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炭素の社会的費用、限界削減費用と それらの決定要因 ― エネルギー経済モデルによる計算結果の比較 ―

炭素の社会的費用、限界削減費用と それらの決定要因 ― エネルギー経済モデルによる計算結果の比較 ―. 畠瀬和志(神戸大学) 馬奈木俊介(東北大学). 研究の背景. エネルギー経済モデルによる炭素価格の計算結果は、文献によって大きく異なる(価格についての統一見解がない)。 既往文献では、炭素の社会的費用と限界削減費用を切り離して論じる傾向にある。 炭素の社会的費用については Richard Tol (2005, 2008, etc. )が価格レンジを確立しつつあるが、見解を異にする研究(スターン報告書など ) が包摂されていない。. 本研究の方針.

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炭素の社会的費用、限界削減費用と それらの決定要因 ― エネルギー経済モデルによる計算結果の比較 ―

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  1. 炭素の社会的費用、限界削減費用とそれらの決定要因―エネルギー経済モデルによる計算結果の比較―炭素の社会的費用、限界削減費用とそれらの決定要因―エネルギー経済モデルによる計算結果の比較― 畠瀬和志(神戸大学) 馬奈木俊介(東北大学)

  2. 研究の背景 • エネルギー経済モデルによる炭素価格の計算結果は、文献によって大きく異なる(価格についての統一見解がない)。 • 既往文献では、炭素の社会的費用と限界削減費用を切り離して論じる傾向にある。 • 炭素の社会的費用については Richard Tol (2005, 2008, etc.)が価格レンジを確立しつつあるが、見解を異にする研究(スターン報告書など)が包摂されていない。

  3. 本研究の方針 • 炭素の社会的費用(SCC)と限界削減費用(MAC)の両方向から炭素価格を論じる。 • どのパラメータがSCC、MACに大きく影響するか、モデル計算によって調べる。 • SCC、MACが変化するメカニズムを調べる。 • モデルには評価の定まっているDICEモデル(Nordhaus, 2008)とMERGEモデル(Manne & Richels, 2004)を用いる。

  4. 炭素の社会的費用と限界削減費用 • 炭素の社会的費用(Social Cost of Carbon)とは、現在に炭素を1トン追加的に排出すると生じる環境被害費用をNPV(正味現在価値)として表したものである。 • SCCは費用便益の最大化によって求める。 • 限界削減費用(Marginal Abatement Cost)とは、特定の政策目標(eg. 500ppm安定化)を達成するにあたって炭素を1トン追加的に削減する際の費用である。 • MACは安定化濃度、CO2排出量などを固定したシミュレーションで求める。

  5. SCCとMACの関係 出典:Goulder & Mathai (2000) p.19 より • 上図は静学(1時点のみ)の費用便益モデルにおけるMAC曲線と限界便益(MB)曲線を表す。 • MAC曲線とMB曲線の交点の値がSCCとなる。 MC:Marginal abatement cost(本研究のMACと同じ) MB:Marginal benefit from CO2 abatement

  6. 分析の手順 • DICEモデルを用い、どのパラメータがMSCC(炭素の限界社会的費用)に大きく影響するかを調べる。 • 1. で影響の大きかったパラメータを変化させるとMAC曲線がどう移動するかを調べる。 • 1. においてMSCCがどのようなメカニズムで変化したかを考察(注:MAC曲線と限界便益曲線の交点がMSCCであることを利用)。 • DICEモデルが対応出来ない内生的技術進歩の影響は、MERGEモデルで調べる。

  7. 「MSCC」という用語を用いた理由 • 動学モデルにおいて、MAC曲線と限界便益曲線の交点は時点毎に決まる。 • このため、交点の分析には現在~将来における各時点のSCCを計算するのが適当。 • 各時点のSCCには、 Fankhauser & Tol (1997)、 Pearce (2003) 等においてMSCC (Marginal Social Cost of Carbon)という用語が用いられている(「SCC Year」と表現する文献もある)。「SCC」は「現在のSCC」の意味で用いられる。

  8. DICEモデルの計算条件 • モデルのバージョンは「DICE delta version 8」(Nordhaus, 2008)を使用(DICEはラムゼー型のForward-lookingマクロ動学モデル) • MSCC計算では、CO2削減費用と温暖化被害費用を考慮した費用便益シミュレーションを実施 • MAC曲線の描画では、被害関数をOFFにし、CO2安定化目標値を450ppm~750ppmの範囲で変化させて炭素のシャドウプライスを求めた。 • 基準ケースはNordhaus (2008) の設定をそのまま使用し、MSCCへの影響を調べる25個のパラメータをひとつずつ独立に変化させた。

  9. 結果の要点:MSCCに影響するパラメータ※ • マクロ経済パラメータで影響力の大きいものはpopasymとGA0のみ。しかも21世紀前半では影響力がない。 • 炭素の社会的費用は、主に気候関連パラメータに左右される。 ※ ここでは影響力のあるパラメータのみを示した。結果の詳細は参考資料を参照。

  10. 結果の要点:MAC曲線への影響※ • popasymとGA0以外のパラメータはMAC曲線に影響しない。 • 2105年にpopasymとGA0はMSCCを上昇させるが、一方でMAC曲線を下方シフトさせる(但し、21世紀前半では影響なし)。 黒塗りはMSCCを示す ※ ここではA3・popasym・GA0のみを示した。他のパラメータは参考資料を参照。

  11. 結果の要点:BaU排出量への影響※ • popasymとGA0 はMSCCを上昇させるが、同時にMAC曲線が下方シフトする。この原因を探るため、Business as UsualのCO2排出量を調べた。 • popasymとGA0 を(MSCCが上昇する方向に)変化させると、BaU排出量が増加する。これは人口や生産性の増加による経済規模効果である。 • BaU排出量が増えると、その分削減量が増える。削減量が増えると炭素価格は上昇する。 • popasymとGA0以外のパラメータによっては、BaU排出量は殆ど変わらないか全く変わらない。 ※ 結果の図は参考資料を参照。

  12. 計算結果のまとめ • 上6個(PRSTP, ELAMU, A2, A3, C1, T2XCO2)と下2個(popasym, GA0)の 2つのグループに分類可能。 • この分類において、表の「殆ど変わらない」と「変わらない」は同じ影響と見なしている。

  13. MAC曲線 CO2 削減量 限界便益曲線シフトのみによる価格上昇 • PRSTP, ELAMU, A2, A3, C1, T2XCO2のグループでは、MAC曲線もBaU排出量も変わらない。 • このグループでは、限界便益曲線の上方シフト(被害額の増加による)のみで価格が上昇する。 限界便益曲線 炭素価格

  14. MAC曲線 CO2 削減量 両方の曲線のシフトによる価格上昇 • popaym, GA0のグループでは、MAC曲線が下方移動する。一方、価格(MSCC)は上昇する。 • 価格上昇の原因は、BaU排出量の増加に伴うCO2削減量の増加である(下図を参照)。 炭素価格 BaU排出量増加による削減増加

  15. MAC曲線 CO2 削減量 両方の曲線のシフトによる価格上昇(続き) • popasym, GA0は被害関数を変えないが、BaU排出量増加の結果、限界便益曲線が上方シフト。 • TFP上昇はエネルギー効率を上げる(MAC低下)が、経済規模効果によりBaU排出量を増やす。 限界便益曲線 炭素価格

  16. MSCC上昇メカニズムのまとめ • MSCC上昇には2つのパターンがある。 • ひとつは、被害額の増加により限界便益曲線が上方シフトして価格が上昇するパターン • PRSTP・ELASMU・A2・A3・C1・T2XCO2はこのパターン。こちらが多数派である。 • 他方は、MAC曲線は下方移動するがBaU排出量増加により限界便益曲線が上方シフトし、MAC減少を打ち消して価格上昇するパターン。 • popasym・GA0といったマクロ経済パラメータの変化はこちらのメカニズムでMSCCを上昇させる。

  17. MERGEによる補足計算 • DICEは技術進歩をTFP上昇でしか表せない。一方、MERGEはAutonomous Energy Efficiencyの改善と内生的技術進歩の2点から考慮可能。 • しかし、MERGEの技術進歩がMSCCに影響するメカニズムはDICEと同じである(AEE改善・内生的技術進歩の双方において)。 • MERGEではMAC減少と限界便益曲線の上方シフトがバランスし、MSCCの値は変わらない。 • DICEでは上方シフトが大きく、MSCCは上昇する。

  18. 外生・内生技術進歩のMAC曲線への影響 • AEE改善はMAC曲線を下方移動させる。しかし、改善による経済規模拡大がその効果を打ち消し、MSCCは変わらない。 • 内生的技術進歩の導入はMAC曲線を途中から下方屈曲させる。MSCCは変わらない。 黒塗りはMSCCを示す ※ MERGEはエネルギー制約が複雑なため、MAC曲線がガタつく点に注意。

  19. 政策的に見たポイント • 炭素の社会的費用を上昇させるパラメータは、気候変動被害に関わるものが多く、マクロ経済パラメータは少ない(特に、21世紀前半では) 。 • 技術進歩により限界削減費用が低下しても、Business as Usualにおける炭素排出が増えて限界削減費用の低下を打ち消し、炭素の社会的費用は変わらないか逆に上昇する(但し、これは21世紀末の現象)。 • 21世紀前半においてエネルギー技術進歩は炭素の社会的費用にほとんど影響しない。

  20. 今後の課題 • Tol (2005, 2008) のような、炭素価格レンジの特定 • 本研究では、特定のモデルにおけるSCC・MACの変化要因を調べたが、もっと様々なモデルの変化要因にまで視野を広げること • MAC曲線は文献間で相当に異なるが、その原因は本研究が示す将来人口・技術進歩以外にも考えられる(モデルのタイプなど)。それらの原因を詳しく調べること • 原子力発電や新エネルギーの将来シナリオの変更が炭素価格にどう影響するかの検討

  21. 参考資料 (以下のスライドは全て参考資料です)

  22. MSCCへの影響を調べたパラメータ(1)

  23. MSCCへの影響を調べたパラメータ(2)

  24. 計算結果:MSCCへ影響するパラメータ(1) ※ 灰色は炭素の限界社会的費用(MSCC)の大きな増加を示す。

  25. 計算結果:MSCCへ影響するパラメータ(2) ※ 灰色は炭素の限界社会的費用(MSCC)の大きな増加を示す。

  26. PRSTPのMAC曲線への影響(2005年) • Baseは基準ケース、黒点がMSCCを表す。MAC曲線の傾きは殆ど同じ。MSCCのみが移動。

  27. PRSTPのMAC曲線への影響(2105年) • 2005年と傾向は同じ。MSCC(黒点)の位置はMAC曲線上を右上に移動する。

  28. ELASMUのMAC曲線への影響(2005年) • PRSTPの影響と傾向は同じ(MAC曲線は殆ど変わらない)。2105年は同じ傾向なので図を省略。

  29. popasymのMAC曲線への影響(2005年) • MAC曲線は変わらない。MSCCは少ししか上昇しない。

  30. popasymのMAC曲線への影響(2105年) • MAC曲線の傾きは緩くなる。MAC曲線が下方に移動するにも関わらず、MSCCは上昇する。

  31. GA0のMAC曲線への影響(2005年) • 技術進歩率の影響。Popasymと同様、2005年ではMAC曲線が変化しない。

  32. GA0のMAC曲線への影響(2105年) • MAC曲線の傾きは緩くなる。一方、MSCCは上昇する。Popasymと似た傾向である。

  33. A2のMAC曲線への影響(2005年) • MAC曲線は「全く」変わらない。傾向はPRSTP等と似ている。2105年は同じ傾向なので省略。

  34. T2XCO2のMAC曲線への影響(2005年) • A2・A3・C1・T2XCO2では、MAC曲線は「全く」変わらない(A3・C1は省略。2105年も省略)。

  35. BaU排出量へのPRSTPの影響 • Business as Usual排出量に時間選好率が及ぼす影響。影響は僅か(ELASMUがこれと同様)。

  36. BaU排出量へのpopasymの影響 • BaU排出量に将来人口が及ぼす影響。将来人口が増えるほどBaU排出量は増える。

  37. BaU排出量へのGA0の影響 • BaU排出量に技術進歩率が及ぼす影響。技術進歩(TFP上昇)が早いほどBaU排出量が増える。

  38. BaU排出量へのT2XCO2の影響 • 気温上昇の感度はBaU排出量に全く影響しない。 A2・A3・C1も同様の結果(他の図は省略)。

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