210 likes | 345 Views
「小児急性中耳炎診療指針」 利用上の注意点. つちだ小児科 土田晋也. 今回発表の主旨. 日本の臨床医のための 「小児急性中耳炎診療指針」2つを紹介 ガイドライン利用上の注意点を自験例をもとに考察する. 「小児急性中耳炎診療ガイドライン」 (日本小児耳鼻咽喉科学会誌 27 : 71-107 、 2006 ). 日本の臨床医のための 小児急性中耳炎診療指針. 「抗菌薬適正使用ワ - キンググル - プ」 (外来小児科 8 : 57-84 、 2005). 小児耳 学会. 対象者. ワーキング グループ.
E N D
「小児急性中耳炎診療指針」利用上の注意点 つちだ小児科 土田晋也
今回発表の主旨 • 日本の臨床医のための「小児急性中耳炎診療指針」2つを紹介 • ガイドライン利用上の注意点を自験例をもとに考察する
「小児急性中耳炎診療ガイドライン」(日本小児耳鼻咽喉科学会誌 27:71-107、2006)「小児急性中耳炎診療ガイドライン」(日本小児耳鼻咽喉科学会誌 27:71-107、2006) 日本の臨床医のための小児急性中耳炎診療指針 「抗菌薬適正使用ワ-キンググル-プ」(外来小児科 8:57-84、2005)
小児耳学会 対象者 ワーキンググループ 正確な鼓膜所見の評価、鼓膜切開を含む耳処置を施行できる耳鼻咽喉科医 (マクロビューを使用している臨床医も含む) 小児急性中耳炎を診療する臨床医ならだれでも
小児耳学会 急性中耳炎の定義 ワーキンググループ 急性に発症した中耳の感染症 症状: 耳痛、発熱、耳漏を伴うことがある 鼓膜所見: 膨隆を重視 中耳貯留液+ 急性発症の症状や所見が1つ以上 症状: 耳痛、耳漏 (発熱は症状に含まず) 鼓膜所見: 著明な発赤・膨隆、水泡形成
重症度判定 小児耳学会 ワーキンググループ 鼓膜所見と症状で判定 年令→3才未満3点 耳痛→0, 1, 2点 発熱→0, 1, 2点 啼泣・不機嫌→0, 1点 鼓膜所見: 発赤→0, 2, 4点 膨隆→0, 4, 8点 耳漏→0, 4, 8点 発熱と年令で判定 (菌血症を含む中耳炎以外の細菌感染症を見逃さない) High Risk群→採血 WBC15,000(Neut≧10,000) →「フォーカス不明の発熱」GLへ Low Risk群→経過観察 鼓膜所見: 軽視しているわけではないが急性中耳炎、滲出性中耳炎の判別は現実的には難しい
治療方針 小児耳学会 ワーキンググループ 耐性菌を念頭においた治療選択が必要 第一選択薬:ペニシリン 投与期間:5日間 (原則)重症例を早い段階で見分け、切開排膿→抗菌薬 耐性菌をふやさないための抗菌薬使用制限が必要 第一選択薬:ペニシリン 投与期間:5日間 (原則)2、3日は対症療法のみによる経過観察
ガイドライン利用上の注意点ー自験例をもとに考察するーガイドライン利用上の注意点ー自験例をもとに考察するー
(Case1) 1才0ヶ月、男児、未入園感冒症状あり、耳痛・熱なし(Case1) 1才0ヶ月、男児、未入園感冒症状あり、耳痛・熱なし R L 8月8日 小児耳学会 ワーキンググループ 体温37.2℃ 鼓膜発赤(+) 鼓膜膨隆(++) 急性中耳炎 Low Risk群 経過観察のみ 体温37.2℃1点 鼓膜発赤 2点 鼓膜膨隆 8点 年令加算 3点 計14点=重症 AMPC高用量 +鼓膜切開 9月4日
利用上の注意点① 小児耳学会 ワーキンググループ 3才未満の急性中耳炎はほぼすべて 重症=抗菌薬+鼓膜切開になってしまう 高熱でなければ鼓膜所見にかかわらず経過観察 症状の改善があれば追加治療は不要
(Case2) 1才5ヶ月、女児、園児感冒症状あり、耳痛・熱なし(Case2) 1才5ヶ月、女児、園児感冒症状あり、耳痛・熱なし 小児耳学会 ワーキンググループ R L 1月31日 体温36.8℃ 鼓膜発赤(+) 鼓膜膨隆(+) 滲出性中耳炎 経過観察のみ 体温36.8℃0点 鼓膜発赤 2点 鼓膜膨隆 4点 年令加算 3点 計9点=中等症 AMPC5日間投与
利用上の注意点② 小児耳学会 ワーキンググループ 3才未満は3点加算があるため、滲出性中耳炎であっても、中等症以上=抗菌薬の対象になってしまう 5日後に改善なければ追加治療も必要 高熱でなければ鼓膜所見にかかわらず経過観察 症状の改善があれば追加治療は不要
(Case3) 1才6ヶ月、女児、未入園高熱2日目40.7℃、咳、鼻水あり、不機嫌なし(Case3) 1才6ヶ月、女児、未入園高熱2日目40.7℃、咳、鼻水あり、不機嫌なし 小児耳学会 R L ワーキンググループ 4月9日(月) 体温40.7℃ 鼓膜発赤(+) 鼓膜膨隆(++) 急性中耳炎 High Risk群 体温40.7℃2点 鼓膜発赤 2点 鼓膜膨隆 8点 年令加算 3点 計15点=重症 AMPC高用量 +鼓膜切開 採血 WBC19,200 CRP21.7mg/dl 血培、鼓膜穿刺して CTRX点滴静注 4月10日(火) 血培、穿刺液ともに PSSP(+)、莢膜血清型 4型
利用上の注意点③ 小児耳学会 ワーキンググループ 急性中耳炎以外の疾患は除外されていることが前提 急性中耳炎以外の疾患も含むことが前提 High Risk群は「フォーカス不明の発熱(Dr.西村)」のガイドラインに従う 2次病院 医師のためのガイドライン プライマリ医師のためのガイドライン
(Case4) 5ヶ月、男児、未入園昨夜から熱38.4℃ 咳・鼻水なし 活気なし(Case4) 5ヶ月、男児、未入園昨夜から熱38.4℃ 咳・鼻水なし 活気なし 小児耳学会 ワーキンググループ R L 11月6日 発熱38.4℃ 鼓膜発赤(+) 鼓膜膨隆(+) 滲出性中耳炎 経過観察 発熱38.4℃2点 不機嫌 1点 鼓膜発赤 2点 鼓膜膨隆 4点 年令加算 3点 計12点=重症 AMPC高用量 +鼓膜切開 採血 WBC13,700 CRP0.7mg/dl 検尿 膿尿、桿菌1×106/ml以上 尿培養 E.coli 1×106/ml以上 検尿
利用上の注意点④ 小児耳学会 ワーキンググループ 急性中耳炎以外の疾患は除外されていることが前提 急性中耳炎以外の疾患も含むことが前提 Low Risk群であっても除外しなければならない疾患はある、、、
(Case5) 8ヶ月、女児、未入園昨夜熱38.3℃ 鼻水 昨夜夜泣きした(Case5) 8ヶ月、女児、未入園昨夜熱38.3℃ 鼻水 昨夜夜泣きした 小児耳学会 R L 11月1日 ワーキンググループ 発熱38.3℃ (受診時37.8℃) 鼓膜発赤(++) 鼓膜膨隆(++) 急性中耳炎 Low Risk群 経過観察 発熱38.3℃2点 (受診時37.8℃) 不機嫌 1点 鼓膜発赤 4点 鼓膜膨隆 8点 年令加算 3点 計16点=重症 AMPC高用量 +鼓膜切開 11月2日 解熱、夜泣きなし WBC13,600 CRP1.5mg/dl 11月7日 採血 WBC17,400 CRP1.0mg/dl AMPC60mg/kg
利用上の注意点⑤ 小児耳学会 ワーキンググループ 「鼓膜切開」しなくてもいいのでは? Low Risk群/急性中耳炎であっても、鼓膜所見が悪ければ、即日抗菌薬でいいのでは?
(Case6) 3才5ヶ月、男児、園児昨日から耳痛、発熱 鼻水あり(Case6) 3才5ヶ月、男児、園児昨日から耳痛、発熱 鼻水あり 小児耳学会 R L 8月8日 ワーキンググループ 発熱38.1℃ 鼓膜発赤(+) 鼓膜膨隆(++) 膿胞あり 急性中耳炎 Low Risk群 経過観察 発熱38.1℃2点 耳痛 1点 鼓膜発赤 4点 鼓膜膨隆 8点 計15点=重症 AMPC高用量 +鼓膜切開 8月11日 8月9日 解熱、耳痛なし 8月11日 WBC3,600 CRP1.6mg/dl 採血 WBC11,900 CRP12.9mg/dl CTRX点滴静注
利用上の注意点⑥ 小児耳学会 ワーキンググループ ガイドラインどおり、鼓膜切開(→培養提出)も必要だったか? Low Risk群/急性中耳炎であっても、鼓膜所見が悪ければ、即日抗菌薬でいいのでは? 判断に迷ったら、 採血(WBC、CRP)
まとめ • 耐性菌をキーワードにした、日本の臨床医のための「急性中耳炎診療指針」2つを紹介した • 小児耳学会GLは「急性中耳炎以外の疾患は除外されている」ことが前提 • ワーキンググループGLは「急性中耳炎以外の疾患も含む」ことが前提 • 小児急性中耳炎の診療にあたる臨床医は、各GLの特徴を理解した上で利用するべきである