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中央アジアのエネルギー事情. 2006 年 12 月 25 日 中央アジア・コーカサス研究所 ( 財)国際開発センター 須藤繁. 中央アジアやコーカサスで起きたエネルギー関連トピックス( 2006 年) ①旧ソ連親米欧派連合「GUAM」設立(5月 23 日) ② BTC パイプラインの本格稼働開始、第 1 船出航( 6 月 4 日) ③日本・中央アジア外相会議( 6 月 5 日、東京) ④上海協力機構、エネルギー分野での協力強化を打ち出す(7月 14 ~ 15 日、上海) ⑤G8エネルギーサミット開催( 7 月 15 ~ 17 日、サンクトペテルブルグ )
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中央アジアのエネルギー事情 2006年12月25日 中央アジア・コーカサス研究所 (財)国際開発センター 須藤繁
中央アジアやコーカサスで起きたエネルギー関連トピックス(2006年) 中央アジアやコーカサスで起きたエネルギー関連トピックス(2006年) ①旧ソ連親米欧派連合「GUAM」設立(5月23日) ②BTCパイプラインの本格稼働開始、第1船出航(6月4日) ③日本・中央アジア外相会議(6月5日、東京) ④上海協力機構、エネルギー分野での協力強化を打ち出す(7月14~15日、上海) ⑤G8エネルギーサミット開催(7月15~17日、サンクトペテルブルグ) ⑥参議院議員団(団長:阿部正俊(自民)、岸信夫(自民)、津田弥太郎(民主)、松井孝治(民主)、谷合正明(公明)、近藤正道(社民))が、8月16~25日、カザフスタン、ウズベキスタンを訪問。ODA関連事業の評価を目的。 ⑦小泉首相のカザフスタン、ウズベキスタン訪問(8月28~29日) ⑧ブッシュ大統領、カザフスタン・ナザルバエフ大統領と会談(9月30日、ワシントン) ⑨ 独自外交路線の継続を再確認したトルクメニスタン(11月23日、斉藤大使信任状奉呈時の報道) ⑩ アゼルバイジャン、対ロシア石油供給削減を表明(12月3日) 報告の視点 ●中央アジアのエネルギー資源の位置 ●原油パイプライン敷設ルートの地政学的影響 ●上海協力会議の活動とG8サミット ●「中央アジア+日本」対話行動計画 報告の視点
中央アジア・コーカサス諸国のエネルギー事情概観中央アジア・コーカサス諸国のエネルギー事情概観 出所:IEA
中央アジアと中央アジア(1) 出所:BP統計(2006年版)
中央アジアとエネルギー(2)(エネルギー消費構成、石油換算百万トン)中央アジアとエネルギー(2)(エネルギー消費構成、石油換算百万トン) 出所:BP統計(2006年版)
カスピ海周辺パイプライン 出所:「石油天然ガスレビュー」(2006年3月号)
最近の原油情勢主要トピックス(1)BTCパイプランの本格稼働最近の原油情勢主要トピックス(1)BTCパイプランの本格稼働 ○アゼリ原油の第一船(60万バレル)は6月4日、BP のタンカーによりジェイハンターミナルを出港。BP はBTCパイプラインの権益の30.1%を保有。 ○BTCパイプラインの通油量は、年内に30万B/Dに 達する見込み。 ○BPは第2船の積取りを6月28日~7月2日に行ったが、BTCパイプラインが設計能力一杯(100万 B/D)に達すると、BPは5日毎にほぼVLCC一杯分の積荷を確保できる計算(500万B/Dx5日x30.1%)。
最近の原油情勢主要トピックス(2)アゼルバイジャン、対ロシア石油供給を削減最近の原油情勢主要トピックス(2)アゼルバイジャン、対ロシア石油供給を削減 ○アゼルバイジャン・アリエフ大統領は12月1日、同国のロシア経由の原 油輸出を削減すると発表。同措置の背景には、グルジア問題を契機に、 対ロシア対抗措置をとる必要があったこと、及びグルジアに対し強硬姿 勢をとるロシアと周辺諸国との対立の先鋭化。 ○外電によると、アリエフ大統領は現在5万B/Dに達したロシア・ノボロ シースク経由の原油輸出を完全に止める可能性も示唆。アゼルバイ ジャンは本年既に欧米企業主導でBTCパイプラインを開通させており、 ロシア経由石油への依存度を低下させている。 ○グルジアとロシアの関係の悪化を、国際経済誌はロシアで台頭しつつ ある国粋主義と関連付けて報道。
最近の原油情勢主要トピックス(3)カシャガン油田開発の進行最近の原油情勢主要トピックス(3)カシャガン油田開発の進行 ○北カスピ海に位置するカシャガン油田は、過去30年間で世界最大級の油田と評価。 ○FT(2006年11月27日)によれば、最近埋蔵量は10%上方修正、産油量は25%上方修正され150万B/Dに。 ○生産開始は2008年。 ○投資額は当初見込み(290億ドル)より、氷海対策、硫化水素対策のため、300億ドル台半ばに上方修正。 ○カシャガン油田開発には、ENI(参加比率16.67%)をオペレーターとし、ブリティッシュ・ガス(16.67%)、エクソンモービル(16.67%)、シェル(16.67%)、トタール(16.67%)、コノコフィリップス(8.33%)とINPEX(8.33%)が参加。
最近の原油情勢主要トピックス(4)カシャガン原油の販路(パイプラインルートの選定)最近の原油情勢主要トピックス(4)カシャガン原油の販路(パイプラインルートの選定) ①ロシアルート(サマラに通じる北方ルート) ② CPCルート(黒海に抜けるルート)として2001年10 月稼働。 ③ イランルート。 ④ トルコ・地中海沿岸を経由するトルコルート(BTCパイプラインの利用) :有力視。BTC輸送能力は140万B/Dまで拡充が期待(現有100万B/D)。 ⑤AGUルート:カシャガン原油をアゼルバイジャンまで運び、グルジア経由黒海側からウクライナに輸送。さらにウクライナ領のオデッサ・ブロディ・パイプラインを利用して、「ドルジバパイプライン」に繋ぐという構想。
最近の原油情勢主要トピックス(5)中国ルート・原油パイプライン建設事業の進捗最近の原油情勢主要トピックス(5)中国ルート・原油パイプライン建設事業の進捗 ○カザフスタン西部と中国西部の新疆ウイグル自治区を結ぶ全長3,000kmのパイプライン建設のうち、第一段階(ケニキヤク→アティラウ)は2003年稼働開始)。 ○第2段階(アタス→アラシャンコウ:阿拉山口)は2004年8月着工、2005年末完工(総延長1,300km)。 ○第3段階(ケニキヤク→クルコル)が完成すればカシャガン原油の中国ルートは完成。カザフスタンにとって中国向けパイプラインは、ロシアからの輸入原油に依存する同国東部に自国産原油の供給が可能となるという利点を確保。中国ルートの整備は一進一退。 ○CNPC等のカザフスタンへの接近: ①1996年Aktobemunaigazの株式60%を取得。 ②2003年Buzachi North油田権益の50%を取得 ③2004年Arysskoye油田権益取得 ④2003年カシャガン油田権益の取得の試み(Sinopec、CNOOC)は不調に終 わる。 ⑤新疆・独山子石油化工分公司/CNPC:製油所拡張(2005年2月に許可。2008年) ⑥新疆・カラマイ製油所/CNPC(12万B/D→20万B/D。内、6万B/Dはカザフ原油を処理)
上海協力機構と中央アジア ●2001年に創設された上海協力機構(SCO)は、1995年に創設された上海ファイブ(上海5ヶ国会議)の後継組織。2001年のサミットにおいて同機構は、加盟国を拡大し、正式な憲章を採択。 ●上海ファイブの当初の数年間において、中国は各国間との信頼醸成の確立に加え、国境問題の解決と三悪(原理主義、テロリズム、分離運動)への対応に関する合意の実現を模索。その間、ロシアは、政治・経済システムの崩壊に起因する固有の問題に忙殺され、当該期間においては積極的な役割を果たさなかった。しかしながら、こうしたスタンスは、2001年9月11日同時多発テロの勃発により変更。9・11に対する米国の対応、域内各国(ウズベキスタン、キルギスタンなど)における米軍事基地の開設、及びプレゼンスの増大は、ロシアのスタンスを一変させた。 ●その一方で、中国は中央アジア諸国との関係を強化。中国はカザフスタンにおいて広範な経済的影響力を有し、東方向けパイプラインを含む油田開発への投資を行っている。中国は、中央アジア地域におけるエネルギー開発に多額の投資を行っており、域内政府が三悪に対応できるように、軍事設備を提供。中国はまた、低金利の借款及び中国での奨学金制度と訓練を提供し、上海協力機構に加盟する中央アジア4ヶ国すべてを結ぶ新たな道路及び鉄道の建設にも多額の投資を実施。
我が国の中央アジアに対する援助方針(1) ●ソ連解体後の新たな国際情勢下での中央アジア地域の重要性に鑑み、中央アジア諸国の民主化・市場経済化努力を積極的に支援する方針。 ●91年から研修員受入れ、専門家派遣などを実施し、92年10月の旧ソ連支援東京会議で表明したNIS諸国に対する1億ドルの緊急人道支援の一部を中央アジア諸国にも配分。 ●04年8月、川口外相が中央アジア4カ国を歴訪し、域内協力推進のため、「中央アジア+日本」という対話の枠組みを提唱、民主化・市場経済化・制度改革の必要性を提起。
我が国の中央アジアに対する援助方針(2)‐「シルクロード地域」外交行動計画‐我が国の中央アジアに対する援助方針(2)‐「シルクロード地域」外交行動計画‐ 1997年7月、橋本首相が提唱した「ユーラシア外交」政策の中で、「シルクロード地域(中央アジア5カ国及びコーカサス3カ国)」に対して、以下の方針を確認。 ①信頼と相互理解強化のための政治対話促進 ②繁栄に協力するための経済協力や資源開発協力 ③核不拡散や民主化、安定化による平和のための協力 →②に関して、ODAを実施。
日本・中央アジア諸国との連携強化の必要性(2006年6月1日、麻生外相発言)日本・中央アジア諸国との連携強化の必要性(2006年6月1日、麻生外相発言) ●第一点は、世界経済における弱い環の克服。日本は、世界が全体として安全・平和なことに、自らの繁栄を託している。その点からは世界経済という「鎖」全体の強度を上げていくことが国益につながること。 ●第二点は中央アジアがカスピ海沿岸を中心として、地下資源の豊富な場所だという点に関連する。同地域の原油生産量は、現在世界全体の2%強を占めるが、今後パイプラインなど輸送設備が整備されれば、生産量は倍増する。因に、同地域の現在の原油生産量は約160~170万B/D、天然ガスの生産量は年間約1300億立方メートルに達していること。 ●第三点には、中央アジアと日本の間には、引き合うものがあること。戦後日本の復興モデルは、「経済的繁栄と民主主義を通じて平和と幸福を実現する」というものであったが、同地域には日本の経験から、何かを吸収したいと思っている人が少なくないこと。 ●第四点としては、日本が中央アジアに積極的な関わりをもとうとしていることは、世界で知られてきており、日本が主要国と何か協議をするとき、中央アジアのことに触れるのは当たり前になっている。日本は中央アジア諸国にとって無視できない存在であるという雰囲気を醸成していくことは、我が国外交に一段の幅や奥行きをもたせる結果につながっていること。
中央アジア外交の基本的指針(6月1日、麻生外相演説要旨)中央アジア外交の基本的指針(6月1日、麻生外相演説要旨)
日本・中央アジア外相会議(行動計画の骨子ー地域内協力)日本・中央アジア外相会議(行動計画の骨子ー地域内協力)
小泉首相のカザフスタン、ウズベキスタン訪問(2006年8月28‐29日)小泉首相のカザフスタン、ウズベキスタン訪問(2006年8月28‐29日) 1. カザフスタン ○小泉首相は28日、首都アスタナの大統領宮殿でナザルバエフ大統領と会談。首相は、今後の両国関係について経済交流のみならず地域間の政治対話、人的交流の拡大に努めたいと表明、ロシア、中国にはさまれながら欧州、米国とも良好な関係を築いていることに敬意を表する」と述べた。大統領は「両国の協力関係を継続したい」と応じた。 ○両首脳は同国のウラン鉱山開発などエネルギー資源分野を中心に協力強化をうたった共同声明を発表すると共に、両政府は原子力の平和的利用を目的とした協力協定の交渉開始を盛り込んだ覚書を交わした。 ○カザフスタンは世界第2位のウラン埋蔵量を有し、原子力発電用のウラン燃料について将来的な供給不足を懸念する日本側が関係強化を働きかけてきた経緯がある。首相は会談において「ウラン鉱山開発など原子力分野の協力は有望だ」と強調、大統領も「日本の直接投資の誘致に関心を持っており、日本企業に協力する準備がある」と応じ、日本からの投資に期待する考えを示した。 ○首相はまた、中央アジア諸国から今後3年間で合計2,000名の研修生・留学生を受け入れる方針を表明。 2.ウズベキスタン ○小泉首相は、8月29日引き続きウズベキスタンを訪問。今回訪問はウズベキスタン・カリモフ大統領の招待により、実現したもの。両首脳は29日、タシケントにおいて首脳会談を行い、二国間関係及び国際問題に関し広範な意見交換を実施。 ○共同プレス声明(29日、タシケント)の要旨 ・双方は、2002年の首脳会談時に署名された「日本国とウズベキスタン共和国との間における友好、戦略的パートナーシップと協力に関する共同声明」に基づき、引き続き二国間関係の発展に努力することを確認。 ・双方は、「中央アジア+日本」対話が中央アジア地域の安定及び発展に寄与するとの認識で一致し、6月に東京で開催された同対話第2回外相会合において採択された行動計画の実施のために協力を活発化させていく意向を表明した。 ・双方は、社会の民主的発展、市場経済、国民の社会保障水準の向上、並びに人権擁護の諸原則に忠実であることが政治的安定と経済的繁栄のために極めて重要であることを確認。 ・本声明には、さらに、国際問題に関する広範な事項が含まれるが、エネルギー・環境関連事項としては、双方は、①京都議定書に基づくクリーン開発メカニズムを活用した民間企業を含めた協力の発展の可能性を指摘し、②ウズベキスタンにおけるウランの開発及び取引が両国間協力の有望な分野となり得ることから、今後ウラン開発で両国官民の関係者の情報交換を促進する必要があるとの認識で一致。
「日本国とカザフスタン共和国との間の友好、パートナーシップと協力の一層の発展に関する共同声明」の概要(1)「日本国とカザフスタン共和国との間の友好、パートナーシップと協力の一層の発展に関する共同声明」の概要(1)
「日本国とカザフスタン共和国との間の友好、パートナーシップと協力の一層の発展に関する共同声明」の概要(2)「日本国とカザフスタン共和国との間の友好、パートナーシップと協力の一層の発展に関する共同声明」の概要(2)
「日本・カザフスタン共同声明」中、エネルギー関係部分「日本・カザフスタン共同声明」中、エネルギー関係部分
「日・ウズベキスタン共同プレス声明」(2006年8月29日、タシケント) 1.小泉首相は、8月29日引き続きウズベキスタンを訪問。今回訪問はウズベキスタン・カリモフ大統領の招待により、実現したもの。両首脳は29日、タシケントにおいて首脳会談を行い、二国間関係及び国際問題に関し広範な意見交換を実施。 2.共同プレス声明(29日、タシケント)の要旨 ○双方は、2002年の首脳会談時に署名された「日本国とウズベキスタン共和国との間における友好、戦略的パートナーシップと協力に関する共同声明」に基づき、引き続き二国間関係の発展に努力することを確認した。 ○双方は、「中央アジア+日本」対話が中央アジア地域の安定及び発展に寄与するとの認識で一致し、6月に東京で開催された同対話第2回外相会合において採択された行動計画の実施のために協力を活発化させていく意向を表明した。 ○双方は、社会の民主的発展、市場経済、国民の社会保障水準の向上、並びに人権擁護の諸原則に忠実であることが政治的安定と経済的繁栄のために極めて重要であることを確認した。 ○ウズベキスタン側は、日本が種々の分野で実施してきた政府開発援助が同国の経済プロジェクト及び社会的・人道的プロジェクトの実現に大きく貢献してきたことに謝意を表明した。 3.本声明には、さらに、国際問題に関する広範な事項が含まれるが、エネルギー・環境関連事項としては、双方は、①京都議定書に基づくクリーン開発メカニズムを活用した民間企業を含めた協力の発展の可能性を指摘し、②ウズベキスタンにおけるウランの開発及び取引が両国間協力の有望な分野となり得ることから、今後ウラン開発で両国官民の関係者の情報交換を促進する必要があるとの認識で一致した。 4.一連の会談で、首相は世界で有数のウラン資源国であるカザフスタンでは鉱山開発に協力して取り組んで行くことを確認した他、ウズベキスタンに対しては人権擁護にとり組み欧米諸国との関係改善を促したこと、及びウラン開発で両国官民の関係者の情報交換を促進する必要があるとの認識で一致したことが注目された。今回の両国訪問は、将来の総合エネルギー戦略の一環として資源の豊富な中央アジア諸国との関係強化、及び日本からの投資機会拡大を基本目標とするものであったとされる。その点に関しては、関係者は基本的な点を両国と確認できたとしている。
ブッシュ大統領、カザフスタン・ナザルバエフ大統領と会談(2006年9月30日)ブッシュ大統領、カザフスタン・ナザルバエフ大統領と会談(2006年9月30日) • 1. カザフスタンは、莫大な天然資源を抱え、近年石油開発を背景に堅実な経済成長を続けてきた。また、中国・ロシアの間に位置するという地政学的位置のために、近年米国にとってはカザフスタンの持つ意義はますます高まっている。カザフスタンは今日でも150万B/Dの原油生産を行っている。また、2015年の原油生産量は、250~350万B/Dに増加すると予想される。 • 2. 関係者はカザフスタンの投資環境や西側企業との間で締結されている生産物分与協定(PS協定)は、ロシアよりも遥かに好条件であるとしている。米国メディアはまたカザフスタンは隣国のウズベキスタンやトルクメニスタンよりも、経済改革進んでいると論評している。カザフスタンは2000年以来、9%の成長率を保持しており、一人当たりのGDPも3,000ドルを達成、米国・カザフスタンの貿易量は2004年以来倍増した。カザフスタンは石油産業のみならず、人的資源にも大きく投資している。同国は積極的な留学制度を持ち、現在3,000人の学生を、欧米や日本に留学させている。留学費用は全て政府が負担する。 • 3. ブッシュ大統領は、米国訪問中のカザフスタン・ナザルバエフ大統領と30日ホワイトハウスで会談した。米国紙は、その際、両首脳は、民主化問題言及しなかったと報じた。ナザルバエフ政権には、その非民主的な独裁体制に対し国際的批判が上がっているが、ブッシュ大統領は会談後、「ソ連の一部から自由な国家へと変わったこの重要な国の進展を、注意深く見守っている」と述べるに止めた。同大統領は、カザフスタンが米国の民間活動団体(NGO)を弾圧しているとされる問題に関しても非難を差し控えた。こうした対応に対し、人権団体からは、ブッシュ政権は世界への民主化拡大を掲げているにも拘わらず、カザフスタンの豊富な天然資源を当てにして圧政を容認したとし、その二重基準に対し批判の声が上がっている。なお、会談後に公表された共同声明は、両国が「民主的な発展の重要性を再確認」した上で、中立の報道機関や地方自治、自由・公正な選挙、宗教の自由の実現に向け努力するとした。いずれにせよ、中央アジアに外交上の布石を打とうとする場合、カザフスタンは米国にとり残された数少ない友好国の一つになった。
独自外交路線の継続を再確認したトルクメニスタン(2006年11月23日)独自外交路線の継続を再確認したトルクメニスタン(2006年11月23日) 1.日本は、中央アジアに対しては地域間協力を打ち出し、本年6月5日には東京でキルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、及びカザフスタンの参加により「中央アジア+日本」対話第2回外相会合を開催。同会議は2004年8月の第1回外相会合で立ち上げられた新たな枠組みの下での協力の進捗を振り返るとともに、今後の協力、特に地域内協力の推進について検討するもの。同会議において各国代表は、中央アジア地域の安定及び発展がユーラシア大陸、及び国際社会全体の平和及び繁栄にとって重要であるとの認識で一致。 2.こうした地域間協力が進行する中で、もう一つの中央アジア諸国形成国であるトルクメニスタンは、永世中立路線を掲げ独自の外交路線を推進。11月23日、ニヤゾフ大統領は、「中央アジア諸国はそれぞれ固有の問題を抱えており、一つの地域として協力することには多くの問題がある」と述べ、日本との関係強化を重視しつつも、日本が提唱する「中央アジア+日本」という地域間協力の枠組みに関しては改めて否定的な見解を示した。今回の大統領の上記発言に関し、関係者は、同国は地域間協力よりも二国間関係を重視することで、永世中立路線を追求する同国の外交政策に改めて自信を示したものと評価。