210 likes | 384 Views
論文作法について ー主として卒業論文・修士論文の場合ー. 复眼龙 ( 20 1 X ). 論文とは. ふだん、温まってきたある問題について、 自分の独自の主張を何らかの調査に基づいて、 合理的な仕方で根拠づけようとする、一定の 長さの文の集まりである。 したがって論文は、オリジナリティが命。オリジナリティ(自分独自のもの)がなく他人の説を単に紹介したものは、論文ではない。他人のものを無断(出典明示しない)で使用することはなおさら許されない。. いかにテーマを決めるか。. 当たり前のことにも疑問の目を向ける ―― 問題意識を持つこと。問題意識は普段の読書から培うこと。
E N D
論文作法についてー主として卒業論文・修士論文の場合ー 复眼龙(201X)
論文とは ふだん、温まってきたある問題について、 自分の独自の主張を何らかの調査に基づいて、 合理的な仕方で根拠づけようとする、一定の 長さの文の集まりである。 • したがって論文は、オリジナリティが命。オリジナリティ(自分独自のもの)がなく他人の説を単に紹介したものは、論文ではない。他人のものを無断(出典明示しない)で使用することはなおさら許されない。
いかにテーマを決めるか。 • 当たり前のことにも疑問の目を向ける――問題意識を持つこと。問題意識は普段の読書から培うこと。 たとえば、受身使役助動詞によって動詞は二分されるが、他の言語には見られない。それはなぜか。 • 今まで疑問に思うこと、先生や教科書の説明では不十分なこと、自分で何かを調べてみようとすることを取上げる。 たとえば、動詞は自動詞と他動詞とに分類できるが、両方にまたがる動詞の場合、その自他のあり方は、どうなっているかを自分で調べてみる。 ・テーマを決めるには、独自の創意工夫が必要。だれでも思いつくようなものは避けること。 たとえば、「的」についての研究は数多くあるが、「的」と「的な」の違いについて調べてみる。それによって、他人の論文との衝突を避けられる。
テーマの大きさ ・テーマは小さければ小さいほどよい。森ではなく木を選べ。 たとえば、「日本の感情形容詞について」より「日本語の喜びを表す形容詞について」と絞ったほうがよい。特にレポートの場合、わずか3,4ページという厳しい制限があるため、なおさらテーマを絞ることに注意。 ・木一本から森全体が見えてくる論文がのぞましい。 小さな事柄を取り上げて観察することによって得られた知見が、より多くの事実を解釈できるほど、論文として価値がある。たとえば、柳田國男の「蝸牛考」は、カタツムリという昆虫の呼び名の全国における分布から、文化というものは、中心地から発生して周辺へ波状的に伝播し、周辺へいくほど、古い文化が残っていることを発見した名論文だ。
ゼロからの一歩 ・まずは、基本図書から。 どの分野でもかならず基本図書がある。たとえば、文法でいえば、益岡隆志『基礎日本語文法』寺村秀雄『日本語のシンタクスと意味』やその他のシリーズ物。そこから自分の興味を感じる部分を探す。 ・次に専門書へ。 たとえば、村木新次郎『日本語動詞の諸相』仁田義雄『日本語のモダリティ』など、研究の範囲をしぼる。 ・さらに関連論文へ。 たとえば、動詞の自他性質に興味があり、または、日本語のモダリティに興味があれば、関連の例文を探せばよい。これらの論文を熟読し、そこから自分の書くものの方向を決める。
先行文献の調査 ・テーマが決まると先行文献調査が第一歩。 いままでどんな研究があったか、これらの研究に対して自分は納得がいくかどうか、自分の考えていることは、すでに誰かによって論じられているかどうかを調査。 ・文献の種類 文献は大きく分けると、(1)専門書、2)研究誌、(3)大学の紀要の三つに分類できる。(1)は図書館にあるが古くて少ない。(2)は、『日本語学』『日本語教育』『言語』『日本語の研究』(旧『国語学』)、『日語学習与研究』(北京対外貿易大学)『日語研究』(商務館)などがある。(3)は本学にはほとんどない。 研究概要を知るには、『国語年鑑』などが便利。 ・文献調査の注意 文献は、なるべく新しいものから順に調べていったほうがよい。それによって芋づる式に過去の研究がある程度つかめるからだ。
論文の作成の実際(1) ・まず、テーマ。必要によって、サブテーマも。 たとえば、「類義語『思う』と『考える』の意味分析――類義関係にある語の多義記述試論」 ・次に所属氏名 例えば、チベット外国語大学 林 一郎 ・キーワード たとえば、「思う」、「考える」、類義語、基本的意味 弁別的特徴 キーワードは、自分独自の用語を避けること。 ・要旨 要旨は、日本語で300字前後、英語で200単語前後。 たとえば、本稿では、類義語である「思う」と「考える」の意味的類似点と相違点を明らかにする際、ぞれぞれの語の多義構造を記述することにより、二つの語の意味関係を一つの構造として捉えた。……
論文の作成の実際(2) ・1、はじめに この部分では、この論文で、なにをとりあげ、どのように記述するかを述べる。(以下実例) 本稿は、思考動詞の中でも類義関係にある「思う」「考える」を考察の対象とし、二つの語の意味的な類似点と相違点を明らかにすることを目的とするものである。…… 以下、本稿の構成について述べる。まず、2節では、両動詞の意味を明らかにすることを目的としている先行研究をとりあげ、それら先行研究について考察する。4節では、両動詞の多義語分析を行う。5節では本稿のまとめと今後の課題について述べる ・「はじめに」の部分を「問題提起」とか「問題の所在」と表現する場合もある。
論文の作成の実際(3) 2、これまでの研究 この部分では、主に、自分が取り上げようとする問題についての先行文献を紹介し、その問題点を指摘する。 (以下実例) 「思う」と「考える」の意味を考察対象としている先行研究には、森田(1989)、長嶋(1979)加藤(1997)杉本(1996)などがある。 森田(1989)は、本稿と同様、文型の違いを考慮してはいるが、意味に関しては一つにまとめ、「判断、決心、推量、願望、想像、回想、恋慕などの対象として、人・もの・事柄などを取上げ、それについて心を働かせる」(p.264)と記述している。しかし、この記述を見る限りでは、「思う」が表しうる意味を羅列しているに過ぎず、具体例における「思う」の意味を適切に説明できるとは思えない。 ・問題の性質によっては、先行研究だけを取上げ、その問題点を3の展開部で逐一検討することも可能だ。
論文の作成の実際(4) 3、展開部(1) • この部分は、論文のもっとも中心的な存在である。たとえば、次は、「『思う』と『考える』の意味分析」における展開部の最初の部分である。 • 3、「思う」と「考える」の基本的相違点 • 本節では、二つの相違点のうち、多義語としての意味のずれ以外のものを取り上げ、二つの語の基本的性質を明らかにする。3.1では、「思う」と「考える」の自己制御性について考える。続いて、3.2では、二つの動詞が要求する補語の違いを、名詞句のコト性と言う観点から考察する。 ・自分の意見と他人の意見を区別して書く。 他人の説を引用する際は、かならず注で、だれが、いつ、どのような文脈で、という情報を注の形で明記すべきである。他人の説を無断で引用することは、泥棒行為である。そうならないためにも、表現上それなりの工夫が必要。
論文の作成の実際(5) ・ 3、展開部(2) ・自分の主張だけでなく、その主張を読者に納得してもらうための裏づけが必要。 たとえば、形式名詞「の」が「こと」「もの」の上位概念であることを主張しようとする。そのためには、「桜という木」のように「AというB」と抽象化する。このパターンにおいて、Aは下位概念、Bは上位概念であることは、間違いのない事実。一方、「木という植物」も成立するとすれば、桜<木<植物、という階層的な構造をなし、後ろへ行くほど上位概念であることが分かる。 このように考えると、「働くということ(は)」「人間というもの(は)」が成立し、これらをすべて「働くというの(は)」「「人間というの(は)」に言い換えができれば、 働く・人間<こと・もの<の、という階層的構造から、「の」が「こと」「もの」より上位概念であることが裏付けられることになる。
論文の作成の実際(6) 4、おわりに ここでは、最後のまとめと今後の課題について述べる。(以下実例) 5、以上、本稿では、語の意味が使用される言語的環境の影響を受けるといった考えにもとづき、補語に名詞句を伴う場合に限定して、「思う」と「考える」の意味分析を試みた。その際、二つの語を多義として扱うことにより、二つの語の意味関係を一つの構造として捉えることができた。いくつかの語が類義関係にあり、かつそれぞれの語が多義語である場合、それらの語の単純な比較、もしくは一語のみをとりあげ、多義語として分析するよりも、二つの分析手法をあわせることによって、語の本質的な意味により迫れるのではないかと思われる。 また、本稿の分析の中で、語の意味的特徴が補語だけでなく構文のレベルにも現れていることが観察された。このような語の意味と構文との関係についてもさらに考察を深めていきたい。
論文の作成の実際(7) ・注のつけ方 注は、ページごとにつけるやり方と、まとめて文末に置くやり方がある。本文のほうは、文字の右肩上に小さなアラビア数字でつけること。WORDの標準書式に従うとよい。(以下実例) 4 「考える」の(知力を働かせる)という意味特徴は、長嶋(1979)の記述を受け継ぐものである。 ・参考文献のつけ方 加藤理忠(1997)「類義語の分析「思う」と「考える」ー「と節内に共起できる要素 を中心にしてー」『言葉の科学』10.Pp87-96。名古屋大学言語文化部 Pustejovsky,James(1991) The syntax of enent structure.Cognition41.Pp47-81 ・年号の換算 雑誌書物の発行年数は、アラビア数字で統一すること。たとえば、昭和28年は、1953年。 大正1=1912 昭和1=1926 平成1=1989 年号換算のサイト:http://www.mie.to/123/e.html
論文の作成の実際(8) • 論文の規模 • 学士論文は、8000字から10000字、修士卒業論文は、約30000字。学期末レポートの場合、WORDの標準書式で2、3枚程度。 一つの論文はひとつの問題だけしか解決しない。文章は、つねに単純明快を心がけること。論文独特のスタイルや表現は、他人の論文を熟読することによってそれになれること。 ・論文の書式 雑誌へ投稿する場合は、その雑誌の規則に従う。卒業論文の場合は、WORDの標準書式に従うこと。たとえば、書式は、標準、サイズは、すべて10.5ポ、フォントは、本文は明朝体、タイトルなどは、ゴシック。強調のため、複数フォントの使用や、一部表現を赤にしたり、斜体・太字にしたりしてはいけない。また、日本語で書く場合、中国語の記号を使ってはいけない。 ・引用文の扱い方 引用文は、ヒトマスさげて書く。斜体や太字などを使ってはいけない。なお、引用文は、例文も含めて、その出典を明記することを怠ってはならない。また、 たとえば、「山田(1990)は、つぎのように述べている。」のようにそれが引用文であることをはっきり断る必要がある。
例文の扱い方(9) • 作例か実例か やむを得ない場合以外は、なるべく実例を使う。そしてその出典を明記。たとえば、次は「ての」の例文。出典は著者名と書名だけでよい。 (13)ブランド名は来店してのお楽しみ。(山田和夫『楽しい夏休み』) • 他人の例文再掲の場合も出典明示 (14)就職活動を振り返っての感想は。(山田1998再掲) 出典を明記しないと、その例文が不適切な場合、その責任は、あなた自身に帰せられることになりかねない。 ・例文は、必ず通し番号で統一 例文は、最初から(1)(2)(3)のように番号をつけ、最後まで同じ番号で統一する。複数の例文を同じ番号で示す場合は、(1a) (1b)のように表記する。 ①②③は不可。
論文の作成の実際(10) インターネットの利用 インターネットの利用には、一、論文を探す。二、例文を探す。論文の中身は掲載されていない場合が多い。例文を探すには、Googleが便利。http://www.google.co.jp/ たとえば、「超」という字を三ヶ月以内という条件で検索すると、3920000例ヒット。ただ、信用度が低い。 また、「青空文庫」というネット図書館を利用するのもよい。またそれをもとにできた検索サイトもある。http://www.aozora.gr.jp/ http://www.tokuteicorpus.jp/team/jpling/kwic/ • コーパスの利用 コーパスは、パソコンによって処理可能な文字データの集まりのこと、研究のテーマによっては絶大な威力を発揮。本学教員自作のコーパスは条件付きなら利用可能。 謝辞 他人から資料の提供、論文についての助言、また助成金の援助があった場合、かならず謝辞をつけること。
論文の作成の実際(11) • 中国語による投稿論文作成の注意点 投稿したい雑誌の目次を調べ、その雑誌に載っている論文の大体の傾向を掴み、それにあわせて論文を書く。その雑誌に投稿規定があれば、よく読んだ上で、必ずそれに従う。 • 論文の規模その他 wordの標準書式で6千字から8千字までが適当。A4に印刷して(36行×40字)投稿。フロッピ提出やメールによる添付など要求する雑誌もある。日本語Wordで作成の場合、中国語は、GBコードで入力、本文は、中国語ではSinsumで5号字、日本語では、MS明朝で10.5ポイント。強調したいところがあれば傍線をつける。 • 要旨その他 雑誌によって、日本語(英語)の要旨を要求される。字数は、200字から400字までが普通。キーワードは4~6まで、検索の便を考えると、特殊な表現や自分独自の造語はさけること。 ・氏名所属 雑誌によってかなり細かい個人情報の提供をもとめるのもある。氏名、所属、職名、電話番号、メールアドレスなどを指示に従い、最後にまとめて書くことが多い。また匿名審査のため別紙掲載を要求する雑誌もある。
論文の作成の実際(12) • 書式について 句読点の使い方は、中国語のそれに従う。数字は、アラビア数字を薦めるが、必ず半角文字を使うこと。注は、ページごとにつける場合と、文章の最後にまとめてつける場合とがあるが、その雑誌の投稿規定に従うこと。 • 参考文献とその実例 最後にまとめて書く。掲載順序は、中国語、日本語、英語の文献の順。中国語(英語)の場合は、ピンイン(abcd)、日本語の場合は、五十音図順に。 刘耀武(2000)寺村语法与我国日语教学,《日语学习与研究》第1期 宮島達夫(1972)『国立国語研究所報告43 動詞の意味・用法の記述的研究』 秀英出版 Hudson,Richard(1975)The meaning of questions.Language51 ・その他 二重投稿は禁物。投稿して三ヶ月を経過してもなお返事がない場合は、自由に処分してよい。投稿は必ず手元にコピーを取っておくこと。 ・投稿可能な雑誌 (1)学会誌の『日本語学習与研究』(2)商務館年刊『日本研究』(3)その他各大学の紀要、たとえば、洛陽外大、黒竜江大、西安外大などが比較的日本語関連の論文を多く掲載可能。
論文の陥りやすい傾向(1)――論文指導の現場から――論文の陥りやすい傾向(1)――論文指導の現場から―― ・テーマは大きすぎる。 学士は修士で扱うべきテーマで、修士は博士で扱うべきテーマで書いてしまう。テーマが大きければ森全体を一通り眺めるだけで終わってしまい、細部の木について議論する余裕がなくなってしまう。 ・似たようなテーマが多い。 例えば「日本の女性言葉について」、他人と同じ研究をすると、先行研究を読むだけでも大変だし、自説の主張も容易ではない。 ・事実の羅列が多い。 事実を並べ立て、その事実を背後で支えている見えない部分について目が行かない。砂を掘って、金を見失うようなもの。 ・自分のオリジナリティがない。 関連の本を数冊読み、人の説を紹介し、ちょっと感想を述べる程度のものが多い。このようなものは、感想文ではあっても論文ではない。わずかでもいいから、自分のオリジナリティが不可欠。
論文の陥りやすい傾向(2)――論文指導の現場から――論文の陥りやすい傾向(2)――論文指導の現場から―― ・自分勝手な書き方が多い 自分では分かっているつもりでも、読者が理解してくれるとはかぎらない。ある記述に入る前に、必要最小限の前置きが必要、またいきなり表や、例文を突きつけられると、読者は戸惑ってしまう。読者への親切心やサービスを怠らぬこと。 ・専門用語はきちんと規定しないで使う。 専門用語は、混同を避けるために、その意味をきちんと規定してから使う。たとえば、「語構成」と「語の出自」の混同など。また他人の説や分類など、無条件で採用することには、つねに危険を伴うことをわすれないこと。 ・資料を取捨選択しないで使う。 せっかく苦労してあつめた資料やデータを捨てるに忍びず、なにもかも論文に入れてしまう。肝心の論文のポイントがかえってぼやけてしまう。取捨選択して必要なものだけ限定して使う。 ・注や参考文献をおろそかにする。 他人の説なら必ず「山田(1998)」のように明記すること。参考文献も文中に触れたものなら、すべて明示すること。また、引用はかならずその初出文献にさかのぼって引用。孫引き(他人からの再引用)はなるべくさけること。
論文の陥りやすい傾向(3)――論文指導の現場から――論文の陥りやすい傾向(3)――論文指導の現場から―― ・口語的な表現が多い。 例えば「というのは、~から。」「~明らかにされなくて、」デスマス体とダ体の混同など。書き方は他人の論文を精読することでそれに慣れる努力をすること。 ・他人の紹介に終始し、自分の議論がない。 他人の紹介がえんえんと続き、その内容について、自分は賛成するか反対するか、その理由はどのへんにあるか、自分はこのことについてどう思うかなど、議論の部分が少ない。 ・卒論を書く段階になってあわててテーマを探す。 普段から問題意識をもって勉強し、ごく当たり前のことにも批判精神をもってあたり、疑問に思うことについて、関連の文献を読む、といった準備段階が必要。 ・図表のいきなり提示 表を掲げる場合、まず、「表1 日本語外来語のジャンル別分布」のように、番号と見出しをつけること。そして、その表について必要最小限な説明をつけることをわすれぬこと。