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「抗菌薬 使用の新しい考え方 」 根室獣医師会 (平成 22 年 12 月 2 日) 小久江栄一 ekokue@kzc.biglobe.ne.jp. Ⅰ . PK/PD パラメータ Ⅱ . MSW 理論 Ⅲ .抗菌剤使用全般. ・ 耐性菌を出さずに感染症を治療する抗菌薬の 使い方が 適正使用 である。 ・ 適正使用にかかわる 重要 な 提案が 2 つ 出された 。 PK/PD パラメーター MSW (耐性突然変異株 選抜 濃度 幅 ). Ⅰ . PK/PD パラメータ. 1.抗菌薬の薬力学( PD ) MIC は試験管内の抗菌活性パラメーター。
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「抗菌薬使用の新しい考え方」根室獣医師会(平成22年12月2日)小久江栄一 ekokue@kzc.biglobe.ne.jp Ⅰ.PK/PDパラメータ Ⅱ.MSW理論 Ⅲ.抗菌剤使用全般
・耐性菌を出さずに感染症を治療する抗菌薬の 使い方が適正使用である。・適正使用にかかわる重要な提案が2つ出された。PK/PDパラメーターMSW(耐性突然変異株選抜濃度幅)・耐性菌を出さずに感染症を治療する抗菌薬の 使い方が適正使用である。・適正使用にかかわる重要な提案が2つ出された。PK/PDパラメーターMSW(耐性突然変異株選抜濃度幅)
Ⅰ.PK/PDパラメータ 1.抗菌薬の薬力学(PD) MICは試験管内の抗菌活性パラメーター。 試験管内の特定な菌量(105cfu/mL)と 特定な培養条件でだけでしか通用しない。
感染症時の菌数濃度(cfu/mL) 菌名 菌数濃度 感染症名・採材部位 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー H. influenzae4.5 × 103~細菌性脳脊髄炎 (小児) 3× 108脳室液 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー H. influenzae, 107以上 呼吸器感染症 (成人) S. pneumonia, 他 気管分泌液 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー H. influenzae,2 × 102~細菌性脳脊髄炎 (小児) N. meninngitidis, 他 4 × 109 脳脊髄液 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・感染を起こしている病態部位の環境と菌数は、・感染を起こしている病態部位の環境と菌数は、 時々刻々変わる。 ・抗菌薬は殺菌性にも静菌性抗菌薬にも、 非抗菌性物質にもなる。 ・MICは抗菌薬の性質の一端を現わしているが、 そのまま臨床効果として反映されると 考えない方がよい。
2.臨床現場での活性指標はPK/PDパラメーター2.臨床現場での活性指標はPK/PDパラメーター Cmax/MIC,AUC/MIC 早く組織濃度が高まるのが理想 濃度依存型抗菌薬 T > MIC(time above MIC) 抗菌薬濃度絶えずMIC以上であることが理想 時間依存型抗菌薬
濃度依存型 フルオロキノロン系、アミノ配糖体系、 メトロニダゾール、テトラサイクリン系、コリスチン、 マクロライド系(アジスロマイシン, クラリスロマイシン) 時間依存型 ペニシリン系、セファロスポリン系、フロルフェニコール、 強化サルファ剤、リンコサミド系、ツラスロマイシン、 マクロライド系(チルミコシン, タイロシン, アイブロシン)
3)抗菌薬の性格に合った投与法 濃度依存型:注射投与、絶水後の飲水投与、 空腹時に少量の餌と共に投与 (血中/組織濃度が高まるように) 時間依存型:長期作用型注射剤、頻回経口投与、 飼料添加投与、飲水投与 (絶えずMIC以上の血中/組織濃度を維持するように)
・食用動物には濃度依存性抗菌薬が使いやすい。・食用動物には濃度依存性抗菌薬が使いやすい。 ・成牛に時間依存性抗菌薬を使うには、 それなりの製剤上の工夫が必要になる。
まとめ ・MICは試験管内の薬効指標。 臨床現場での指標はPK/PDパラメータ。 ・濃度依存性か時間依存型かで投与法を変える。 生産者の環境に応じた抗菌薬の選択。 ・一次選択薬、二次選択薬の分類は再考が必要。
Ⅱ. MSW理論---Mutant Selection Window---(耐性変異株選抜域) 「中途半端な濃度で抗菌薬を暴露すれば、すぐに耐性菌が発現してその抗菌薬は使えなくなる」 エリック・フレミング(1946年) 中途半端な濃度とは???
1.MPC(耐性変異株抑制濃度) ・MIC:菌量濃度105cfu ⁄ mLを、特定の培養条件で 測定したときの薬力学指標。 ・菌量濃度が増え培地条件が異なると、 MICは抗菌活性の代表値になれない。 ・MPC(Mutant Preventive Concentration)の登場。
菌量が多いとMICでは菌を処理出来ない(in vitro) 105cfu/mL107cfu/mL
2.MSW (突然変異株選抜濃度域) MSWで感染症を治療すると、 感受性菌が除去された分、 耐性変異株の増殖が促進される。 高度耐性菌発現
・MPCとMICの幅がMSW。 ・MSWが狭いほど優れた抗菌薬である。 (耐性化され難いからMSWが狭い) ・将来、MSWが広い抗菌薬は配合使用か???
3.MSW理論の証明 ・MSW理論の実験証明は多数あり、 全ての抗菌薬に通用する理論と思われる。 MPCは耐性突然変異を阻止する濃度ではなく、 耐性突然変異株の増殖を阻止する濃度
4.各種抗菌薬のMSW ・MSW(MPCーMIC)の測定が 進み、かなりの抗菌薬と病原菌 でのMSWが分かってきた。 ・MSWが小さい:耐性化されにくい証拠。
まとめ 1)中途半端な濃度(フレミング)がMSW。 我々は今まで、適正使用とか慎重使用と称して、 耐性菌の選抜に務めてきたらしい。 2)今後は、少なくとも同系統の抗菌薬群では、 MICが低くMSWが狭い抗菌薬を選択すべきである。 3)MSWが広い抗菌薬は、将来は配合で使用されるよう になるかもしれない。
Ⅲ.抗菌剤使用全般---とくに申し上げたいこと---Ⅲ.抗菌剤使用全般---とくに申し上げたいこと--- 1.理屈に合った抗菌薬の使用 ・濃度依存性か時間依存性かにより使い分けする ・濃度依存性か時間依存型かで投与法を選択。 生産者が投薬遵守しやすい投与法の抗菌薬。 (一次選択薬、二次選択薬の分類は再考が必要)
2.承認用量の上限を使う ・抗菌薬療法のポイントは"hitting hard and hitting fast“ しっかり標的を捉え、十分な量の抗菌薬を病原菌に 暴露して、短期間で感染症治療を完了すべし。 ・十分な量がどれほどのものかは、今後の科学的な 検証が必要。現状では承認用量の上限。 ・中途半端な用量の投与は耐性菌株を選抜を助長する。
3.抗菌薬を無駄遣いしない ・感染症を起こさない:飼養管理とワクチン ・ウイルス疾患や寄生虫性感染症や真菌症などに 抗菌薬を使わない。 ・下痢時の抗菌薬使用は無駄使い???。 細菌が原因の下痢かどうかを判定する。 ---グラム染色の重要性---
細菌が関係している下痢かどうか? 糞便直接塗抹染色検査法による 子牛の細菌性下痢症の診断 および治療法の検討 南予基幹家畜診療所 園部隆久 村上慶政 近藤克臣 豊田洋治 都築 均 佐々木金裕
方法 1 1. 初診時に直腸より糞便を採取 2. 希釈せず直接スライドグラスに塗抹し グラム染色を実施する 3. 治療は抗生物質を中心に実施 (CEZ, OBFX, ERFX, BCM, ABPC)
異常群 数種類のグラム陽性菌・ 陰性菌が見られる 正常群 方法 2(糞便直接塗抹染色検査による群分け) 一視野で同一染色性・形態を 示す細菌が6~7割以上を占める
症例A 治療前 6日齢 ホルスタイン 水様血便 体温39.0℃
症例A 治癒後 ビコザマイシン(バクテロン散)投与後 翌日体温38.3℃ 正常便
各群における抗生物質治療による治癒率 87.5% 治癒率 41.9% 異常群 正常群
青赤、色とりどりだったら細菌性の下痢ではない青赤、色とりどりだったら細菌性の下痢ではない ・抗菌薬は使わない ・消化不良かストレス性下痢と診断して、 補液して整腸(生菌剤や下痢止め薬) グラム染色 3分 30円
4.抗炎症薬併用で抗菌薬の使用量を減らす ・抗菌薬と抗炎症薬の併用は常識的になった。 ・抗炎症薬の併用は感染症の治癒を促進。 ・使用量を減らす有力な戦術 感染初期 菌増殖が激しい 抗菌薬とNSAIDs 感染後期サイトカイン活動 抗炎症薬の有効利用 ステロイド/NSAIDs
抗炎症薬 ステロイド:抗炎症作用は強く厚みあり。 (抗ストレス作用、中枢安楽化) COX-2を誘導しない/COX-1阻害なし 防御能低下 NSAIDs:抗炎症作用はそこそこ強い。 (抗ストレス作用は少ない) COX-2 阻害/COX-1阻害
ステロイド剤の問題点:生体防御能抑制 炎症部位への白血球遊走の阻害 ・好中球が細菌増殖部位に出動できなくなる。 ・感染初期のステロイドの投与は危険である。
まとめ ・抗炎症薬の併用は抗菌薬使用量を減らせる。 ・急性感染症時の併用する抗炎症薬は NSAID。 ・細菌増殖が落ち着いた段階での対症療法には ステロイド剤の選択があり得る。 抗炎症作用は強い。中枢安楽作用。安価
5.飼料添加剤は均一に混ぜる ・抗菌薬の飼料添加投与では均一な混和が不可欠。 リキッドフィードの場合は、飲水投与用製剤を 使うべきであろう。 ・均一に混ざらない場合は、耐性菌発生の温床となる から禁忌・・・・・注射剤を使用
・ドキシサイクリン(DOXY)中毒で子牛が大量死。・ドキシサイクリン(DOXY)中毒で子牛が大量死。 飼料や代用乳への添加が不均一だったらしく、 個体によっては推奨用量の3~7倍のDOXY投与を受けて いた。(ベルギー)。 ・症状:元気消失、呼吸困難、舌麻痺、嚥下困難、流涎、 頻脈、頻回呼吸、筋疾患、血清クレアチニン、BUN上昇 ・最終診断:心損傷と心拍出量低下に由来する全身症状。