170 likes | 351 Views
“ プール熱 ” の呼称を止めよう!. 2006 年 12 月 3 日 鳥取市. 平成18年度鳥取県小児保健総会. 誤解をされ易い. : 秋に流行したアデノウイルス感染症を基に. 国民健康保険 智頭病院 小児科. 大谷恭一. ohtani@hello.ne.jp. はじめに. (共通理解). アデノウイルス感染症 咽頭結膜熱 アデノウイルスによる急性咽頭炎. アデノウイルス感染症の臨床像 1. 発 熱. 球結膜の充血 眼脂. 咽頭結膜熱. 咽頭痛. 嘔吐 下痢. 急性咽頭炎. 急性胃腸炎 感染性胃腸炎. 急性気管支炎 急性肺炎.
E N D
“プール熱”の呼称を止めよう! 2006年12月3日 鳥取市 平成18年度鳥取県小児保健総会 誤解をされ易い : 秋に流行したアデノウイルス感染症を基に 国民健康保険 智頭病院 小児科 大谷恭一 ohtani@hello.ne.jp
はじめに (共通理解) アデノウイルス感染症 咽頭結膜熱 アデノウイルスによる急性咽頭炎
アデノウイルス感染症の臨床像 1 発 熱 球結膜の充血 眼脂 咽頭結膜熱 咽頭痛 嘔吐 下痢 急性咽頭炎 急性胃腸炎感染性胃腸炎 急性気管支炎急性肺炎 出血性膀胱炎 血尿 合併症 不機嫌嘔吐血便 急性中耳炎 腸重積症 乳幼児
アデノウイルス感染症の臨床像 2 入院 合併症 外来点滴 脱水症 ++あり+結膜充血なし ++咽頭発赤+ - 咽頭結膜熱 急性咽頭炎 重症 発熱:持続 発熱:一晩 軽 症 発熱:無 不顕性感染 ~ 無症状
アデノウイルス感染症の説明 保育園・保護者用 1 アデノウイルスによる感染症は、病状が多様です。夏季を主として、 “夏風邪” の一つとして、咽頭痛・発熱(39℃以上の高熱)を来たす急性咽頭炎が流行します。結膜炎を伴う場合が咽頭結膜熱です。 プール学習の時期に一致した流行があるため、プール熱との呼称があります。他の先進国ではプール熱の呼称はありません。 じゃれあったり、タオルを共用することによる感染があります。 近年は水質管理(塩素消毒)がなされているので、 プール水を介した感染は減っているはずです。
アデノウイルス感染症の説明 〔1〕 ノドを保護すること (こまめに飲水、のどを潤す、こまめなうがい) 〔2〕 手洗いに努めること 〔3〕 タオルの共用をしないこと 〔4〕 プールの前後に、シャワーで十分に洗い流すこと 保育園・保護者用 2 診断しても特効薬がありません。 感染様式は、飛まつ感染(セキによる感染・つばを飛ばすことによる感染)や接触感染です。 流行期の対応策
アデノウイルス感染症の説明 保育園・保護者用 3 咽頭結膜熱の診断をした際は、 学校保健法(第二種伝染病)の規定で 出席停止となります。 主要症状が消退した後2日を経過するか、 本人の病状・体調により登校許可証を書きます。 保育園児の場合も上記に準じて対応します。 アデノウイルス感染による 咽頭炎と発熱があり、 結膜炎の所見がない場合は、 一般的な風邪などと同様の扱いになります。 本人の体調により、集団生活の再開を決めます。
咽頭結膜熱の流行状況 例 20 15 10 ■ ■ 5 ■ ■ ■ 0 週 18 21 24 27 31 33 36 38 40 43 H18 5/1 6/5 7/3 7/31 9/4 10/2 10/23 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ~ 鳥取県東部地域と当院の状況 ~ 智頭病院におけるアデノウイルス陽性例
アデノウイルス陽性例の概要 ○ ○ ○ 智頭病院における No 検査日 歳-月 性 最高℃ 発熱 入院 ?泊 抗生剤 1 09/24 2-06 男 41.2 4晩 入院 2 CLDM 2 09/27 2-11 女 41.5 6 入院 2 CLDM 3 10/03 6-11 男 40.4 5 外来 - - 4 10/03 6-02 女 39.8 4 入院 3 - 5 10/04 3-04 男 39.6 6 入院 1 - 6 10/04 6-02 女 39.4 4 外来 - - 7 10/06 3-11 男 40.5 4 入院 1 - 8 10/11 9-01 男 38.3 ・・ 外来 - - 9 10/16 8-08 男 39.1 5 外来 - - 10 10/17 4-03 女 39.4 6 外来 - - 11 10/18 6-04 男 40.0 4 外来 - - 12 10/26 7-01 男 40.5 5 外来 - -
自験例 2 生活歴 : 今年度、町内の3歳未満児保育園に入園 現病歴 : 中耳炎により、耳鼻科を通院中で、抗生物質(CDTR-PI)を内服中であった。 9/23 発熱にて初診 局所所見なく、ウイルス感染症(ウイルス血症)と診断。9/25 発熱が持続するために再診。咽頭発赤なし。その後、最高41.5℃に至り、9/27、第5病日に再診。(耳鼻科からの抗生物質はAMPCに変更され内服していた。) 咽頭発赤があり、迅速診断を実施。アデノウイルス 陽性、溶連菌 陽性。 結膜 充血 軽度 41.5℃に及ぶ高熱を呈しており、入院とした。 入院時診断 : アデノウイルス感染症、 急性咽頭気管支炎(咽頭結膜熱)、 溶連菌感染症(疑) 2歳11か月 女児 1
自験例 2 検査 : 咽頭ぬぐい液 アデノウイルス:陽性 CRP 4.6 mg/dl、 WBC 7,520 /μl、Plt 35.0万/μl、Hb 13.0 g/dl、GOT 23、GPT 10、LDH 306 IU/l、BUN 6.5、Cr 0.2 mg/dl 入院経過 : 持続点滴とし、CLDMを使用した。 入院翌日には解熱したが、保護者の願いで、さらに1泊の入院経過観察とした。 入院期間 : 9/27 → 9/29 2泊3日 発熱期間 : 6日間 2歳11か月 女児 2
自験例 5 生活歴 : 町内の3歳未満児保育園に在園中 現病歴 : 9/29 夜 発熱。10/1(日)急患診療所を受診し、抗生物質(内服 CFDN、点眼 LVFX)を処方された。 10/2 発熱が持続するため、当科初診 咽頭発赤、結膜充血を認め、咽頭結膜熱と診断。 10/4 朝から寝ていて起きないとのことで再診 飲水しないとの訴えで、入院対応とした。 アデノウイルス迅速検査 : 陽性 入院時診断 : アデノウイルス感染症、 咽頭結膜熱 入院経過 : 入院翌日に解熱し、退院とした。 発熱期間 : 6日間 3歳04か月 男児
自験例 7 生活歴 : 町内中心部の保育園に在園中 現病歴 : 10/2 咳嗽出現、10/4 夜 38.5℃の発熱 10/5 深夜、不機嫌で、38.5℃。解熱剤の坐薬を使用し、朝は37.8℃だった。 10時、初診時に40.5℃あり、咽頭発赤を認めた。 アデノウイルスの迅速検査を実施し、陽性。 なお、溶連菌は陰性だった。 10/7(土) 飲水・尿量が低下し、発熱が続くため、20:10に救急受診し、入院とした。 入院時診断 : アデノウイルス感染症、 急性咽頭炎 入院経過 : 入院翌日急激に解熱し、退院とした。 発熱期間 : 4日間 3歳11か月 男児
水泳プールの水質基準 出典:学校保健マニュアル(南山堂) 学校保健法 昭和33年4月10日 学校環境衛生に関する指針 平成4年6月23日 水質 1)水素イオン濃度 2)濁度 3)遊離残留塩素 4)有機物等(過マンガン酸カリウム消費量) 5)総トリハロメタン 6)大腸菌群 7)一般細菌
水泳プールの水質基準 出典:学校保健マニュアル(南山堂) 水泳プールの管理 1 プール水は、衛生的であるか、また、 水中に危険物や異常なものがないこと (1) 遊離残留塩素は、 プール使用前及び使用中 1時間に1回以上測定し、 その濃度は、どの部分でも0.4mg/L以上保持されていること。また、1.0mg/L以下が望ましい。
結語 1 アデノウイルス感染症の流行は、夏季に限定しない。 プール学習をしない秋にも流行する。 咽頭結膜熱は、アデノウイルス感染による臨床病型の一つに過ぎない。 病因が不明であった当時、かつ、わが国にプールが普及し始めた当時、a.水質管理基準が不徹底で、b.シャワー設備も整わず、さらに、c.タオルを共用するなど、感染防御に係る方策が不徹底であった。 そうした状況下で、球結膜充血を伴い高熱を呈する病態が特異であることから、咽頭結膜熱は、わが国では“プール熱”の呼称が一般社会に浸透した。
結語 2 プール学習に伴う感染防御体制が向上している今日、“プール熱”の呼称は、誤解を招きやすい。 咽頭結膜熱の病名も、単に、病巣の範囲を臨床診断したに過ぎず、本態はアデノウイルス感染症である。 学校伝染病において咽頭結膜熱を特別に扱うことにも限界がある。 *診察医が登校を許可する基準は、「主要症状が消退した後2日を経過するか、本人の病状・体調による」とされている。後者は感染症全般に共通する。 *結膜充血が極軽微な例の扱いも問題である。 誤解をされ易い“プール熱”の呼称を止めよう!