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和田 勝

生物学. 第 20 回 生物多様性を考える. 和田 勝. お酒に強い. あなたは、お酒に強いですか? お酒に強いってどういうことでしょうか。体質?訓練?. お酒に酔うのはアルコール(エタノール C 2 H 5 OH )の脳に対する作用です。. エタノールは肝臓でアセトアルデヒドに代謝され、次いで酢酸になり、最後は水と任酸化炭素になります。. お酒に強い. アセトアルデヒドは毒性が強く、頭痛や吐き気の原因となります(二日酔い)。. このアセトアルデヒドの代謝を行っている酵素がアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ( ALDH )です(肝臓で)。.

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Presentation Transcript


  1. 生物学 第20回 生物多様性を考える 和田 勝

  2. お酒に強い あなたは、お酒に強いですか? お酒に強いってどういうことでしょうか。体質?訓練? お酒に酔うのはアルコール(エタノールC2H5OH)の脳に対する作用です。 エタノールは肝臓でアセトアルデヒドに代謝され、次いで酢酸になり、最後は水と任酸化炭素になります。

  3. お酒に強い アセトアルデヒドは毒性が強く、頭痛や吐き気の原因となります(二日酔い)。 このアセトアルデヒドの代謝を行っている酵素がアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)です(肝臓で)。 エタノール → アセトアルデヒド → 酢酸 → 二酸化         ↑             ↑       炭素と水       アルコール    アセトアルデヒド         脱水素酵素    脱水素酵素

  4. お酒に強い ALDHは酵素タンパク質ですから、当然遺伝子があります。 ALDHをコードする遺伝子は12番目の染色体の長腕(12q24.12)にあり、翻訳されると517個のアミノ酸からなるタンパク質がつくられます。

  5. お酒に強い この酵素タンパク質の487番目のアミノ酸はグルタミン酸、コドンはGAAです。 先頭のGが突然変異を起こしてAになるとコドンはAAAとなり、リシンを意味し、その結果、タンパク質は酵素活性を失ってしまいます。

  6. お酒に強い したがって、相同染色体の遺伝子の組み合わせがAAA/AAAだとお酒は受け付けない、GAA/AAAだとお酒に弱いことになります。もちろん、GAA/GAAだとお酒に強くなります。 コーカソイドとネグロイドはすべてGAA/GAAですが、モンゴロイドではおよそ45%がGAA/AAA、5%がAAA/AAAです。

  7. お酒に強い したがって、相同染色体の遺伝子の組み合わせがAAA/AAAだとお酒は受け付けない、GAA/AAAだとお酒に弱いことになります。もちろん、GAA/GAAだとお酒に強くなります。 コーカソイドとネグロイドはすべてGAA/GAAですが、モンゴロイドではおよそ45%がGAA/AAA、5%がAAA/AAAです。

  8. お酒に強い 民族による遺伝子頻度の違い

  9. お酒に強い GAA/GAAを持つ日本人の地域差。 縄文人集団に弥生人集団が入り込んだことを示しているのだろう。

  10. 牛乳飲んでもゴロゴロしない 牛乳をがぶ飲みすると、おなかがゴロゴロする人はいますか? 牛乳中のラクトース(乳糖)という二糖類を分解する酵素ラクターゼ(小腸へ分泌される)が十分でないためです。 ラクトース → グルコース+ガラクトース → 小腸で         ↑                     吸収      ラクターゼ    

  11. 牛乳飲んでもゴロゴロしない 分解されないラクトースは小腸で吸収されずに大腸へたどり着き、そこで大腸内の浸透圧を上げてしまうために下痢が起こり、ラクトースを分解できる細菌が大腸内にいるために代謝されてガスが発生します。こうしておなかがゴロゴロするのです。

  12. 牛乳飲んでもゴロゴロしない 乳児の時は、ラクトースは栄養源として重要なので、誰でもラクターゼは作られていますが、ふつうは成長に伴って次第に発現量が減っていきます。そのため成人になると、ラクトースを分解する能力は低下して、適量の牛乳を飲む分には影響がないのですが、たくさん飲むとおなかがゴロゴロするのです。

  13. 牛乳飲んでもゴロゴロしない ところがヨーロッパ人はいくら飲んでも平気です。これは大人になってもラクターゼの発現が減少しないためで、人種による差があることになります。これも一種の体質であすね。

  14. 牛乳飲んでもゴロゴロしない ラクターゼの発現量が維持されるのは、ラクターゼをコードする遺伝子が変異したのではなく、ラクターゼ遺伝子の上流にある転写調節に関与する遺伝子の突然変異によります。 2つの遺伝子は2番染色体の長腕にあり(2q21.3)、上流の遺伝子の変異によって下流にあるラクターゼの発現が維持されるのです。

  15. 牛乳飲んでもゴロゴロしない ヒトの歴史の中で、牧畜によって家畜の乳を利用できるようになってから、この遺伝子に突然変異がおこり、有利な突然変異として個体群内に広がっていったと考えられます。そのため、ヨーロッパ人では95%の人がこの変異を持っているが、東アジア人は10%です。 この遺伝子の変異も一塩基置換です。

  16. 牛乳飲んでもゴロゴロしない 乳糖不耐性の地域・民族による違い

  17. コーカソイドはなぜ肌が白い? 以前にアルビニズムの話をしました。皮膚の上皮組織の底にある黒色素細胞がメラニン顆粒を作っていて、その量等によって皮膚の色を決めています。

  18. コーカソイドはなぜ肌が白い? 紫外線の害を防ぐためには、メラニン顆粒の生成は必要なことでした。少なくともアフリカでは。 しかしながら、紫外線はビタミンDの生成に欠かすことはできません。アフリカから出て、北へ分布を広げた現生人類の祖先にとっては日光の量が少ないために、黒い皮膚ではビタミンDの必要量を精製するこてゃできませんでした。

  19. コーカソイドはなぜ肌が白い? そのため、メラニン形成が低い個体群が有利だったと考えられます。 少なくとも、メラニン生成に関与する、2つの遺伝子に突然変異が起こったと考えられています。

  20. コーカソイドはなぜ肌が白い? そのうちのひとつの頻度を示す。黒は正常、白は一塩基変異によるミスセンス突然変異

  21. アトピーは嫌だ アトピー性の体質を持った人はいますか? 茶のしずく石鹸による小麦アレルギーが最近、話題になりました。石鹸に含ませた小麦タンパク質の加水分解物がアレルゲンになり、あとで食物から摂取した小麦タンパク質によってアレルギー反応が生じたのです。

  22. アトピーは嫌だ この石鹸を使ったすべての人に、このアレルギーが発生したわけではありません。 どうやら一部の人で、石鹸を使うことにより小麦タンパク質の加水分解物が皮膚から入って、抗原として認識されて抗体がつくられたようです。

  23. アトピーは嫌だ アトピー性皮膚炎の場合も、皮膚からアレルゲンが体内に入るためらしいことが、わかってきました。 最近の研究によって、皮膚がバリアーとしてとても重要なはたらきをしていることが分かってきました。

  24. アトピーは嫌だ

  25. アトピーは嫌だ アトピー性皮膚炎のヒトは、このフィラグリンというタンパク質の遺伝子に突然変異を起こしていることが分かったのです。 そのため、表皮のケラチン細胞ではケラチン繊維の束がじゅうぶんつくられず、保水性が退化するので乾燥してはがれやすくなってしまい、アレルゲンが侵入しやすくなるのです。

  26. 再び突然変異 DNAは複製の過程の誤りを正し、損傷を修復して、DNAを次の世代に伝えてきました。 しかしながら、DNAの誤りがまったく伝わらなかったわけではありません。どこかで変異がおこり、それが伝えられたからこそ、現在、見られるようにさまざまな生物が地球上に生息しているのです。

  27. 変異は一定の割合で、、 DNAの塩基配列を比較することにより、DNAの塩基の変異は一定の割合で起こっていることがわかっています。 生殖細胞の複製の過程で起こるミスマッチが訂正されなかったり、突然変異が起こったのでしょう。

  28. 変異の固定 ダーウィンは遺伝の実体も遺伝子の存在も知らなかったが、この変異がどのように世代から世代に伝えられていくかを示しました。 ある変異が、生息している環境に適応していれば子孫を残せる(自然選択)という考え方です。すなわち、、

  29. 自然選択により変異が伝わる 1)生物の集団に変異(variations)が  存在すること 2)変異は親から子に伝わること 3)環境の収容力が繁殖力よりも小さ  いこと 4)その環境のもとでは、変異に応じて  次世代に子を残す期待値に差が生  じること

  30. 変異の固定 個体群が、何らかの理由で分かれて、両者の個体間で自由な交配ができなくなる(隔離)。 環境に適応した変異が個体群の中で広がっていく。 元の個体群とは異なる表現型を持った種ができる(種分化)。

  31. 個体群内の変異 肌の色が3つの遺伝子によって決まると仮定すると

  32. 個体群内の変異 ヒトの場合、背の高さ、体重、皮膚や髪の毛の色など複数の遺伝子がかかわります。

  33. 変異、自然選択、進化 ○変異はDNAのレベルで起こる ○自然選択は個体のレベルで起こる。  決して遺伝子のレベルでは起こらない ○進化は個体群で起こる。決して個体  のレベルでは起こらない

  34. 集団遺伝学 そこで個体群(集団、population)を対象とした、集団遺伝学の考えが重要になります。 集団遺伝学では、次のように考えます。

  35. 集団遺伝学 ○個体群を構成している各個体は、す  べての遺伝子座について、全く同一な  対立遺伝子(allele)を持つのではない ○個体群を構成する各個体の持ってい  るすべての遺伝子座の対立遺伝子を  合わせたものを、その個体群の遺伝  子プール(gene pool)と呼ぶ

  36. ○遺伝子プール内の変異は、それぞれ  の遺伝子座に対応する対立遺伝子の  相対的な比率で表すことができる ○これを、対立遺伝子頻度あるいは単  に遺伝子頻度(gene frequency)と呼ん  でいる。 この遺伝子頻度を取り扱うのが集団遺伝学です。

  37. ハーディ-・ワインベルグの法則 「一定の理想的な状況のもとでは、有性生殖をおこなう集団における対立遺伝子の頻度は、一世代で一定となり、その後、世代を越えて一定に保たれる。また、遺伝子型の頻度は、この遺伝子型を構成する遺伝子の頻度の積で表すことができる。」 1908年に標記2人が独立に発見しました。

  38. 成立の条件 1)新しい対立遺伝子が生じない 2)離脱・流入個体がなく、新しい対立遺  伝子が入ることも、出て行くこともない 3)個体群は十分大きく、頻度の有意な  変化が偶然におこることはない 4)すべての個体が繁殖可能になるまで  生き残って同等に繁殖する 5)有性生殖によってランダムに混ぜ合  わせられる

  39. 具体的に ある個体群の遺伝子プールが次のような対立遺伝子を持つとすると、 A と a 遺伝子型は AA、Aa、aa となります。

  40. 具体的に それぞれの遺伝子型を持つ個体が同数いるとすると、 AA=Aa=aa=0.3333 したがってAとaの頻度は A=a=0.5 これが親の代。それではF1は?

  41. 組み合わせは9通り AA x AA AA x Aa AA x aa Aa  x AA Aa x Aa Aa x aa aa x AA aa x Aa aa x aa

  42. F1世代は? AAx AA AAx Aa AAx aa Aa x AA Aa x Aa Aa x aa aa x AA aa x Aa aa x aa AAxAA 4 x AA 雄の配偶子 雌の配偶子

  43. F1世代は? AAx AA AAx Aa AAx aa Aa x AA Aa x Aa Aa x aa aa x AA aa x Aa aa x aa 4 x AA 2 x AA 2 x Aa 4 x Aa 2 x AA 2 x Aa 1 x AA 2 x Aa 1 x aa 2 x Aa 2 x aa 4 x Aa 2 x Aa 2 x aa 4 x aa

  44. 4 x AA 2 x AA 2 x AA 4 x Aa 2 x AA 2 x Aa 1 x AA 2 x Aa 1 x aa 2 x Aa 2 x aa 4 x Aa 2 x Aa 2 x aa 4 x aa F1世代は? 合計 9 x AA 18 x Aa 9 x aa

  45. F1世代は? 遺伝子型の比は AA:Aa:aa=9:18:9=1:2:1 表現型の比は (AA+Aa):aa=3:1 遺伝子頻度はA=9x2+9、 a=9+9x2でともに27で頻度は0.5

  46. F2世代は? AAx AAAa x AA AAx AaAa x Aa AAx Aa Aa x Aa AAx aa Aa x aa Aa x AA aa x AA Aa x Aa aa x Aa Aa x Aa aa x Aa Aa x aa aa x aa の16通りの組み合わせ

  47. F2世代は? AAAaaa AAx AA AAx Aa AAx Aa AAx aa Aa x AA Aa x Aa Aa x Aa Aa x aa Aa x AA Aa x Aa Aa x Aa Aa x aa aa x AA aa x Aa aa x Aa aa x aa • 4 • 2 2 • 2 2 • 4 • 2 2 • 1 2 1 • 2 1 • 2 2 • 2 2 • 1 2 1 • 1 2 1 • 2 2 • 4 • 2 2 • 2 2 • 4

  48. 合計 16 x AA 32 x Aa 16 x aa F2世代は? 遺伝子型の比は AA:Aa:aa=16:32:16=1:2:1 表現型の比は (AA+Aa):aa=3:1 遺伝子頻度はA=16x2+16、 a=16+16x2でともに48で頻度は0.5

  49. ハーディ-・ワインベルグの法則 「一定の理想的な状況のもとでは、有性生殖をおこなう集団における対立遺伝子の頻度は、一世代で一定となり、その後、世代を越えて一定に保たれる。」 「また、遺伝子型の頻度は、この遺伝子型を構成する遺伝子の頻度の積で表すことができる。」

  50. ハーディ-・ワインベルグの法則 (AA+2Aa):aa=0.75:0.25 となる。

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