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情報経済システム論 : 第 12 回. 担当教員 黒田敏史. 構造推定アプローチ. 需要関数の構造推定 本講義では需要関数の構造推定を取り扱う 需要関数の推定から解ること 1・需要の価格弾力性、属性弾力性 2・任意のモデルを設定した場合の均衡 3・モデルを特定した場合の限界費用 応用例 1・企業合併・合併条件に伴うシェアの変化 2・価格規制・関税・補助金による競争状況の変化 3・企業の参入・退出行動 等多数. 構造推定アプローチ. 需要関数の推定 どのようなデータを用いるか 個標データの利点 個々人が実際に購入した数量と支払った価格
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情報経済システム論:第12回 担当教員 黒田敏史 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 需要関数の構造推定 • 本講義では需要関数の構造推定を取り扱う • 需要関数の推定から解ること • 1・需要の価格弾力性、属性弾力性 • 2・任意のモデルを設定した場合の均衡 • 3・モデルを特定した場合の限界費用 • 応用例 • 1・企業合併・合併条件に伴うシェアの変化 • 2・価格規制・関税・補助金による競争状況の変化 • 3・企業の参入・退出行動 等多数 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 需要関数の推定 • どのようなデータを用いるか • 個標データの利点 • 個々人が実際に購入した数量と支払った価格 • 個々人の属性や財の特徴などの影響を明示できる • パネルデータであれば動学的なモデルを推定できる • 集計データの利点 • データの入手が容易 • 市場のシェアを知る事ができる 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 需要関数の推定方法 • 1・AIDS(Almost Ideal Demand System)モデル • 多財の需要代替を取り扱う古典的手法 • 2・離散選択モデル • 複数の選択から単一の選択肢を選択するモデル • 製品の特徴を明示化できる • 3・CES型効用関数モデル • 製品の特徴を明示化できる • 1人の消費者が多数の購入を行う事を分析できる 情報経済システム論
構造推定アプローチ • AIDSモデル • 市場にJ個の財が存在する場合を考えるAIDS需要関数 :財iの支出シェア :財iの価格 :価格指数 :総支出額 • 価格指数式とn本のAIDS需要関数式の連立方程式を推定する 情報経済システム論
構造推定アプローチ • AIDSモデルの限界 • パラメータの数は4j+j*jあり、財の数の2乗に増加する(n*n問題) • 寡占市場では高度に製品差別化されている場合が多く、多数のパラメータが推定仕切れない場合がある • 例:自動車が100車種ある場合、少なくとも10400個のパラメータを推定する必要があるが、10400個のパラメータを推定するためには各車種毎に10401以上の観測が必要である。 • 市場から財が消失した場合をどう考えるか? • 市場に新しい財が登場した場合をどう考えるか? 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • 財を属性の束として捉え、財がもたらす効用を推定する • 消費者行動モデル • 消費者iが財jを消費したときの効用は、観察できる財の属性 と、観察不可能な消費者固有の好み として表される • 消費者が財jを購入するのは、財jの効用が の時である • いずれか一つの選択肢の効用を0に基準化する。多くの場合、選択肢に「どの財も利用しない」を加えて効用を0とする 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • 例:携帯電話端末を価格・画面サイズ・OS・通信速度で比較して購入する場合 • 画面1インチに5000円、Androidに10000円、iOSに15000円、通信速度1Mbpsに1万円の価値を感じている消費者の場合Aの満足度 • 従って、消費者は端末Cを購入する 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • 一般的な場合 • は平均 分散 の独立で同一の極値分布に従うと仮定 • 消費者iが財jを選ぶ確率 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • 離散選択モデルのうち、誤差項の分布に極値分布を用いたものを、特にロジットモデルと呼ぶ • 誤差項の分布を正規分布にしたものをプロビットモデルと呼ぶ • 多選択肢の場合の数値計算量が極めて多くなるため、多選択肢の場合に用いられる事は少ない • 傾向スコアの計算にも良く用いられる 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • パラメータの推定は最尤法を利用する • 尤度関数とは、モデルの当てはまりの度合いを表す関数であり、各々の個人によって実際に選ばれた選択肢が選ばれるモデルの予測確立の積である • は個人iが選択肢jを選んでいたときに1、それ以外の選択肢を選んでいたときに0を取る関数 • 対数を取って和算にする事で取り扱いやすくなるため、対数尤度関数を最大にするパラメータを求める • 対数尤度関数は大域的な凹関数である 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • モデルの適合度 • 線形回帰モデルの決定係数に相当する指標として、マクファーデンの疑似決定係数が良く用いられる • 分母のLL(0)は全てのパラメータを0としたときの対数尤度値 • 疑似決定係数は0から1の値をとり、予測力0で0、完全一致で1を取る 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • ロジットモデルによる財の価格弾力性 • 財jの属性lが変化した時の自己弾力性 • 財jの属性lが変化した時の財mの交差弾力性 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • ロジットモデルのメリット • 選択確率が閉区間[0,1]に収まるため、確率の定義と整合的である • 確率を説明変数とした線形回帰モデルでは、選択確率の予測値が確率の定義を満たさなくなることがある • 無関係な選択肢からの独立性 • 選択肢AとBの選択確率の比は、AとBの属性のみに依存する 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • ロジットモデルのメリット: • 厚生評価が容易である • iの効用を価格の関数として表示すると、 • となり、消費者の効用を容易に計算できる • ある財の効用はある財の属性のみによって表されるため、財が存在しなくなった場合や、新たな財が登場した時に既存パラメータをそのまま用いる事ができる • 参入・退出や新製品の影響などが消費者に与える影響を容易に知る事ができる 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • IIAの検証 • 実際に消費者が行っている行動がIIAを満たしているか否かをハウスマンテストによって検証する • Step1:全ての選択肢を含んだモデルの推定を行う • Step2:ある選択肢を含まないモデルの推定を行う • Step3:推定されたパラメータが同一であるか否かの検定統計量 を用いて検定する • 同検定統計量はカイ二乗分布に従う 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • ロジットモデルの制約 • IIAが成立しないような状況を取り扱う事ができない • 例:公共交通機関の選択肢に、車体の色以外が全く同じ赤バスと青バス、そしてタクシーが存在したとする。このとき、赤バスが廃線になったとき、青バスとタクシーの選択比率は一定に保たれる • [赤バス:青バス:タクシー]=[40%:40%:20%]→赤バス廃線後[青バス:タクシー]=[66%:33%] • 赤バスの乗客の殆どは青バスに代替するため、[80%:20%]なりそうだという直感と矛盾する 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • IIA制約の緩和 • 方法1:誤差項の相関を認める事で、財の代替性に一定の様式を与える →一般化極値分布(GEV)モデル • 方法2:属性の係数に確率分布を持たせる →混合ロジット(Mixed Logit)モデル 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • GEVモデルの特徴 • GEVモデルは特定の代替パターンを実現するように誤差項に相関を与える事で、様々な代替パターンを実現する事ができる • 他方、モデルの予測結果が与えた代替パターンに従うことになるため、代替パターンそのものを知るためには様々なモデルを推定し、事後的に比較を行う必要がある 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • GEVモデルの一例:入れ子ロジットモデル • 消費者行動モデル • 消費者はG個のグループに分類されるJ個の財の中から一つの財を選択する • グループは互いに排他的であるとする • グループを更にグループに分類し、3段階以上の選択構造を構築することもできる • 消費者は財グループの選択を行った後、グループの中から財の選択を行う 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • 2段階の入れ子ロジットモデルの場合 • 誤差項が以下の分布に従うとする • このとき、同じグループに属する選択肢間では誤差項に相関が生じるが、異なるグループに所属する選択肢間の誤差項は独立となる • はグループ内の財の相関の大きさを表す • 0の場合に無相関(IIAを仮定したLogitモデル)となる • 1の場合に完全相関(グループ内の財は無差別)となる 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • 入れ子ロジットモデルによる、グループgに属する財jの選択確率 • 消費者がグループgを選択する確率 とグループgの中からjを選ぶ確率に分解する事ができる 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • 同じグループgに属する選択肢jとmの選択比率 • グループ と に属する選択肢iとmの選択比率 • グループ内でのIIAとグループ間でのIIAの緩和が確認できる 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • 入れ子ロジットモデルの推定 • 推定にはロジットモデルと同様に対数尤度関数の最大化を行えば良い • 対数尤度関数は大域的な凹性を持たないため、推定によって得られた値が極大値であり、最大値では無いかもしれない • 得られた解が最大値か、極大値かを判別する方法は無いため、数値計算のアルゴリズムを変える、様々な初期値を試す、等を行う事が望ましい 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • 入れ子ロジットモデルの限界 • 同一の財が複数のグループに属するような場合を取り扱う事ができない • このような場合を取り扱うためのモデルに、Paired Combinatorial Logit、Generalized Nested Logit等のモデルが開発されているが、これらを提供しているパッケージソフトは不明 • 入れ子ロジットが利用可能なパッケージソフトには、NLOGIT(limdep)、Stata、Eviews等がある 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • 混合ロジットモデル • パラメータに確率分布を持たせる • すなわち、各属性は個々人i毎に異なる値が分布からドローされる。これは、個々人の選好の多様性を表して居ると考えられる。 • 効用の個々人に依存しない部分 • 市場における平均的な効用(mean utility)と呼ばれる • 選好の多様性を表す部分 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • 混合ロジットモデルの選択確率 • 個人iが財jを選択する確率 • 代表的個人の選択確率は、 の期待値から 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • 混合ロジットモデルの選択確率 • 先の積分型式で表された選択確率は解析的な解を持たないため、シミュレーション積分を用いて確率を求める • シミュレーション積分 からR個の値 をドロー • シミュレートされた確率 は の一致推定量 • ドローRの数の上昇に伴って分散は減少 • は連続で2回微分可能 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • 混合ロジットモデルの推定 • 先のシミュレートされた選択確率を用いて、シミュレートされた対数尤度関数SLLを作成 • 混合ロジットモデルのパラメータはSLLを最大化するパラメータとして得られる • 一致推定量を得るためには、 に比べて速い速度でRを増加させる必要がある 情報経済システム論
構造推定アプローチ • 離散選択モデル • 混合ロジットモデルの弾力性 • 選択肢mのk番目の属性値が変化した時の、選択肢jの変化率 • 従って、弾力性は選択肢i,m以外の全ての選択肢に依存する 情報経済システム論