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日本語の理解

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Presentation Transcript

  1. 日本語の理解 補助資料

  2. はじめに • 日本語とは…… • 日本語の特徴(講義録参照) • 日本語の言語的特徴 ・歴史・音韻・統語・位相 (語彙、表記は今回は割愛)

  3. 日本語の歴史 • 最初の日本語の記録 ◆『三国志』魏書東夷傳倭人條 「對馬」「一支」「奴」「末盧」…:地名 「卑狗」「卑奴母離」「爾支」…:官名 「卑彌呼」「難升米」「臺與」…:人名

  4. 口語と文語 • 平安時代文学の日本語:文章の言葉と話し言葉にあまり隔たりがなかった? 例) (略)中に十(とお)ばかりやあらむと見えて、白き衣、山吹などの萎えたる着て、走り来たる女子、あまた見えつる子どもに似るべうもあらず、いみじく生ひさき見えて、うつくしげなる容貌なり。髪は扇を広げたるやうにゆらゆらとして、顔はいと赤くすりなして立てり。  「何ごとぞや。童女と腹立ちたまへるか」 とて、尼君の見上げたるに、すこしおぼえたるところあれば、子なめりと見たまふ。  「雀の子を犬君が逃がしつる。伏籠のうちに籠めたりつるものを」 (『源氏物語』若紫巻より)

  5. 口語と文語 • 平安時代文学の日本語:文章の言葉と話し言葉にあまり隔たりがなかった? 例)(口語訳) (略)その中に十歳ぐらいに見えて、白の上に山吹色の柔らかい着物を着て、向こうから走って来た子は、何人も見た子供とは似ても似つかない、非常に将来(美人になるだろうと)有望な、かわいい顔立ちをしている。髪は扇をひろげたようにゆらゆらとして、顔は赤く(泣きはら)して立っている。 「何事ですか、召使いの子たちのことでお腹立ちなのですか?」  と言って、尼君が見上げた顔と少し似たところがあるので、(女の子はこの尼の)娘なんだろうな(実際は孫)、と(光源氏は)お考えになった。 「雀の子を犬君が逃がしちゃったの、かごの中に閉じ込めておいたのに」 (『源氏物語』若紫巻より)

  6. 口語と文語 • 中世(鎌倉〜室町時代) 漢語語彙の増加→和漢混淆文 • 例) 祇園精舎(ぎをんしゃうじゃ)の鐘の声、 諸行無常(しょぎゃうむじゃう)の響きあり。 娑羅双樹(さらさうじゅ)の花の色、 盛者必衰(じゃうじゃひっすい)の理(ことはり)をあらはす。 おごれる人も久しからず、 ただ春の夜の夢のごとし。 たけき者も遂(つひ)にはほろびぬ、 偏(ひとへ)に風の前の塵(ちり)に同じ。 (『平家物語』冒頭)

  7. 口語と文語 • 中世(鎌倉〜室町時代)  文章語と口頭語の違いが出てくる 文章語:平安時代とほぼ同じ文法 話し言葉:現代語の文法に近くなる

  8. 口語と文語 • 中世(鎌倉〜室町時代)  文章語と口頭語の違いが出てくる 話し言葉の例:「抄物(しょうもの)」 「史記ガ出来テコソ、皆史記ヲ本ニシテ、前後漢書・三国志・南北史・東西晋書・隋書・唐書・五代史・宋史・金史・遼史・元史モ撰ダゾ、史記ガ古今ノ法則ニナッタゾ」 (『史記抄』)

  9. 口語と文語 • 中世(鎌倉〜室町時代)  文章語と口頭語の違いが出てくる 話し言葉の例:「抄物(しょうもの)」現代語訳 「史記が出来たからこそ、みな史記をもとにして、漢書・後漢書・三国志・南史・北史・東晋書・西晋書・隋書・唐書・五代史・宋史・金史・遼史・元史も撰述されたのだ。史記が時代を超えた手本になったのだ」 (『史記抄』)

  10. 口語と文語 • 中世(鎌倉〜室町時代)  文章語と口頭語の違いが出てくる 文章語の例:『源氏物語』の注釈 「あづまをもろもろのうつは物のうへにをき、紫をよろづの色の中にたとふるがごとし。みなもとふかき水はくめどもさらにつくることなく、くらくなき玉はみがけばいよいよ光をます。我国の至宝は源氏物語にすぎたるはなかるべし」 (『花鳥余情』)

  11. 口語と文語 • 中世(鎌倉〜室町時代)  文章語と口頭語の違いが出てくる 文章語の例:『源氏物語』の注釈、現代語訳 「(源氏物語の素晴らしさは)和琴をすべての楽器の最上に置き、紫をすべての色の中心になぞらえるようなものだ。深い水源からわく水は汲んでも全く涸れることはなく、くもりのない玉は磨けばますます光沢を増す。我が国の至宝は源氏物語以上のものはないであろう」 (『花鳥余情』) ※「和琴(あづま)」「紫」「源(みなもと)」「光」は源氏物語を象徴するキーワード

  12. 口語と文語 • 近世:庶民にもわかりやすい文体の出現 地の文は文語、会話は口語(雅俗混淆体) 例)「雅」の部分(文章語) 武蔵野(むさしの)の尾花がすゑに、かかる白雲と詠みしは、むかしむかし浦の苫屋(とまや)。鴫(しぎ)立つ沢の夕暮に愛(め)でて、仲の町の夕景色を、知らざる時のことなりし。 (『東海道中膝栗毛』冒頭)

  13. 口語と文語 • 近世:庶民にもわかりやすい文体の出現 地の文は文語、会話は口語(雅俗混淆体) 例)「俗」の部分(話し言葉) 女房「およびなさいましたか」 弥二「イヤおめえではわかるめえ。さっきここの女中に、ちっと頼んでおいたことがあるから、どうぞちよっとよこしてくんねぇ」 女房「ハイあなた方のほうへ出ました女は、雇人(やといにん)でございますから、もう宿へ帰りました」 弥二「エエほんにか。そんならよしそんならよし」 女房「ハイお休みなさいませ」トかつてへゆく (『東海道中膝栗毛』初編より)

  14. 口語と文語 • 近代(明治時代):文語と口語を一致させる動き(言文一致運動) • 近代小説も最初は文語で書かれていた。例:  例(いつも)は威勢よき黒ぬり車の「それ門に音が止まつた、娘ではないか」と兩親(ふたおや)に出迎はれつるものを、今宵は辻より飛乗りの車さへ帰して、悄然(しょんぼり)と格子戸の外に立てば、家内(うち)には父親が相かはらずの高声。「いはば私も福人の一人、いづれも柔順(おとな)しい子供を持って育てるに、手は懸らず、人には褒められる、分外の慾さへ渇(かわ)かねば、此の上に望みもなし、やれやれ有難い事」と物がたられる。 (樋口一葉『十三夜』、1895年)

  15. 口語と文語 • 近代(明治時代):文語と口語を一致させる動き(言文一致運動) • 口語小説のさきがけ「浮雲」より。  今年の仲の夏、或(ある)一夜、文三(ぶんぞう)が散歩より帰って見れば、叔母のお政(まさ)は夕暮より所用あって出たまま未(ま)だ帰宅せず、下女のお鍋(なべ)も入湯にでも参ったものか、これも留守、唯(ただ)お勢(せい)の子舎(へや)にのみ光明(あかり)が射している。文三初(はじめ)は何心なく二階の梯子段(はしごだん)を二段三段登(あが)ったが、不図(ふと)立止まり、何か切(しき)りに考えながら、一段降りてまた立止まり、また考えてまた降りる…… (二葉亭四迷『浮雲』第3編冒頭より、1887年)

  16. 口語と文語 • 標準語の元になった言葉とは? 普通「東京の山の手(比較的上流階級の住む地域)の言葉」と考えられているが…… 江戸時代:山の手には武士が住んでいた。 明治時代:大部分の武士が去り、新たな上流階級(政府官吏、財閥関係者、文化人など)が住むようになる。 ⇧ ★住人が入れ替わっている!!! ★短期間で新しい人々が「標準語」のような言葉を作った!? そんなのありえるのか!?!?

  17. 口語と文語 • 標準語の元になった言葉とは? ◎種明かし  実は「東京の山の手の言葉」は全国で通用する丁寧な言葉だったらしい。 東京の言葉は、関東の言葉よりも関西の言葉に近い要素がある(「〜う、〜よう」など)。

  18. 口語と文語 • 標準語の元になった言葉とは? • 江戸の丁寧な言葉 藤太「いや、その儀は気遣いあられまするな。はや先だって、ここへ召し寄せましてござりまする」 (江戸歌舞伎「御摂勧進帳」1773年上演) • 大阪の丁寧な言葉 又五郎「ごもっともでござりまする。拙者もさよう存じてから、ご機嫌を見合わせご帰館あるようにとお勧め申すことでござりまする」 (上方歌舞伎「伊賀越乗掛合羽」1776年上演)

  19. 口語と文語 • 標準語の元になった言葉とは? • 江戸の乱暴な言葉 藤太「ここな行平の大腰抜けめ。なんじこのたび上京なしたるは、義経を詮議のためじゃあないか」 (江戸歌舞伎「御摂勧進帳」1773年上演) • 大阪の乱暴な言葉 又五郎「そりゃ何をぬかすのじゃ。その正宗の刀は俺がのじゃ。(中略)そう思うてけつかれ」 (上方歌舞伎「伊賀越乗掛合羽」1776年上演)

  20. 口語と文語 • 標準語の元になった言葉とは? ◎種明かし  実は「東京の山の手の言葉」は全国で通用する丁寧な言葉だったらしい。 東京の言葉は、関東の言葉よりも関西の言葉に近い要素がある(「〜う、〜よう」など)。

  21. 日本語の音韻 • 日本語の音声(子音)

  22. 日本語の音韻 • 日本語の母音 ◎[u]の実際の発音:  非常に円唇性が弱く、また かなり前寄り。正確には [u̜˖]などと表記される。  また、前の子音の影響で [u〜ɯ]と変化する。 ・唇音[p,b, ф,m]の後ろ:[u] ・[ts, s]の後ろ:[ɯ〜ɹ̩]

  23. 日本語の音素 • 日本語の音素表記と音節表

  24. 日本語の音素 • 日本語の音素

  25. 日本語の音素 • さきほどの表の問題 ☆なぜ /t/ に /c/ が混じっているの? /ta cicu te to/ [ta tʃi tsɯ te to] たしかに日本語の「ち」「つ」は子音が破擦音[tʃ] [ts] で、[t]とはかなり違っている。

  26. 日本語の音素 • さきほどの表の問題 ☆なぜ /t/ に /c/ が混じっているの? ・歴史的経緯  「ち」 ti > tʃi 「つ」 tu > tsu > tsɯ 15、6世紀頃に変化が起こったとみられる。

  27. 日本語の音素 • 「ち」/ci/、「つ」/cu/とする必要性 ◆/ti//tu/の復活 外来語音で「ティ」「トゥ」という発音が現れる。 teacup 「ティーカップ」 toe shoes 「トゥシューズ(トウシューズ)」

  28. 日本語の音素 • 「ち」/ci/、「つ」/cu/とする必要性 ◆「ち」/ti/、「つ」/tu/とする方からの反論  動詞の活用  「立つ」:立たない、立ちます、立つ、立てば… これは語根が /tat-/ になっている。

  29. 日本語の音素 • 「ち」/ci/、「つ」/cu/とする必要性 ◆他の可能性は? ・「ち」/ti/、「つ」/tu/として、「ティ」/tXi/、「トゥ」/tXu/とできないか? 例)「ティ」/twi/、「トゥ」/twu/: /u/と/wu/の区別は日本語にはない。英語などのtwi を「ティ」と写すことがない。→ダメ

  30. 日本語の音素 • 「ち」/ci/、「つ」/cu/とする必要性 ◎「ち」/ci/、「つ」/cu/とする利点 外来語、俗語に現れる「ツァ」「ツォ」を、/ca//co/として、日本語の中に位置づけられる。   「モーツァルト」「カンツォーネ」  「おとっつぁん」「ごっつぁんです」

  31. 日本語の音素 • 「ち」/ci/、「つ」/cu/とする必要性 ★動詞活用の問題(解決策) ・動詞活用のときは環境によって/t/が/c/に変化するとする。 ・和語では/ti→ci//tu→cu/となるとする。 (語彙音韻論 lexical phonology 的発想)

  32. 日本語の音素 • 「ち」/ci/、「つ」/cu/とする必要性 参考: ・はし→いしばし、ふる→どしゃぶり “h→b” (*p>ф>h となったが、連濁では今でもp:bの対応を残している) ・닫다 : 닫히다 [tat’ta : tat’tʃida]

  33. 日本語の音素 • 「ファ行」の問題 /ha hi hu he ho/ [ha çi фu he ho] 「ひ」「ふ」だけ、違う子音が現れる。 [ç]:硬口蓋摩擦音 [ф]:両唇摩擦音 これらは、後ろの母音[i][u]の影響で[h]が変化したものとも考えられる (舌の形が子音と母音で同じ!)。

  34. 日本語の音素 • 「ファ行」の問題 実は[ф]は……昔の「ハ行」の子音だった! キリシタン文献:fa fi fu fe fo 『伊路波』:は ひ ふ へ ほ(ママ) 『捷解新語』:は화 ひ피ふ후 へ폐 ほ호 *p>ф>h となったと考えられている。

  35. 日本語の音素 • 「ファ行」の問題 ☆ファ行(ファ、フィ、フ、フェ、フォ)は今や日本語には欠かせない音素。 外来語の[f]音や[hw]音などを表すのに用いられる。 例):「ファイト」「フィルム」「フェルト」「フォーム」

  36. 日本語の音素 • 「ファ行」の問題 ◆どう解釈する?? /f/ : /fa fi fu fe fo/ /hw/ : /hwa hwi hu hwe hwo/ /fu/と/hu/の区別ができないことからすると、 /hw/のほうがいい? ※「フューチャー(future)」などの問題が残る

  37. 日本語の音素 • /v/の問題  日本語の音素でもないのに「ヴ」という表記が与えられ、しばしば用いられている。 violin: 「バイオリン」「ヴァイオリン」 villa: 「ヴィラ」 「*ビラ」