg であるから、この症例では代償機転を凌駕する呼吸性アシドーシ スも存在する。つまり「代謝性アシドーシス」+「呼吸性アシド ーシス」の混合性酸塩基平衡異常である。
Step 5. AGが増加している場合には補正HCO3(cHCO3)を求める。 補正HCO3(cHCO3)=AG-12(正常AG値)+実測HCO3=38mEq/l この値の意味するところは「もし過量のanion(酸)が蓄積していな かったと仮定したら、この症例は実際はHCO3を増加させるような 異常なプロセス(代謝性アルカローシス)が存在している」という ことである。 結論:この症例は「代謝性アシドーシス」+「呼吸性アシドーシス」+ 「代謝性アルカローシス」という混合性酸塩基平衡異常である。 背景: 「代謝性アシドーシス」:アルコール性ケトアシドーシス β-hydroxybutiric acidosis(血中ケトン体は陰性) 「呼吸性アシドーシス」:意識障害にともなう呼吸抑制 「代謝性アルカローシス」:嘔吐に伴うもの
症例呈示:水分平衡解析 • 48歳男性 • 慢性のアルコール中毒で昏睡状態で救急室に運びこまれた。 • vital signはほぼ安定。酒臭く着衣には吐物が付着。 • 動脈血:pH 7.14 • pCO2 30 mmHg • HCO3 10 mEq/l • 静脈血:Na 135 mEq/l • K 5.1 mEq/l • Cl 85 mEq/l • その他:血糖 110 mg/dl • BUN 30 mg/dl • Cr 1.3 mg/dl • 血清浸透圧: 353 mOsm/kgH2O • 診断:アルコール性ケトアシドーシス • (黒川清:酸塩基平衡ショートセミナー.内科 1987;60:1156-1157)