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地球温暖化防止に中国を誘い込む法 ポスト京都/廃棄物資源化のCO2排出権換算メカニズム. 環境フロンティア国際プログラム東北大学 . 2008.3.18. 上智大学地球環境大学院教授 大和田滝惠. 目 次 (全体の流れ). 1.コベネフィット・アプローチの具体化 2.温暖化とエネルギー問題の観点から 3.中国における CDM の実施状況 4.廃棄物資源化をめぐる CDM の2案 (1)山口務氏案 (2)童澄教・大和田案 5.廃棄物処理・環境汚染抑制の観点から 6.結 び. コベネフィットの考え方.
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地球温暖化防止に中国を誘い込む法ポスト京都/廃棄物資源化のCO2排出権換算メカニズム地球温暖化防止に中国を誘い込む法ポスト京都/廃棄物資源化のCO2排出権換算メカニズム 環境フロンティア国際プログラム東北大学 2008.3.18. 上智大学地球環境大学院教授 大和田滝惠
目 次(全体の流れ) 1.コベネフィット・アプローチの具体化 2.温暖化とエネルギー問題の観点から 3.中国におけるCDMの実施状況 4.廃棄物資源化をめぐるCDMの2案 (1)山口務氏案 (2)童澄教・大和田案 5.廃棄物処理・環境汚染抑制の観点から 6.結 び
コベネフィットの考え方 途上国の大きなニーズである環境改善の推進は、気候変動対策にも寄与するポテンシャルが大きい 国家のニーズ 地球環境問題 環境改善対策 気候変動対策 コベネフィット 例えば ・・・ 主要汚染物質の排出量削減 火力発電所におけるSOx、NOx、煤塵の減少 燃焼の改善のための 技術・設備・管理手法 の導入 CO2排出削減と地球環境問題改善への寄与 環境省資料
ポスト京都に向けたコベネフィットの実効ある具体化ポスト京都に向けたコベネフィットの実効ある具体化 • 環境省の日中対話 ―環境汚染の改善と温暖化対策を両立させるコベネフィット(相乗便益)の協力体制を築く。 • 工業廃棄物の再資源化による原料調達の低減 ―化石燃料の削減、温暖化ガス排出の減少。 • 温暖化対策が汚染問題による環境負荷の緩和に直結すれば、中国は今より地球温暖化対策に積極的になる。
地球温暖化問題に対する中国の立場 ・「共通に有しているが差異ある責任」に基づき、 率先して排出削減の措置をとる。 ・途上国の主な任務は持続可能な発展の実現。 ・国際社会は既に発生した気候変動問題に対 して如何に適応するかを充分に思案すべきだ。 * 2002年8月 中国政府は京都議定書を批准。
エネルギーに関する2010年までの主な目標 ・GDP当たりエネルギー消費量を20%削減。 ・水力などの再生可能エネルギーが一次エネ ルギー供給全体に占める割合を可能な限り10%に向上。 ・森林被覆率を20%へ向上(05年:18.2%)。 (2005年第11次五ヵ年計画「資源節約型社会」指導原則採択)
具体的なエネルギー施策 ・エネルギーの生産・転換、エネルギー効率向上 及び省エネ、工農業生産、林業、都市廃棄物を重点領域に。 ・水力発電の加速、原子力発電の推進、火力発電の改善により、2010年までにCO2排出をそれぞれ5億トン、0.5億トン、1.1億トン削減。 ・石油の節約と代替、石炭火力ボイラーの改造等の重点的措置の実施により、第11次五ヵ年計画期間(06年~10年)中に、2.4億トンの省エネ(石炭換算。約5.5億トンのCO2排出削減に相当)。
CDM(清洁能源发展机制)の機構 • 国家発展改革委員会、科学技術部、外交部、 国家環境保護総局、気象局、財政部、水利部、 農業部、林業局等16の関係部署が構成する 「国家気候変化対策協調小組」がCDMの重要 政策に関して審議と調整の責を負う。 • 中国への主要な投資国: 日本、イギリス、 オランダ、オーストリア、デンマーク等
CDM事業運行管理弁法(2005年) 1.CDM事業の主管国家機関は国家発展改革委員会(NDRC)。 2.CDM事業主体の規定では、実施権限は出資51%以上の中国企業にある。 3.CDM実施による排出クレジット(CER)はプロジェクト実施機関である中国企業に 帰属,CERの先進国パートナーへの譲渡による収益は政府・企業間で分配され, 配分率が規定されている。これは中国独自の課徴金制度であり,重点分野への 賦課率が低く,それ以外の分野は賦課率が高い。 ○ ハイドロフルオロカーボン(HFC),パーフルオロカーボン(PFC)の削減事業: 政府が譲渡収益の65%を徴収。 ○ 亜酸化窒素(N2O)の削減事業:政府が譲渡収益の30%を徴収。 ○ 政府規定の重点分野(エネルギー効率の向上,新エネルギーと再生可能エネル ギーの開発利用,メタンガスと石灰層ガスの回収利用)および植林: 政府が譲渡収益の2%を徴収。 4.「節能減排」(生産工程の省エネと環境負荷の低減)に資するCDMを奨励。 5.CDM事業の国内のSDへの貢献に関する定量的な判断基準がない。 (当制度の目的の1つである途上国のSDの達成要件が低い・厳格でない)
CDMプロジェクトの登録状況 • 2008年3月11日現在、国連CDM理事会に 登録された中国のCDMプロジェクト: 計163件(全体の17.12%) • 中国の排出削減予定総量(t/CO2/年): 93,483,726 t 全ホスト国総量の48.26%(世界全体の半分) 国連CDM執行理事会 ( EB,Executive Board )http://cdm.unfccc.int/Projects/DB/SGS-UKL1195477297.02/view
中国のCDMプロジェクトの展開 中国の場合,炭素クレジット・認定排出削減量 (Certified Emission Reduction:CER)の7割がHFC23破壊プロジェクトによる(非CO2起源)。 HFC23破壊の他、風力発電、処分場メタン回収・発電、水力発電、廃熱回収発電が主なプロジェクト。 中でも、HFC23破壊プロジェクトが排出削減予定総量約6000万トンに及び、中国の排出クレジットの実に7割がHFC23破壊プロジェクトによってもたらされる結果となる。 *原則の逸脱をどうすれば是正できるか。
日中間のCDMプロジェクト例-民間企業による環境協力の例-日中間のCDMプロジェクト例-民間企業による環境協力の例- <プロジェクト名> <申請者> <実施地域> <CO2削減量> • アルミ燃料転換 丸紅 山西省 16万t • 水力発電 東京電力 団波 14万t • コークス工場廃熱回収 新日鐵 遷安 21万t • N2O削減 (肥料工場) 三菱商事 開封晋開 35万t • メタン発電(埋立処理場) 豊田通商 無錫 7.5万t • メタン発電(炭鉱) 三井物産 54.1万t • 風力発電* 住友商事 内蒙古 12.6万t • 風力発電②*住友商事 内蒙古② 11万t • HFC23分解 JMD温暖化ガス削減 浙江省 580万t • HFC23分解国際協力銀行他 1044万t • H18/12~H19/8 計 47件3241万t <注>経済産業公報掲載資料(H18年8月以降)から作成
中国におけるCDM政策の特徴 • 技術特許の問題等から再生可能エネルギーや省エネルギーに関する技術の移転はCDMという枠組みだけでは急速には進展しない。 • だから、HFC23破壊のようなプロジェクトであっても排除せず、高率の課徴金を設定して、CDMの経済的メリットの確保を目指す。 • CDMによる経済成長への期待から、CER発行予定量で重点分野にないHFC23破壊プロジェクトが圧倒的な割合を占める。
HFC23破壊CDMプロジェクトの問題点 • HFC23の高い地球温暖化係数ゆえに、大量のCERの獲得のみを目的としたHCFC22の増産が行われ、オゾン層問題の解決に悪影響の懸念。 • CERからの収益がHCFC22生産コストを上回り、生産要素シフト・CDM本来のSD目標を不達成。 • 新エネルギー開発への寄与がほとんどないので、 エネルギーの大量浪費をめぐる構造問題の解決が進まない。
「廃棄物CDM・排出権取引制度」NPOアジア起業家村理事長山口務氏案「廃棄物CDM・排出権取引制度」NPOアジア起業家村理事長山口務氏案 CDM方式を借用のみ(CDMの枠組みに入らず) ―廃棄物リサイクル・ 国際資源循環を促進する CDMレジームの構築。 中国で温室効果ガスを削減した日本企業が排出枠を獲得する京都議定書のCDMと同様の仕組みを工業廃棄物に適用し、日中間で廃棄物の排出権取引制度を作れないかと提案。 「廃棄物処理・資源化においても日中協力を円滑に推進するため、この分野で「CDM」(経済的誘因策)を考案する必要がある。」 (山口氏)
廃棄物処理にCDMが成立するための条件(山口氏案)廃棄物処理にCDMが成立するための条件(山口氏案) キャップ・アンド・トレードの導入 1)各国に差意ある共通目標の設定 Ex 産業廃棄物(全体or主要品目別)の資源化率 日本:80% 中国:65% (20xy年) 2)目標は法的裏付けを持つ(国際条約) → 未達成にはペナルテイーが伴う 3)資源化率の超過分及び未達分の国間 取引の容認→「排出権」に相当 (資源化率:環境負荷の削減及び資源節約が目標)
温暖化防止と工業廃棄物の再資源化をリンクさせる仕組み(童澄教・大和田案)温暖化防止と工業廃棄物の再資源化をリンクさせる仕組み(童澄教・大和田案) • 中国を温暖化防止の国際的な枠組みに参加しやすく する入口として工業廃棄物の再資源化を活用する。 = 資源再生の問題を取り込んで温暖化防止の枠組みを広げる。 • ポスト京都のCDMの枠組みの中で、日本企業が中国国内で(省エネ事業でなく)金属資源の再生を行なった分、その換算CO2量を排出権として獲得できるようにする。 = 回収した有用資源をエネルギー・CO2量に換算するシステム。
中国における産業廃棄物発生量の推移 総発生量 資源総合利用量 保管量 処分量 流出量 出所:中国環境保護総局、”Analysis Report on the State of the Environment in China” 2004年3月 中国の状況(METI資料) 【急増する廃棄物】 ・急速な経済発展により、資源需要が増加。また、経済活動の活発化に伴い、産業系・家庭系双方から排出される廃棄物等も急増し、各国内で廃棄物問題が深刻化(今後は耐久消費財等のストック財の排出が更に増加)。 ※日本の家電4品目排出量推計:0.18億台/年 廃棄:0.28億台/年 ストック:9億台 生産:1.82億台/年 中国における家電製品等(家電4品目+パソコン)の生産・廃棄量 出所:国家発展改革委資料
中国が目指す「循環型経済」観 • 資源の高効率・循環利用を重点とし、 • 減量化・再利用・資源化を原則とし、 • 低消費・低排出を基本的特徴とする、 • 持続可能な発展という理念にかなった 経済成長方式のこと。 ― 大量生産・大量消費・大量廃棄という従来の成長モデルに対する根本的変革 (李振京博士・国家発展改革委経済体制・管理研)
中国の電器電子製品汚染抑制策 • EUのRoHS指令への対応。 • 電器電子製品による汚染抑制と資源節約は 中国の持続可能な発展戦略にとり「关键之一」。 • 「電子情報産品汚染規制管理弁法」を実施。 (2007/3/1) • 電器電子製品の有毒有害物質の代替・減量化の加速。 • 当製品の資源循環利用を促し、循環経済促進法等の国家循環経済体系の構築を推進。
家電廃棄物への対応をめぐる現状 • 政府は回収体制を確立できず、埋立てや焼却処分によって廃棄家電の中の希少資源も十分に再利用されることなく、無秩序に近い状態が続いている。 • 廃棄家電の有効な回収処理体制がないことが資源の浪費と環境の汚染および破壊をもたらしている根本原因である。 *別途配布資料を参照。
廃棄物回収体制の立法状況 「廃旧電器電子産品回収処理管理条例」施行の準備。 1.テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、パソコンに対し、 「生産者責任制」の実施を盛り込む。 = 家電メーカーに原材料の回収・再利用を前提とした 製品構造や生産方法の採用を義務化。 2.販売店に対しても廃棄製品の回収責任を規定する。 2008年2月施行の電子廃棄物汚染環境防除管理弁法では、メーカーに対して資格のある処理業者が 回収システムを築くよう促している。
回収・再生法規が成立しやすい要件 1.企業が再資源化で排出権を得られれば、 その譲渡益があり、廃棄家電の回収処理にも力が入る。 2.温暖化防止と工業廃棄物の再資源化をリンクさせる仕組みが市場確立に即効的な力を発揮する。
〔補足〕 廃棄物処理の国際資源循環(試案) 上海市浦東新区「金橋輸出加工区」では、中国全土に先駆け“環境に優しい循環経済のモデルプロジェクト”として「工業廃棄 物再生循環利用基地」の構想を発表した。そこで、当事業スキームは、浦東新区に立地する日系企業を中心とするCSRを重視 する企業群に、日本国内に準ずる廃棄物処理やリサイクルを提供することにより、同構想の実現に寄与しようというものである。 ●浦東新区環保局および 金橋工業区管理環保局 ●川崎市環境局 金橋輸出加工区 (日立、シャープ、東芝、京セラ、リコー、 松下、ソニーなど日系工場が多数立地) 支持・協力(講師や指導員 の派遣など) 協力要請 川崎に立地する環境産業および廃棄物処理・リサイクル企業。JFE環境㈱、リ・バース㈱、㈱FECO、㈱RES、他 工業廃棄物の処理委託 (日本国内に準ずる適正・ 適切処理*無害化処理) 固体(金属・ガラス)、液体(廃酸・ 廃アルカリ・薬品・有害)、蛍光管、 乾電池、廃プラ、廃PC、廃電子 機器など 日中廃棄物 適正処理 協力連絡会 技術指導・ノウハウ提供など 協同組合、又は LLPなど 新金橋工業廃棄物 管理公司 視察・研究 循環資源 (輸出入) 「日中(上海)廃棄物適正処理協力連絡会」は、上海市浦東新区政府と川崎市政府の支持の下に、日本の環境産業・廃棄物処理・リサイクル企業が地元の廃棄物処理企業に廃棄物処理の技術指導やノウハウを提供することにより、適正適切な廃棄物処理を期待する日系等の工場が安心して処理やリサイクルを委託できるよう促進する連絡会組織である。
結 び • 温暖化防止の枠組みを実効性あるものにするには、中国の義務を伴う参加が不可欠である。 • 中国が温暖化防止の枠組みに入って来やすいように、中国の重視する資源再生を入口とし、同時に温暖化対策の実施にもなるようにする。 • 環境汚染の改善と温暖化対策を両立させる日本のコベネフィットの考え方を具体化し、日本の数値目標が達成可能なポスト京都を展望する。