470 likes | 659 Views
J-PARC における ストレンジネス核物理. 谷田 聖 (京都大学) 2008 年 6 月 25 日 セミナー@筑波大学. ストレンジネスを持つ原子核. 原子核: 核子(陽子と中性子)の多体系 クォークのレベルで見ると、アップ( u )とダウン (d) → p(uud), n(udd) クォークは実は 6 種類ある ストレンジネスを持った粒子 = ハイペロン L =( u d s ), S + ( uu s ), X 0 =( u ss ), ... (注: s クォークはストレンジネス -1を持つ) より広い原子核の世界へ.
E N D
J-PARCにおけるストレンジネス核物理 谷田 聖(京都大学) 2008年6月25日 セミナー@筑波大学
ストレンジネスを持つ原子核 • 原子核: 核子(陽子と中性子)の多体系 • クォークのレベルで見ると、アップ(u)とダウン(d)→ p(uud), n(udd) • クォークは実は6種類ある • ストレンジネスを持った粒子=ハイペロンL=(uds), S+(uus), X0=(uss),...(注:s クォークはストレンジネス -1を持つ) • より広い原子核の世界へ u c t d s b
記法 • A: バリオン数(核子とハイペロン全部) • Z: 全電荷(陽子数ではない!) • L: ハイペロン(L, S, Xなど) • 例: • 1. 3p + 3n + 1L 7LLi • 2. 2p + 2n + 2L 6LLHe • 3. 1p + 2n + 1X0 • 2p + 1n + 1X- • 普通ハイパー核と呼ばれる 4XH (区別できない)
ハイパー核Chart まだまだ未踏の世界
どんな物理? • 新しい相互作用が現れる • 核力の拡張 [SU(3)対称性] • 核力も含めて、バリオン間に働く力を統一的に理解し、その起源に迫りたい • 伝統的な中間子交換模型で十分か?クォーク・グルーオンの自由度が現れるのでは? • ハイペロンの原子核中での性質は? • ハイペロンは混ざりやすい→ よりダイナミックなシステムへ • 逆に原子核はどうなる?不純物効果? • Lが入った原子核が縮む効果は実験的に検証されている • 集団運動に変化?より高密度化?
J-PARCとは? • J-PARC = Japan Proton Accelerator Research Complex • 50 GeVの陽子加速器を中心とした大強度加速器群 • 50 GeV×15 mA = 750 kW • KEK-PSの100倍、BNL-AGSの10倍の強度のビームを供給 • 世界で最も強力なK中間子のビームが得られる→ 他の施設の追随を許さない研究が可能 • 現在茨城県東海村において建設中 • 2008年末には最初の50 GeV陽子ビームが出てくる予定 • 2009年からストレンジネス核物理の実験を行う予定
J-PARCでのプロジェクト一覧 • 物性・生命(中性子・μ) • 核変換 • 原子核物理 • ストレンジネス核物理 • ハドロン分光 新しいハドロンの探索 • 陽子構造 • 高密度原子核物質 • 不安定核 • 素粒子物理 • ニュートリノ振動 • K中間子崩壊 • μ稀崩壊
24の実験提案のうち、9つがストレンジネス核物理24の実験提案のうち、9つがストレンジネス核物理 • すべてScientific approval, 7つがフル採択、4つはDay-1 • その他にPentaquarkΘ+探索実験(E19)がDay-1
S=-2の世界 • 初めてhyperon-hyperon相互作用が現れる • ここがわからないとmulti strangeness系に行けない。 • 非常にdynamicなシステムなのでは? • Large baryon mixing? 質量差に反比例 • XN-LL-SSが混ざった状態としてのHダイバリオン? • ほとんどわかっていない J-PARCでの中心課題
S B8B8(I) 1E, 3O (P=symmetric) 3E, 1O (P=unsymmetric) NN(0) NN(1) ― (22) (03) ― ‐1 LN SN(1/2) SN(3/2) [(11)s+3(22)] [3(11)s‐(22)] (22) [‐(11)a+(03)] [(11)a+(03)] (30) LL XN(0) XN(1) SL SS(0) SS(1) SS(2) (11)s+ (22)+ (00) (11)s‐ (22)+ (00) (11)s+ (22) ー (11)s+ (22) (11)s- (22)- (00) ― (22) ― (11)a [‐(11)a+(30)+(03)] [(30)‐(03)] ― [2(11)a+(30)+(03)] ― ‐3 XL XS(1/2) XS(3/2) [(11)s+3(22)] [3(11)s‐(22)] (22) [‐(11)a+(30)] [(11)a+(30)] (03) XX(0) XX(1) ― (22) (30) ― B8B8 systems classified in the SU3 states with (l, m) 0 ‐2 ‐4
H-particle ( H-dibaryon ) flavor-singlet (00) state ( ストレンジネス-2, アイソスピン 0 すなわち ΛΛ-ΞN-ΣΣ系の 1S0-state ) におけるカラー磁気相互作用の振る舞い 短距離斥力は現れず、代わりにかなり強い短距離引力になる! u u s s d d コンパクトな6クォーク系の 新粒子が存在するのでは? ↓ 30年来,世界中の実験家が探索実験に奔走! → ・・・未だ発見されず。 ΛΛ系のすぐ上にある共鳴状態? ⇒ 依然としてストレンジネス-2の系における課題 u s s d d u
採択された実験 E03:Measurement of X rays from X- atom Spokesperson – K. Tanida (Kyoto) E05: Spectroscopic study of X-hypernucleus, 12XBe, via the 12C(K-,K+) reaction (Day 1 – 1st priority) Spokesperson – T. Nagae (Kyoto) E07: Systematic study of double strangeness system with an emulsion-counter hybrid method Spokespersons – K. Imai (Kyoto) K. Nakazawa (Gifu) H. Tamura (Tohoku) E03 E05 E07 S=-2では3つの実験が採択された
E05 X核分光 • Missing mass spectroscopy of 12C(K-,K+)X • 12XBe, 12LLBe 1.8 GeV/c K-ビーム 大強度 1.2x106 K- /spill (Phase-1) 高純度K-/p- ~6.9 Proton beam 30GeV-9mA
X 系の重要性 • XN (有効)相互作用 • 例: XN LLはどれだけ強いか? • H dibaryonの存在と関連 • LL-hypernucleiにおいて、どれだけXNは混ざるか? • One meson exchange 模型では交換相互作用が禁止 • 質量依存性はどうか? • 中性子星への影響 • X-は負の電荷を持つので、中性子星では早く現れるかも • XA 相互作用、特にその質量依存性が大事 • S-が重要であると考えられてきたが、核内で強い斥力を受けることがわかってきた。
XN相互作用モデルとXA光学ポテンシャル • One boson exchange (NHC-D, Ehime) • odd state に引力 強いA依存性 • ESC04d* • 3S1(T=0)に強い引力
~30msr 2.7T(395A) ~1.5T SksPlus Spectrometer PK+ ~1.3 GeV/c Dp/p=0.12% • 95°total bend • ~7m flight path • Dx=0.3 mm (RMS) 高分解能: DE~ 3 MeV
12C(K-,K+)12XBe spectracalculated by W.S. potential DEdet=0 MeV K.Ikeda, et al, Prog. Theor. Phys. 91 (1994) 747 ; Y.Yamamoto, et al, Prog. Theor. Phys. Suppl. 117 (1994) 281 P.Khaustov, et al. Phys. Rev. C61(2000)054603
Expected 12XBe Spectrum VX= -20MeV p X DE = 3 MeVFWHM ビームタイム1ヶ月 [counts/0.5MeV] s X 光学ポテンシャル の決定 VX= -14MeV -BX [MeV]
Fe target K- K+ X- X ray E03X原子のX線測定 • X-atom のX線を測る世界初の実験 • X-A の Optical Potential の直接測定 • Fe(K-,K+) 反応による X-生成 → 静止 X- → X線測定 • 方法の確立を目指す • 数多くのX線測定で、 XA相互作用の解明へ • ダブルL核のg線分光にもつなげていきたい
実験の原理 • 原子 – 波動関数を精確に計算可能 • 1次摂動 • Optical Potential の形を仮定すれば、1つの測定でその強さは決定可能。 • 数多くのデータがあれば、形も決定できる。 • 1次摂動が良い近似でない場合でもこれは成り立つ • 直接測定できる(ただし主に周辺部にのみ敏感) X原子核のSpectroscopy • p-, K-,`p, S-に対して実績ある、強力な手法
l=n-1 (circular state) X l=n-2 l=n-3 ... Energy (arbitrary scale) ... Z nuclear absorption ... X Z ... l (orbital angular momentum) X ray energy shift – real part Width, yield – imaginary part
ターゲットの選択 • Physics view: Batty et al. PRC59(1999)295 • あるX線に対して、最適なターゲットが存在する • 始状態での吸収は十分弱い • X線のエネルギーシフトと幅が最大 (~1 keV) • n=3,4,7,9のそれぞれに対して、9F, 17Cl, 53I, 82Pbを提案 • 最適なターゲット: Optical Potentialによって決まる 最初の実験の前にはわからない
最初の実験では・・・ • 実験的な理由で決める 鉄を選択 • 生成率: A-0.62(断面積がA0.38でスケール) • Xの静止確率: 高密度(r~10 g/cm3)のターゲットが必要(X- range: 10-20 g/cm2, bgct ~ 2cm) • ターゲットによるX線の吸収: significant at large Z 小さなZ(A)、でも高密度が必要 • 小池さんによる計算: 鉄の n=6 5 遷移 • Woods-Saxon potential: -24 - 3i MeV • Energy shift: 4.4 keV, width: 3.9 keV • 静止 X-あたりの収量: 0.1 (核による吸収がなければ~0.4)
実験のセットアップ K1.8 beamline of J-PARC
(K-,K+)反応の測定 • KEK-PS K2ビームラインで使われてきたもの • Large acceptance (~0.2 sr) K- K+ 1.8 GeV/c 1.4x106/spill (4s)
X線測定: Hyperball-J • ゲルマニウム検出器~40台 • PWO anti-Compton • ピーク効率 • 16% at 284 keV • 高レート耐性 • < 50% deadtime • キャリブレーション • In-beam, frequent • 精度 ~ 0.05 keV • エネルギー分解能 • ~2 keV (FWHM)
予想X線スペクトル(1) n= 65 shift & width 4 keV • エネルギーシフト: ~0.05 keV (systematic dominant) • 予想されるシフトに対して十分
予想X線スペクトル(2) n= 65 shift & width 0 keV • 幅: ~ 1 keVくらいまでは直接測れる。 • X線の収量から、さらに情報
E07Hybrid Emulsion実験 ~10000個のX-を原子核乾板中に静止 100個のLL核の検出 LL相互作用
LL核の生成 Xp LLが運良く 核内に残る(~10%)
エマルジョン中のイベントの例 • 各軌跡の長さ・太さ • 粒子の種類・エネルギー • 各バーテックスで何ができたかを推定 • ハイパー核の束縛エネルギーを出す。DBLL = BLL - 2BLがLL相互作用による分→ 弱い引力?
X X p n p n LL束縛エネルギーのsystematics • DBLLは原子核によって違うかも知れない • 例えば Hyperon mixing によって変わり得る 5LLHe 6LLHe p L n L p n Enhance される Suppress される
S=-1の実験 • E10: Production of neutron-rich Lambda-hypernuclei with the double charge exchange reaction Spokespersons – A. Sakaguchi (Osaka), T. Fukuda (Osaka E. -C.) • E13: Gamma-ray spectroscopy of light hypernuclei Spokesperson – H. Tamura (Tohoku) • E15: A search for deeply-bound kaonic nuclear states by in-flight 3He(K-,n) reaction Spokespersons – M. Iwasaki (RIKEN), T. Nagae (Kyoto) • E17: Precision spectroscopy of kaonic 3He 3d2p X-rays Spokesperson – R. S. Hayano (Tokyo), H. Outa (RIKEN) • E18: Coincidence measurement of the weak decay of 12LC and the three-body weak interaction process Spokespersons: H. C. Bhang (Seoul), H. Outa (RIKEN), H. Park (KRISS) • E22: Exclusive study on the LN weak interaction in A=4 L-Hypernuclei Spokespersons: S. Ajimura (Osaka), A. Sakaguchi (Osaka)
S=+1の実験 • PentaquarkΘ+は S=+1を持つ • もし本当に存在するならば、S=+1での核物理ができる可能性 ? S=+1
Θハイパー核 • ハイペロンの相互作用をさらに拡大して、ΘN相互作用を。 • Θとは何か、に対するヒントにもなる。 • 例えば、[D. Cabrera et al., nucl-th/0407007]によると、Θ-KNのみを考慮したSelf-energy計算(早い話がK交換)では、弱すぎて束縛しない。 • Θ-KπNを考慮すると、強い引力(~100 MeV)が得られる。(N(1710)がNππに強くcoupleすることを考慮) • 他にもいろいろなシナリオがあり得る。 • まあ、あるなら作ってみたい。
(K+,p)反応 • 素過程: d(K+,p)Θ • 運動量移行: 前方ではほぼ0にできる。 • 高分解能測定が可能
d(K+,p)Θ反応 • on-shell 近似 • ポストプレイによって、遅いKを供給。それが残りの核子と共鳴を作るという2段階反応。 • 初段は pK+ pK+, nK+ pK0の2種類 • 断面積 ∝ (quasi-free 反応の断面積)×(フェルミ運動によって共鳴条件が満たされる確率) • 一方で、0.1-0.5 mbという見積もりもある[nucl-th/0705.3965] • K+の原子核ターゲットによる吸収のデータをextrapolate • Θが KpN とカップルすることによって生じるΘNKNNという効果によるものと考えることができる。 • 原子核ターゲットでは、より顕著な効果 n Θ K p
on-shell 近似での計算例 永廣さんによる ds/dW×2π(mb/sr) Γ=1 MeVだと、~1 mb/sr(重心系) cosθ(CM系)
実験セットアップ • 前方スペクトロメータ+横方向カウンター • 横方向の粒子に対しては、運動量分解能は不要、 • ただし、低エネルギー陽子を捕まえる工夫が必要。 toSKS+
原子核ターゲットでは? • 核子による散乱、別の核子による吸収の両方とも増加 • s-shell核(4He)ならrecoillessで効率よく生成可能 dターゲットの場合と同じくらいの統計が得られる? • Fermi運動が大きくなるので注意が必要。 • 重い核は難しいかも。 • バックグラウンド増加 • 崩壊後のp/K0が抜けて来なくなる。 • ただし、ΘNKNNが効くような場合は断面積が増加。 • ハイパー核の状態幅は? • パウリ効果、phase spaceの減少によってfree-spaceよりも細くなるはず。 • 逆に太くなったりすると面白い(ΘNKNNの効果?)
まとめ • 現在建設中のJ-PARCにおいて、ストレンジネス核物理はメインの研究テーマ • 9つの実験が提案・採択済み • 5つのDay-1実験 • さらに多くのアイデアが考えられている • 世界最強のKビームを活かして、S=-2から+1まで幅広い実験が考えられている。 • 実験は2008年度末ごろから開始予定 • 今後もJ-PARCにおける発展が期待できる