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蔵前技術士会 講演会. 「 環境経済 学 における 人間の心理や行動意識 」 肥田野 登 東工大社会工学専攻教授 2013.5.13. 本日の発表. 環境経済評価の基本的考え方 Real Payment による実験とヘドニック分析における評価者のおかれた状況と異質性 fMRI( 機能的脳磁気共鳴画像装置)を利用した新たな分析. 経済学. 金勘定ではなく幸福の追求 社会科学で最も体系化された学問 公理論的モデル 検証可能なモデル 実験、社会調査、データによる検証 ーー> 評論ではなく科学. 経済学と他分野の融合. 心理学と経済 学ーー>行動心理学
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蔵前技術士会講演会 「環境経済学における人間の心理や行動意識」 肥田野 登 東工大社会工学専攻教授 2013.5.13
本日の発表 • 環境経済評価の基本的考え方 • Real Paymentによる実験とヘドニック分析における評価者のおかれた状況と異質性 • fMRI(機能的脳磁気共鳴画像装置)を利用した新たな分析
経済学 • 金勘定ではなく幸福の追求 • 社会科学で最も体系化された学問 • 公理論的モデル • 検証可能なモデル • 実験、社会調査、データによる検証 • ーー>評論ではなく科学
経済学と他分野の融合 • 心理学と経済学ーー>行動心理学 2002年ノーベル経済学賞の受賞者 ダニエルカーネマン 心理学者 神経科学と経済学ーー>神経経済学 実験と経済学ーー>実験経済学 2002年ノーベル経済学賞の受賞者 バーノンスミス
環境経済評価における異質性 • 平均的個人(代表的個人)の評価ー> • 個人の多様性を認める評価 • 一般的状況(均衡状況)の評価ー> • 状況の多様性を認める評価
便益とは何か • 基本的に • 財(もの)、サービスが増えるとどれだけ幸福になるか • 具体的にはいくら支払ってもよいか=支払意志額Willingness to Payをしらべる
便益の推定方法 • 顕示選好法 • ヘドニック法 Hedonic price method • トラベルコスト法 Travel cost method • 表明選好法 • CVM(仮想市場法)Contingent valuation method • 選択実験 Choice experiments
表明選好法 • Mitchel, Carson(1989) • Bateman,Willis(1999)によってCVMは標準化された • ー>残されたテーマ • 仮想バイアスー表明が社会(現実)に影響を与えるconsequentiality • 社会的によいことをしたという満足感Warm glow 温情効果の分離<ー費用便益分析からの要請 • 状況に応じたモデルの構築
2000年代の展開 • 仮想性の排除ー>現実の払いを伴う実験 • Warm glowー>実験経済学による新たな知見 (Andreoni, Bernheim(2009)) • 状況の異質性ー>実験調査中の状況を考慮したモデルの開発(Hidano,Kato,Aritomi(2005)) • ー>しかしLevitt,List(2007) の指摘のように予測可能性は低い
Warm glow の動機を明らかにするための新たな実験 • 実支払い寄付Real payment donation • クラウディングアウトcrowding out<ー利他性を出来る限りへらしてWarm glow を抽出 • 社会フレームの導入<ー通常の独裁者ゲーム(dictator game)から現実社会を予測するのは容易ではない • 個人の認識を指標化<ー動機の解明のため • 完全2重ブラインド<ー実験者も誰がどれだけ支払ったか分からない完全匿名、その場で寄付額を送金
実験デザイン • a,bは当該団体への寄付者数、同じく実験参加者の寄付総額 • Frame 2は社会フレーム
社会フレームの与える影響 • 実験参加者(独裁者)は他者も寄付する可能性を考えて行動する • 1) フリーライドできる。 • 2)一方で社会的規範に従うことが望ましいというという要請も受ける、それに従うと満足感が得られる。 • 3) 他者の存在により、他者より多く寄付することにより優越感を得られる。
実験者の与える影響 • 実験者の与える影響はexperimenter demand effect(EDE)とよばれる • フリーライドしてほしいと実験者が実験参加者に要求したと信じれば、要請に従えば実験者は効用を得ると信じる→その結果実験参加者も利他的効用を得る
仮説 • 仮説1:社会フレームではフリーライド出来ると考える • 仮説2:社会的規範に従いおおくの人が当然と思うフォーカルポイントを支払うと心苦しさが減少し効用をえる。社会規範は配分額50−50に分割する((Andreoni, Bernheim(2009)) (現実は個人の利己的効用があるのでフォカルポイントは50%をしたまわる、Konow(2010)) • 仮説3:社会フレームではフォーカルポイントは多様化 • 仮説4:フォーカルポイントを超える支払いは優越感による効用を高める
規範とフォーカルポイント • 独裁者ゲーム:対称性から50-50が規範となりフォーカルポイントは250円以下<ーAndreoni, Bernheim(2009) • 通常フレーム:寄付先がcharity(社会的)、実験者と実験参加者は非対称ー>しかし本質は独裁者ゲーム 50-50250円以下 • 社会フレーム:非対称性 • フリーライド 0円 フォーカルポイント 0円 • 最低寄付額 50円 フォーカルポイント 50円 • 50−50 フォーカルポイント250円以下 • 事前にセットされた寄付額 フォーカルポイント500円以下
行動原理 • 実験参加者は以下の効用関数を予算制約下で最大化すると仮定する • U=u(x) • +warm glow.norm (規範に従った満足感) • +warm glow.sup(他者より多く寄付した優越感) +altruistic satisfaction(実験者に従ったことによって実験者がえる利他的満足感(EDE))+ altruistic or warm glowto exp or org(d:実験者に与える貨幣的満足感あるいは寄付をした満足感)
前提 規範に関する効用は当該のフォーカルポイントの額を支払って場合に最大になる warmglownorm=warmglownormmax if d≥d* if not warmglownorm(d*-d) 優越に関する効用はフォーカルポイントを明確に超える額を支払った場合に発生する
最適配分 • 単純化のためU=u(x)+warmglow normだけの場合についてみる • 通常フレーム u’ warmglownorm’の大小関係によって d=0、d=500およびその間にあるd*となる なお50−50が250円であるので u’(1000-d*)=warmglownorm’(250-d*) たとえば フォーカルポイントは200円 • 社会フレーム 同様にフォーカルポイントは0、50,100−150,200円および事前寄付額500円が規範となれば300円も候補になる。
実験 • 実験時期 2009年12月 • 参加者数 217 (モニター13 参加者204 )完全なデータは177 • 対象 東工大の学生(日本人、日本語が堪能)
フリーライド意識の分布(社会フレーム) • 7 and others chi-test p=0.084
仮説1 • 「社会フレームでフリーライドは増加する」は検証された
通常フレームでは200円がフォーカルポイント、社会フレームでは 0, 200,50,350-450円と多様化
仮説2 • 社会規範に従うと心苦しさは減少する。 心苦しさが5以下の割合が高いのは • 通常フレームで 200円 これはp=0.028 • で有意 フォーカルポイントとして検証された
仮説3 • 社会フレームでは0,50,200,350-450円が 有意 p=0.045 に心苦しさが低い
社会フレームでは50,300 円で最低所得グループの割合が増える
仮説4 • 350−450円支払うことによる優越感による効用 • 通常フレーム p=0.080 • 社会フレーム p=0.018 • 有意となる
変数 利己的効用、 Warm glow • 利己的効用 x : 消費/一日当りの可処分所得(= ((1000-d)/(i*10000/200)/10000))^0.5 • Warm glow 規範 wgnormcless: 親近性が低い wgnormbplus: 心苦しい
Warm glow • Warm glow 優越感 wtpratio40non、N:この実験に引き続いて行なわれたCVM調査で「自己のWTP表明額より他者が高い割合」が40%以下(自己表明を過大に評価する傾向の人superiority illusion)
利他性 • 実験者へ与える利他性: 1) pay off Warm glow または利他性 wg.expN:√d*cn親近性があるほうが効用は高い 2) EDEに従うことによって実験者に与える精神的満足 fncn610:フリーライド*親近性(6以上) al.Ef6more:フリーライド(親近性は6以上)
Conditional Logit model Variable choice coefficients t-value • c ordinary (o) 0-500 0.9341 1.80* • c social (s) 0-500 0.260 0.53 • v normc5less(o) 200 1.135 2.13*** • v normc5less(s) 50,200 0.915 1.89* • v normbplus(s) 100-150,300 2.063 2.61*** • w superiority illusion (o) 350-450 0.762 1.09 • w superiority illusion (s) 350-450 1.217 1.94** • e fncn610 0 0.935 0.99 • e Ef6more(s) 0 2.959 3.09*** • a exp d-(= wg.exp2(s) ) 50-500 0.038 2.14* • w normbplus(s).S 100-150,300 -1.603 -1.53 • -log likelihood 364.8247 *10%,**5%,***1%
Conditional logitの結果 • 社会フレームでは金銭的効用は有意とならなくなる。 • いずれのフレームでもフォーカルポイントとなる200円を選択することは親近性の低い人に効用を与える • 社会フレームではフォーカルポイントは多様化、350円以上、200、50円 • 社会フレームでは100−150,300円を支払う時心苦しさに対応した効用を得る • 社会フレームでは優越の誤解のある人は350−450円を支払う時効用を得る • 社会フレームでは実験者にたいするwgが存在する • 社会フレームでは実験者に対する金銭的利他性は存在するとはいいがたい • 社会フレームでは寄付先へのwgは存在するとはいいがたい
討論と結論 • 1)社会フレームの導入によってフリーライド意識がより高まる。しかし寄付額は0円が低下し300円が増加する。 • 2)親近性は寄付額を増加させるだけではなくフリーライドを増加させ最も親近性が高い人は0円を選択、従ってEDEは存在する • 3)親近性の低い人が規範に従うと仮定すれば独裁者ゲームにおける50−50配分は規範となり、フォーカルポイントは200円となる。しかし社会フレームではこれ以外に0、50、500円もなりえる。 • 4)社会フレームではフォーカルポイント500円からはなれた300円および250円からはなれた50円を寄付する人は所得が低い。 • 5)優越の誤解の強い人は350−450円をより支払う • 6)2)3)5)はconditional logitモデルでも確かめられた。社会フレームでは実験者へのWGと考える方が妥当。
ヘドニック法 • 特徴 市場での価格Pをデータとして効用関数を推定あるいは便益を推定 • 原則として均衡状態にある市場の価格を対象とする • 純粋公共財をのぞく多様な環境を評価するこたが可能
ヘドニック法の二つの考え方 • Rosen(1974)による2段階推定 • 市場価格P=f(z) ここでzは環境質の水準 • f’(z)=φ’(z,y) ここでφは付け値関数(効 用関数の一形態)yは個人の属性 • Kanemoto(1988)による過大評価定理 • 便益(環境質をz1からz2に改善)≤(p(z2)-p(z1))*H1-C ここでpは単位面積当りの市場価格、H1環境質を改善する地域の面積、Cはコスト
ヘドニック法と異質性 • 異質性 heterogeneity • 多様な個人<ー • Rosen 流であれば多様なyの考慮 • Kanemoto流であれば多様な個人を含 む定理の構築 • 多様な状況<ー 未開発
セミパラメトリック推定理論の発展と大量データの利用可能性の増大セミパラメトリック推定理論の発展と大量データの利用可能性の増大 • Ekeland, Heckman,Nesheim(2004)以降、Rosenモデルの改訂がおこなわれ一市場データから付け値関数推定が可能になりつつある • ーーー>しかしながら一段階で効率的に付け値関数を推定する方法は未開発 • データベースの整備により市場価格だけでなく個人属性の利用も可能 • ーーー>しかしながら両者の統合は未完
大規模公園とゴミ焼却施設の経済評価 • Hidano,Hoshino,Nakanishi, Sugiura(2012, EAERE Conference) では以下の関数のセミパラメトリック推定を行った • P =gp(Zp,fa)+gw(Zw,fa)+X′β+ε • P : 東京都 23 区内での単位当たり土地価格Zp : 最寄りの大規模公園までの近接性Zw : 最寄りのゴミ焼却施設までの近接性fa : 近隣地域の社会・経済状況を表す指数 (因子分析を用いて作成) X : その他の土地属性 • gp (·, ·), gw (·, ·), β : 推定パラメータ
horizontal axis: distance to park, vertical axis: factor 1 score, color denotes g0
結語 • 異質な主体は環境財に対して全く異なった評価をする場合がある。従って平均値的評価が不適切であることがわかる。 • さらに状況によって評価ばかりでなく行動自体も大きく変化する。しかしその行動自体は多くの場合合理的で説明可能である。しかしその理論的裏付けは未完成。
東工大で行われているfMRI実験 • 実験のイメージ • 実験の分野 • 脳認知科学 • 医療工学 • 神経言語学 • 神経経済学 • 神経美学 • 実験の例 • 言語を使った連想の脳内処理メカニズム • 五感(例.嗅覚)から感情への誘発メカニズム
fMRI実験に用いた刺激例Akamaet al.(2012) Frontiers in Neuroinformatics • 一般線形モデル:脳の中に、道具に関する単語と哺乳類に関する単語を処理する、固有の領域があるか? • 多変量パターン分析(機械学習):脳の賦活パターンから、実験参加者が道具ついて考えているか、哺乳類について考えているか、予想する(心を読む)モデルは計算できるか?
fMRI実験デザインの例 • 実験参加者: • 日本人 • 中国人の日本語学習者 • 朝鮮族中国人の韓国語-中国語バイリンガル • 実験刺激: 40 名詞 (20 哺乳類, 20 道具) • キャプション付きの写真がランダムにスクリーンに提示される • 名前を示す読み上げ音声がヘッドセットに流れる • 実験セッション: • 1回あたり、1時間半。 • 2日にわたり、条件を変える。 • タスク: 与えられた対象について典型的な属性を心の中で考える 長い鼻 象 木 のこぎり
脳機能的解剖学上の結果例 右中後頭回 左下頭頂小葉 左図: 哺乳類 > 道具 で有意なコントラストが認められる領域 右図:道具 > 哺乳類で有意なコントラストが認められる領域 14 人, 28 セッション, p<0.001 (補正なし, 変量効果分析)