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こぼれる気持ちと伝わることば. Sentiments fuis et paroles transmises. ~ l’étude de la communication ~. ~コミュニケーションの研究~. 福 島 祥 行 文学研究科・文学部 フランス言語文化 fukushim@lit.osaka-cu.ac.jp. 0. こぼれる気持ち. オースティン (John Langshaw AUSTIN 1911-1960) の「言語行為論」 How to Do Thongs with Words (1952) ( 『 言語と行為 』 [坂本百大]大修館書店)
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こぼれる気持ちと伝わることば Sentiments fuis et paroles transmises ~l’étude de la communication~ ~コミュニケーションの研究~ 福 島 祥 行 文学研究科・文学部 フランス言語文化 fukushim@lit.osaka-cu.ac.jp
0. こぼれる気持ち • オースティン (John Langshaw AUSTIN 1911-1960)の「言語行為論」 How to Do Thongs with Words (1952)(『言語と行為』[坂本百大]大修館書店) • サール (John. R. SEARLE 1932-)の「発話行為」(speech acts) Speech Acts: An Essay in the Philosophy of Language (1969)(『言語行為』[坂本百大・土屋 峻]勁草書房) (1) A : なあ、浅野って、いま、カレシおるん……? B : おれへんけど…… A : へっへっへっ…… B : なんで笑うんっ……! 深見のアホっ……! (2) B : あーあ、瑞恵って、ほんま、可愛いなあ…… A : けど、浅野かて、けっこう、可愛いで…… B : ふん、どーせあたしはブスですよ…… A : いや、そーゆー意味やのうて…… (3) A : 浅野、あした、ヒマ……? B : ヒマやけど……? A : どっか行けへん……? B : なんで……? ★ ことば(=発話、言表 utterance / énoncé)には「表の《意味》」と「裏の《意味》」が存在する? cf. 「暑いなあ。冷房はいってへんやないか」=「冷房をいれろ」 →「表」と「裏」の境界線は?
1. コードモデル (4) コミュニケーション図式1
= ★《意味》は話し手のもの(聞き手は「受け取る/受け取り損なう」のみ) (5) オレ、あした、ヒマやねん = 深見高志は2003年8月7日に暇である = Julius Caesar は B.C.44年3月15日に暇である ★ コード(code)だけでは、指示対象は同定できない(「私」が誰かわからない)。 → コンテクスト(context / contexte =文脈、言語外情報)が必要となる。 直示 (deixis) 浅野美喜 深見高志 ユーリウス・カエサル 豊臣秀吉 松浦亜弥 及川光博 ルネ・デカルト …… 直示辞 (deictic / déictique) • 私,君,彼,I, you, he, je, tu, il, etc. • 今日,昨日,明日,today, demain, etc. • 前,右,上,behind, gauche, etc. • こゝ,それ, there, that, ici, ça, etc. わたし 指示 (reference / référence) 指示対象 (referent / référent)
2. 推論モデル (6) コミュニケーション図式1改 (7) グライスの「会話の協調原則」(cooperative principle) a. 量の原則 (maxim of quantity) 必要な情報は全て提供し、必要以上の情報を提供しない b. 質の原則 (maxim of quality) 真実でないと思うことは云わない c. 関連の原則 (maxim of relevance) 話題に無関係なことは云わない d. 様態の原則 (maxim of manner) 明晰な表現をする [GRICE, Paul (1989) :『論理と会話』[清塚邦彦]勁草書房,1998]
(8)B : なあ、最近、深見のヤツ、ワケわからんくない……? C : あいつ、アリワラノナリヒラやからなあ…… ★《意味》を確定するためには、推論が必要となる。 → スペルベルとウイルソンの『関連性理論』(Relevance Theory) SPERBER, Dann & WILSON, David (1995) :『関連性理論――伝達と認知』 Relevance : Communication and Cognition, 第2版[内田・中逵・宋・田中]研究社出版,1999. • 「情報意図」(informative intention):受け手の「認知環境」(cognitive environment)を変えようとする意図 • 「伝達意図」(communicative intention):「情報意図」を持つことを伝えようとする意図 • S&Wにとってのコミュニケーション=「意図明示的推論コミュニケーション」(ostensive-inferential communication) ★ 「コード化」されていない会話もある。 (9) C : おはよー、美喜、元気……? B : (黙って葛根湯の包みを取り出してみせる)…… ★《意味》は聞き手のもの(聞き手の「推論」が全て)
3. 相互行為モデル ★ 「他人には決してアクセスできない世界=ことば」(俺ことば) →「独我論」(solipsism / solipsisme)
(11) とある語の意味とは、ことばにおけるその使用 (Gebrauch) である(『哲学探究』43) →ウィトゲンシュタインの「意味の使用」説 [WITTGENSTEIN, Ludwig (1953) :『哲学探究』 Philosophische Untersuchungen, ウィトゲンシュタイン全集8[藤本隆志],大修館書店,1976. WITTGENSTEIN, Ludwig (1953) : Tractatus logico-philosophicussuivi deInvestigations philoso-phiques, [Pierre Klossowski],tel, Gallimard, 1961/1986.] ★ ガーフィンケル (Harold GARFINKEL 1917-)、サックス (Harvey SACKS 1935-75)らによる「エスノメソドロジー」(ethnomethodology / éthnométhodologie) →「社会」は観察可能なものとして、人々のふるまいに現れている → 「会話」を分析(会話分析 conversation analysis / analyse conversationnelle) ★ 相互行為分析 (interaction analysis / analyses interactionnelle) → いかなる行為も、社会的=相互行為的に行なわれる → 社会は共同/協働作業で成り立っている
★ コミュニケーションは「相互行為」である★ コミュニケーションは「相互行為」である → 聞き手は、単に聞いているだけではない → 相づち、身振り、しぐさ、表情などにより、さまざまなリアクションを発信 → 話し手にとって、聞き手の注意を更に喚起したり、話題を変更したりする「資源」
(12) C : (Bに向かって)深見君て、記憶力悪いゆうてるくせに、美喜の誕生日だけは憶えてんねんで…… B : え……そうなん…… A : いやあ、ごめん、高橋の誕生日て、いつやったっけ……? C : べつに憶えてもらわんでもえゝよ、いちおう4月17日やけどな…… ★発話の《意味》は、いつまでも未決定 → 暫定的決定(=《意味》)は存在する(その場その場の《意味》) ★話し相手は、いつでも「他者」だから、話しかけることは「暗闇への跳躍」である → 話し手と聞き手の「非対称性」 =「話す-聞く」ではない、「教える-学ぶ」関係(柄谷行人 1941-)
★ 「他者」の不在 = コミュニケーションの不在 → 世界には自分と同質の人間しかいない(=独我論) = みんな「以心伝心」なので、何かを伝達する必要がない ★ 「本質」とは「X は、どんなことがあっても X である」ということ → 「他者」とのコミュニケーションによって X が変化する可能性を認めない = 「話し合い」の余地がない = コミュニケーション/他者の拒否 ★ コミュニケーション以前の《意味》を求めることは「本質」を求めること = コミュニケーションの拒否 ★ 「思考」=「自己」との対話(思考は「社会的」にしかなされない) ・ Paul VALÉRY (1871-1945) 「われわれは、われわれの認識可能な、それと認めうる『自我』を他者の口から受け取るのである。他者は源泉であり、そして心的生活中きわめて重要なものでありつづけるので、あらゆる思考に対して対話体を要求するほどなのだ」 ・ Лев Семенович Выготский [Lev Semyonovich Vygotskii] (1896‐1934) 内言=思考
4. 伝わることば ★ 相手は「自分と同じ人間ではない」(=他者 The Other / L'Autre) →二人の共同/協働によりコミュニケーションは成功する ★ 「伝えたいこと」はコミュニケーション前には存在しない。 → コミュニケーションの結果、事後的に「伝わったこと」(=《意味》)が生ずる。 =「伝えたかったこと」 ★ 「気持ち」は常に 100 % 「伝わる」 (14) A : なあ、あした、天気予報、「晴れ」て云うてたっけ……? B : (黙って情報誌を取り出してみせる)……
★ コミュニケーション (communication) の研究 → 学際的 (interdisciplinary / interdisciplinnaire) 哲学 社会学 心理学 教育学 言語学 文学 演劇学 文化論 異文化間コミュニケーション論 情報工学 ……
Fin FUKUSHIMA Yoshiyukip Département de langue et culture françaises, l’Université de la Ville d’Osaka fukushim@lit.osaka-cu.ac.jp http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/~fukushim/