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血友病患者のリハビリテーション. 広島大学病院リハビリテーション部 木村 浩彰. 血友病による運動器の障害. 関節内出血 筋肉内出血→筋肉の直接損傷 中枢神経組織に出血 脳出血・脊髄出血 末梢神経周囲に出血→圧迫による 末梢神経障害. 関節内出血. 関節内出血の症状. 関節部の痛み・腫れ・熱感 関節を動かせない 動きが不自然 使いたがらない・かばう 触ると痛がる 左右の大きさが違う. 注意深い観察が必要 . 関節内出血(膝). 出血の初期症状 . 「ムズムズする」「ひっかかる」 などの違和感 「痛み」 「熱をもった感じ」.
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血友病患者のリハビリテーション 広島大学病院リハビリテーション部 木村 浩彰
血友病による運動器の障害 • 関節内出血 • 筋肉内出血→筋肉の直接損傷 • 中枢神経組織に出血 • 脳出血・脊髄出血 • 末梢神経周囲に出血→圧迫による 末梢神経障害 血友病患者のリハビリテーション
関節内出血の症状 • 関節部の痛み・腫れ・熱感 • 関節を動かせない • 動きが不自然 • 使いたがらない・かばう • 触ると痛がる • 左右の大きさが違う • 注意深い観察が必要 血友病患者のリハビリテーション
関節内出血(膝) 血友病患者のリハビリテーション
出血の初期症状 • 「ムズムズする」「ひっかかる」 などの違和感 • 「痛み」 • 「熱をもった感じ」 血友病患者のリハビリテーション
関節内出血を生じたら‥‥ • 製剤の注射⇒止血 • 家庭輸注/病院 • 局所の冷却 • 冷シップ・氷嚢・アイスノンの冷却 • 血管収縮⇒出血↓ • 組織の炎症↓ • 冷やしすぎに注意! 血友病患者のリハビリテーション
出血を生じたら‥‥ • しっかり圧迫止血をする 血友病患者のリハビリテーション
関節内出血時の処置:RICE • Rest:安静 • Icing:患部の冷却 • Compression:圧迫 • Elevation:挙上 • 出血部位を心臓より高くする 血友病患者のリハビリテーション
関節内出血に対する穿刺 • 関節内の血液は凝固しません。 • 関節軟骨を損傷します。 • 補充療法で止血できるので、関節内の血を抜く(穿刺)は問題ありません。 血友病患者のリハビリテーション
滑膜炎による膝軟骨損傷 • 関節リウマチ患者 軟骨が剥がれて、 骨が露出しています 血友病患者のリハビリテーション
関節内出血の合併症 • 下肢短縮⇒骨盤傾斜⇒側弯 血友病患者のリハビリテーション
筋肉内出血 • 原因:打撲・運動・無理な姿勢での負荷など • 血腫による圧迫>血圧となれば止血する • 圧迫による組織障害 • 末梢神経障害 • 阻血による神経・筋肉の損傷 • 切断となることもあります。 血友病患者のリハビリテーション
足関節内出血の慢性期治療 • 凝固因子の補充 • 原因となるような運動や生活習慣の有無 • 体育で縄跳び、跳び箱、長距離走、幅跳びをしていた • 休み時間にサッカーをしていた。 • 靴の変更:クッション・足底版 • 文献的には効果ないようです。 • 装具・サポーターの使用 • 運動療法 • 等尺性運動:関節を動かさない運動 血友病患者のリハビリテーション
血友病の重症度と治療・予防 血友病患者のリハビリテーション
出血の予防 • 運動・生活習慣の制限⇒実際は難しい • 親の言うことはきかない • 自分で行動制限するには幼い • 幼少時からの症状の場合、特におかしいと思わない⇒親に報告しない 血友病患者のリハビリテーション
スポ-ツ活動 • 安全なスポーツ • エアロビクス、アスレチック、バドミントン、バスケットボ-ル、登山、サイクリング、ゴルフ、乗馬、ボ-ト、ランニング、ヨット、スケ-ト、スキ-、スカッシュ、水泳、 テニス、卓球、ヨガ 血友病患者のリハビリテーション
スポーツ活動:注意点 • 格闘技 • 剣道:試合は禁止。 • 柔道・空手:受け身や型の練習は可。試合は禁止。 • なわとび・跳び箱:足首の関節内出血に注意 • サッカー:足首の変形・出血⇒中止 • 野球:接触プレーに注意。 • 鉄棒:転落して頭を強打した時のみ注意。 • マラソン:準備運動を十分にする。マラソン大会などの場合、心配なら予防投与を行う。 血友病患者のリハビリテーション
関節内出血後のリハビリテーション⇒血が止まったらリハビリに励みましょう関節内出血後のリハビリテーション⇒血が止まったらリハビリに励みましょう • 第1段階:等尺性運動 • 関節は動かさない • つま先を上に向けボールを軽く押さえつける • 反動をつけない • 1セット:5~20回 • 1日:1~2セット 血友病患者のリハビリテーション
第2段階:自動介助運動 • 補助を受けながらゆっくり膝を伸ばす • 反動をつけずにゆっくり元に戻す • 1セット 5~20回 • 1日 1~2セット(徐々にふやす) 血友病患者のリハビリテーション
第3段階 自動運動 • 補助なしでゆっくりと膝を伸ばす • 反動をつけずにゆっくり元に戻す • 1セット 5~20回 • 1日 1~2セット(徐々にふやす 血友病患者のリハビリテーション
第4段階 抵抗運動 • 弾性バンドなどの抵抗を加えてゆっくりと膝を伸ばす • 決して反動をつけない • 1セット 5~20回 • 1日 1~2セット(筋力に応じ抵抗・回数を 調節する) 血友病患者のリハビリテーション
股関節の運動療法 血友病患者のリハビリテーション
筋力トレーニングの種類 血友病患者のリハビリテーション
等張性収縮 isotonic • ダンベルやバーベルを用いた自然な筋収縮 • 速度が大きくなると、トルクが減少する • トルク:等尺性運動>等張性運動 • 1回だけ持ち上げられる重さの2/3を8-10回繰り返す 血友病患者のリハビリテーション
等速性運動isokinetic • 運動速度一定 • 筋力(トルク)の評価 • 筋力増強訓練 BIODEX SYSTEM 3 血友病患者のリハビリテーション
血友病性関節症 • 小児期(15歳以下):足首・肘・膝の順に関節症+ • 足首の関節:10~15歳の約50%に関節症+ • 利き腕・利き足等の左右差なし • 危険因子 • 血友病の重症度 • インヒビターの発生 • 反復する関節内出血 • 受診間隔↑⇒関節症進行+ 右足関節正面レントゲン写真 血友病患者のリハビリテーション
血友病性関節症 発生頻度: ①膝関節 ②足関節 ③肘関節 悪循環を形成 カテプシンDや酸性 フォスファターゼ等 種々のサイトカイン による刺激 血友病患者のリハビリテーション
関節内出血遷延のメカニズム • 小児の関節 • 解剖学的に未熟 • 遊びが多い • 幼少時からの出血+ • 出血に慣れている:運動制限困難 血友病患者のリハビリテーション
血友病性関節症:DePalmaの分類 グレード2. グレード1. • グレード1. • 関節自体に変化はないものの、出血により関節に痛みやX線撮影で腫れたように陰が見られます。 • グレード2. • 止血治療が十分でなかったり、何回も同じ関節に出血が繰り返されると、滑膜が厚くなり慢性的な痛みが生じることもあります(滑膜炎)。骨端部は萎縮したり過成長したりしてきますが、関節の働き(機能)は保たれます。 • グレード3. • 骨先端の変化はさらに進み、軟骨表面が破壊され変形が見られます。関節面の隙間が狭くなり、関節面がかみ合わなくなるために動かした時の痛みは強くなります。関節の働き(機能)が少しづつ悪くなっていきます。 • グレード4. • 関節面の隙間がほとんどなくなり、骨端部も硬くなり、関節を動かすことができなくなります。 グレード4. グレード3. 血友病患者のリハビリテーション
レントゲン写真評価:Pettersson score (以下P score) 血友病患者のリハビリテーション • Holger Pettersson,et al.: A Radiologic Classification of Hemophilic Arthropathy. Clinical Orthopaedics and Related Research 149:153-159, 1980
血友病性関節症:疼痛とP score T.Wallny et al.Haemophilia,8:802-808,2002. • 血友病性関節症60例 • レントゲン写真:Pettersson scale (P score) • 疼痛:visual analogue scale P score↑ (悪化) 疼痛↑ 血友病患者のリハビリテーション
血友病性関節症:疼痛と日常生活動作 T.Wallny et al.Haemophilia,8:802-808,2002. • 血友病性関節症60例 • 疼痛:visual analogue scale • 日常生活動作:世界血友病連合のスコアリングシステム使用 日常生活動作↓ 疼痛↑ 血友病患者のリハビリテーション
血友病性関節症の治療 • 凝固因子の補充 (予防的補充療法) • 約79%の関節症を予防(Lofquvist、1997) • インヒビター陽性例や関節症進行例に対する効果は低い(Arnoldら、1977)、(Lofquvistら、1997) • 理学療法 • RICE処置(急性期) • 運動療法 • 装具療法 • 手術 • 滑膜切除術 • 人工関節置換術 • 関節固定術 血友病患者のリハビリテーション
血友病性関節症の発生頻度 • 足首は10歳以下から発症 • 肘・膝は20歳以上で著明 足首の関節 膝関節 肘関節 血友病患者のリハビリテーション
足関節内出血が多い理由 • 足関節の解剖学的特徴 • 立位面の不整を代償 • 底屈・不安定⇔背屈・固定 • いろいろな方向に動く⇔捻挫しやすい • 関節が小さいので単位面積当の圧力↑ • 筋肉で被覆されていない⇒鍛えられない ⇒立位し始めてすぐに関節内出血が生じる? 血友病患者のリハビリテーション
足関節内出血/血友病性足関節症の予防 • 北欧では1-2歳から定期的補充療法を開始し、関節症の発症予防効果あり。 • 何歳から定期的補充療法をすべきかは難しい問題ですが、足関節内出血を予防するためには立位可能となる頃から治療を開始すべきと考えます。 血友病患者のリハビリテーション
装具療法:足関節 • 金属支柱付AFO • 大きくて重い・外観不良 • AFOにより関節内出血↓可能 • 両親がAFO装着を強制して欲しい。 • 小学校高学年になると、装具のメリットを本人も理解できるようになり、率先して装具を装着するようになります。 血友病患者のリハビリテーション
装具療法:足関節 • プラスティックAFO • 装着容易・外観良好 • 固定性:プラスティック<金属支柱 血友病患者のリハビリテーション
装着の容易なプラスティックAFO • 急性期の安静には有用? 血友病患者のリハビリテーション
我々が考案した短下肢装具AFO ② • 筋肉内出血の予防 • ①内張りを追加 • ②エッジを丸める • ③下腿前面パッドを作成 • 強固な固定 • 金属支柱式継手 • 足関節内外反を制動 • 底背屈は制動なし ③ ① 血友病患者のリハビリテーション
AFOの効果をレントゲン写真で評価 • 血友病性足関節症:AFOを処方した10名17関節 • 初診時年齢:5~27歳(平均10.9歳) • 血友病重症度 • 重症(凝固因子<1%) : 8名 • 中等症(1%≦ <5%) : 1名 • 軽症(5%≦ <25%) : 1名 • 経過観察期間:1年~10年2ヶ月(平均4年4ヶ月) • 予防的補充療法 開始時年齢:5ヶ月~3歳2ヶ月(平均1歳2ヶ月) • 装具療法 開始時年齢:5~21歳(平均10.9歳) • インヒビター:陽性(1名)、 陰性(9名) 血友病患者のリハビリテーション
13 P score 0 初診時 最終評価時 P scoreの推移 (n=17) 増悪 ※ • 増悪9関節・維持7関節・改善1関節 • P score 0.18点/年で増加(悪化) • 増悪した9関節中8関節(89%)は6~12歳の学童期であった • Pscore:0.32点/年 ※AFO装着頻度↓ ※ 改善 血友病患者のリハビリテーション
装具療法の利点 • 関節症進行の予防 • Fischerら:加齢ともに進行(1.04点/年) • 装具療法により0.18点/年に抑制 • 学童期においても有効(0.32点/年) • 骨粗鬆症の予防 • 廃用による骨粗鬆症:2関節(12%)のみ • 装具によって十分な体重負荷可能 血友病患者のリハビリテーション
装具療法の課題 • 外観が悪い • いじめの原因 • 本人/両親/周囲の理解と協力 • 廃用性の筋萎縮がおこる • 足関節の可動域制限/不安定性は生じない • 等尺性運動療法の指導 • 装具料金の自己負担あり • 一旦全額を立替払いし、その後保険から給付 • 小児慢性特定疾患:装具料金は対象外 • 育成医療は使えないのか(料金の1割負担) → 血友病患者のリハビリテーション
装具療法のコスト • 早期補充療法のコストから比較すると僅か • インヒビターを生じている方に有用か? • 発展途上国の血友病治療に有用か? • 小児特定疾患では、医療用装具の費用は担保されない。 血友病患者のリハビリテーション
靴型装具 • 文献的には否定的 血友病患者のリハビリテーション