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- 現代日本のお化け屋敷における 人の現れ -. 総合 人間 学部 3 回 山森 実希 高取 諒輔 中元 洸太 吉川 将平 ( 発表順 ). この半年間で行ったこと(研究方法). 仮設型お化け 屋敷での参与調査 文献 調査 現地 での採集 スタッフ・プロデューサーへの 聞き取り 各お化け 屋敷へのアンケート調査. 採集例. 仮設型お化け屋敷 ・ 1 月 11 日(土), 12 日(日) 兵庫 えびす 宮総本社 西宮神社 ・ 3 月 29 日 ( 土 ) ~ 4 月 13 日(日) 京都 八坂神社 (参与調査).
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-現代日本のお化け屋敷における人の現れ- 総合人間学部3回 山森 実希 高取 諒輔 中元 洸太 吉川 将平 (発表順)
この半年間で行ったこと(研究方法) 仮設型お化け屋敷での参与調査 文献調査 現地での採集 スタッフ・プロデューサーへの聞き取り 各お化け屋敷へのアンケート調査
採集例 仮設型お化け屋敷 ・1月11日(土),12日(日) 兵庫 えびす宮総本社 西宮神社 ・3月29日(土)~4月13日(日) 京都 八坂神社 (参与調査)
1.はじめに:「お化け屋敷」について 2.仮設→常設の流れは存在する ~場面型という側面~ 3.90年代、「劇場型」は何故生まれたか 4.お化け屋敷に見る緊張と快楽 〜お化け屋敷の楽しさを見る〜
お化け屋敷の流れ(主に戦前) 娯楽施設としての「お化け屋敷」の淵源:江戸後期 ・怪談・百物語の流行 ・技術の洗練:化物細工・生人形・妖怪の玩具 ・見世物:十界の見世物・死体見世物
ラビリンス(巨大迷路)との融合:明治時代 百貨店・博覧会などでの出し物:大正~昭和初期 戦後、造形技術の進歩、立体音響技術などの導入 お化け屋敷の流れ(主に戦前)
お化け屋敷を他のものと区別する条件 恐怖をもとに楽しませる娯楽施設であること 恐怖は「お化け」によってもたらされること 安全性が保障され信頼関係が成立していること 内部が外から見えず入口/出口があること
「お化け屋敷は人間の作ったフィクションである」「お化け屋敷は人間の作ったフィクションである」 という前提が お化け屋敷を作る側にもお化け屋敷を楽しむ側にもある。
お化け屋敷を分類する 興行主体・期間による分類
お化け屋敷を分類する 形式による分類
お化け屋敷の「お化け」とは お化けに類するものとして、例えば妖怪・幽霊といったものがあるが 学者によって使い分けはそれぞれ 井上円了・柳田國男 「お化け」≒「妖怪」? ・井上にとって、妖怪は「不思議」程度の意味 柳田國男に始まる「幽霊」「お化け」区別理論 ・小松和彦…幽霊を妖怪の特殊な種類とする ・宮田登…そもそも両者の区別に拘泥しない]
お化け屋敷の「お化け」とは • お化け屋敷の「お化け」たちは多種多様: お菊・河童・ゾンビ・口裂け女...etc • 一方でその表現に大きな差はない お化け屋敷で現れるもの⇒「お化け」
・江戸の人形見世物~博覧会 1950年頃 ・現代に続く仮設型お化け屋敷と常設型の興隆 1990年代 ・ストーリーとミッションを組み込んだ劇場型; 常設型での人の起用の積極化
1.はじめに:「お化け屋敷」について 2.仮設→常設の流れは存在する ~場面型という側面~ 3.90年代、「劇場型」は何故生まれたか 4.お化け屋敷に見る緊張と快楽 〜お化け屋敷の楽しさを見る〜
①仮設の特徴 ②仮設の仕掛け(キャストの動き) ③1990年以前の常設は仮設の延長線 (橋爪紳也氏の「迷路型」への疑問視)
「仮設型」の定義 「祭りや花見に合わせた短期間に荷主と呼ばれる興行社と香具師によって興行されるお化け屋敷の形態」
1950年頃 ある興行社が 現在のお化け屋敷の型を 確立した
興行社の減少 • 1981年…荷主100以上存在 • 1998年…21社に減少(お化け屋敷10社) • 現在…数えるほど
仮設の特徴 • 興行社と香具師 • 興行場所(大きさなど) • 短期間(2日~16日前後) • 安価(盗まれる危険性)
三好興行社の基本情報 ・1955年頃成立 ・代表:細見孝志 ・お化け屋敷・迷路・ピッチング・アーチェリー ・青森から福岡まで年に30か所程度興行
<三好興行社 年間スケジュール> • 7月4日~6日 平塚七夕祭り(神奈川) • 4日~6日 深谷七夕祭り(埼玉) • 11日~14日 杭全祭り(大阪) • 中旬 レトロ祭り(福島) • 24日~25日 天神祭(大阪) • 7月30日~8月1日 住吉大社夏祭り(大阪) • 8月初旬 橋本七夕祭り(神奈川) • 15日~16日 篠山デカンショ祭り(兵庫) • 下旬 立川夏祭り(東京) • 下旬 新発田祭り(新潟) • 9月12日~19日 放生会祭(福岡) • 13日~14日 館山八幡祭り(千葉) • 下旬 百舌鳥八幡祭り(大阪) • 10月中旬 亀山神社祭り(広島) • 下旬 伊賀上野祭り(三重) • 11月下旬 一宮さん祭り(広島) • 12月31日~ 住吉祭り(大阪) • 12月31日~1月4日 住吉大社(大阪) • 1月9日~11日 西宮えびす(兵庫) • 2月7日~9日 三原だるま市(広島) • 3月14日~16日 出石初午(兵庫) • 3月29日~4月13日 八坂神社(京都) • 4月4日~20日 高田市観桜祭(新潟) • 5月2日~4日 富士宮(静岡) • 8日~10日 植木市(山形) • 13日~15日 三条祭(新潟) • 中旬 酒田祭(山形) • 中旬 大垣の祭(岐阜) • 下旬 鶴岡祭(山形) • 6月6日~8日 稲荷祭(広島) • 13日~15日 柏崎えんま市(新潟) • 21日~23日 ゆかた祭(兵庫) • 6月30日~7月2日 蒲原祭(新潟)
キャストによる脅かし方 • 人数 • それぞれの予想される反応 • タイミング • 姿を見せた後
仮設と常設の違い <仮設のみ> • キャスト →ランニングコストの限界 <常設のみ> • 部屋 • 高価な技術(センサー、圧縮空気、音響) →仮設では難しい部分を補う形
仮設と常設の共通点 • お化け屋敷としてイメージされうる基本的な部分 • 集客(追い出しなど) • 場面型
仮設→常設の関係性 • 仮設…1950年代以降、神社や花見などで多くの興行がなされてきた • 常設…仮設の興隆以降じわじわと増えてきた(バブル期での盛り上がり) →常設は仮設の流れをくむ
裏話(仮設お化け屋敷あるある) • 入るかどうかの迷い編 • 思案橋での葛藤編 • 素直になれない人編 • そうきましたか、外国人編 • お化けに対する発言編 • 密着!お化けの生活編 • お化けと人との謎のやり取り編 • 怖がりすぎた末の究極の行動編
江戸の人形見世物~博覧会 1950年頃 • 現代に続く仮設型お化け屋敷と常設型の興隆 1990年代 • ストーリーとミッション; 常設型での人の起用の積極化
1.はじめに:「お化け屋敷」について 2.仮設→常設の流れは存在する ~場面型という側面~ 3.90年代、「劇場型」は何故生まれたか 4.お化け屋敷に見る緊張と快楽 〜お化け屋敷の楽しさを見る〜
「劇場型」の一例 台場怪奇学校「呪いの雪人形編」の場合... (2014年冬限定、常設のウォークスルー型) 母ユキコを亡くした「ちぃちゃん」は、継母のキチコ から苛めを受け、学校の校庭で不審の死を遂げる。 その後キチコも亡くなったが、今でも学校では、ちぃちゃんと キチコが彷徨うという。 お客はお札を受け取りこれを供えに行く。 焚火にお札を投げ入れ「成仏してください!」と叫ぶ。
「場面型」から「劇場型」へ 場面型 怖い場面を見てまわる 各場面に脈絡はない (乃至は、なくてもよい) 客は客観的であれる 劇場型 物語世界を体験する 各場面は物語と対応 客は物語のアクター (ミッションの存在)
90年代、お化け屋敷は変わった? 1990年代 五味弘文によるお化け屋敷の改造 後楽園ゆうえんちでの1992年以降の活躍 • キャストの起用 • (脅かし役) • ストーリー • ミッション
このような劇場型の展開を支えたものは何? →近代的な妖怪観が影響している? →ホラー文化は社会問題と関係
香川雅信『江戸の妖怪革命』 江戸時代中期まで 物事を記号の類似としてとらえる 人間にできるのは、この記号を読み取ることだけ 江戸時代後期:「人間は万物の霊長」 同一と差異の基準にのっとり博物学的に分類 記号は人間が規則に則り構成可能なものへ 妖怪のフィクション化とキャラクター化 (「場面型」発展の大前提に?)
香川雅信『江戸の妖怪革命』 近代以降 人間の絶対性の揺らぎ 「私」は神経の作用や催眠術の影響を受ける 妖怪は個人が身体を通して「見てしまう」ものへ (ここに「劇場型」の生まれる余地が出てくる?) 根本的な疑問:何故近代に「劇場型」はなかった?
思えば90年代はホラー文化の発展期? 「弟切草」(1992)など、ホラーゲーム 「学校の怪談」の流行 常光徹/日本民話の会 口裂け女の再流行、都市伝説の流行 角川ホラー文庫の創設(1993) 『リング』(1998)『呪怨』(1999)など、Jホラー映画
同時に90年代はこんな時代でもあった 平成不況 オカルトや新興宗教の流行: →オウム真理教による諸所の事件 「個性教育」への疑問視やいじめ問題 或いは80年代より続く残虐殺人の報道
ホラー文化と社会の関係 戦後の高度成長から90年代の社会問題へ ホラー文化はこうした落差に反応した? いじめで自殺した少女、オカルトの結果としての死 近代的な諸問題を取り上げるホラー文化 劇場型お化け屋敷のお化けも、こうした問題を身に宿す こうした諸問題は私にとって切実なものである →これが劇場型お化け屋敷が受容される背景ではないか
劇場型お化け屋敷は何をもたらしたか? →キャストの積極的な登用
劇場型お化け屋敷がもたらしたもの 場面型お化け屋敷 →必ずしもお化けを本物と思う必要はない 「他人事」としてお化けの人形を見る態度が可能 劇場型お化け屋敷 →お化けは私にとって「本物」でなくてはならない お化けは私に現れてくる:お化けと「出会う」 →リアルなお化けの要求:キャストの起用の積極化へ
1.はじめに:「お化け屋敷」について 2.仮設→常設の流れは存在する ~場面型という側面~ 3.90年代、「劇場型」は何故生まれたか 4.お化け屋敷に見る緊張と快楽 〜お化け屋敷の楽しさを見る〜
素朴な疑問 お化け屋敷 =人を恐がらせる 娯楽施設 なぜ恐怖で楽しめるのか? なぜ恐い場所に人が入っていくのか? ⇒お化け屋敷の楽しさに説明を与えるヒント
「怖いもの見たさ」と好奇心避けたいけれども、どこか気になってしまう「怖いもの見たさ」と好奇心避けたいけれども、どこか気になってしまう 「探索行動」 の延長 未知なもの、怪しげなもの⇒不安から緊張状態に ⇒不安の解消・緊張からの解放へ ⇒探索・危険がないことがわかる⇒安堵・解放 欲動の高まりから、その緊張を解放させる必要 その過程が快感になる(フロイト)
緊張からの解放が快楽へ 緊張を解放させるその過程が快感になる(フロイト) ①人間の内部を見る:脳内物質と神経 • 緊張時に快楽物質β-エンドルフィンが放出 (学習促進効果) • 快楽中枢A10神経の刺激:「緊張から解放された」感覚 (質的調査)
緊張からの解放が快楽へ ②人間の外面を見る:笑いについての言説 • 緊張からの解放され安心感を得る この感情の転移が笑いを生む(モリオール) • 生理的混乱から安堵へ、パニックから笑いへ(カイヨワ) ⇒実際の見聞や工夫 • お化け屋敷から客の多くは「笑って」出てくる(実地、五味氏) • 笑いのテクニックと脅かしの工夫の類似(桂枝雀と五味氏) 緊張からの解放で快楽が生じることの外面的な現れ