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すばる秋の学校 2011. ネコでも分かる 可視撮像データ解析. 国立天文台 寺居 剛. 資料提供:小宮山 裕さん(国立天文台). 撮像観測とは. 天文学者の目指すこと 天体から放射される光を 数値化・定量化 し、背後に潜む天体の物理を解明する 撮像観測 ある特定の波長帯の光を選択し、天体の像を写し撮る 明るさ・色・形態 (二次元的)空間分布 時間的変動(変光・空間移動量). データ解析とは. 我々が手にするのは・・・ 画像ファイル
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すばる秋の学校2011 ネコでも分かる可視撮像データ解析 国立天文台 寺居 剛 資料提供:小宮山 裕さん(国立天文台)
撮像観測とは • 天文学者の目指すこと • 天体から放射される光を数値化・定量化し、背後に潜む天体の物理を解明する • 撮像観測 • ある特定の波長帯の光を選択し、天体の像を写し撮る • 明るさ・色・形態 • (二次元的)空間分布 • 時間的変動(変光・空間移動量)
データ解析とは • 我々が手にするのは・・・画像ファイル • 天体からの光は、観測する過程において、大気・望遠鏡・CCDなど様々な要素から様々な影響(変形・変換・加算などなど)を受け、デジタルデータ(画像ファイル)となる • これらの影響(変形・変換・加算などなど)を補正して、天体から来る真の光強度を画像ファイルから導き出すことが必要になる
可視撮像データ解析 • 以下ではすばる主焦点カメラ(Suprime-Cam)のデータ解析を通して、撮像観測データの解析について解説する。 • (CCDを使った)可視撮像データについては、Suprime-Camのデータ解析を学んでおけば大抵対応可能。 • Dark補正、Linearity補正、迷光補正などが入ることがある。 • 赤外撮像データについても基本的な考え方は同じ。あとは赤外線検出器に起因して必要になる操作、Backgroundが高いことによる特別な操作、などが加わる。 • 分光データについても一次解析はほぼ同じ。
すばる主焦点カメラ(Suprime-Cam) ・すばる望遠鏡の主焦点に搭載される可視広視野撮像装置 ・ 2048×4096 画素のCCDを10枚並べたモザイクカメラ ・ 8m級望遠鏡の中で最大の視野 (34ʹ×27ʹ = 満月の大きさ) ・すばる望遠鏡の観測時間の約30%で使用されている ・ 数々の成果を上げている、世界に誇る観測装置
すばる主焦点カメラ(Suprime-Cam) • Suprime-Cam • 2048x4096 pixelのCCDが10枚 • CCDチップ間にギャップがある • 通常の観測 • フィルターを装着し、特定の波長の光を透過させ、CCDで受ける • 単色(白黒)画像が得られる • 数秒から数十分間シャッターを開きっぱなしにして、CCDに光をためる(積分、露出、露光)
データ解析とは • 天文学者の目指すこと • 天体から放射される光を数値化する • そのために、 • より多くの光を集めるために望遠鏡を使用する • 望遠鏡で集めた光情報を記録するためにCCDを使用する • 我々が手にするのは・・・画像ファイル • 天体からの光は、観測する過程において、大気・望遠鏡・CCDなど様々な要素から様々な影響(変形・変換・加算などなど)を受け、デジタルデータ(画像ファイル)となる • これらの影響(変形・変換・加算などなど)を補正して、天体から来る真の光強度を画像ファイルから導き出すことが必要になる
天体からの光が画像ファイルになるまで 画像 ファイル 電気 信号 光 基本的には手順を逆にたどって補正していけば 元の情報(天体からの放射)を導くことができる
天体からの光が画像ファイルになるまで • 数式で表すと、 • 天体からの光は、 raw = ((object + sky) ・tobs ・flat + dark ・tdark) /gain + bias • 空間情報は、 raw(x,y) = opt(atm(object(x,y)) object raw 注) 2008/7以前のデータ
データ解析に必要な情報 • 画像ファイル • 天体が写っている画像 • 較正用(Calibration)画像 • 観測装置固有情報 • ハワイ観測所 Suprime-Camのページ • http://www.naoj.org/Observing/Instruments/SCam/index.html • Suprime-Camの論文 • Miyazaki et al. 2002, PASJ, 54, 833 • 文献検索 • ADS: http://ads.nao.ac.jp/ • Webデータベース • NED: http://nedwww.ipac.caltech.edu/ • Vizier: http://vizier.nao.ac.jp/vizier/
データ解析の基本:FITSファイル • 天文用画像ファイルの基本フォーマット • Flexible Image Transport System • http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~kanamitu/fits/ • ヘッダー部 • 観測情報(日時、座標、積分時間、フィルター、など) • 普通のテキストファイルのように、moreコマンドなどで見ることができる • e.g., more SUPA00017034.fits • データ部 • ヘッダー部で指定された形式(データのバイト数やピクセルの数など)に従って記述されている • Suprime-Camの生データの命名規則 • 名前(例):SUPA00017456.fits Suprime-Cam の生データ データ番号 (Frame ID)
データ解析の基本:FITSヘッダー Suprime-Cam のFITSヘッダー(一部) ・・・・
ds9 開発: SAO http://hea-www.harvard.edu/RD/ds9/ skycat 開発: ESO http://archive.eso.org/skycat/ データ解析の基本:FITSファイル画像Viewer その他:Makalii: http://www.nao.ac.jp/others/Makalii/index.html
データ解析の基本: 画像解析ソフト • 基本解析パッケージ • IRAF: http://iraf.nao.ac.jp/ • MIDAS: http://www.eso.org/sci/data-processing/software/esomidas/ • 測光ソフト • SExtractor: http://terapix.iap.fr/rubrique.php?id_rubrique=91 • SDFRED (Suprime-cam Deep Field REDuction) • Suprime-Camの画像解析(一次解析)に特化 • 複数のショットを合わせて一枚の大きな画像にするまで(半)自動でできる • SDFRED 2008年6月以前のデータ (MIT CCD) • SDFRED2 2008年7月以降のデータ (FDCCD by Hamamatsu Photonics) • 両方とも下記にて一般公開中 • http://www.naoj.org/Observing/Instruments/SCam/sdfred/index.html.ja • 質問・困ったときには・・・ • ssgroup@naoj.org にメールで問い合わせる
データ解析の流れ: SDFRED • 画像ファイル名変換・画像確認 namechange.csh • Bias引き・overscanの切り取り overscansub.csh • Flat作り mask_mkflat_HA.csh • 感度補正 ffield.csh • ゆがみ補正・微分大気差補正 distcorr.csh • PSFあわせ psfmatch_batch.csh • Skyの差し引き skysb.csh • AG Probeの影をマスク mask_AGX.csh • 画像のマスク blank.csh+ • Matching(組み合わせ規則作り) makemos.csh • Mosaicing(組み合わせ) imcio2a • 一枚の大きな画像の完成!
Suprime-CamデータのJargon • chip: 1枚のCCD、またはCCD画像 • frame: 1枚のCCD画像 • shot: 1回の積分、または同時に撮られたCCD画像10枚組み
Bias Subtraction • Biasとは • CCDのピクセルにたまった電荷をAD変換 する際に付加される電圧がBias電圧 VCCD=QCCD/C V = VCCD+Vbias AD変換: DN=f(V(x,y)) =f(VCCD(x,y))+f(Vbias(x,y)) • BiasはCCD読み出しエレキによって付加されるもので、天体からの光ではない 差し引くことが必要 • 電荷0の状態でCCDを読み出すことによってBias画像 f(Vbias(x,y)) を得ることができる。 • しかしSuprime-Camの場合はBias画像は使わず、代わりにoverscan領域でBias画像の代用とする CCD Bias + ADC 画像
Bias Subtraction • overscanとは • CCDは素子上を電荷が転送される • 実ピクセル数以上読み出せば、仮想的に電荷0の状態を読み出すことができる(overscan) • Suprime-Camでは各columnごとにoverscanからbiasレベルを推定する • overscanからbiasレベルを推定し、画像全体から引き算してくれるタスクが、overscansub.csh • このタスクにより同時にoverscan領域が切り取られる • したがって出来上がった画像のサイズは小さくなる 2048pix 32pix
Bias Subtraction • Suprime-Camの新CCDチップ (2008年8月~) • CCD1チップにつき4つの読み出し口(チャンネル)がついた。Overscanも各チャンネル毎に付加されている。 • 同一チップ内でもチャンネル毎にOverscanの値は異なる。 • 512x4096ピクセルのCCDが4つ並んで1つの画像となっていると思ってもよい • Overscansubでoverscan領域が切り取られるが、チャンネル毎にゲインが異なるため、チャンネルの境目で段差があるような画像となっている(3ページ後の画像を参照)。 Ch1 Ch2 Ch3 Ch4 Ch1とCh2のOverscan 512pix 48pix
Flat Fielding • 天体からくる光は100%CCDで受け取れるか? • 否。各所でどんどん減光されていく I = I0・K・f(x,y) • 視野内で一様なもの (K) • 星間吸収と大気による吸収は視野内で(ほぼ)一様 • 視野内で非一様なもの ( f(x,y) ) • 望遠鏡光学系によって視野端に減光を受ける部分がある • フィルターの透過率も場所ごとに若干異なる • CCDもピクセルごとに異なるQEを持つ • これら視野内で非一様な感度のムラをすべてひっくるめて補正するのが flat fielding (個々のCCDごとに補正) • どうやって補正するか? • 空間的に一様な光源が望遠鏡の前にあればいい • dome flat screenに光を当てて一様(っぽい)光源を作る △ • object flat 画像の天体以外の部分を一様光源とみなす ○ • twilight flat 日没直後・日出直前の空を一様光源とみなす △
Flat Fielding I(x) • object flat • 天球上で天体以外の部分(sky)から来る光は空間的に一様であるとみなすobject画像に写っているskyはf(x,y)を表す • 十分な数の大きな良質なobject画像が必要 • 一声15ショット以上必要 • 良質=skyのカウントが十分。広がった天体が写っていない。天体が混んでいない • 同じランのもので作るのが望ましいが、前後数ヶ月くらいのものを混ぜて作ることもある • object画像(またはdomeflat, twilightflat画像)からflat画像 ( f(x,y) ) を作るタスクが mask_mkflat_HA.csh、できたflat画像で各object画像を割るタスクがffield.csh x f(x) x
Geometry Correction • 望遠鏡光学系により • 光軸から軸対象にスケールが変わる(像面歪曲、distortion) : すばる主焦点固有のparameterあり • 大気分散補正系(ADC)で補正しきれないスケールの視野内の差が生ずる(微分大気差) • これらを補正するためには、画像変形(画像のピクセルグリッドの切り直し)が必要。このタスクが distcorr.csh • 二つの補正を一回にまとめることによって空間情報の劣化を防ぐ • 出来上がった画像は周辺部に blank pixel (無効ピクセル)ができていて、光情報を含んでいるピクセルの形はもはや四角ではない。
Sky Subtraction • object画像には天体からの光に加えて、大気の放射光、黄道光などの光が加算される。これらの光をまとめてsky(background) と呼ぶ • ところが、skyは空間的時間的に変動している。このため、各画像のskyは各画像から求めるほかない。 • ユーザー指定のグリッド内の各ピクセルのカウントの分布を調べ、最頻値近くの値をとる • グリッド間はbi-linearで補完する • Skyを推定し、画像から引き去る タスクがskysb.csh • SDFREDではskyに対して天体が少ない ことを仮定しているので、広がった天体 などの場合には使えない • 自動化は至難。SDFREDでは不可能 sky 頻度 カウント値
多数画像の重ねあわせへ • ここまで行ってきた操作は個々のCCD画像のみ操作。 1枚だけの単一CCDの解析はこの程度をやっておけばOK • Geometry Correction は他の望遠鏡・装置では必要ないことも多い • 多くのソフトは独自にsky推定機能を持っているので、前述のsky subtractionは必要ないこともある • S/Nを上げるために多数の画像を重ね合わせる • S/N = (天体からのphoton数) / (主にskyからのノイズ) = nobject / sqrt(nsky) = N・n0,object / sqrt(N・n0,sky) ∝ sqrt(N) • 画像の重ね合わせをするために特有な画像処理が必要になる。その方法をこれから見ていく
通常のSuprime-Camの観測方法 • Dithering • CCDのギャップを埋める • CCDの欠陥(bad column)などを補完する意味もある • S/Nを向上させるためには • 相対的な位置 • 観測条件 の異なる画像を多数 重ね合わせる
PSF Matching • 点光源(星)の光は、大気・光学系などの影響によって広がった星像として観測される。この星像の広がりを Point Spread Function (PSF) と呼ぶ • 通常は大気ゆらぎによる影響が支配的なので、PSFは近似的にgaussianで記述することが多い • 異なるPSFを持つ画像同士を重ね合わせる前にはPSFの形を揃えてから重ね合わせる • 天体の形情報(と光強度)を損ねないため • s1のgaussianをs2のgaussianにするためには、 sqrt(s22 -s12)のgaussianを畳み込んでやればよい • 各画像のPSFの大きさを測定し、最大の大きさのPSFに形を揃える(画像をなまらせる)タスクがpsfmatch_batch.csh +
Mask AutoGuider • 最終画像に使えない部分にはマスクをかけ、以後使わないようにする • Auto guider の影 • Auto guider は焦点面の直前にあるため、たまによいガイド星がない場合にAuto guider が視野中心側に出てきて、Suprime-Camの画像上に影を作る。 • この影は光学系によるケラレと同種なので補正できるが、SDFREDでは影の部分にマスクをかけて以後使わないようにしている。 • これを自動で行うタスクが mask_AGX.csh • bad pixel、bad column、人工衛星のtrail、cosmic ray、etc • これらは blank.csh などを使ってマスクをかけていく AutoGuider 用CCD
Matching • 多数の画像を重ね合わせるには・・・ • 画像に写っている天体(主に星)を使って、frame間の相対的位置、回転を決める • 同時に天体の明るさから、frame間の相対的な明るさの比を決める • このようにして、多数の画像間の相対的位置・回転・明るさの比の組み合わせを決めるタスクが makemos.csh
Mosaicing • Mosaicing • Matchingで決まった多数の画像間の相対的位置・回転・明るさの比の組み合わせに基づき、画像を並べて足し合わせる。このプログラムが imcio2a • 重ね合わせの際には オプションがある • Median: CRや移動天体など はきれいに消えるが、fluxを 取りこぼす可能性がある • Mean: fluxは保存するが、 CRや移動天体などが残る • 一枚の大きな画像の完成
その後の処理 • 標準星解析 • 1カウントが何等級に相当するか? • 明るさの分かっている星(測光標準星)を観測することによって、等級原点を決定する • Color補正:Suprime-Camのフィルターと標準星の測光に使われたフィルターとの間の微妙な違いを補正する • Airmass補正: 大気による吸収量は大気の厚みに比例するとして、補正をかける。 • 吸収補正 • 星間物質による吸収を(必要に応じて)補正する • Schlegel et al. 1998, ApJ, 500, 525
Photometry • Photometry とは • 天体の位置や明るさ、大きさなどを測定すること • お手軽 photometry ソフト : SExtractor • 銀河研究者の多くが使用 • 天体の検出から測光まで ほぼ自動でやってくれる • IRAF / APPHOT • Aperture photometry • IRAF / DAOPHOT • PSF fitting photometry • 星が混んでいる領域専用 • 実はSDFREDにも ”measure” という測光 ソフトが同梱されている E. Bertin
Astrometry • Astrometryとは • 画像上の座標 (x, y) と天球上の座標(赤経赤緯)の間を較正し、画像上に天球座標を張ること • 球面である天球を平面に投影したものが画像であるため、単純な一次変換ではない。通常3次式以上で展開。 • 位置標準星カタログ • USNO-A2.0 catalog (可視) • 2MASS point source catalog (近赤外) • World Coordinate System (WCS) • 画像のx,yをRA, Decに(一次)変換する係数がFITS画像に埋め込まれている • Suprime-Camの単一画像にもついている。ds9などで出てくる。ただし精度はよくないので注意が必要。 • WCStools (SAO)、SCamp (Terapix)、mscred (IRAF)などを使って位置較正を行う
3色合成 • 異なるフィルターで撮られた同じ領域の画像をRGB各色に割り振ることによって、3色カラー画像を作る • 右図(Sextans A)の場合 • B V バンド画像 • G R バンド画像 • R I バンド画像 S-Cam
画像解析からScienceへ • フィルター1バンド 位置、大きさ、形状、光度 • 光度関数 (星・銀河) • 変光天体 (超新星、変光星、AGN、MACHO、系外惑星) • 移動天体 (衛星・太陽系小天体、固有運動) • 形状測定 (重力レンズ、構造解析) • 複数のフィルターを用いる カラー • 色を使った天体のclassification • High-z galaxies (LBG)、星や銀河の色等級図 • 特定の波長で光っている(吸収がある)天体の検出 • Lya emitter, 輝線領域、低金属量星 • 距離の推定(photometric redshift) • 星種族の推定(SED fitting)
Hyper Suprime-Cam ・開発中の次世代主焦点カメラ ・116枚のCCDを搭載 ・S-Camの7倍の視野(1.8平方度) ・来年春に試験観測を開始予定