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地域で支えるケア

地域で支えるケア. 共生型・小規模多機能ケア のための手引き -高齢者・障害者・子どもたちが共生する社会を目指して. 発行 愛知県 県民生活部 社会活動推進課. 企画・編集 NPO 法人 市民フォーラム 21 ・NPOセンター NPO 法人 菜の花. 目 次. 序章 いったい何なの?共生型・小規模多機能ケア・・・・・・・・・・・・・・ 3 -共生型・小規模多機能ケア研究会の設置 1. NPO と愛知県との協働事業の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2.共生型・小規模多機能ケア研究会のめざすもの・・・・・・・・・・・ 6

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地域で支えるケア

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  1. 地域で支えるケア 共生型・小規模多機能ケア のための手引き -高齢者・障害者・子どもたちが共生する社会を目指して 発行 愛知県 県民生活部 社会活動推進課 企画・編集 NPO法人 市民フォーラム21・NPOセンター NPO法人 菜の花

  2. 目 次 序章 いったい何なの?共生型・小規模多機能ケア・・・・・・・・・・・・・・ 3 -共生型・小規模多機能ケア研究会の設置 1.NPOと愛知県との協働事業の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2.共生型・小規模多機能ケア研究会のめざすもの・・・・・・・・・・・ 6 第1章 どうして良いの?共生型・小規模多機能ケア・・・・・・・・・・・・・ 7 -共生型・小規模多機能ケアの良さと効果 1.共生型・小規模多機能ケアの良さ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・ 8 2.共生型・小規模多機能ケアの効果・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 第2章 どうやってやるの?共生型・小規模多機能ケア・・・・・・・・・・・・・ 13 -共生型・小規模多機能ケアの運営方法 1.共通編・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 2.「菜の花の家」の取組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 第3章 どうやって始めるの?共生型・小規模多機能ケア・・・・・・・・・・・・ 28 -共生型・小規模多機能ケアへの取り組み 1.今後の活動の展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 2.安心して暮らせる地域づくりをめざして・・・・・・・・・・・・・・ 30 第4章 これからどうする?共生型・小規模多機能ケア・・・・・・・・・・・・・ 31 -共生型・小規模多機能ケアのモデル化と誘発 1.共生型・小規模多機能ケアのモデル化と誘発・・・・・・・・・・・・ 32 資料編・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・ 35 事例紹介①富山型ディサービス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 事例紹介②高浜市ふれあい・だんらん特区・・・・・・・・・・・・・・・ 42 都道府県別「地域共生ケア」関連事業一覧・・・・・・・・・・・・・・・ 52 共生型・小規模多機能ケア研究会の運営・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 協力者・団体紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60

  3. いったい何なの?         共生型・小規模多機能ケア 序章 -共生型・小規模多機能ケア研究会の設置

  4. 1.NPOと愛知県との協働事業の概要 序章 いったい何なの?共生型・小規模多機能ケア 1)愛知県との協働事業の背景 協働事業のテーマ「少子高齢社会に対応した地域づくり」  厚生労働省老健局長の私的研究機関である高齢者介護研究会がとりまとめた「2015年の高齢者介護」報告書では、今後の高齢者介護の方向性として、「高齢者が介護を必要とする状態になっても、これまでの生活を維持し、尊厳を持って可能な限り在宅で暮らすこと」が掲げられ、その具体的な方策として小規模多機能ケアという新しい体制が提案されました。  ところが、既存の介護サービスでは、認知症高齢者が晩年まで在宅で暮らしつづけることは困難な状況です。日中通える場としてのデイサービス施設は地域内に増えてきましたが、夜間介護を受け入れたり、急な「泊まり」に対応できるところは十分とはいえません。  また、地域全体に目を向けてみれば、精神障害を持つ人や発達障害などを持つ児童、青年の多くが人との交流機会、行き場が少ない現状にあります。さらに核家族化の進む中で子育てをする女性とその子どもは、孤独感を感じています。障害があってもなくても、年代の差に関係なく、集い、交流できる場が、必要であり、実際にできることが求められています。子ども、高齢者、障害者など、世代を超えて、地域住民がお互いに支えあい、高齢者や障害者の区別なく、地域で住みつづけられることを多くの人が望んでいます。身近な地域で、障害のある人も、子育て中の人も、潜在的にリスクを抱えている人も支援する「共生型ケア」の取り組みが始まっています。この取り組みをはじまりとし、地域の中でのネットワークをいかした支えあいを考えます。 菜の花と市民フォーラム  これまで特定非営利活動法人菜の花は、主に認知症高齢者を対象としたデイサービスを実施してきました。他の施設で受け入れを拒まれるような重度の認知性高齢者をも受け入れ、医療機関との密な連携とともに、スタッフの心のこもったケアが効果を出し、評価され、地域の信頼を得てきました。市民フォーラムと菜の花の出会いは、愛知県の2002年度の緊急雇用対策NPO運営支援事業(団体運営部門)をきっかけに特定非営利活動法人市民フォーラム21・NPOセンターの事業開発アドバイザーが菜の花の経営や事業づくりのサポートを始めたことからです。 ※以下この冊子において特定非営利活動法人市民フォーラム21・NPOセンターは市民フォーラム、特定非営利活動法人菜の花は菜の花と表記します。 今回の提案  菜の花では、最近、夜間や宿泊のニーズが強く、認知症高齢者の在宅介護に有効な、宿泊(ショートステイ)機能を合わせ持つ小規模多機能ケアの新しい展開を考え始めていました。また、地域には、さまざまな年令、さまざまな背景、身体能力、発達の違いがある人がいることがあたりまえであり、お互いに学び合いながら成長することが、あたりまえなのですが、実現できないでいる状況に疑問を感じていました。そこで、菜の花は、小規模多機能ケアを核とし、精神・心身に障害を持つ人の居場所づくり等も実現していきたいとの想いを強めました。ところがこのような試みはまだ県内ではほとんど見られていないために、取り組みへの不安がありました。実際に具体的なモデルを提示し、それがどんなもので、実際にどんな効果があるかを検証する機会が必要となってきました。また、どうやればよいかといった実践的な体系や手法についても示唆が必要な段階にきていました。 そこで市民フォーラムは、菜の花から共生型・小規模多機能ケアの相談を受け、社会の課題を解決しようと、先駆的に取り組むNPOが継続的に活動できる基盤整備のために、平成16年度愛知県が募集した協働事業に菜の花と市民フォーラムのコンソーシアムで応募しました。

  5. 2)共生型・小規模多機能ケアの背景  「年をとっても、障害があっても、一人になっても、住み慣れた地域の中で家族や友人に囲まれてこれまでのように暮らしたい。」その願いをかなえるには、「小さい」と「日常(なじみ)」がキーワードです。それをかなえるサービスは、人間一人ひとりを大切にした、人と人との心の通った関係の中から生まれてくるサービスです。これまでは、在宅重視といわれながら、施設志向が強かったともいえます。認知症高齢者もどうすれば在宅生活ができるのか、考えられた一つの方法が、小規模多機能ケアです。従来の「大規模」「集団」「一律」ケアから「小規模多機能」ケアへ、多様化するニーズへの対応が求められています。利用者の選択肢があることが大切です。  また高齢者は、家庭や地域での生活が主となります。子どもも家庭や地域の子育て力が必要といわれ、家庭や地域での生活が主となります。このように高齢者や子どもは家庭や地域が主となるはずですが、地域の中で、支えあう、育ち合える環境はあまりありません。地域の中で支えあい、助け合い、どのように「生きる」かを考えていきます。 3)NPOと愛知県との協働事業の目的と内容  新介護保険制度の設計にあたり、その方向性を示すものとして、老健局長の私的諮問機関である「高齢者介護研究会」が2003年5月に「2015年の高齢者介護」報告書をまとめました。あるべき高齢者介護の実現に向けてケアのあり方の転換等を図っていくために2015年までの時間は多いとはいえません。高齢者介護という社会全体の課題に、私たちは当事者として参加しなければなりません。同報告書が示す新介護保険制度は、介護保険制度の抱える課題を克服し、本当に安心を届ける制度になり、地域に暮らす人々が尊厳を持って人らしい生活を送ることができる社会の実現を目指しています。対象者の枠組み、サービスの種類とサービスの在り方、事業者の在り方、とりわけおおきいのは保険者である市町村の役割が増すこととなっており、地域介護・福祉空間整備等交付金が創設される予定となっています。高齢者が住み慣れた地域で暮らしていけるように介護・福祉基盤を整備していくために、基礎自治体の自主性や裁量権を活かすためのものです。市町村間の情報収集、企画能力等の格差が懸念されるなか、ますますの市町村の努力が必要であるとともに県の役割も大きいと思われます。このような転換期にこそ、県は明確に方向性、あるいは選択肢を市町村に示すことが重要であると考えます。今回研究しました共生型・小規模多機能ケアを考えてみますと、小規模多機能ケアについてはすでに介護保険の制度が改正される予定で、小規模多機能施設の開設が可能となります。共生型はその延長線上にあると考えられます。  今回の私たちの提案は、共生型・小規模多機能ケアの研究会を設置し、手引書を作成することです。菜の花の具体的な取り組みのなかでの課題を研究会にフィードバックさせながら、共生型・小規模多機能ケアの研究会において必要性と効果をさぐり、課題と対応策を検証していきました。  この事業の第1のねらいは共生型・小規模多機能ケアの効果やデメリットに対する対応策などを探るとともに、この研究会の中で議論を深めることで、県職員とNPOが共通の認識(必要性の共感)を持つことです。第2のねらいは、作成されたこの手引き書をツールとして、県とNPOが基礎自治体、関係団体、一般の人へ共生型・小規模多機能ケアを県内へ波及させることです。  今回は「共生型」の研究であるがゆえに、愛知県の医療福祉計画課、高齢福祉課、障害福祉課、児童家庭課の各課が連携を図りました。必然的に従来の縦割り行政とは異なる、地域からのニーズに沿った庁内横断的な連携が取られることとなりました。「2015年の高齢者介護」の報告書にある、高齢者が住み慣れた地域で尊厳をもって暮らしつづけられるような社会にするには、基礎自治体内での縦割りでない行政と市民との協働は欠かせません。基礎自治体が縦割り行政から真に脱するためにも、愛知県とNPOが、互いに理解を深めるために意見交換し、ワークショップを重ねたこの研究会の記録を活かしてもらうことを期待します。

  6. 2.共生型・小規模多機能ケア研究会のめざすもの2.共生型・小規模多機能ケア研究会のめざすもの 序章 いったい何なの?共生型・小規模多機能ケア 1)研究会のめざすもの  地域に目を向け、地域密着を考えれば、そこで暮らすのは高齢者だけではありません。障害のある人、子育て中の人、地域の人が、地域のなかで支えあう「共生型ケア」の取り組みが始まっています。  その共生型・小規模多機能ケアについて考えるために、新しい運営コンセプト、ノウハウ、体制、顧客開拓などを研究開発するために共生型・小規模多機能ケア研究会を設置いたしました。研究会のメンバーの多くは将来、この種の多くの取り組みを展開する可能性のある団体であり、各層の意見が入るようにしました。先進事例見学、情報収集などをもとに、5回の研究会のなかで、共生型・小規模多機能ケアの必要性と効果、課題とその対応策、開設に向けての準備、ケアにおける質をどのように確保するのか等、専門家、行政職員、関係団体などが議論を深め、共生型・小規模多機能施設開設・運営のための手引き書を作成いたしました。また、菜の花がこれまでの認知症高齢者デイサービスを運営してきた実践力とノウハウをいかし、今回半田市に共生型・小規模多機能施設「菜の花の家」を開設するにいたり、開設までの準備における課題などをケーススタディとして研究会にフィードバックさせて、より実効性のある有効な手引き書と致しました。  この手引き書に基づき、現地フォーラム(公開勉強会)を開催しました。事業者や利用者が共生型・小規模多機能施設を身近に感じ、共生型・小規模多機能ケアの必要性について行政とNPO(事業者)が共感し、地域の人すべてが、少子高齢化という社会の課題に対し、当事者として具体的にかかわらなければならないことに気づき、理解してもらうために開催しました。この共生型・小規模多機能ケアが地域の新たなコミュニケーション醸成の拠点となり、地域での支えあい、助け合いのシステムを地域の人が構築する第一歩となることを期待します。そして、手引き書を活用し、愛知県内で、新たな参入者への呼びかけをおこなっていきます。共生型・小規模多機能施設は、いくつになっても、誰もが、「なじみの環境」で「なじみの仲間」と「なじみの住まい・地域」に支えられ、時には地域を支え、信頼と安心の関係づくりができるような拠点です。愛知県内基礎自治体の中学校区にそれぞれ共生型・小規模多機能施設が開設され、誰もが、住みなれた地域で暮らしつづけられるような安心な社会が実現されることを願ってやみません。

  7. どうして良いの?         共生型・小規模多機能ケア 第1章 -共生型・小規模多機能ケアの良さと効果 この章では、共生型・小規模多機能ケアがなぜ良いのか、その基本的な良さと効果について確認します。特に「共生」のもつ具体的な効果を、イラストも入れて説明しています。

  8. 1.共生型・小規模多機能ケアの良さ 第1章 どうして良いの?共生型・小規模多機能ケア 小規模多機能 ケアのよさ 認知症への 効果 共生型・小規模多機能ケア =在宅生活をいつまでも続けられる「ケアの場」で、子どももお年寄りも障害のある人でも、誰でも、地域で集える場(多世代コミュニティセンター) です。 地域内の 交流拠点 ふれあいが 生むケアの力 役割がつくる 意欲 1)小規模多機能ケアの良さ 高齢者の在宅生活をささえる機能のうち、「通い」「泊まり」などの機能は、1箇所ではなかなかそろわず、遠く離れた場所(地域の生活圏外)に分散していたり、選択肢が限られている傾向にありました。 「小規模多機能ケア」は、これらが住み慣れた自宅の近くで、原則として1ヶ所で提供され、利便性が高いことが特徴です。 小規模多機能ケア <生活圏外> 夜間・深夜 延長 ひとつ屋根の下で、多機能!(1ヶ所で) <同一生活圏> 平日日中 デイサービス 日祝 デイサービス 訪問介護 ショート 夜間 自宅 日中 デイ 日祝 夜間 ショートステイ 住み慣れた地元で、いつも同じ場で、なじみのあるスタッフ、人同士で。 2)認知症への効果 来るべき高齢者社会においては、認知症高齢者の増大が危惧されています。 小規模多機能ケアは、少人数であり、個別ケアを基本とすること、また場やスタッフが(できるだけ)なじみを残すことで、認知症高齢者が苦手とされる「変化」を最小限にするとされるもので、その大きな効果が期待されています。

  9. 3)ふれあいが生むケアの力 ①地域における関係の孤立化 核家族化や独居高齢者の増加が進む中で、高齢者を日常的に知らない子どもたちや子育て中の親の負担が増加しています。総じて地域における人間関係は希薄となり、また社会的弱者と地域との交流もほとんどなくなっています。 ②ふれあう関係がもたらすケア効果(=共生型) 「お年寄りはお年寄りとだけ」「障害者は障害者とだけ」「子どもは子どもとだけ」といった分離された関係から、「混じりあえる場」をつくります。 異なる世代の人たちが同じ場所で一定の時間を共有します。 そこには人どうしがもたらす新しいケア効果が期待されます。 混じり合わない・地域での交流がほとんどない 子ども 障害者 高齢者 お母さん 若者 地域住民 など 利用者 家族 町内の 住民 認知症 高齢者 生活圏域 スタッフ ボランティア 多世代コミュニティセンター (小規模多機能が核) 乳幼児 子育て中   の親 障害者・児 近隣 小中学生 4)役割がつくる意欲 いろいろな人が空間と時間を共有する。 そこにうまれる役割や関わり。 高齢者ケアだけでなく、障害者、子どもも、、、 ・スタッフとして参加 ・ボランティアとしてのお手伝い ・イベント行事の応援見学で ・家族・知人・友人の顔を見に ・趣味、特技を見てもらうため

  10. 5)地域内の交流拠点 交流拠点には、いくつかのかたちがあります。いずれにしろ、利用者と介助スタッフだけという限られた関係でなく、地域の多様な人たちと交流していくことで、地域内で新しい役割を持ちます。 その1:利用者が多世代となっている場(利用者共生)      高齢者と障害者      高齢者と乳幼児(にぎやか、幼児の笑顔) その2:地域住民が出入りする場(近隣交流活発)      開放行事のときに来る(応援、見学、遊びに、ボランティア)      とくに行事はなくても日常的に来る。 その3:利用者も介助者もいろいろな世代、立場の人が、、、 その4:地域のいろいろな団体が関わる      町内会、自治会、老人クラブ、障害者団体、小・中学校、幼稚園、など

  11. 2.共生型・小規模多機能ケアの効果 第1章 どうして良いの?共生型・小規模多機能ケア お年寄りと子どもの共生 互いに影響を与え合う 相乗効果① お年寄りは元気になる 子どものしつけになる

  12. 相乗効果② お年寄りは子どもに宿題を教えることで役割ができる 学習障害児といわれる子どもがお年寄りと接して宿題をするようになる 相乗効果③ お年寄りはこどもに見られることでしっかりする

  13. どうやってやるの?         共生型・小規模多機能ケア 第2章 -共生型・小規模多機能ケアの運営方法 この章では「共生型・小規模多機能ケア」をどのように運営したらよいか、その基本的な考え方(コンセプト)と理念、運営やマネジメントのあり方を述べています。多くの先行事例や文献も参考にした仮説の段階ですが、参考にしていただき、さらに内容を深めていただければ幸いです。  また後段では、現在、愛知県半田市において具体的に取り組みが進んでいる「菜の花の家」での考え方も述べています。

  14. 1.共通編 第2章 どうやってやるの?共生型・小規模多機能ケア 1)これまでのケアと何が違うのか? 小規模多機能軸 共生型・小規模多機能ケア ショート (泊まり) 小規模多機能 このゆび と~まれ等 の先駆例 24時間 夜間 高浜市等での 構造改革特区 土日 昼間 デイ 365日 現在の デイサービス 平日 昼間 デイ 共生の対象軸 プラス 障害児・者 高齢者 (要介護) 誰でも(共生) プラス 乳幼児 子ども…

  15. 2)共生型・小規模多機能ケアの全体概要 <全体概要図> Aコンセプト 共生型・小規模多機能ケア概要 1 その人の生活を理解し、全体的  にかかわるケア C運営・マネジメントへの配慮 C-1 事業計 画 (1)理念を具体化する   経営 (2)事業計画 2 ゆったりとふつうの暮らしを支   える空間 3 日課をこなすのでなく、役割を  見つける C-2 組織運 営 (1)運営とチームマネジメント (2)安全面の配慮 (3)会議・ミーティング等での情報共有 4多世代の関わりから生まれる   ケアの力 5活発な地域交流 D運営のオープン化と地域共生 Bスタッフのあり方・心得 (1)地域住民の理解を得ていく積極姿勢 (2)運営のオープン化~「知ってもらう」「来て見てもらう」「ふれてもらう」 (3)外部への働きかけ(連携戦略) (1)共生に対応できるスタッフ (2)個人特性をよく理解したスタッフ (3)利用者の能力を見極めるスタッフ (4)利用者同士をつなぐスタッフ E経営者の理念と行動 (1)理念重視の経営    (2)地域に開かれたものにする努力 (3)制度を生かしながら、制度だけにとらわれない                            (4)スタッフの配置・充実  (5)現場に身を置く経営者 *参考文献(以下を参考にさせていただきました)  ●奥山久美子著「のぞみホームの静かな力」筒井書房、 2003年●株式会社福祉村編著「介護予防の時代~これからのデイサービス」筒井書房、2004年●グループホームきなっせ編「きなっせ発 寄り添うケアとは何か」筒井書房、 2003年●小規模多機能ホーム研究会編「小規模多機能ホームとは何か」筒井書房、2004年●「ミニデイを活用した地域三世代子育て支援事業報告書」社団法人長寿社会文化協会、2004年 ●「全国宅老所・グループホーム研究交流フォーラム2005」実行委員会編『徹底討論!小規模多機能ホームの本質と制度化 』 全国コミュニティライフサポートセンター(CLC)、2005年●多湖光宗「痴呆老人力を子育てに生かす」社会福祉法人自立共生会、2003年

  16. A.コンセプトおよび基本特長 「共生型・小規模多機能ケア」は、「小規模多機能ケア」の持つ良さに「共生型」を加えることで、さらに大きな可能性、地域の新しいコミュニティの場をつくろうとするものです。 「共生型」によって、人と人とが生み出す力、いろいろな人が地域で関わりを持つことができます。そのためこれまでとケアの考え方、発想が変わります。高齢者や子ども、障害がある人、ない人といった垣根を超えて対応できる力を持つことが望まれます。 ●コンセプト①その人の生活を理解し、全体的にかかわるケア ①利用者を単なるケアの相手としてだけで見ない 利用者とスタッフとの関係は「お世話する」「お世話される」という関係だけではなく、お互いがまずひと りの人として接することが基本だと考えられます。 ②その人の生活全体を(スタッフ全員が)理解する 小規模多機能ケアの基本的な考え方として、一人の利用者に一人のスタッフができるだけ多くの生活 場面で関わろうとします。入浴も食事も移動中も、さらにデイから帰った後の自宅での過ごし方も、でき るだけその利用者の全体を知ること、理解することが基本となります。 ③作業の過度な分業は避ける 排泄係はスタッフA、入浴係はスタッフB、と作業を固定して分業するやり方は、小規模多機能ケアで は好ましくありません。また、夜間だけの介助スタッフ、特定の時間だけしか関わらない介助スタッフと いうのも望ましいものではありません。  これら分業型は、介助側にとって一見効率的に見えても、認知症高齢者にとっては次々に人が変わ  ることになり、介助者もその利用者の一面だけしか見ることができません。  また、利用者の全体的な理解のための内部会議やコミュニケーションのあり方が重要といえます。 ●コンセプト② ゆったりとふつうの暮らしをささえる空間 ①「ふつうに暮らす」ことの大切さ  「ふつうに暮らす」こととは、特別につくられた場で特別なサービスを受けることではなく、普段自宅で  すごしているようにゆったりとくつろぐ、できることは自分でする、という過ごし方ではないでしょうか。   小規模多機能ケアは、それを続けられることを支援するケアが中心であり、認知症高齢者にとっても  有効とされます。 ②ゆっくりとした時間の流れの中で寄り添う  熱心なスタッフほど、いつも何かをして体を動かしている、バタバタと忙しく立ち回っている、という光景 がよくあるのではないでしょうか。何もしていないと「仕事をしていない」と思ってしまいがちですが、小 規模多機能ケアでは、利用者の横に静かに寄り添うことが基本となります。利用者が何を求めている  のかを、同じ目線で、じっくりと観察しながら見つけることが大切になります。じっと座りつづけることは決して楽なことではないでしょうが、利用者に「安心感」をもたらす一歩となります。もちろん、誰でもひ とりでいたい時もあるので、不要な時には離れ、必要ならすぐ傍らに寄り添う。そんなケアが利用者に も落ち着きを与えるといわれます。

  17. ●コンセプト③ 日課をこなすのでなく、役割を見つける●コンセプト③ 日課をこなすのでなく、役割を見つける ①「日課中心」の運営から「日課の少ない」運営へ  これまで多くのデイサービスでは、日課(あるいはプログラム)が用意され全員が同じことをする、という スタイルを採用していることが少なくありませんでした。特に、利用者数が多い場では、日課のもとで一 日が動くことが多く見受けられます。  「日課」は、見方を変えれば、施設側、運営側の都合を反映し、利用者個々の気持ちを必ずしも取り  入れているとは言い難く、時には「お仕着せ」の一面も見られます。  本来、自宅には「日課」はないわけで、小規模多機能ケアでは、利用者の暮らしのリズムにあわせるた め「日課」中心の運営は見直されます。 ②「できること」、「その人らしさ」を見つける仮説・検証の姿勢  日課のかわりに、認知症高齢者であっても、その人ができることを見つけ、その能力を発揮していただ くことが大事だといえます。  「その人ができることは何か」(仮説を持つ)→「(機会をみて)やっていただく」→「見守る」→ 「続ける」 といった流れを、時間をかけて取り組む姿勢が問われます。  これらは容易なことではありませんが、まず小さなことからやってみる。それが、その人らしさを引出し、 自立性をふたたび獲得する一歩になるはずです。 ●コンセプト④多世代の関わりから生まれるケアの力 (1)いろいろな人が関わる  共生型・小規模多機能ケアは、いろいろな世代の人が利用者であったり、また時にはお手伝い役、ボ ランティア役などいろいろな立場の人が関わりあうことを理念としています。  障害があってもお手伝い役として参加したり、高齢者だけでなく、子どもやその親も出入りする。本来 の「地域」は、このようにいろいろな人が混じりあって存在しています。 (2)赤ちゃん、子ども、障害者の心をかよわす力を引き出す  これまでの「共生型」に取り組んでいる事例によれば、専門の介護職の人よりも、ゼロ歳の赤ちゃんや 幼稚園児の方が、時にははるかに認知症高齢者の心の中に入っていく力を持つと言われます。乳幼 児や子どもの笑い声、表情、身ぶりや人懐っこさ、これらがお年寄りだけでなく、そこにいる人の気持  ちを一瞬でとらえ、和やかな場とすることは私たちも経験することです。 (3) 関係をつなぐスタッフ  「童謡の好きのお年寄りには、子どもたちの中で歌ってもらう」など、それぞれが打ち解け、一緒に楽し む、そういうつなぎ、媒介役はまずスタッフが率先して行います。

  18. ●コンセプト⑤活発な地域交流 (1)地域に開いた存在になる  共生型・小規模多機能ケアは、認知症高齢者とスタッフだけの限られた、孤立したものではありませ  ん。地域でともに暮らしていくためには、隣近所をはじめ、同じ地域に住む住民や団体とも積極的に  交流していく心がけが必要だといえます。 (2)「共生型・小規模多機能ケア」を理解してもらうコミュニケーション活動 共生型・小規模多機能ケアは、社会ではまだ知られた存在ではありません。「どんな場か」「誰のため の、どんな良さがあるのか」など、地域住民によく知っていただくことが重要です。それなくして支持も 得られません。積極的に地域に知ってもらうこと、見学、ボランティア体験、イベントなど、行事の一般 開放や活動内容の情報誌等による公開、ホームページ等による紹介など、対外向けのコミュニケーショ ン活動が大切となります。  地域の人が行き交う、ボランティアとしても参加する、といった関係が日常のものになるようにすること  が望まれます。 B.スタッフのあり方・心得 (1)共生に対応できるスタッフ  これまでの介護専門職は、高齢者、障害者、児童など対象となる人の年代別、障害種別に分けて研  修され、また実際の仕事に取り組んできました。  共生型・小規模多機能ケアにおいては、認知症の高齢者だけではなく、障害者や子どもとともに過ご すことになります。これまで高齢者介護しか経験してこなかったスタッフも、ここでは障害者や障害児と も接していくことになり、新しい学習や体験を通しての学びが極めて大切になります。そして、事業所と しては、そういう学習、指導の機会を充実させることが重要となります。 (2) 個人特性をよく理解したスタッフ  とくに初期段階では、スタッフそれぞれが、利用者一人ひとりの特徴をよく理解しておくことが必要で  す。また、一般に障害者の場合、高齢者よりも個人差、個別性が大きいとされ、一人ひとりの性格、特 性を十分に把握した上での介助が重要です。  そのため、スタッフ間の情報交換、とくに「よく理解しているスタッフ」から「理解の浅いスタッフへの指  導」、一日を終えての確認ミーティング、介助記録の情報共有など、これらを意識的に行う努力が不可 欠といえます。 (3)利用者の能力を見極めるスタッフ  ここでは一人ひとりの暮らしを大事に、その人にあった過ごし方や役割を見つけ、ともに(環境を)つくっ ていく姿勢が求められます。そのためには、利用者それぞれの「好きなこと」「やりたいこと」「できること」 を、過去の生活の歴史や家族、スタッフ間の情報交換などから見極めることが必要となります。 簡単なことから始め、できるだけ利用者が関われる場面・出番をつくる。洗濯物をたたんだり、ちょっ  としたことからのお手伝いをお願いしたりします。能力以上のことはお願いできませんが、やってもらっ たら感謝の言葉を伝えることが大切です。「時間がないから」とスタッフだけでやってしまうことはできる だけ避けたいもの。スタッフはあくまで「黒子」、主役は利用者であり、こういった積み重ねが、やがて  利用者の自信や意欲の引き出しにつながるといわれます。 (4)利用者どうしをつなぐスタッフ  利用者も初めのころは、お互いが初対面だと人見知りや緊張が生まれます。一定の慣れた関係がで きるまでスタッフはその間のつなぎ役。お年寄りと子ども、それぞれの「できること」「好きなこと」も把握 し、うまく接点をみつける役回りが期待されます。

  19. C運営・マネジメントへの配慮 C-1 事業計画 (1)理念を具体化する運営  共生型・小規模多機能ケアはまだ新しい形態の事業です。いくつかの先行例はありますが、まだまだ草創期の段階にあります。そのため、「理念」を踏まえ、試行と改善の積み重ねる努力が関係者全員に要求されます。 (2)事業計画  共生型・小規模多機能ケアは、少人数に対して人手をかけ、丁寧な個別ケアを柱とするものです。一つの場をじっくりと時間をかけてつくっていくことになり、大規模経営、多店舗運営にはなじみにくい面を持ちます。 ①過大な借入れ、初期投資は避ける   開設にあたっては、土地や建物はできるだけ既築のものの活用が望ましいでしょう。新しい建物より、人が住んできた民家のほうが利用する高齢者もなじみやすいという面もあります。改修も実用性、安全性に配慮はいるものの、高級なものである必要はありません。多額の借入れに頼らず、手持ち資金の範囲、あるいは賛同者の寄付等からスタートすることが現実的とみられます。 ②利用者確保も性急さは避ける   利用者一人ひとりに配慮したケアが基本ですので、急速な利用者増はサービスの質の低下を招きかねません。また、「共生」といっても一気に共生を進めるのでなく、互いが慣れる期間も配慮しながら進める必要があるでしょう。  ③スタッフ配置は厚く   スタッフの質、量ともに高い水準が要求されます。また、パート職に頼りすぎるのではなく、常勤職員が一定数必要です。適度な休日、休憩をとり、余裕を持てることが大切となります。そのため、人件費率ウエイトも、ある程度の高さを維持すべきです。 C-2 組織運営 (1)運営とチームマネジメント  共生型・小規模多機能ケア施設は、利用者個別のニーズに応えていく場であり、多様な利用者が来る  場となります。そのため、組織として、チームで対応できる仕組みを持つことが大切になります。 ①スタッフが抜けても大丈夫なフォロー体制   たとえば、利用者の一人が落ち着かなくなり、外の散歩に誘ったほうが良い、といったような場合があります。スタッフの一人が外の散歩に付き添って出てしまった時、残りのスタッフでうまく補い合える。それ  がスムーズにできる内部の連携、チームとしての力量が、組織として必要となります。 ②スタッフの健康管理とストレス・負荷の軽減   スタッフの健康管理や、ストレスを溜めすぎない配慮は極めて重要です。ストレスを溜めすぎたり、十分な休みを取れないと、イライラしたりして良いケアができなくなり、利用者にとっても望ましいものではあり  ません。日頃から休みをきちんと取る、ストレスを個人が溜めすぎないよう、問題があれば個人で抱え込  むのでなく、組織で共有することが重要です。管理者や経営者は、この点についていつも注意をして   おくべきです。    ③相性への配慮 利用者間の相性、利用者とスタッフの相性など、どうしても「合う」「合わない」があります。努力しても調  整がつかない場合、組み合わせを変えることの検討が必要でしょう。

  20. (2)安全面の配慮  小さな子どもがいる場合、高齢者に比べて動きが速かったり、じっとせず歩き回るといったことがどうして  も多くなります。人と人がぶつかったりしないように、空間内での安全維持に注意が必要です。また、お  年寄りと子どもとは疲れ方も違います。ずっと一緒で疲れてきた様子が伺えたら、適度に別の場に離れ  て休憩をとる、といったスタッフの配慮は、子どもと高齢者がうまく共生する上で必要なことです。 (3)会議・ミーティング等での情報共有  利用者の特徴や利用者間の反応、その人のふさわしい役割行動など、スタッフ間で情報交換をしたり、 確認共有することがとても重要です。(一方で利用者のプライバシー遵守も重要です。)一日を終えての 反省会、活動記録などで新しい気づき、反省、目標など、責任者が率先して確認できることが理想的で  す。 D.運営のオープン化と地域共生 (1)地域住民の理解を得ていく積極姿勢   (すでに述べたように)共生型・小規模多機能ケアが地域の中で受け入れられていくためには、その地域の住民の理解が不可欠です。  住民側も、開設に際しては「どんな施設ができるんだろう」といった不安があります。また、これまで福祉は、「創り出すもの」というより「与えられる」ものと見られてきたため、その分の(創り出す)不安感もあります。また、わが国ではまだまだ認知症高齢者や障害者について、十分理解されているわけではありません。実際、「徘徊行動」ひとつとってみても、なぜ起きるのかを多くの人が理解すれば、いざというとき住民の協力も得られやすくなります。また、お隣やご近所にこそ理解していただき、自分たち自身に何かがあったときは「ここに世話になりたい」と思ってもらうことも大切なことです。 (2)運営のオープン化~「知ってもらう」「来て見てもらう」「ふれてもらう」   ■[知ってもらう」 1) 町内会、PTA、老人会、老人クラブ、子ども会など地元地縁組織、小・中学校、障害者関係団体、     行政関係などとの交流、情報交換 2)活動内容を積極的に開放していく(実際の利用者のケア風景、楽しそうな雰囲気などを見せる) 3)地域の人の「介護の相談」などできるとよい   4)機関紙、ホームページで定期的に活動を紹介   ■「来て見てもらう」 1)イベント・行事など、住民も参加できるものを企画し、積極的に声かけもする 2)ちょっとのぞいてもらえる雰囲気づくり(家族、友人、知人、町内の人など)    ■「ふれてもらう」(ボランティア体験、常時募集)    1)見学、ボランティアの受け入れ(利用者に過大な負担がかからない配慮の上で)      小中学校など学生やボーイスカウト、あるいは一般の主婦など、サマーボランティア、食事づくりな     どちょっとしたお手伝いから (3)外部への働きかけ(連携戦略)   ①障害者関係団体、コミュニティビジネス関係者との連携  地元の障害者関係の支援機関、作業所などと連絡をとりあい、連携できることがあれば協力しあう姿    勢をお互いが持つことのメリットは高いでしょう。(業務の連携、お互いの交流の場づくりなど)   ②行政に相談も 在宅を支える仕組みを考える上で、住民側、事業者側が連携を密にしていくことの意義は大きくなっ    ています。地域の特性、運営のあり方、関係機関の紹介、制度の適用等、情報交換しながら、よりよい   ものをお互いつくっていくという姿勢が大事といえます。  ③ケアマネージャーの理解と連携 外部のケアマネージャーにも共生型・小規模多機能ケアの良さを十分理解してもらう必要があります。   また、利用者の変化情報を迅速に連絡し、適切な対処策を共有することが必要です。

  21. E.経営者の理念と行動 共生型・小規模多機能ケア施設を開設・運営するにあたって、事業経営の基本姿勢として、以下のような考え方にたつ経営姿勢が望まれます。 (1)理念重視の経営 共生型・小規模多機能ケアは、その地域で一人ひとりの利用者の在宅生活を支えることが基本となり、 ここが経営の原点ともいえます。また地域によって、利用者によっても、そのあり方は変わります。安易 な拡大、単純な多店舗化は「理念なき拡大」の恐れを持ち、あまりふさわしいものとはいえません。 (2)地域に開かれたものにする努力 共生型・小規模多機能ケアにおいては、積極的に地域に溶け込む努力が必要です。地域の人と交  流がない、利用者や事業者が地元の人でない、誰も知らない…といったあり方では、本来の理念と  ズレています。日常的に情報の公開、見学・ボランティアの受入れ、住民や行政、関係機関との交流、 関係づくり、これらを経営者が率先して行う姿勢が重要です。 (3)制度を生かしながら、制度だけにとらわれない(必要なサービスは独自事業の工夫も) 「小規模多機能ケア」や「共生型」を先駆的に展開してきた「このゆびとーまれ」などの先駆的な事  業者の努力もあって、制度面での保証も進んできました。  制度の充実は今後とも大切ですが、制度だけに頼りすぎない。足りないサービスは制度がなくても   工夫して実施したり、枠外の独自事業を組み込んだり(できるだけ低廉な価格で)する努力も重要で  す。 (4)スタッフの配置・充実 共生型・小規模多機能ケアにおいてスタッフの配置、力は決定的に重要です。またスタッフの連携、チーム対応力の開発、そのためのミーティングなどのあり方にも目を配ることが必要です。  ストレスがたまりやすい仕事であるため、適度な休息を与えたり、スタッフの抱える悩みを先取りして把握し、対処することが重要な仕事となります。 (5)現場に身を置く経営者 共生型・小規模多機能ケアをはじめる経営者は、ケアの現場を人まかせにするのでなく、現場責任者として、現場をいつも掌握していること。それによって実際の課題、なすべき対応がよく見えてくるはずです。

  22. 2.「菜の花の家」の取組み 第2章 どうやってやるの?共生型・小規模多機能ケア 1).「菜の花の家」のポジション 「菜の花の家」は、小規模多機能型として、まず365日デイ、次いで24時間化へと進めていきます(図タテの小規模多機能軸)。また、順に対象もひろげていく予定です(図ヨコの共生の対象軸)。 小規模多機能軸 目指すもの = 共生型・小規模多機能ケア ショート (泊まり) 小規模多機能 菜の花の家 第3ステージ 菜の花の家 第2ステージ 24時間 夜間 菜の花の家 第1ステージ 土日 昼間 デイ 高浜市等での 構造改革特区 365日 平日 昼間 デイ 現在の デイサービス 共生の対象軸 プラス 障害児・者 高齢者 (要介護) 誰でも(共生) プラス 乳幼児 子ども… 2)「菜の花の家」~当面の展開ステージ 「菜の花の家」では、次のステップで事業を進めていきたいと考えている。 第1ステージスタッフ共生型(H17年春) 核となる対象:認知症高齢者(要介護) 対象(共生) :障害者(スタッフ)、子ども(スタッフの子ども) 機能:デイサービス(365日)、夜間(~20:00) まずスタッフの子どもから先行(夏休みなど、働くおかあさんといっしょにその子どもたち) 第2ステージ 利用者共生型(H17、18年~…早くなるか) 核となる対象:認知症高齢者(要介護) 対象(共生) :自立高齢者(保険外)、障害・児、子ども 機能:デイサービス(365日)、 夜間、 ショート(※) ※週1~2回デイ利用者のみ対象 第3ステージ  利用者共生型(託児所機能も) 第2ステージの機能に託児を加える

  23. 3)「菜の花の家」の全体特長 小規模多機能と共生を目指す新たな取り組み <核となる小規模多機能ケア> 菜の花のポテンシャルを活かした 認知症高齢者ケア 「共生」展開 第1ステージ(H17年) 第2ステージ(H18年) 在宅生活支援の共生型・小規模多機能ケア 「菜の花の家」 365日24時間。半田市内、里山風景に囲まれた全く新しいケア空間 特徴(※) 1.人と人との関係を紡ぐために少人数(小規模多機能で受入れ10名) 2.日中デイを中心に、深夜・夜間お泊りOK 3.個別ケア    一人ひとりの個性・違いに合わせたケア。スタッフも多く、夜間も2人体制   (対象5名)。 4.一人ひとりの意欲、自然な回復力を大切に   スタッフは意欲の引き出し役。人がふれあうことで小さな役割、生活力、   生きる意欲を引き出す。 5.共生の場として、誰でも集える場所   地元の人、小学生、障害のある人、お年寄り、誰でも集まれて孤立しない。 ※)その他特徴として ① 「子どものいる空間」効果 乳幼児、小さな子など、その子がいるだけで、高齢者の自然な笑顔を誘う。「語りかけ」たり、「見つ め」たり、「だっこ」したり、といった高齢者の動きをよぶ。 ② 「富山方式」では、その実践団体の多くで、ケアの場が地域の「大家族」と表現されている。「菜の花 の家」の場合は、その「家族」が、多くの団体、関与者によって成立する(障害者関連団体、子育て グループなどとの連携・協働)。

  24. 4).菜の花の家の展開 4-1.立地・建物・レイアウト ①土地・建物 ・半田市内に残された里山環境。ちょっと行けば住宅地で小学校もある。畑に囲まれ、林、池が 近くにある。(周りが畑なので少しくらい大きな声もOK) ・民家改修。敷地面積1050㎡、建床面積94.69㎡。 ・阿久比駅から車で10分。広い庭で畑も作ることができる。将来、増築も可能。 ②室内・レイアウト ・くつろげる、なじみのある空間(高齢者が住んできた民家風) ・椅子に座って、輪になって。和室ではごろりと横になって。 ・いつも誰か(スタッフ)が近くにいて、見守られている。 ・室内仕様 -たたみ、高すぎない天井。 ・設備    -トイレが遠くない。風呂は個人浴タイプ。 ■概観図 きんかんの木は 実がたわわ。 柿、びわ、いちじくも。 まわりは畑が広がる里山 風景。半田市の原風景が 残る地。 星がきれい。 鳥もさえずる。 概観は少し 派手めな黄色 井戸水が出る。 キジも出る。 庭に小山もある 敷地300坪と広い。 畑もつくれる。 日当たり抜群 南向き・縁台 ■レイアウト図例)1F =スタッフ・ボランティア =利用者 浴室・洗面 トイレ 玄関 和室 押入れ トイレ 台所 押入れ 休養室 洋室 えん台

  25. 4-2.利用者へのケア ①基本方針 ・右図の3つのケアの要件をみたすこと。スタッ フとの信頼関係がまず基礎になります。 ・「小さな役割づくり」「よき観察者・引き出し役」 としてのスタッフが求められます。 ・スタッフからの一方的介助だけでなく、自立 性維持、回復ケアも重要です。 両輪の関係 A 高齢者の自立を めざす多機能ケア B 共生の効果を 生かすケア ②スタッフとの信頼関係の確立 ・その人の生活暦、仕事歴を知る。  (それぞれの物語、得意なこと、好きなこと等) ・利用者との人間的・(類似)家族的関係を築  けると良い。時には友人のように、時には昔  の同僚のように。敬語ばかりは避けましょう。 ・「ほめる」「上達する」「やってもらう」…根気よく、 じっくり、の姿勢が大切です。 基礎 スタッフとの信頼 関係の確立 スタッフとの 信頼関係 ③A高齢者の自立をめざす多機能ケア ①できることは(無理のない範囲で)できるだけしてもらう  ・お仕着せ日課の連続ではない。  ・利用者にできる家事(洗濯物をたたむ、台所仕事、配膳手伝いなど)、畑仕事などをやってい   ただく。やっていただいたら感謝、誉め言葉は欠かさない。 ②五感刺激のいろいろ(ただし強制ではない)  ・園芸:畑、土をさわる。植える、水をやる、咲かせる、実る、採る(→食材に)。  ・散歩:庭コース、池コースなどを連れ立って歩く。  ・音楽療法:手足を動かす(体操効果)。  ・作品づくり体験:塗り絵など。描く、書くことで上達する。(うまくなると好きになる) ④B共生の効果を生かすケア ①いろいろな人がまじわることで生まれる自然な効果(関係の効果)  ・子どもと高齢者の場合:話しかける、面倒をみあう、子どもの成長変化  ・身だしなみ、お化粧、おしゃれ、色気(若い世代がまじることで) ②スタッフのつなぐ力  ・接点の発見:お年よりのできること、得意なことを子どもとの接点にする  ・「やってみて」の上手な声がけや褒め言葉 ③安全配慮  ・疲れてきたら、眠くなったら…引き離して休息をとる

  26. 4-3.泊まり・夜間対応 4-4.外部交流・地域となじむ ~デイの場を上手に使って寝る場に。スタッフとのなじみの関係を生かして。 ①交代体制  ・365日になったら2交代制へ。それ以上に時間を細かくすることは原則避けます。パートの人も、 できるだけ長い時間対応します。→利用者をコマ切れに理解するのではなく、できるだけ長い 時間で全人格的に知るようにします。  ・夜間は(利用者5人で)2人体制 ②夜間ショートの対象利用者 ・基本的には、昼間のデイで慣れた人を受け入れます。(利用者がこの場になじんでいる。ス  タッフがその利用者をよく理解していることが大切。)なじみのない人を受け入れることは、やや リスクがあります。  ・「なじんでいる」目安として、週1回は通っていること。  ・利用者家族の休養、利用者の在宅生活を末永く維持する上で必要と判断されるとき、(ケア  マネージャーが)、利用を勧めます。  ・よそのディ利用者(スタッフつきで認めるかを今後検討) ~地域に開かれた、住民交流がある。 ①地域行事への参加  ・老人会、町内会などへ、こちらから働きかけます。 ②小学校、幼稚園等との交流   ・畑づくり、花づくりへ近くの横川小学校の生徒に参加を依頼。   ・畑づくり、花づくりボランティアを広く募集。 ③地域開放行事の開催   ・対象    近くの畑の農家、小学校、学童、子ども会、作業所、障害者団体、ひきこもり・不登校児   ・行事例    お月見、星空キャンプ、青空コンサート、もちつき    ・その他    「いつでもお茶を飲みに」「一服しに」「いつでも相談」「いつでもたまり場」になります

  27. 4-5.緊急連携・フィードバック 4-6.スタッフの対応と採用 ~医療との連携、利用者変化についてのケアマネ、家族への情報フィードバック。 ①利用者別の変化把握と即時対応  ・基本のバイタルチェック  ・いつもと違う「兆候」「変化」把握(普段からよく観察していないと変化が捉えられません。)    →普段にくらべ食べる量が少ない。 →何かあるか    →普段動かない人がよく動く →どうしたのか    →眠たいのか、そうでないのか(体の調子が悪いか?)  ・ケアマネや家族に変化伝達(FAX、電話)  ・緊急時は救急車 (2)月単位の連絡報告   毎日の記録(1行記録)を1ヶ月まとめてケアマネに報告。 (3)創作活動の人別まとめと家族へのお渡し   例)塗り絵:1年間まとめて製本して返す。まとめることで上達が一目瞭然。 ①スタッフの対応力が決定的に重要  ・見る、観察する力    その人の普段を理解すること、医療的な知識、そしていつもとの「違い」を観察する力   が必要です。  ・共感する力    その人を肯定的に理解する姿勢、何かができたら誉められることが大切。また、この人   はもっとこうしたら…というアイデアを出し、実践し、その結果を判断する。この姿勢を日   常的に持つことが大切です。 ②採用  基準、条件、方法のとりきめをします。 ③仕事のワークシェア~協働団体と   一つの事業体では難しいことも、子育て支援の団体や障害者支援団体・機関と連携し、  ワークシェアしたり、専門性を補うことが可能になります。

  28. どうやって始めるの?     共生型・小規模多機能ケア 第3章 -共生型・小規模多機能ケアへの取り組み 共生型・小規模多機能ケアを始めたいと思っても、どのようにすすめたらよいのでしょうか? 小規模多機能施設が新介護保険制度において制度化される予定です。まずはできることから始め、共生型、さらに地域での支えあいのシステム構築を考えます。

  29. 1.今後の活動の展開 第3章 どうやって始めるの?共生型・小規模多機能ケア 小規模多機能の意義 「通って、泊まれて、家にも出向いて、住むこともできる。」要介護の高齢者にとって、複数のサービスを利用するとしても、それぞれ担当するスタッフが別々では、利用者(特に認知症高齢者)にとっては混乱をきたす可能性があります。この課題を解決するために、365日24時間の介護の安全を届けることができる、新しい在宅介護の仕組みが必要です。安心をいつも身近に感じ、即時対応を可能とするには、日常生活の場である地域密着のサービス展開は当然といえます。「地域密着のサービス」の先にあるのはなんでしょう。 共生型の意義 地域には高齢者だけではなく、障害者や子どもなど、支援が必要な人がいます。先駆的な活動者は、サービスを展開する上で、高齢者だけでなく地域全体に目を向けます。地域のなかで支えあうこと、そして育ちあうことができる環境は、自然発生的にはできません。仕掛けが必要です。高齢者、一人っ子や子育てに不安のある親が増えていますが、共生型・小規模多機能ケア施設を拠点として、新しい人間関係をつくることが大切です。一人ひとりが大切にされてこそ、その地域のニーズに応える事ができます。地域によって、ニーズはすべて異なり、特徴ある拠点ができます。一つの施設が画一的に、単に多くのメニューを持つのではなく、利用者が主体であり、利用者に合わせたスタイルのメニューを持つ施設が多くでき、それぞれの施設に特徴があることで地域密着となり、さらに利用者にとって多様な選択肢が生まれます。そこで多世代の人が空間や場所を共有することにより、様々な効果が現れます。 地域のコミュニケーションの醸成 共生型・小規模多機能ケア施設が毎日の暮らしを支えることができるためには、地域に根ざした活動であることが大切です。また、共生型・小規模多機能ケア施設が閉鎖的にならない仕組みが必要です。一つの施設の中で、単に大家族のように暮らすことだけが目的ではなく、支援が必要な人を地域ぐるみでサポートするシステムを構築していきます。一人ひとりに合わせた、地域の中での支えあいのネットワークを構築していきます。それは、過去の失われた地域のコミュニケーションを再生していこうとするものではなく、新たに、共生型・小規模多機能施設を拠点として地域のコミュニケーションの醸成を図っていきます。 期待される市町村の役割 市町村で共生型・小規模多機能ケアの拠点を育てていくことが求められます。共生型・小規模多機能ケアを普及させるためには、行政の世代別のタテ割り的な施策を統合する必要があります。ここで行政の役割が重要になります。従来のタテ割りとは異なり、地域のニーズに合わせた支援が必要になります。共生型・小規模多機能ケア施設が真に、地域のニーズに応えられるものになるのか、大規模施設が単に小規模施設と移行するだけで、孤立化していくのか、市町村の役割に期待されます。 制度はあとから 一人の利用者のニーズを制度にあてはめるのではなく、地域のネットワークを生かしてその人の生活を支えていきます。先駆的実践をみると、介護保険制度を活用しながらも、残りのサービスは、制度を補完し、独自事業として展開している場合が多く、その運営は必ずしも安定的とはいえません。結果的にいくつかの当てはまる制度があれば活用しており、行政が必要性を認め、どう評価し、制度に位置づけていくかは、今後の大きな論点となります。

  30. 共生型小規模 多機能ケア 隣近所 家庭 社会福祉 協議会 要援助の人 行政 地域の ボランティア 地域の団体 医療機関 地域の施設 2.安心して暮らせる地域づくりをめざして 第3章 どうやって始めるの?共生型・小規模多機能ケア 誰もが地域で暮らすことを支えるネットワーク 小規模多機能ケア 小規模多機能ケアは「2015年の高齢者介護」高齢者介護研究会報告書 2003年6月26日においてこれからの介護のあり方の中心にとらえられました。また報告書には「高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて」とあり、今まで介護において尊厳という言葉はでていませんでした。尊厳とはすべての人が、その人らしく、その人の思いを大事にすることです。お年寄の尊厳を大切にその人にあったサービスをしてあげる、地域の包括的ケアが大切です。 共生型・小規模多機能ケア 地域密着で地域全体に目を向けるとそこには、これまで高齢者介護の中で築いてきた社会財産を活用して、障害のある人、子育て中の人、その他潜在的にリスクを抱える人達も支援する「共生型ケア」という取り組みが始まっています。この取り組みはケアの担い手と受け手が時として入れ替わりながら地域の中で互いに支えあい、自分らしい生活の実現を図るという点において、フォーマル・インフォーマル、自助、共助、公助のあたらしいシステムを予感させます。そして、地域での暮らしは、様々な団体、個人との関係があって成り立つものです。その人にあったサービスを地域のネットワークの中で支えていきます。 地域共生・多世代共生社会の実現 地域のコミュニケーションの醸成 地域が変わる! 地域のコミュニケーションの醸成 一人ひとりの力が大きなうねりとなって、地域を変えていきます。既存の制度化された活動にとらわれるのでなく、新しい活動が、新しい地域社会のコミュニティを醸成していきます。

  31. これからどうする?       共生型・小規模多機能ケア 第4章 -共生型・小規模多機能ケアのモデル化と誘発  「誰もが住み慣れた地域で安心して暮らせるように」 この想いを地域に広げ、実践していくためにはどのようにすればよいのでしょうか? 市町村において多数が開設されための誘発方法を考えます。

  32. 1.小規模多機能ケアのモデル化と誘発 第4章 これからどうする?共生型・小規模多機能ケア 1)普及のための具体化のステップ 共生型・小規模多機能ケアは、最終的には県内市町村において多数が開設されることが期待されます。 1st.トライアルの段階: まず多くのチャレンジをつくりだす。                (今回の「菜の花の家」はここに位置づけられるます。) 2st.モデル化の段階: いくつかの取組みの中から、ノウハウ化、教訓、モデル化をはかり、良質 なサービス展開のための基準、条件等を明らかにします。 3st.普及と広がりの段階:2st.の上で、県内各地での事業開始の取組みが進みます。 現在の段階 1st.トライアルの段階 2st.モデル化の段階 3st.普及と広がりの段階 取組み チャレンジ モデル化と 取組み拡大 多数市町村で 普及・拡大 ・新しい取組み例、チャレ  ンジを各地に生み出す ・成功例をつくる ・有効性の検証とケアと  運営のノウハウ蓄積 ・基本となるモデル  化、ノウハウ化 ・教育や運営の体系、 事業の評価尺度が できる。        ・地域の実情に応じ て「共生」のあり方 も変わる。 ・中学校区にひとつ 程度が開設される。 2) 推進のための必要な条件 ①チャレンジする事業家づくり(理念を共有できる人材)  ・この事業は「地域で在宅を支えつづける」、あるいは「共生」という理念、精神がまず開始する  事業家に要求されます。事業資金や資本よりも、まず、この「想い」を共有でき人材発掘が必  要です。 ②地域発の発想でともに取り組む(地域ニーズにこたえる姿勢)  ・「共生型・小規模多機能ケア」といっても地域によってそのあり方は変わります。つまり、一人   ひとりを大切にしその地域になくてはならないケアのありかたを柔軟に考えることができる姿   勢が求められます。

  33. 3)開設者のためのサポート体制 自分らしく、その人らしく、その人が望む暮らしを実現したいと行動をおこす人が増えてきました。その実現は簡単なことではありません。リーダーの熱い思いで支えられてきています。試行錯誤の中から生まれてきており、いま資格がある、経験があるからうまくいくものでもありません。人と人を受け止め、支援の必要な人とむきあうという確かな技術が求められます。またスタッフの資質向上や新しい技術の習得にもつとめなければなりません。さらに、地域の人のニーズを把握し、地域内での連携が求められます。 小さいがキーワード ・身近な地域の中で ・参加者一人ひとりを大切に ・地域の中で、実感の持てる活動 はじめは、どのように 開設者のための起業家セミナーの開催 スタッフのスキルアップ 共生型小規模多機能ケアスタッフのための研修会 共生型小規模多機能ケアのネットワークづくり 地域の資源の活用 場所・人・もの・・・地域で活用できそうなものをみつける 地域の中でのネットワークづくり ・拠点(場所)が利用者のニーズに全て応えるのではなく、 利用者のニーズが地域に開かれていることが大切です。 バックアップ機関 他団体とのネットワークづくり 制度の活用について考える 期待される基礎自治体の役割  ライフスタイルが多様化する中で、毎日の暮らしで必要なサービスは何なのか、その中で社会的に解決すべき「課題」は何なのか。課題解決のために行政と市民との協働のあり方が問われています。また地方分権時代といわれながら、市民の自治への意識はすぐには変わりません。地域に必要な「公共」は誰がどのように担うべきものなのか、行政と住民がともに考える必要があります。一人ひとりを大切にするには、地域によって事情が異なります。今、地域単位で「新しい公共」がつくられようとしています。地域の中で、地域の課題を解決しようと、事業型NPOや地域ビジネスなどの、多くの活動者が取り組みを始めようとしています。そういった活動者が、継続して活動できる基盤整備の構築の必要があります。基礎自治体は、これまでのタテ割り行政にとらわれることなく、世代間の施策を統合し、地域単位で市民との対話を重ねながら、新しいシステムを構築するために、地域のニーズにあった支援が必要となります。

  34. 4)普及のための関係者別の役割 事業家(者) 行政 住民 必要な条件 事業家 ①地域の中でニーズを見極める ②ミッション重視の姿勢 ③地域での連携 ④情報公開、地域住民との交流、開放  ⑤制度の枠内にとどまらない 住民 ①認知症高齢者、障害者が地域でくらすことに理解と共 感をもつ ②住民は(将来の)利用者でもあり、地域に共生型・小  規模多機能施設ができることの必要性を認識する ③地域における新しい共生の場として、積極的な利用と 参加意識をもつ 行政 ①地域福祉の中で共生型・小規模多機能ケアの位置づ け、意義についての検討 ②良質な事業者の育成への支援 ③地域における関係機関の連携促進

  35. 資料編 ・事例紹介①富山型デイサービス ・事例紹介②高浜市ふれあい・だんらん特区 ・都道府県別「地域共生ケア」関連事業一覧 ・共生型・小規模多機能ケア研究会の運営 ・協力者・団体紹介

  36. 事例紹介①富山型デイサービス 資料編 CASE 1 地域生活支援・交流ハウス 小杉町デイサービスセンターふらっと CASE 2 このゆびとーまれ CASE 3 ふるさとのあかり CASE 4 デイケアハウス・にぎやか CASE 5 デイサービスあんきやりびんぐ 富山市にある「このゆびとーまれ」が全国に先駆けて始めた、年齢や障害を問わずに誰でも受け入れるデイサービスが「富山型デイサービス」と呼ばれ、全国に広がりつつあります。 2003年11月17日~18日の2日間で実施した、富山と高山の先進事例見学の結果とともに、その事業内容をご紹介致します。 ※事例の内容は、11月17日~18日にかけて実施した高山・富山の現地見学、及びパンフレットや各団体のホームページの内容をもとに作成しております。

  37. CASE 1             ふらっと (富山県射水郡) ●地域生活支援・交流ハウス ●   小杉町デイサービスセンター ●地域生活支援・交流ハウス●小杉町ディサービスセンター ふらっと 富山県射水郡太閤町4番地 TEL&FAX 0766-56-6661 URL http://www.geocities.co.jp/SweetHome-Green/4324/ 「すきなこと言って!すきなことしよう!大いばりでいこう!」というコピーの通り、『ふらっと』は、障害があっても気がねせずに大いばりで、障害がない人も気軽にふらっと遊びに来れる場所。代表の宮袋さんを中心に、障害児・者、高齢者、子育て活動者の輪ができて、町に要望書を提出。草の根の活動が行政を動かした結果、公設民営のデイサービスセンターとして活動が始まりました。 主な事業内容 ※「ふらっと」ホームページ、パンフレットより抜粋 開所日   :毎日開所 (年末年始除く) 開所時間 :9:00~19:00(時間外応相談)  ①在宅障害児(者)へのデイケア事業 ②知的障害者へのデイサービス事業(支援費制度) ③余暇支援/ガイドヘルプ、ぷちふらっと(海水浴、スキーなど) ④相談 <料金例> 年会費(会員) 20,000円 タイムケア(時間外等) 800円/時間(一般)、400円/時間(会員) 食事 朝300円、昼400円、間食100円、夕500円 入 浴 600円~ (介護度に応じて加算) 送 迎 往復距離数(5㎞毎)×40円  主な対象と機能  ※核となるサービスを示しています。 機能 地域の「居場所」 交流 自立支援施設「DASH」 ・障害をもつ若者 ・中高生 ショート (泊まり) 夜間 「障害があってもなくても、夜遊びだってしたいし、いろんな遊びをしたい。」そんな若者の居場所であり自立の場として、「DASH」がオープンした。 託児 利用者平均  19.5人/日 ・障害者約8割 土日 デイ 平日 デイ 対象 地域住民 高齢者 身体 障害者・児 子ども

  38. CASE 2 このゆびとーまれ (富山県富山市) 特定非営利活動法人このゆびとーまれ 富山県富山市富岡町355 TEL 076-493-0765 URL http://www.geocities.jp/kono_yubi/ 「このゆびとーまれ」は、富山初の民間デイサービスとして開所しました。子どももお年よりも、中年の人も障害者の人も、「誰でも必要なときに必要なだけ利用」でき、施設らしさは全く感じられないところで、「なごやかな空気に包まれていて、まるで昔の大家族のよう」です。「このゆびとーまれ」のこの方式は富山型と呼ばれ、全国に広がっています。 主な事業内容 ※「このゆびとーまれ」ホームページ、パンフレットより抜粋 開所日   :年中無休 開所時間 :7:30~18:00(場合によっては20:00まで可) ①高齢者在宅支援サービス(通所介護、いきがい対応型デイサービス、など)②障害者(児)在宅支援サービス(通所介護、在宅障害(児)デイケア事業、など)③居宅介護支援事業(ケアプランの作成など)④その他(乳幼児の一時預かり、疾病を有する人たちへの在宅支援事業、など) <料金> 1日 2,500円~(一般)、2,000円~(会員) 半日(4時間) 1,500円~(一般)、1,000円~(会員) ※介護度、保険適用などにより料金は異なる。 主な対象と機能 ※核となるサービスを示しています。 機能 交流 ショート (泊まり) 「このゆびとーまれ茶屋」 2004年5月には富山市茶屋町に、従来のデイサービスに加え、障害者も受け入れ可能なショートステイ(短期入所施設)、および痴呆対応型グループホーム、の3つの機能を併せ持った「このゆびとーまれ茶屋」をオープン。 夜間 「このゆびとーまれ」 利用者平均 30人/日 ・健常児、障害児、障害  者、お年よりなど様々 託児 土日 デイ 平日 デイ 対象 地域住民 高齢者 障害者・児 子ども

  39. CASE 3 ふるさとのあかり (富山県富山市) 特定非営利活動法人 ふるさとのあかり 富山県富山市四方荒屋3223番地 TEL&FAX 076-435-6511 URL http://www.geocities.jp/kono_yubi/ 利用者の「心のふるさと」のような存在になれるようにと名づけられた「ふるさとのあかり」。誰もが対等であり、規則や日課にしばられない、お家にいるような感覚で、明るく楽しくそして充実した日々を過ごして頂ける、みんなの心のふるさとです。高齢者、乳幼児、学童、障害児・者など、いつでも誰でも受け入れます! 主な事業内容 ※「ふるさとのあかり」パンフレットより抜粋 開所時間 :8:00~18:00(延長可能) ①介護保険デイサービス/要支援~要介護5  ・レクリエーション、健康チェック、送迎、食事、入浴、など  ・在宅介護相談(介護相談、住宅リフォーム相談、福祉用具レンタル相談など) ②介護保険適用外サービス ③その他(乳幼児一時預かり、学童や障害者・児の居場所、など) <料金例>介護保険適用外 1日 2,500円 食事 500円 半日 1,500円 入浴  500円 主な対象と機能 ※核となるサービスを示しています。 機能 交流 ショート (泊まり) 2005年4月中旬から、障害者も高齢者も利用できるショートスティを開始予定。 夜間 ・高齢者ケアを核としたデイサービス 託児 土日 デイ 平日 デイ 対象 地域住民 高齢者 障害者・児 子ども

  40. CASE 4 デイケアハウス・にぎやか (富山県富山市) 特定非営利活動法人 にぎやか 富山県富山市綾田町1-11-17 TEL 076-431-0466 FAX 076-431-0486 URL http://www.にぎやか.com 『親子じゃないけど家族です』と代表の阪井由佳子さんの著書のタイトル通り、「にぎやか」は強い絆で結ばれた家族のようです。「にぎやか」は住宅街にあるため、近隣住民の理解を得るため、「にぎやか」の意義や雰囲気を伝える会報を配ったり、市長の出前トークなども開催しています。 主な事業内容 ※「にぎやか」パンフレットより抜粋 ①デイサービス事業/乳幼児・障害児(者)・保険適用外高齢者 <料金例> 1日  2,500円  食事 500円 半日  1,500円  入浴  500円 ②介護保険デイサービス/要支援~要介護5 ②居宅介護支援 ③ショートスティサービス ④訪問サービス(にぎやか定期的利用者のみ) <料金例> 一泊  7,000円  朝食・夕食  各500円 ⑤在宅障害者(児)デイケア事業 ⑥身体障害者デイサービス事業 ⑦特区事業(知的・障害児の受入れも可) ⑧自立支援デイサービス事業(富山市委託事業) ⑨その他(パーティ開催、実習生受け入れ、研修、旅行、バザーなど) 主な対象と機能 ※核となるサービスを示しています。 機能 交流 ショート (泊まり) 夜間 託児 介護保険対象外利用者のうち、約8割がなんらかの障害のある方。 利用者平均 17人/日 ・介護保険対象者59% 土日 デイ 平日 デイ 対象 地域住民 高齢者 障害者・児 子ども

  41. CASE 5 デイサービス りびんぐ (高山市) 高山市総和町3-49-1 TEL 0577-32-7283 FAX 0577-32-7285 富山の「このゆびとーまれ(惣万代表)」でお年寄りが生き生きと過ごす姿を見て、設立者の一人である山下ちはるさんが「高山でも富山方式をやりたいと」という思いを抱いたのが「りびんぐ」開設のきっかけでした。平成16年4月、中部電力クラブハウスあとで、赤ちゃんからお年寄りまで、障がいの有る無しに関わらずゆったり過ごせ、出会いとふれあいの場となるデイサービスを開始しました。 主な事業内容 ※「あんきやりびんぐ」パンフレットより抜粋 開所日   :月~金・日(土曜日、年末年始休み) 開所時間 :8:30~17:30 (相談に応じて延長有) ①介護保険デイサービス........................................... 介護保険自己負担金    ②支援費(身体障がい者)デイサービス…...................... 支援費制度自己負担金 ③ひびきコース  ・介護保険・支援費の限度額を超えた方もしくは非適用者..... 1,500円/4時間未満 2,000円/6時間未満 2,500円/8時間未満 3,000円/10時間未満  ・乳幼児・子どもの一時預かり.......................................... 800円/時間  ・訪問介護................................................................... 1,500円/時間  ・相談・交流.................................................................. 無料 主な対象と機能 ※核となるサービスを示しています。 機能 地域の「居場所」 交流 ショート (泊まり) 夜間 提供しているサービス。 地域の人たちにいかに活用してもらえるか、今後の課題。 託児 月~金 日デイ 利用者平均 8人/日 ・高齢者がほとんど ・スタッフの子どもも託児 対象 地域住民 高齢者 ひびきコース 身体 障がい者 ひびきコース 子ども 身体障がい児 健常児

  42. 事例紹介②高浜市『みんなの居場所「ふれあい・だんらん」特区』事例紹介②高浜市『みんなの居場所「ふれあい・だんらん」特区』 資料編 高浜市「みんなの居場所『ふれあい・だんらん』特区の概要」より引用 愛知県高浜市では、特区申請の認定により、市内に整備されている介護保険施設のデイサービスセンターにおいて、知的障害者及び障害児のデイサービスの受け入れが可能になりました。 指定デイサービスの一つである「南部デイサービスセンター」は、南部保育園と併設されているため、保育園児との交流も行われているようです。高齢者、障害者、子ども、子ども、先生、障害者の家族などとの新たな交流が誕生するなど、共生の場が生まれているようです。

  43. 都道府県別「地域共生ケア」関連事業一覧 資料編 「地域共生ケア研究会報告書」(日本福祉大学、平成15年度)より引用

  44. 共生型・小規模多機能ケア研究会の運営 資料編 1)研究会委員、協力者・団体紹介 ※敬称略 委員長   平野隆之 日本福祉大学教授、福祉社会開発研究所所長 副委員長   大沢智子 わっぱの会・知多 地域生活支援センターひろばわっぱる       センター長 委員   榊原廣子 半田手をつなぐ育成会会長   大田優子 特定非営利活動法人 生活支援センターわたぼうし 代表理事   竹松康輔  虫眼鏡倶楽部 協力者・団体 松下典子 特定非営利活動法人地域福祉サポートちた 代表理事   浦山明子  半田子育てネット 会長   小久保紀子 toピア(トピア)   村田亜記 有限会社しあわせの里 代表取締役   鷲野林平 社会福祉法人 半田市社会福祉協議会 社会福祉士   毛利志保 日本福祉大学地域ケア推進センター 研究員   奥田佑子 日本福祉大学地域ケア推進センター  半田市企画部市民参画課   愛知県健康福祉部医療福祉計画課地域福祉グループ   愛知県健康福祉部高齢福祉課施設グループ   愛知県健康福祉部高齢福祉課介護保険指定・指導グループ   愛知県健康福祉部障害福祉課精神保健グループ   愛知県健康福祉部児童家庭課少子化対策グループ   愛知県県民生活部社会活動推進課NPO・ボランティアグループ 事務局(パートナーシップふらっと)   榊原弘美 特定非営利活動法人菜の花 代表   杉浦浩子 特定非営利活動法人菜の花 理事   藤岡喜美子 特定非営利活動法人市民フォーラム21・NPOセンター チーフ   熊谷正道 特定非営利活動法人市民フォーラム21・NPOセンター    事業開発サポーター   西山久美子 特定非営利活動法人市民フォーラム21・NPOセンター 

  45. 2)研究会のあらまし 第1回研究会:2004年10月7日 14:00-16:00/あいちNPO交流プラザ会議室C 第2回研究会:2004年11月9日 10:30-12:30/あいちNPO交流プラザ会議室C 第3回研究会:2004年12月2日 13:30-14:45/「菜の花の家」予定地見学 15:00-17:00/ピア雁宿(半田市) 第4回研究会:2005年1月31日 13:00-15:00/あいちNPO交流プラザ会議室A 第5回研究会:2005年2月22日 13:00-15:00/あいちNPO交流プラザ会議室A ワークショップ①:2004年11月24日 13:30-16:30/あいちNPO交流プラザ会議室B ワークショップ②:2004年12月21日 13:00-16:30/あいちNPO交流プラザ会議室C ※ワークショップには、各メンバーの皆さんに自主的にご参加頂きました。 高齢者介護、子育て支援、障害者支援など現場の活動実践者や当事者、行政(県と市)、社会福祉協議会、研究者、などさまざまな立場の方々に関わって頂き、立場を超えて、ふらっとな関係で委員会を実施してきました。 第1回研究会(2004.10.7) 第1回研究会では、研究会の意義とその目的について、確認されました。特に、行政とNPOが協働 でこのような場をもつことそのものについての意義について、皆さんと再確認しました。 ◆研究会での発言より このような研究会を行政とNPOが協働で行う意義 ・これまでのような「行政主導」の時代ではありません。行政と実践者が、共生型・小規模多機能ケアの必要性と普及に向けての議論ができるテーブルに集まったこの機会を、意義あるものにしたいと思います。行政には「お金を出して欲しい」ではなくて、知恵を貸して頂きたい。互いに、共生型や小規模多機能ケアといったものの必要性を理解していきたいですね。 ・正直、行政の方はこういう場には慣れていません。行政とNPO・市民が、これまではベクトルが反対に向き合っていたことは良くありましたが、同じ場で輪になって議論する、という機会はほとんどありませんでした。戸惑うことはありますが、立場を超えて、話し合っていきたい。 ・行政の方に、「協働は良い!」と感じて頂きたいです。 小規模多機能ケアの必要性と課題解決、愛知県全体への誘発をねらう ・この研究会と並行して、菜の花が、小規模多機能ケア拠点の開設準備を進めています。この生きたモデルを研究会にフィードバックしながら、その必要性と課題について考えていきます。 ・研究会の最終目的として、小規模多機能ケアを核とした多世代コミュニティセンター開設のための手引書を作成します。その手引書をNPOや基礎自治体にも広め、愛知県全体への誘発のきっかけにしたいと考えています。

  46. 第2回研究会(2004.11.9) 第2回研究会では、ネットワークの広がりとともに成長してきた知多の福祉活動や富山の事例など の報告を行うとともに、手引書作成に向けて研究会で議論していくテーマについて議論しました。 ◆研究会での発言より 共生ケアによって生まれる「日常」や「普通の暮らし」って何? ・共生ケアについて語られる際、「当たり前の暮らし」「普通」「日常」といったキーワードが良くでてきます。しかし「普通」とは誰にとっての普通でしょうか?例えば、障害がある人にとっての普通は、皆さんが描く普通の日常とは違うだろうし、ひとりひとりに違いがあるのではないでしょうか。 ・共生ケアには、笑いがあって、ちょっとしたいざこざもあって、何もない日もあって、「晴れた日だけではない普通の暮らし」があると思います。 ・強制がないことも大切です。共生型の強制はやめよう、といつも言っています。 現場のNPO、当事者、行政職員がそれぞれテーマ別グループに分かれて議論 ・研究会で議論する内容を、手引書に盛り込む3つのテーマに分け、適宜各グループによるワークショップも実施していきます。①小規模多機能ケアの必要性について、②菜の花ケーススタデイ、③愛知県全体への共生型・小規模多機能ケアの誘発について、の3テーマ。 ・①必要性については、その効果について、②菜の花ケーススタデイでは、ハード面ソフト面それぞれの課題について、この2つのテーマをまず議論していきましょう。 ワークショップ①(2004.11.24) 各テーマに別れ、ワークショップを実施。共生型の効果や小規模であることのメリットや課題、県   内へ波及する際の制度上の障壁、そして菜の花の家のあり方と展開案について、意見交換しました。 ◆ワークショップでの発言より 共生型ケアの強みと弱み  ・共生ケアには相乗効果があると思う。高齢者のみのケアでは、提供する側・される側、というのが通常のケアの形。しかし、共生型ケアでは、そこに子ども、障害者が関わることで、利用者自身も(何かを)提供する側になり、役割をえることができます。  ・いろんな人との接触があり、また小規模であるからこそ、利用者がひとりになれる場所や別々に過ごせる時間の確保が必要です。  ・共生型ケアの強みと同時に、弱みを洗い出し、その対策を検討しておく必要があると思います。そうすれば、行政としても検討しやすくなるのではないでしょうか。  ・共生型の弱みとして、専門性の質の確保が挙げられます。その対策として、適切な評価とスタッフ研修が必要になるでしょう。 人間らしく過ごせる場所に  ・近くの環境(池、農地、など)を活かし、他団体や学校にも使ってもらってはどうでしょう。  ・一律ではなく、利用者ひとりひとりにあったケアがしたいですね。  ・菜の花の家に、新しい人が出入りする効果があると思います。いろんな人と交流できるだけではなく、密室にならないことで自然とチェック機能が働きます。

  47. 第3回研究会(2004.12.2) 第3回研究会は、愛知県半田市内で開催。それにあわせて、ケーススタディとなる菜の花の家の予定地見学を実施しました。研究会では、再びテーマ別のワークショップを実施しました。 ◆見学の様子 ・半田市の市街地から10分程度という距離でありながら、農地に囲まれ、近くには池まであるという、のどかな環境の中に菜の花の家はあります。  ・菜の花の家の見学の間、研究メンバーはゆったりとした時間を過ごし、「こういう場所で過ごせたら良いね」という言葉が自然と出ていました。 古民家を改修中の菜の花の家。2005年春オープン予定→ ◆研究会での発言より  ・介護保険制度改正の流れを考えると、共生型を前面に出すよりは、まず小規模多機能の利点について、手引書ではアピールしてはどうでしょう。  ・小規模多機能ケアだけが良いのではありません。大規模施設におけるケアと小規模多機能ケアの機能分担があると思います。利用者にとっては、選択肢が広がることがメリットであって、どちらか一方だけが良いわけではありません。  ・菜の花の家のスタッフ育成は課題のひとつです。共生型では、介護技術だけではなく、人と人とをつなぐ力やコーディネート力が必要だと思います。 ワークショップ②(2004.12.21) これまでに2回実施してきたワークショップの内容がほぼまとまり、手引書の骨子作成の段階に入りました。最後のワークショップとして、じっくり皆さんと手引書の論点整理と意見交換を行いました。 ◆ワークショップでの発言より 営利と非営利 ・小規模多機能ケア施設の開設について、営利組織と非営利組織では、その運営の創意工夫など若干異なる点があると思います。想定される違いや、NPOが主体となった場合の特性などを手引書で見せてはいかがでしょう。  ・小規模多機能ケアから共生型へ移行していくと、採算がなかなか取れなくなるのではないでしょうか。そうすると、共生型へ移行する事業体はやはりNPOがほとんどではないでしょうか。 地域格差  ・愛知県内への小規模多機能ケアの波及については、地域によってその広がりに特色があると思います。医療法人もNPOも頑張っていない地域などでは、地域の不安は大きいのではないでしょうか。住み慣れた場所で、障害をもっても老いても暮らしていける、そんな地域づくりのきっかけにしたいです。 共生への道 ・菜の花の家において、その対象者(高齢者、子ども、障害者など)をいかに混ぜるのかを考えなければなりません。また、利用者だけではなく、スタッフやボランテイアとしてもです。  ・制度上一度に皆は無理です。まずは障害のある方の仕事場としての居場所をつくりたいです。

  48. 第4回研究会(2005.1.31) 第4回研究会では、今回の事業の最終成果物となる、共生型・小規模多機能ケア開設者のための  手引書素案を提出。議論は、「行政をはじめとして地域をいかに巻き込むか」に集中しました。 ◆研究会での発言より 共生型ケア実現へのプロセスでも「共生」   ・今回のように、各分野で活動する人たち、当事者、中間支援組織、そして行政担当者が集まって、共生型・小規模多機能ケアについて議論してきたプロセスに、とても重要な意味があると思います。行政を巻き込んで、地域に対しても「力を貸してください」と言えるのがNPOの強みだと思います。私たちがどのようにいろんな人を巻き込んで研究会を行ってきたか、その過程をぜひ手引書でお伝えしたいですね。 NPOはどんどん走っていっちゃう  ・「NPOの人はNPOの人だけでやっているのね」という感じでは、行政とNPOの溝は深まります。行政がいろいろ考えていると、NPOはどんどん走って、行政の横をぴゅーっと通り過ぎ、振り返ればどんどん先を走っている、という印象があります。 点と点がバラバラでははなく、点が面でつながる  ・人の集まる層が厚くなると、地域全体が見えてくると思います。そして関わってくる人が増えれば、情報交換が必要になってきます。この中に行政が関わってくることは非常に重要だと感じています。地域づくり・まちづくりは、主体が点と点でばらばらではなく、その点が面でつながっていくことが大切だと思います。 第5回研究会(2005.2.22) 研究会の報告と共生型・小規模多機能ケアの県内への波及を目的としたフォーラムの開催も3月に決まりました。今回は最後の研究会として、手引書素案をもとに最後の意見交換をしました。 ◆研究会での発言より 手引書を誰に読んでもらいたいのか  ・私たちが今回つくった手引書は、技術的なノウハウを伝える手引書ではありませんよね。共生型・小規模多機能ケアの必要性を書いているので、やはり地域の人たちに呼んでもらいたいですね。この手引書は、硬い言葉が少ないので、非常に読みやすくなっていますね。  ・基礎自治体の方には是非呼んでもらいたいですね。  ・この手引書で、共生型からもう一歩超えたものを伝えたいですね。高齢者の在宅ケアを支えるだけではなく、高齢者に地域の人が混ざる。そして地域の人にとっても居場所となる。そういうねらいが伝わると良いですね。   その他、最終成果物である開設のための「手引書」案について、皆さんと最後の意見交換を行いました。読み手(対象)が誰であるかを考え、その内容と表現方法、制度の事実確認など、修正点を出し合いました。研究会は終了しましたが、研究会メンバーには引き続き、2005年3月13日に半田市役所で実施する、愛知県内への共生型・小規模多機能ケアの波及をねらいとしたフォーラムの開催に向けて、引き続きご協力をお願いしました。

  49. 協力者・団体紹介 資料編 大沢智子 さん ひろば わっぱる 愛知県知多郡武豊町大字富貴字小桜176-1 Tel0569-73-1739Fax0569-73-1674 E-mail hiroba@wappa-no-kai.jp ↑ひろばわっぱるの活動風景 「ひろば わっぱる」とは 「ひろば わっぱる」は、2000年4月に、障害のある人もない人も地域の中で暮らすために活動してきた「わっぱの会」が設立した社会福祉法人共生福祉会によってつくられました。 「精神障害者地域生活支援センター」として、心の病や障害を持つ人の生活を支える活動を行うと同時に、地域の方々が集い交流する場となっています。 「メッセージ」 「わっぱの会」は、障害のある人もない人も共に生きる社会をめざしています。「ひろばわっぱる」も、いろいろな人が交流しながら、相互理解を進め、人が孤立しない、助け合えるような地域づくりに取り組んでいきます。 大田優子 さん 特定非営利活動法人 生活支援センターわたぼうし 半田市花園町3丁目4番地12 Tel 0569-26-4554 Fax 0569-26-4554 E-Mail shiencenter@npo-wataboushi.com URL http://www.npo-wataboushi.com/ ↑わたぼうしの皆さん 「地域支援センターわたぼうし」とは 日本福祉大学通信教育部の学生が「こんな地域になるといいよね」「こんな場所があったらいいよね」という思いを寄せ合い、設立したNPO法人です。半田市内で学童保育・児童デイサービスを中心に、誰でも地域の中で暮らし続けることの出来る社会を、という理念の下活動をしています。半田市内では始めての共生保育の実践の場にもなっています。 「メッセージ」 何事もほどほどが大事です。これは我が息子の名言。大きな施設では合理化が始まります。それは職員のため。小規模多機能であることの意義、みんなが主体となれる暮らしの「場」を増やしていきたいですね。

  50. 竹松康輔 さん 虫眼鏡倶楽部  半田市柊町4丁目209-4 Tel 090-1822-8871 E-Mail take1@cac-net.ne.jp ↑竹松さんの自画像 「虫眼鏡倶楽部」とは 精神障がいを持つ当事者による当事者のためのアート活動支援を行っています。私も精神障がいをもつ当事者の一人です。仕事や生活に追われる中でもっと違った生き方はないのかと考えました。そこでたどりついたのがアート(文化)です。真に豊かな街づくりに文化的な側面が欠如してはいないか。そこを切り口にして当事者も街づくりに参加していこうと考えています。 「メッセージ」 2年程前からNPO法人菜の花で休み休み働かせてもらっています。そんな中で精神障がい者の雇用も視野に入れた今回の計画を知って関心を持ちました。協力できる事があればと思い参加しました。 松下典子 さん 特定非営利活動法人 地域福祉サポートちた 知多市緑町31-1 Tel0562-33-1631Fax0562-33-1743 E-Mail cfsc@npo-jp.net URL http://www..cfsc.npo-jp.net ↑市民、職員が半数づつ参加した知多市職員研修の様子 「地域福祉サポートちた」とは 地域の課題を解決するために団体や組織の立ち上げの相談や設立支援。また、活動している組織の運営や専門性を学ぶ研修会を開催しNPOの信頼と基盤作りをしています。特に、毎月福祉分野の活動現場を見ていただく現場バスツアーは好評を得ています。ひとり一人が地域の主人公として行動、活動するきっかけ作りをしています。 「メッセージ」 小規模多機能、共生の拠点づくりは、地域再生のひとつの手段です。日常の暮らしの支えあいと、多様な生き方を実現するための新しいしくみ作りでもあります。人のつながり、社会資源を大切に安全安心、豊さが実感できる現場作り、人づくりを支援していきます。

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