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認知心理学 概念とカテゴリー. 概念とカテゴリー. カテゴリー (Category) とは何か 広義 → 事例の集合として人が見なすもの 例 赤いものの集まり 災害時に持ち出すものの集まり 狭義 → ことばの指示対象の集まり 例 イス、テーブル、イヌ、ネコ、家具、乗り物 概念 (Concept) とは何か 広義 → 知識全般 狭義 → カテゴリーの内包. そもそも何のためにカテゴリーが 必要なのか?. カテゴリーがなかったらどうなるのか?. 今までの経験を今直面している問題に生かすことができなくなる
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概念とカテゴリー カテゴリー(Category)とは何か • 広義→事例の集合として人が見なすもの 例 赤いものの集まり 災害時に持ち出すものの集まり • 狭義→ことばの指示対象の集まり 例 イス、テーブル、イヌ、ネコ、家具、乗り物 概念(Concept)とは何か • 広義→知識全般 • 狭義→カテゴリーの内包
そもそも何のためにカテゴリーが必要なのか?そもそも何のためにカテゴリーが必要なのか?
カテゴリーがなかったらどうなるのか? • 今までの経験を今直面している問題に生かすことができなくなる • 例えば精神科医師が、すべての患者さんは個々に独自の症例をもっているので、カテゴリー分けはできない、と主張したら… • 今治療している患者さんに治療法Aと治療法Bのどちらがよいか、どのような基準で判断できるのか?
カテゴリーはどのように機能するのか • 経験を意味あるチャンクにグループ分けすることにより、我々の思考を整理する。そのことにより、 • 遭遇するすべての事象、すべての事物についてひとつひとつ記憶する必要がなくなる • さまざまな現象に説明を与える • これから起こりうることに予測を与える
記憶の経済性 • 抽象化の最適なレベルで事物をひとまとめにして、それらの事物の間の共通性を属性として記憶 • 「リンゴ」という概念(内包)の表象には特定のリンゴについている傷などは無関連な情報として排除
推論・学習を容易にする • カテゴリーに属する事物には属性が共有されると想定し、そのことにより、未知の事例についてもその属性を推論できる →概念獲得には非常に重要 例 「ヘビは血が冷たい」 「ヘビとトカゲは同じカテゴリー」 →「トカゲの血も冷たい」と推論
人の心の中にカテゴリーは本当に存在しているのか人の心の中にカテゴリーは本当に存在しているのか 1 人は類似のものをまとめてカテゴリーと見なし、それに言語的なラベル(ことば)をつける 2 カテゴリーは互いに関連づけられ、組織化されている
1の証拠 • 子どもは教えられなくても自発的に類似のもの同士をひとまとめにして扱う (Eimus & Quinn, 1994) • 子どもは未知の事物にラベルがつけられると、そのラベルはその時にラベルづけられた特定の事物に限定されるものではなく、類似の事物にも般用されると想定し、自発的にラベルを他の類似の事物に般用する (Imai, 1997)
2に対する証拠 • 語彙判断課題、正誤判定課題におけるプライミング効果 継時的に提示される2語の間に意味的関連性がある場合には、そうでない場合に比べて2番目の語の判断が速くなる 例 doctor - nurse < butter - nurse
概念と誤概念 • カテゴリー化することで起こりうる問題点 • カテゴリー成員に共通する特徴にばかり目がいってしまい、個人差、個体差、個別性を見逃してしまいがち • 偏見の源になってしまう可能性がある
線の長さを推測するように言われると、実験群の被験者は同じグループ内の線の長さを実際の長さよりも近く考える線の長さを推測するように言われると、実験群の被験者は同じグループ内の線の長さを実際の長さよりも近く考える
私たちは「どのように」カテゴリーを つくっているのか
カテゴリーは類似したもの同士の 集まりである
卵が(世界)先かニワトリ(私たちの心)が先か卵が(世界)先かニワトリ(私たちの心)が先か • 世界の事物が自然なクラスターを作っているから私たちがそれを自然な集まりとしてカテゴリー化するのか • 私たちが「似ている」と思うからカテゴリーをつくるのか
そもそも「似ている」という感覚は どこからくるのか?
カテゴリーの表象形態に関する主要理論 • 定義的属性集合理論(defining-Attributes theory) • 典型(プロトタイプ)理論(Prototype theory) • 説明ベース理論 (Explanation-based theory/Theory-based theory)
定義的属性理論(古典的カテゴリー論) • 概念(カテゴリーの内包)は概念を構築する最小の単位である意味素性(semanticprimitives)によって構成される • 類似性は意味素性の共通性 • 概念(内包)はある事例がそのカテゴリーの外延であるか否かを決定するために必要にして十分な意味素性の集合である→共通の意味素性をもつものが同じカテゴリーのメンバー
以下の概念(ことばの意味)を定義しなさい • 素数 • 正方形 • トラ • レモン • ゲーム • 親切
定義的属性集合理論の特徴 • それぞれのカテゴリーの成員性(外延)は内包によってはっきりと決定される つまり、カテゴリーとカテゴリーの間には明白な境界がある • 例 「三角形」と「四角形」の間に重複はない
定義的属性集合理論の特徴(2) • カテゴリーの成員性は全て内包によって明らかに決定される 従って、成員間に当該カテゴリーにとってよりよい成員かそうでないかという区別はない
定義性属性集合理論の特徴(3) • 概念が階層的に組織化されている場合、上位概念を決定する属性集合はすべてそれよりも下位にある概念の属性集合に受け継がれる • 例 正三角形は三角形の属性の集合プラス「3辺がすべて等しい」属性からなる
定義的属性集合理論の問題点(1) • 外延を例外なく明白に決定できる意味素性の集合をつくることは、多くの概念にとっては不可能 多くの概念→家族的類似性(family resemblance)を持ち、すべての成員に共通な属性を抽出しようとすると非常に抽象的な空虚なものになってしまう
定義的属性集合理論の問題点(2) • 多くのカテゴリーの境界は曖昧で、カテゴリー成員間に典型性における違いが認められる イス、テーブル⋯「家具」カテゴリーの成員 ではテレビは? 冷蔵庫は? 絨毯は?
家族的類似性(Wittgenstein, 1958) • 例えば「ゲーム」という概念を例にとる 野球、サッカー、ピンポン、レスリング、ボクシ ング、チェス、将棋、トランプ、碁、スロットマ シーン、ルーレット、かごめかごめ、だるまさん が転んだ、etc. →これらの間に共通の定義的属性はあるか? • 一つ一つの「ゲーム」は他の「ゲーム」とある要素で少しずつ似ているがすべてのゲームに共通の要素はほとんどない
ロッシュの典型性理論(1) • 概念は典型(プロトタイプ)を中心とした連続的構造(gradient structure)を持つ 概念のプロトタイプは概念に特徴的な属性を多数持つ事例、あるいは概念の最も代表的な事例と考える • カテゴリー成員を決定するための必要十分条件は必要ない 実際、カテゴリー成員は多くの場合、カテゴリーに特徴的ではあるが必要ではない属性によって決定される
ロッシュの典型性理論(2) • カテゴリーの境界は曖昧である また、一つの事例が同レベルで隣接する二つのカテゴリーに同時に属することも可能 • 例 トマト→果物、野菜 • カテゴリー成員の間に典型性において相違が見られる • カテゴリー成員はカテゴリーのプロトタイプに対する類似度によって決定される
プロトタイプ理論に対する証拠(1) 多くのカテゴリーにおいて典型的事例、非典型的事例が存在することが確認されている →典型性効果(Typicality effects) • カテゴリー成員を自由に列挙→典型的な成員はリストの最初に現れ、ほとんどの被験者によって書き出される 非典型的な事例はリストの後の方で現れる傾向があり、また被験者によってばらつきがある
プロトタイプ理論に対する証拠(2) • 正誤判定判断(カナリアは鳥ですか? ペンギンは鳥ですか?) →典型的なメンバーは非典型的なメンバーよりも判断が速い • 特定のカテゴリーの「絵」を描かせる(鳥の絵を描いて下さい、乗り物の絵を描いて下さい) →典型的な成員の絵を描く
プロトタイプ理論における階層構造(1) ロッシュ→概念階層には抽象化・一般化の3つのレベルがある • 上位レベル(superordinate level) • 基礎レベル(basic level) • 下位レベル(subordinate level)
プロトタイプ理論における階層構造(2) 基礎レベル • カテゴリーのメンバー間で識別できる最大限の類似性 • 全般的な形状の類似性 • 主要な部分の共有 • 機能の類似性 • 隣接するカテゴリーとの間の区別が容易 • 上位レベル下位レベルに比べ最も多くの属性が列挙される
プロトタイプ理論における階層構造(3) 上位レベル • 抽象性が高い→カテゴリー成員に共通のイメージが作りにくい 下位レベル • 隣接するカテゴリー同士の弁別が難しい 例 安楽イス 対 揺りイス ビーグル 対 ダックスフント
基礎レベル(1) • 経済性と必要な情報量のバランスが最もよいレベル • ある物体を見せられたとき、通常人は基礎レベルの名前を言う • 例 「リンゴ」を見せられたとき、「果物」とか 「ゴールデンデリシャス」と言わず「リンゴ」 と答える • 異文化間で普遍性が高い
基礎レベル(2) • 科学的な分類法ともっとも一致度が高い • 既有知識、熟達度に関わらず、もっとも顕現性が高い • 子どもがもっとも先に覚えることば →基礎レベルのカテゴリー名
プロトタイプ理論の問題点(1) • 人はカテゴリーの外延決定に、時として特徴的な属性を無視することがある 例 黒いシマのないトラ→トラから産まれたということを知っていればトラと見なす
プロトタイプ理論の問題点(2) • プロトタイプからの類似度では、この場合のカテゴリー成員判断は説明できない場合がある 直径3センチの丸いなんだか分からないもの ピザよりも25セントコインに、より似ている しかしこの丸い物体は25セントコインかピザか?→ピザ • ピザはいろいろな種類の大きさがあるが、コインの大きさは不変であることを人は知っている
客観的類似性はありえるのか: • 類似性は文脈によって変化する • イギリス、フランス、アメリカのうちで似ている二つはどれか?
客観的類似性はありえるのか(2) • 「防災グッズ」「キャンプ用品」などのカテゴリーの成員は似ているか?
類似性を決めるには制約が必要 • 制約はどこから生まれるか →人の心の中の説明理論
説明ベース理論 • 概念は属性を持つ しかし、属性は個々に独立して存在するのではなく、ある納得できる理論的枠組みの中で違いに関係づけられている 例 鳥の特徴的属性(羽、羽毛、軽い骨格) は「飛ぶ」という機能のために互いに協調的に存在する
説明ベース理論(2) • 概念は常に記憶に貯蔵されたままの静的な存在であるわけではない • 背景知識と属性が相互作用し、既存の概念が修正されたり、新しい概念が作り出されることがしばしばある →Ripsのコインとピザ実験