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1. エージェントベース経済学試論 井庭 崇Iba Takashi 慶應義塾大学 政策・メディア研究科後期博士課程２年 日本学術振興会特別研究員 フジタ未来経営研究所リサーチアソシエイト designers@boxed-economy.org http://www.boxed-economy.org/

2. Today’s Topic 「エージェントベース経済学試論」 • 現在取り組んでいる Boxed Economy について • エージェントベース経済学試論 http://www.boxed-economy.org/

3. Cf. 音楽ＣＤの購入基準アンケート 個人的な出発点 • 経済や社会の成長っていったい何なんだろう？ • 年齢とともに経験するライフステージによって、考えることや好みは変化していく。 • 人はそれぞれお互いに、いろいろな面で影響しあっている。

4. ？ 「社会について理解したい。」 井庭崇, 広兼賢治, 高部陽平, Boxed Economy Prototype 0, 1999

5. ？ 「社会について理解したい。」 • 「社会」というブラックボックス • 「個人」というブラックボックス 経済学：　貨幣の関係 政治学：　権力の関係 社会学：　多様な関係

6. モデル • 初期値 振舞い （現象） 構成的手法（Constructive Method） • 対象のモデルをコンピュータ上につくりこみ、その振舞いを観察し、モデルを修正していく。この模索過程を通じて対象を理解する方法。

7. モデルの作成 構成モデル シミュレーション 対象とモデルの 比較・検討 モデルの作成 対象の観察 特徴の抽出 結果の評価 構成的手法の手順 井庭崇, 福原義久, 『複雑系入門』, NTT出版, 1998

8. より建設的な構成的手法へ More Constructive Constructive Approach!

9. Boxed Economy 基礎モデル 時間 経路 情報 空間 生成 付随 関係 所有財 経済主体 財 記憶 貨幣も財の 一種として扱う 社会集団 個人 機能(思考・行動) 欲求 より建設的な構成的手法に向けての私たちの取り組み Boxed Economy • 構成的手法による社会シミュレーション研究の支援 • 人工経済シミュレーションのための共通言語

10. 空間 ０..＊ 情報 時間 1 生成 ０..＊ 付随 1 所有財 経路 ０..＊ 関係 1 1 1 財 経済主体 1 ０..＊ 1 1 1 1 貨幣も財の 一種として扱う 1 記憶 社会集団 個人 ０..＊ 機能(思考・行動) 1 ０..＊ 欲求 Boxed Economy 基礎モデル ※クラス図 　UML（統一モデリング言語）表記 井庭崇, 中鉢欣秀, 高部陽平, 田中潤一郎, 上橋賢一, 津屋隆之介, 北野里美, 廣兼賢治, 「Boxed Economyの実現に向けて: エージェントベース経済シミュレーションのための基礎モデル」, 電子情報通信学会「人工知能と知識処理」+情報処理学会「知能と複雑系」合同研究会, 2001

11. 時間 経路 情報 生成 空間 付随 関係 所有財 経済主体 財 記憶 貨幣も財の 一種として扱う 社会集団 個人 機能(思考・行動) 欲求 シミュレーション・プラットフォーム Boxed Economy より建設的な構成的手法に向けての私たちの取り組み モデル・コンポーネント Boxed Economy 基礎モデル

12. Prediction or Explanation Prediction or Explanation 社会モデルのインクリメンタルな作成プロセス Incremental Development of the simulation model Feedback Application Feedback Application エージェントベース経済学 Agent-Based Economics

13. エージェントベース経済学に向けて

14. Agent • 「動因、（ある変化を起こす）力」 • Cf. ラテン語 agere = 「する、行う」 • 個人 • ひとりひとりの人間 • 社会集団 • 家族、地域社会、国、企業、学校、政府など • 異質性(heterogeneity) • 多様性(diversity)

15. 特徴１ • 社会集団は、個人または社会集団を構成要素としてもつ。 • 複数の社会集団に属することができる。

16. Ex. 個人の消費者として側面 特徴２ • エージェントを経済社会モデルの最小単位としない。 • エージェントは複数の[機能]をもつ。

17. 特徴３ • エージェントは自己の境界決定・変更が可能 ■構成員の増減 ■機能の組み換え ■エージェントの生成・消滅

18. 特徴４ • ダブル・リアリティの経済社会モデル • 「ダブル・リアリティ(二重の現実性)」 • 「唯物論的リアリティ」 • 「現象学的リアリティ」 [橋爪 1978, 1993] - Double Reality -

19. エージェントベース経済学の射程 • 広がりと変化の経済学へ • 制度や構造の変化と波及効果 • 金融政策の波及効果の分析 • 社会保障制度と人々の行動の分析 • 需要不足と消費の駆動力の分析 など • 多様な自由の経済学へ • アマルティア・センの潜在能力アプローチ

20. 潜在能力アプローチ • 人々が享受する自由というものを増大させることを開発(発展)であると捉え、従来のようなGNPの増加や所得の向上、工業化の進展ということでのみ開発を捉えるアプローチは不十分であると指摘 • 「潜在能力」(capability) • ある人が選択できる「機能」の集合のことであり、その人に何ができるかという可能性を表している • ここでいう機能とは、「ある状態になること」や「何かをすること」を指す言葉 (Photo)http://www.economics.harvard.edu/faculty/sen/sen.html

21. 潜在能力アプローチの現実分析における限界 • 「潜在能力集合全体に関する情報を集めることの困難さゆえに、このような潜在的な利点も生かすことができないということがしばしば起こることも否定できない」[Sen 1992] • (観察不可能な潜在能力集合を扱うかわりに)「現実問題としてはしばしば『達成された機能』のみを分析するにとどまらざるをえない」 [Sen 1985, 1992]

22. 戦略的学際研究 • 「総合化の持つ遠心力が議論を拡散させるのを避ける」(西部75)ために、 • ここではあえて経済行動に焦点を絞った上で、社会科学の総合化を準備するとい • うことが重要 • これはまさに「科学的総合という大胆なテーマに臆病に近づくという方法」 • (西部75)なのである

23. Summary 「エージェントベース経済学試論」 • 現在取り組んでいる Boxed Economy について • より建設的な構成的手法の支援に向けて • 構成的手法による社会シミュレーション研究の支援 • 人工経済シミュレーションのための共通言語 • モデルのコンポーネントとフレームワーク • エージェントベース経済学試論 • 特徴のいくつかを考察 • ひとつの可能性として潜在能力アプローチ http://www.boxed-economy.org/

24. シミュレーション――動きの中で理解する

25. 空間 ０..＊ 情報 時間 1 生成 ０..＊ 付随 1 所有財 経路 ０..＊ 関係 1 1 1 財 経済主体 経済主体 1 ０..＊ 1 集約 1 継承 継承 1 1 貨幣も財の 一種として扱う 1 記憶 社会集団 社会集団 個人 個人 ０..＊ 機能(思考・行動) 1 ０..＊ 欲求 Boxed Economy基礎モデルにおける 経済主体としての[社会集団]・[個人]

26. エージェント 経済主体 1 記憶 社会集団 個人 ０..＊ 機能(思考・行動) 欲求 Boxed Economy基礎モデルにおける 『エージェント』

27. 理論化 理論化 経済理論 現実世界 人工経済社会モデル 新古典派 ケインズ学派 ネオ・オーストリア学派 シカゴ学派 現代制度学派 表現 エージェントベース 経済学

28. cf. 経済循環のシミュレーション における重要先行研究 N.Basu, R.J.Pryor, and T.Quint (1998) http://www-aspen.cs.sandia.gov/

29. Economics Framework forSwarm cf. 経済シミュレーションのための フレームワークに関する注目研究 Charlotte Bruun (2000) http://www.socsci.auc.dk/institut2/empl/cbruun.html

30. cf. バーチャルエコノミー [出口 2000]

31. EBMモデル 欲求認識 情報探索 購買前 代替案評価 購買 消費 購買後 代替案評価 Engel, J.F., Blackwell, R.D., and Miniard, P.W., Consumer behavior (8th ed.), The Dryden Press, 1995 消費者の意思決定モデル 個人差 ・消費者の資源 ・動機づけと関与 ・知識 ・態度 ・性格、価値観、 ライフスタイル 内的情報探索 露出 刺激 ・マーケティング によるもの ・その他 注意 記憶 環境の影響 ・文化 ・社会階層 ・対人的影響 ・家族 ・状況 理解 受容 外的情報探索 保持 不満足 満足 処分

32. Boxed Economy Project

33. Boxed Economyマルチエージェントによる人工経済 • マルチエージェントモデル • 主体性と行動ルールをもっている多数の エージェントが相互作用するモデルのこと • 人工経済アプローチ • コンピュータ上に人工的に経済モデルを 作成することを通して現実の現象を理解する

34. Boxed Economy Simulation Platform 　構成的手法によるシミュレーション研究の効率化 　社会モデルの部品化と再利用化 　複数の研究者による社会モデルの並行開発 　社会認識を外部化して伝達するための新しいコード体系の構築へ

35. 政府 中央銀行 銀行 エネルギー 農林水産業 製造（設備機器） 製造（部品） 建設業 製造（食品） 製造（消費財） 製造（耐久財） 個人 運輸業 マスコミ 不動産 小売業 < Small World1 > におけるエージェント 社会集団 個人 公的組織 金融機関 ×１００人 第一次産業 第ニ次産業A 第ニ次産業B 第三次産業

36. 製造業 （１：食品） 小売業（店） 農林水産業 １Ａ社 ２Ａ社 １Ｂ社 製造業 （２：消費財） ２Ｂ社 １Ｃ社 製造業 （５：材料・部品） ２Ｃ社 エネルギー業 ５Ａ社 ３Ａ社 製造業 （４：設備機器） 製造業 （３：耐久消費財） ５Ｂ社 ３Ｂ社 ３Ｃ社 総合店Ａ 専門店Ａ 建設業 不動産業 総合店Ｂ 専門店Ｂ 総合店Ｃ マスコミ （新聞） 運輸業 専門店Ｃ < Small World1 > 内の取引関係 個人 多くのエージェントと取引する企業

37. Takashi Iba Yoshihide Chubachi 研究プロデューサー・代表 開発プロデューサー 武藤佳恭・竹中平蔵 研究室 政策・メディア 博士２年 大岩元 研究室 政策・メディア 博士３年 Junichiro Tanaka Yoshiaki Matsuzawa Yoshiyasu Takefuji 研究ディレクター 開発ディレクター 斉藤信男 研究室 環境情報学部４年 大岩元 研究室 政策・メディア 修士１年 Kotaro Asaka Masaharu Hirokane 大岩元 研究室 政策・メディア 修士１年 竹中平蔵・武藤佳恭 研究室 環境情報学部３年 Heizo Takenaka Ken Kaiho Kenichi Kamihashi 大岩元 研究室 SFC研究所研究員 小熊英ニ 研究室 環境情報学部２年 Satomi Kitano Hajime Oiwa 熊坂賢次 研究室 総合政策学部２年 サポート フジタ未来経営研究所 Yohei Takabe Ryunosuke Tsuya PriceWaterHouseCoopers,Inc., SFC研究所研究員 文部省科研費 竹中平蔵 研究室 総合政策学部２年 森泰吉郎記念研究振興基金 Boxed Economy Project アドバイザー （合資会社ニューメリック）

38. 1999 [4月～] In-The-Box Project 発足 エージェントベース社会シミュレーションのコンポーネント・ライブラリの構築を目指す。 政策メッセ’99 ← MACC’99 ← [6月～] Boxed Economy group 発足 2000 シミュレーションの対象を一般経済を対象に絞る。 CIEF2000 ← [4月～] Boxed Economy Project として独立 JAFEE2000 ← プロジェクト体制や運営方法を改め新たにスタート。 政策メッセ2000 ← 2001 [1月～] シミュレーション・プラットフォーム (version one) 研究開発開始 SIG-ICS123 ← JAFEE2001 ← [夏] シミュレーション・プラットフォーム (version one) 公開・試用 　　 + Small World Boxed Economy Projectの歩みと、これから … http://www.boxed-economy.org/