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政府系ファンド(SWF)の役割と政策的インプリケーション. 2009 年 1 月 12 日 日本経済調査協議会・吉國委員会委員長 みずほ証券 ( 株)シニアアドバイザー 吉國眞一 ※ 本稿の情報は個人の見解により作成していますので、その正確性・完全性を保証するものではありません。なお、記載された見解や予測は作成時点に於ける判断ですが、その後の状況変化に応じて予告なしに変更される場合がありますので、予めご了承ください。. 日経調「吉國委員会」の活動. 委員長吉國眞一みずほ証券シニア・アドバイザー
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政府系ファンド(SWF)の役割と政策的インプリケーション政府系ファンド(SWF)の役割と政策的インプリケーション 2009年1月12日 日本経済調査協議会・吉國委員会委員長 みずほ証券(株)シニアアドバイザー 吉國眞一 ※ 本稿の情報は個人の見解により作成していますので、その正確性・完全性を保証するものではありません。なお、記載された見解や予測は作成時点に於ける判断ですが、その後の状況変化に応じて予告なしに変更される場合がありますので、予めご了承ください。
日経調「吉國委員会」の活動 • 委員長吉國眞一みずほ証券シニア・アドバイザー 主査武田真彦一橋大学教授 • 金融機関、シンクタンク、大学等の国際金融エコノミスト、企業の金融担当幹部を中心に15名の委員で構成 • SWFに精通する識者からのヒアリング、中東、シンガポールのSWFへの訪問等を実施 ---八城政基(新生銀行)、高安健一(日本 総研)E. Truman(IIE)伊藤隆敏(東大)他
SWFを巡る議論の展開 • 黒船 → 白馬の騎士 → グローバル経済の重要なプレーヤー • 最近では関心低下の面も(投資スタイルの慎重化、原油価格低下、新興国の外貨準備取り崩し) • わが国のSWF創設論も運用資産総崩れ状況、金融性悪説台頭などでやや下火に • インベストメントバンクやヘッジファンド等の投資行動が軒並み消極化するなかでグローバル経済でのリスクテーカーとしてのSWFの重要度は相対的に増しているとの評価も可能
グローバル経済とSWF • 冷戦崩壊からアジア経済危機以降新興経済のビジネスモデルが変化し世界の貯蓄・投資バランスが激変 • いわゆるブレトン・ウッズIIの成立 ---世界最大の途上国としての米国経済 ---経常黒字下での高成長を続ける中国経済、 産油国経済 ---世界最大の新興経済圏としての日本経済 ---冷戦終結とアジア通貨危機
グローバル経済とSWF • 新興経済圏の過剰貯蓄が巨大な途上国アメリカの貯蓄不足(経常赤字)をファイナンスする壮大なパラドックスが高成長と低インフレの組合せを実現(goldilocks economy) • 日本は、「円キャリー・トレード」を通じてこうしたグローバルな資本フローのダイナミクスに新興経済圏の側から大きく関与 • サブプライムに代表される行過ぎた金融活動と資産バブルの相互作用がgoldilocks経済を「花見酒経済」へ変質させた
金融後進地域に止まる新興経済圏 • タタ財閥によるコーラス、ジャガーの買収は、製造業におけるBRICs、アジアの躍進を象徴 • しかし、これらの買収合戦は、欧米の金融機関等が取り仕切り、専らロンドンで展開 • グローバル金融危機はこうしたグローバル・ファイナンスの構造に変化をもたらしつつある ---存在感増すSWFと日本の金融機関
SWFの定義と基本概念 • そもそもSWFとは何か、政府系ファンド?国富ファンド? • 資金調達(負債)と資金運用(資産)、オーナーシップとアカウンタビリティー • 外貨準備、年金基金との線引き、狭義のSWFは何を目指すのか
SWFの定義(Santiago Principle) • SWFs are defined as special purpose investmentfunds or arrangements, owned by the generalgovernment. Created by the general government formacroeconomic purposes, SWFs hold, manage, oradminister assets to achieve financial objectives, andemploy a set of investment strategies which includeinvesting in foreign financial assets. The SWFs are commonly established out of balance of paymentssurpluses, official foreign currency operations, theproceeds of privatizations, fiscal surpluses, and/orreceipts resulting from commodity exports. • 政府の保有するファンドであって、マクロ経済的な目的を持って国際収支や財政の黒字、公的資産の売却収入等を原資に設立されるが、純粋の外貨準備や公的年金基金、国営企業と区別され、外貨資産への投資を含むことが条件となる。
主要な政府系ファンド等の一覧 単位:10億ドル 国 ファンド 資産 設立 資金源 IWG加盟 透明性指数 875.0 1976 3 UAE アブダビ投資庁 石油 ○ 433.0 1952 2 サウジ サウジアラビア投資庁 石油 × 330.0 1981 6 シンガポール シンガポール政府投資公社(GIC) 非商品 ○ 311.6 1979 2 中国 国家外貨管理局 非商品 × 301.0 1990 10 ノルウェー ノルウェー政府年金(グローバル) 石油 ○ 264.4 1953 6 クウェート クウェート投資庁 石油 ○ 200.0 2007 6 中国 中国投資有限責任公司 非商品 ○ 173.0 1998 7 香港 香港通貨庁 非商品 × 189.7 2008 5 ロシア 準備基金/国民福祉基金 石油 ○ 134.0 1974 8 シンガポール テマセク・ホールデイングス 非商品 ○ 82.0 2006 4 UAE インベストメント・コーポレーション・ドバイ 石油 × 74.0 2000 5 中国 全国社会保障基金 非商品 × 60.0 2003 5 カタール カタール投資庁 石油 ○ 50.0 2006 2 リビア リビア投資庁 石油 ○ 47.0 2000 1 アルジェリア 歳入規制ファンド 石油 × 43.8 2004 9 豪州 将来ファンド 非商品 ○ 39.8 1976 10 米国 アラスカ永久ファンド 石油 ○ 38.0 2000 - カザフスタン カザフスタン国家ファンド 石油 × 30.8 2001 10 アイルランド 国家年金準備ファンド 非商品 ○ 30.0 1983 1 ブルネイ ブルネイ投資庁 石油 × 30.0 2005 9 韓国 韓国投資会社 非商品 ○ 注:IWGは、政府系ファンドの行動規範を協議したIMFの会議の名称。正式加盟国は19カ国の22ファンド。 資産、資金源、透明度指数は、Sovereign Wealth Fund Instituteによる(2008年10月更新データ)。 Sovereign Wealth Fund Institute 出所:米ソブリン・ウエルス・ファンド・インスティチュート( )
◇主な政府系ファンドの投資対象 債券 上場株式 不動産・インフラ投資 ヘッジファンド プライベートエクイティ ロシア安定化基金 年金積立金管理運用※ ノルウェー年金基金 ムバダラ開発会社 中国投資有限責任公司 テマセク・ホールディングス アブダビ投資庁 クウェート投資庁
欧米金融機関への出資(億ドル) • アブダビ投資庁(75)、シンガポール政府投資公社・クウェート投資庁(145)→シティグループ • テマセク・シンガポール(84)、クウェート投資庁・韓国投資公社(各20)、みずほCB(12)→メリル・リンチ • シンガポール政府投資公社(98)→UBS • カタール投資庁等(100Sfr)→クレディスイス • 中国投資有限責任公司(50)→モルガン・スタンレロンドン証取、ユーロネクスト、OMX(北欧証取連合)などにもSWFの出資、中国CICはPEファンド (Blackstone)にも資本参加
SWFと国際金融体制 • サンティアゴ宣言とG20体制の確立 ーーー新興経済の発言力強化とかつてのG5/G7体 制の長所を如何に両立させるか ーーーIWGにSWF保有国として参加した米国の強 かな計算 • 問われる日本の対応 ーーーG7で唯一巨額の外貨準備を持ち、大規模な SWFを設立可能な国として、先進国と新興 経済の橋渡しの責任
SWFの透明性、アカウンタビリティー • IIF(Peterson Institute)のscoreboard ---Truman作成、サンティアゴ原則にも 大きな影響を与えたSWFの評価 ---年金基金も含めた46のSWFについて33項 目の基準に従い0~8のスケールで採点 ---先進国のファンド(ノルウェー、米アラスカ、 GPIF等)は軒並み高得点(30点前後)、新 興経済圏は総じて低い
SWF行動規範(サンティアゴ原則) • 2007.10G7声明(SWFに関するベスト・プラクティスの作成をIMF等に要請) • SWF保有国サイドからの反発(ダヴォス会議のSummers vs Al Jasser 論争) • 2008.4OECD投資委員会 SWFと投資受入国の対応に関するレポート • 2008.10IWG(SWFに関するワーキング・グループ)GAPP—generally accepted principles and practices をIMFC(not G7)に提出
SWF行動規範(サンティアゴ原則) • 以下の点をカバーする24のGAAP ①健全な国際金融システムと自由な資本移動の 確保 ②投資受入国の規制やディスクロージャー制度 の尊重 ③経済・金融的なリスク・リターンに沿った投 資決定 ④透明かつ健全なガバナンス構造を通じた適切 なオペレーションのコントロールとリスク管 理、アカウンタビリティーの確立
日本におけるSWF創設論議 • SWFを広く定義すれば日本は既に世界最大級のSWF保有国 わが国の対外資産総額 547兆円 • このうち … 外貨準備 95兆円 GPIF 外貨資産 19兆円 • 広い意味で政府管理下にある外貨資産は 外貨資産総額の2割、同純資産の約3分の1 注: 2008 末計数。GPIF—年金積立金管理運用独立行政法人(総資産約150兆円)。
わが国外貨準備の相対的規模ー先進国としては異例の高水準ーわが国外貨準備の相対的規模ー先進国としては異例の高水準ー
外準および年金資産の運用形態 • 外準 —運用状況は公表されていないが、債券・預金が対象で、米ドル比率が極めて高いと見られる。 • GPIF —外貨債券、外国株のシェアは市場運用分のそれぞれ 8.1%、10.6%。外国資産の目標比率は既に達成されている。通貨別の構成比は公表されていないが、リスク分散を図ることは運用方針として明記。
グローバル金融危機とSWF • グローバル金融危機の中で投資態度は全般的に様子見姿勢に転換 • 危機一巡と共に投資活動活発化の兆しも ---CICは業績の急回復から運用資産増加観測が台頭、シンガポールも損失のかなりをリカバー • インベストメント・バンクの消滅、ヘッジ・ファンドの退潮のなかで「最後のリスク・テイカー」としての役割に期待 • 長期的な国益を見据えたSWFの活用 ---高齢化、人口減少、「国全体が直面するマクロリスク」への対応、国際金融センターを目指した体制整備
グローバル金融危機とSWF • “Money will not manage itself, and Lombard street has a great deal of money to manage” ----Walter Bagehot “Lombard Street” • Today, Asia has a great deal of money, but the money is still managed in Lombard/Wall Street (and by American and European financial institutions and low/accounting firms) • SWFs, together with Asian supervisors and central banks, should work together to change the status quo and to make Asia not only a production base but also a money centre of the global economy