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日本電力産業のパネルデータ分析: トランスログ費用関数と費用補正係数. 関西電力・元京都大学大学院 桑原 鉄也 京都大学経済学研究科 依田 高典. 電力産業自由化の流れ. 1. 論文の目的. 論点. Ⅰ. 電力産業は自然独占か。競争は有効に働くか。 Ⅱ. 自然独占の場合、どのように効率的経営を促す ようなメカニズム・デザインが必要か。. 推定された費用関数から規模・範囲の経済性の測定し、自然独占的であるかどうかを検証。 有効なヤードスティック競争を促すための費用補正係数を導出。. 2. 変数の定義とトランスログ費用関数. 変数の定義.
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日本電力産業のパネルデータ分析:トランスログ費用関数と費用補正係数日本電力産業のパネルデータ分析:トランスログ費用関数と費用補正係数 関西電力・元京都大学大学院 桑原 鉄也 京都大学経済学研究科 依田 高典
1.論文の目的 論点 Ⅰ.電力産業は自然独占か。競争は有効に働くか。Ⅱ.自然独占の場合、どのように効率的経営を促す ようなメカニズム・デザインが必要か。 推定された費用関数から規模・範囲の経済性の測定し、自然独占的であるかどうかを検証。 有効なヤードスティック競争を促すための費用補正係数を導出。
2.変数の定義とトランスログ費用関数 変数の定義 • ・産出物(発電部門と送配電部門の2財) • 発電部門産出物Y1≡発電電力量-所内電力量 • 送配電部門産出物Y2≡[Σ(電圧区分中位値×電圧区分こう長)]×契約口数 • ・投入生産要素とその価格(労働、燃料、資本の3財) • デフレーターとしては、資本・粗投資・減価償却費には日銀物価統計の資本財物価指数、 • その他にはGDPデフレーターを用いる。 • 人件費単価PL≡(人件費-委託検針・集金費)/期末正社員数 • 燃料費単価PF≡(汽力・内燃力・原子力発電燃料費合計)/重油換算熱消費量 • 資本Kt≡(1-δt)( Kt-1 - LANDt-1) +It+LANDt • δt≡t期の減価償却費/t-1期の期末設備簿価、LANDt = LANDt-1 + △LANDt、 • It≡Kt-Kt-1-△LANDt +t期の減価償却費 • 資本価格PK≡[WPI(rt+δ)(1-uz)] /(1-u) • WPI≡投資財価格指数、rt≡t期支払利息/t-1期期首社債および長期借入金残高、 • u≡法人税率、z≡資本財価格のうち減価償却費として控除される部分の割引現 • 在価値の割合 • ・その他 • 発電所諸設備利用率CU≡発電電力量/[発電所設備容量×8760]
長期トランスログ費用関数 推定する関数は、全ての生産要素を可変とした長期トランスロ グ費用関数とする。また、個別企業の特殊効果を表すダミー を導入した、固定効果(fixed effect)推定モデルとする。 lnC(PL,PF,PK,Y1,Y2,t,CU)=a0+a1t+a2t2+aculnCU+bLlnPL+bFlnPF+bKlnPK+(1/2)bLL(lnPL)2+ (1/2)bFF(lnPF)2+(1/2)bKK(lnPK)2+bLFlnPLlnPF+bLKlnPLlnPK+ bFKlnPFlnPK+c1lnY1+c2lnY2+(1/2)c11(lnY1)2+(1/2)c22(lnY2)2+ c12lnY1lnY2+dL1lnPLlnY1+dL2lnPLlnY2+dF1lnPFlnY1+ dF2lnPFlnY2+dK1lnPKlnY1+dK2lnPKlnY2+Σt=1…21eLtlnPLDLt+ Σt=1…21eFtlnPFDFt+Σt=1…21eKtlnPKDKt+Σi=1…8fiDi Di≡個別企業ダミー(九州電力を除く)
費用関数の一次同次の制約 トランスログ費用関数に生産要素価格の一次同次の制約を課す。 bL+bF+bK=1, bLL+bLF+bLK=0, bFF+bFL+bFK=0, bKK+bLK+bFK=0, dL1+ dF1+ dK1=0 ,dL2+ dF2+ dK2=0, eLt+eFt+eKt=0 for t=1…21
シェア方程式 シェパードのレンマ(Shephard’s lemma)より導かれた各生産 要素に関するシェア方程式。 SL=bL+bLLlnPL+(bLFlnPF+bLKlnPK)+dL1lnY1+dL2lnY2+ Σt=1…21eLtDLt SF=bF+bFFlnPF+(bLFlnPL+bFKlnPK)+dF1lnY1+dF2lnY2+ Σt=1…21eFtDFt SK=bK+bKKlnPK+(bLKlnPF+bFKlnPF)+dK1lnY1+dK2lnY2+ Σt=1…21eKtDKt シェアの和は1であり、3本のシェア方程式は独立でないため、3本のうちの1本は落とせる。
推定法 制約を課した長期トランスログ費用関数と、 2本のシェア方程式(ここでは労働と燃料)を 連立させて、Zellnerのみせかけ無相関推 定法(SUR)で推定する。
推定結果 符号、統計量など(OLSではないため注意が必要であるが)良好な結果と言える。
3.規模・範囲の経済性の検証 自然独占性 従来:電力会社は強大な固定設備を有する自然独 占産業である。 (電力市場は単一生産物市場であるという考え) 発電、送電、配電部門別の複数財市場の概念 自然独占性=費用劣加法性 ≒規模・範囲の経済性(検証要)
規模・範囲の経済性指標 2財の規模の経済性 ≡1-C(Y1,Y2)/[Y1(∂C(Y1,Y2)/∂Y1)+ Y2(∂C(Y1,Y2)/∂Y2)] 正ならば規模の経済性 1978/1988/1998全てのサンプルについて存在 各財iの規模の経済性 ≡1-∂lnYi/∂lnC(Y1,Y2) 正ならばi財に関して規模の経済性 1978/1988/1998全てのサンプルについて存在 範囲の経済性 ≡∂2C(Y1,Y2)/(∂Y1∂Y2) 負ならば範囲の経済性 1978/1988/1998全てのサンプルについて存在
規模・範囲の経済性測定結果 電力産業は自然独占的な産業であると考えられる
4.費用補正係数の導出 ヤードスティック競争 • 自然独占的でコンテスタブルでないような産業に間接的に競争を発揮させるインセンティブ規制がヤードスティック競争である。 • ヤードスティック競争を行うためには、個別企業間で費用の同質性が必要である。 • しかし、実際の費用は各企業により異なる。 費用補正係数による均質化
標準費用・平均費用の導出 • j社の費用関数をCj、個別特殊効果をKj、標準費用関数をc0とおけば、Cj(Y1,Y2)=Kj+ c0(Y1,Y2) • 産出量Y=(Y1,Y2)をデータ平均で標準化(Y1/μY1,Y2/μY2)して、その数値のユークリッド距離=[(Y1/μY1)2+(Y2/μY2)2]1/2を総産出量||Y||と定義 • 各企業の費用関数Cj(Y1,Y2)を総産出量||Yj||で除したものを平均費用A Cjと定義
費用補正係数(1) 企業Bの個別特殊効果の費用補正係数 企業Bの規模・範囲の経済性効果の費用補正係数 企業Bの総合費用補正係数 ※これらの費用補正係数が大きいほど、より低廉な費用で生産を 行っていることを表す。
× AC0B ACB(YB) ACB × AC1B ACA(YA) ACA(YB) ACA ||YB||||μY||||YA|| 費用補正係数(2)
5.補足的解説 東京電力の事例(1) • 2財の規模の経済性 1978年0.42 → 1988年0.39 → 1998年0.39 • 発電の規模の経済性 1978年0.53 → 1988年0.50 → 1998年0.49 • 送配電の規模の経済性 1978年0.89 → 1988年0.90 → 1998年0.90 • 範囲の経済性 1978年-2.42E-18→1988年-1.48E-18→1998年-9.13E-17
東京電力の事例(2) • α(個別効果)係数 0.62:一定 • β(規模範囲)係数 1978年2.52 → 1988年2.73 → 1998年2.60 • γ(総合)係数 1978年1.57 → 1988年1.70 → 1998年1.62 • 加重値を用いた緩和措置も必要?
6.まとめ • 費用関数の推定結果 • 電力産業は自然独占的な産業である。 • 導出した費用補正係数による3つの効果 • ヤードスティック効率化 • 費用推定値を用いた費用削減努力の評価 • 最適操業規模の追求(コンテスタブル市場を想定した場合)