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2004 年 12 月 22 日 HDS ゼミ. Post-AGB 星表面化学組成の研究計画 --- ぐんま天文台 GAOES でのテスト観測報告も併せて ---. 竹田洋一(国立天文台). 話の内容. 第一部: Post-AGB 星とは何か? 恒星進化の中での位置づけ 観測面から見たその特徴と謎 高分散分光による化学組成解析の意義 第二部:ぐんま天文台 GAOES での試験観測 データ処理における問題点 得られたスペクトルの品質と今後に向けての課題. 第一部 Post-AGB 星とは?. 多くの Post-AGB 星が占める領域
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2004年12月22日HDSゼミ Post-AGB星表面化学組成の研究計画---ぐんま天文台GAOESでのテスト観測報告も併せて--- 竹田洋一(国立天文台)
話の内容 • 第一部:Post-AGB星とは何か? • 恒星進化の中での位置づけ • 観測面から見たその特徴と謎 • 高分散分光による化学組成解析の意義 • 第二部:ぐんま天文台GAOESでの試験観測 • データ処理における問題点 • 得られたスペクトルの品質と今後に向けての課題
多くのPost-AGB星が占める領域 (主にF-G型超巨星と分類されている) B型のような高温のPost-AGB星もある 恒星のHR図
Post-AGB星とはいかなる星か?-進化理論の面からの定義-Post-AGB星とはいかなる星か?-進化理論の面からの定義- • 小中質量(初期質量が1~7Msun程度)の星の進化の最終段階に当たるもの • 盛んな質量放出(10-7-10-4 Msun/yr)とともにAGBフェイズを終えた星が、光度を保ちつつ高温度方向へ移行しつつある途中の天体 • 現在の質量は0.5~1 Msun程度の小質量星だが進化で大きくふくらんでいるので103-104Lsunの高光度 • いずれは光電離出来るほど高温になって惑星状星雲を形成し中心は白色矮星となって死を迎える
中小質量星の進化 熱パルスの発生大規模質量放出 PAGB(5) AGB(4) 殻でHe燃焼殻でH燃焼 PN(6) RGB(2) 中心でHe燃焼殻でH燃焼 殻でH燃焼 RCG(3) HB(3’) MS(1) 中心でH燃焼 WD(7)
中小質量星終末期の進化トラックAGB~Post-AGB~PN~WD中小質量星終末期の進化トラックAGB~Post-AGB~PN~WD トラックに付記してある年齢の時間スケールは1000年を1とした単位 (初期質量、現質量) 質量によって進化のタイムスケールが大きく異なることに注意 Bloecker(1995)による計算 (熱パルスが起こる直前にAGBを離れたとき)
Post-AGB星の特徴ー 観測面から見たその特性 ー • ダストシェルによる赤外超過の存在 • エネルギー分布のダブルピーク:光球放射とシェル放射 • 天文学的には大変短いタイムスケールでの性質のsecularな変化 • 数十年~数百年オーダーの時間尺度のケースも • 表面化学組成の異常 • 種族起因、核燃焼物質汲み上げ、ダスト/ガス分離による金属欠乏、など複数の機構が複雑に絡む • 一般に多様性に富んだ星の性質 • 広い範囲の表面温度、脈動現象の有無、シェルの形状
Post-AGB星に特徴的なダストシェルの影響 エネルギー分布のダブルピーク [el/Fe] HSTの撮像観測でシェル(ネビュラ)も確認された 鉄を基準にした各元素の相対組成を原子番号に対してプロットしたもの HD 56126の例 (Van Winckel 2003より)
Post-AGB星=小質量超巨星? • 超巨星→種族Iの大質量星(≧10Msun)が進化してふくらんだ巨大で極めて明るい星で、寿命短いゆえ非常に若く、一般的に言ってガスの多い銀河面(生まれた場所)に集中している • しかし、一群の非常に銀緯の高い超巨星の存在が知られていた(high-latitude supergiant)→恒星分類学上の長年の謎だった • おまけにこれらはC、N、O、Sなど軽元素は通常に近くとも鉄などの重元素は明らかな欠乏を示すものが多かった(若い超巨星なのになぜ?) • これら謎の天体の正体はPost-AGB星だった • つまり進化に伴う質量放出で高々0.5-1Msun程度になった小質量のふくらんだ星 • 古い種族の星も少なくないので銀河面から離れていることは納得できる
大質量星の進化と超巨星 Post-AGB星の占める領域
なぜ超巨星と分類されるか • MK分類での光度階級(矮星~巨星~超巨星)の見積もりには電離イオンの線の強度と中性原子の線強度の比が良く用いられる • これは実は大気の密度(これは表面重力加速度と等価)の指標に過ぎず「よりふくらんだ大きな星→大気がそれだけ一層薄くなっていく」ということを前提にして光度階級の判定に使っている • つまり実際の星のパラメータ如何にかかわらず大気の密度が薄ければ(表面のgが小さければ)超巨星と分類される • それゆえ全く出自の異なる二つのグループが同じく分類されることが起こる
小質量低重力Post-AGB星と大質量低重力超巨星では「大気の球状効果」の重要性が異なる小質量低重力Post-AGB星と大質量低重力超巨星では「大気の球状効果」の重要性が異なる • 大気の厚さ d が星の半径 R に比べて十分小さいとき(d/Rが10%未満程度)は球状効果は無視できて平行平面大気で良いが、そうでない場合は球状大気を用いる必要性も • 大気の厚さ d (スケールハイト) ∝ g-1 • 一方星の半径は R ∝ Teff-2L1/2 と書けるから • g ∝ M R-2 ∝ Teff4ML-1 となる • 従って d/R ∝ RM-1 ∝ Teff-2L1/2M-1 HR図(Teff-L図)の同じ位置にある星同士で比べると d/R は(M に反比例するので)小質量の星ほどより大きくなる 通常の大質量低重力超巨星は球状効果はそう重要でない しかし小質量低重力Post-AGB星では重要になりうる
Post-AGB星の脈動現象 • Post-AGB星の進化経路はセファイド不安定帯を横切るので脈動に起因する周期的変光を示すものがある • しかし脈動するものとしないものがあり、その違いが何によるのかがまだわかっていない • 脈動の特性を示す変光曲線も必ずしもシンプルなものではなく脈動モデルの理論家にとっても興味ある研究対象(89 Herなど) • 相川さん(東北学院大)はこのPost-AGB星の脈動を説明するモデルの構築の研究を進めておられる • また吉岡さん(放送大学)が専門に研究しておられる RV Tau型脈動変光星はPost-AGB星のジャンルに属するものだと信じられている
Post-AGB星の表面化学組成異常 • 核反応物質の外層混合に起因する異常 • CNO異常 • sプロセス元素の過剰 • リチウム組成の異常 • ダスト/ガス分離による異常 • 鉄族など固質性(refractory)元素は顕著な欠乏を示す一方で揮発性(volatile)元素はさしてそのような傾向を示さない • 古い種族であることに起因する組成傾向 • 金属欠乏傾向、α元素の相対的過剰など これら3種の過程がからみ合っているので観測される表面組成は複雑多様でありその解釈は難しい
核反応物質の外層混合に起因する異常 • 内部の燃焼生成物の外層への汲み上げ • H燃焼 C↓N↑ (CN-cycle) [ O↓N↑ (ON-cycle)] • He燃焼(Triple αC↑α+ CO↑) • sプロセス元素の過剰 • 中性子を作る過程は α+ 13C → 16O + n が有力 • この異常を示すものとそうでないものが混在 • リチウム組成の異常 • Li過剰のPost-AGB星あり (Li生成を示唆) • しかしこれを示さないものも多い
ダスト/ガス分離による異常について • 元素の固体への凝集しやすさは凝集温度(Tc:ガス相の元素気体の温度を下げていったとき半分が凝集する温度)で表される • 元素は固体になりやすい(refractory:Tc高い)グループ(Si, Fe族など比較的重めの元素)、なりにくい(volatile:Tc低い)グループ(C,N,O,S,Znなど軽めの元素)、の二つに分けることが出来る • 恒星大気のガスが膨張して冷えると固体ダストが形成されるが このダストには前者のrefractory元素は主体的に含まれても 後者のvolatile元素はあまり含まれない • (ガスとは異なり)ダストは輻射圧を効率的に受けるのでそれによってダストは星の外に放出されるのでダストに含まれているrefractory元素はこの過程によって星の外層大気から奪われて欠乏を示すが、ダストに含まれにくいvolatile元素はそういう影響を受けない(ガス/ダスト分離によるrefractory元素のdepletion) • 結果としてTcに対して相対組成をプロットすると傾向を示す • ただその欠乏の程度については星ごとに大きく異なり(極端なものはHR4049のように[Fe/H]~-5にもなる)、なぜこのような定量的なDepletionの差がつくのかはよくわかっていない(binarityが鍵か?)
Post-AGB星のスペクトルと組成の特徴 (Van Winckel 2003より) sプロセス元素が顕著に過剰 Sプロセス元素過剰を示す星と示さない星がある この星の表面組成は明らかな凝縮温度への依存性を示す [X/H] vs. Tc [Fe/H] = -1.5
高分散分光に基づくPost-AGB星の化学組成解析に期待されること高分散分光に基づくPost-AGB星の化学組成解析に期待されること • CNOやsプロセス元素(Sr,Y,Zr,Ba,etc.)やLiの表面組成から、過去に被った外層混合による核反応生成物の汲み上げの様子を理解して進化段階を把握する(理論の試金石) • volatile元素(CNO,S,Zn)の組成とrefractory元素(Si,Fe族など重元素)の組成を併せて調べることでガス/ダスト分離によるDepletionの程度を把握しガスの初期組成を推定する 要するに各々の過程に属する後天的組成変化を分離して(初期組成の推定とともに)定量的に理解すること
組成解析における従来の問題点 • 決定された化学組成の不確定性が大きく、人によって(同じ星でも)出した結果が大きく異なるために信頼に足る議論が出来ずにいること • 大気パラメータ決定の難しさや希薄大気の超巨星の化学組成解析の困難さ を反映 • ダスト吸収による大きな赤化のために色指数からの大気パラメータ決定はほとんど不可能 • non-LTE効果の考慮の必要性
しかし最近は状況も変わり、新たな進展が期待できる段階にしかし最近は状況も変わり、新たな進展が期待できる段階に • スペクトルのみから大気パラメータ(有効温度、重力加速度)を精度良く決める手法の開発 • FeIとFeIIのライン強度を用いる最適化問題に定式化した方法(Takeda et al. 2002) • 色んなスペクトル線のペアの深さの比を用いる方法(Kovtyukh, Gorlova 2000)。 • 超巨星のCNO等軽元素のnon-LTE解析に関しては我々には経験の蓄積あり • 球状大気の効果を考慮して、平行平面大気の適用よって生じる誤差を評価する用意もある
我々のめざすこと • いくつかの代表的なPost-AGB星についてなるべく正確に大気のパラメータを決定しnon-LTE効果なども考慮に入れて鍵となる元素の表面組成を高い精度で求めること • そしてそれを基にして、初期の星が持っていた組成、核燃焼物混合で被った変化、ガス/ダスト分離で被った欠乏の程度、をきちんと定量的に抑え、これら複雑に絡み合ったプロセスの正しい理解に向けて理論家に観測面からの制約を与えること • また脈動を示す星と示さない星の二つのPost-AGB星グループ間で表面組成に何か有意な差が見られるかを調べること • 特に着目したい鍵となる元素の例(それぞれ特徴が異なる) • C, N, O (揮発性であって、核燃焼物混合の影響も受ける) • S, Zn (揮発性だが、核燃焼にはあずからない) • Sr, Y, Zr, Ba, …(sプロセスによる影響あり、非揮発性ゆえDepletionも) • Li (生成プロセスもあり。内部の状況に極めて敏感)
その応用の一例(揮発性元素Znを用いた初期金属量推定)その応用の一例(揮発性元素Znを用いた初期金属量推定) Post-AGB星(RV Tau型変光星も含む)の[S/Zn]-[Zn/H]図は銀河系の星の[S/Zn]-[Zn/H]図と類似している 文献値に基づく 銀河系の星の[S/Zn]-[Zn/H]図 Takeda et al. (2002) Nissen et al. (2004) ならば「揮発性元素のSもZnもほとんどガス/ダストdepletionを受けていない」と一次近似で仮定しても悪くないので[Zn/H]を初期金属量(種族)の推定に代用することも出来るだろう(普通用いられる[Fe/H]がDepletionの影響で使えないので)
観測対象に考えている星のリスト 一般に暗めの星が多く、明るいものでも6等クラス→感度(効率)の良さが特に望まれる
Post-AGB星観測計画(竹田、吉岡、相川、橋本、田口、川野元)Post-AGB星観測計画(竹田、吉岡、相川、橋本、田口、川野元) ぐんま天文台GAOESが立ち上がったのを契機にこちらからお願いして橋本さん田口さんの協力の下に使用させていただくことになり、本年2004年の8月末、10月下旬、12月中旬、の三回の機会に試験的観測を試みた 2004年8月31日(緑~橙領域)[α Per],89 Her, SU Cas, HD187203 2004年10月21, 27日(近赤外領域) [α Per],89 Her, SU Cas 2004年12月14~17日(緑、赤、近赤外) [α Per, UMi, CMi, CMa, εAur],SU Cas 同タイプの明るい超巨星も比較星として観測したがこれらについては十分満足できる良いデータが取れている ただ残念ながら肝心のPost-AGB星(6等クラス)はS/Nが不十分で満足すべきデータとはまだ言い難い(この点についてはさらに後述) 因みにぐんま天文台とのコラボレーションとして岡山に観測申し込みを企てたところ採択されたので(2005年4月15-21日)、これからは両者の利点(岡山HIDESの使い勝手の良さと信頼性、ぐんまGAOESの運用のフレキシビリティ)を互いに生かせるような研究として進めていきたいと考えている
GAOESのエシェルスペクトルにおける問題点 スペクトルが検出器の縦横の辺に対して傾いていること 比較スペクトル 星のスペクトル 全体像 一部の拡大
普通はスリット像は縦横の辺にアラインするようになっている(スリットを適当に回転して)普通はスリット像は縦横の辺にアラインするようになっている(スリットを適当に回転して) この方向にピクセルを足し合わせて一次元化する 岡山HIDESの場合 拡大図 全体像
考えられる対処法の色々 • ハード的な解決法 • 普通なされるようにスリットを適当な角度だけ回転して検出器上でスリット像を辺にアラインさせる • 自明の解だが現在GAOESはこれができるようになっておらず大幅なスリット周りの改造が必要 • また分解能の劣化が起こるとのこと • ソフト的解決法 • 1.生データに適当な前処理を施してスリット像が縦横の辺とアラインするようなものに変換する(後は普通通りに整約) • A.全体的に回転する方法(神戸さんが採用) • B.横滑り断層的にそろえる方法(橋本さんによる提案) • 2.スペクトルの太い帯を複数の十分細いスペクトルの帯(傾きが問題にならない程度に細いもの)に分割してそれぞれ別々に波長較正した後に足し合わせる(竹田が採用)
全体的回転法 元画像を適当な角度回転してもっと大きな長方形領域内に納め、スリット像がその新たな領域の辺にアラインするようにする 拡大図 こうするとスリット像は辺に揃う 手順が至って簡単なのは大きな長所 一方データが大きくなるので処理に時間がかかり、また不自然なスペクトル様式になるためアパーチャーの決定が難しくなるきらいがあるのは弱点 新たな(もっと大きい)長方形領域
断層横滑らし法 前処理の段階でスペクトルの分散方向に各々の分割した細いスペクトル帯(セグメント)をうまく横滑り的にシフトさせることでスリット像を辺にアラインさせる アパーチャーの様式もほとんど変わらないので良い方法と思われるがIRAFなどの既存のツールの枠内では対応できないようで、自分でそれなりのプログラムを書かねばならない
アパーチャー分割法---今回の整約で採用した方法---アパーチャー分割法---今回の整約で採用した方法--- 太いスペクトルの帯を細い複数のスペクトルの帯に分割する (十本程度でもOK) 1234 1234 (...以下同様) 各々の細いスペクトルでは傾きは実際上問題にならないので普通のように整約できる 星のスペクトルも比較スペクトルも同じように分割し、それぞれのストリング毎に波長較正した後に全部を足し合わせて最終的なスペクトルにする 中間ファイルが多数生成されて多少わずらわしい点が短所だが、スクリプトなどで能率化を図れば処理時間は実際上普通の制約の場合とほとんど変わらない
GAOESスペクトルの波長カバレッジ 岡山HIDES(CCDは同じ4K×2Kサイズ)の場合(約1300Å)と比べてGAOESは約1.4倍広い波長域(約1800Å)をカバーできる このメリットは実際上大変大きくありがたい(特に組成解析をする場合において顕著)
GAOESスペクトルの波長分解能 拡大図 Na I D線の領域でのスペクトル比較 Atm.H2O シャープな大気の吸収線の幅から見てGAOESのスペクトルはHIDESに匹敵する6万~7万の高波長分解能を達成している
GAOESで得られた近赤外のスペクトル GAOESのフラットスペクトル 近赤外ではフリンジ(干渉縞)の影響が大きい 近赤外(写真赤外)ではフリンジの除去が大きな問題であるが、GAOESはこれがきれいに取れるようである HIDESでうまく取れなかった例であり、波打っているのがわかる すばるHDSはこの問題が頭痛の種になっており、岡山HIDESはまだ良い方であるがそれでも時々うまく取れないことがある GAOESは近赤外域の観測に向いていると言える
GAOESスペクトルデータのS/N比---残念ながらまだ満足のいくものではない---GAOESスペクトルデータのS/N比---残念ながらまだ満足のいくものではない--- 岡山6等星のS/Nと露出時間の関係(黄色域) 岡山6等星のS/Nと露出時間の関係(近赤外域) ぐんま まだ現状では6等クラスを60~90分露出してもよくて高々S/N~100程度のようで、岡山のHIDESと比べてかなり劣る CCDの読み出し雑音が大きいので重ね合わせてもS/N比は思うように上がらない
GAOESで実際に得られたスペクトルの例---亜鉛と硫黄の線の領域に着目して---GAOESで実際に得られたスペクトルの例---亜鉛と硫黄の線の領域に着目して--- 光量豊かな明るい星の場合は20分程度の露出で非常にきれいな良質のスペクトルが得られるが、やや暗い星になってくると1時間もかけてもノイズの多いスペクトルになってくる(すでに5~6等でも苦しい)
GAOES分光器の現時点での能力---他分光器で得られたスペクトルとの比較において---GAOES分光器の現時点での能力---他分光器で得られたスペクトルとの比較において--- • 分光器自体は一級品で、得られるスペクトルは岡山HIDESやすばるHDSと匹敵し、いくつかの点では凌駕さえしており至って満足できるものである • R~7万クラスの高い波長分解能の達成 • Bad columnの影響なし、近赤外フリンジのきれいな取れよう • ただ、開発途上ということもあり、本体以外の部分で見られる不具合や効率の悪さによってこの利点がまだ十分に生かされておらず、本格的な研究への適用という実際的な観点から見た場合さらにクリアすべき点が少なくない • CCDコントローラの使い勝手の悪さ(ビニング不可、連続露出不可)と不安定性 • CCD(今はengineering gradeの由)の読み出し雑音がまだ相当大きい(40-50e) • スリット周りの可動性の低さ(スリットは回転できず、また長さは固定でロングスリット観測は今のところ出来ない) • (ある程度高いS/N比の)使えるデータを取るにはまだ明るい星でないと難しい • しかしながら橋本さんを中心にしたぐんまのスタッフの方々が改善に向けて着々と手を打ちつつ鋭意努力しておられるのでそう遠くない将来にはこれらの問題点も解決されるものと思う • MESSIAの導入(すでに物事が動き始めていて2005年には実現される由) • 光量損失の抑止 • 本格的低ノイズCCDの導入 • スリット周りのフレキシビリティ 今後期待される