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医療崩壊加速 政府・財界が推し進める医療「改革」の愚. 日本における医療制度改革論議の特徴. 1)医療費抑制のみが声高に論じられている。 「小さな政府」論に基づく医療費の公的給付抑制(自己負担増) 2)医療におけるビジネス・チャンスの拡大をめざす勢力が医療の「規 制改革」を主導している。 市場原理・競争原理の導入(官製市場の打破) 株式会社病院 混合診療の解禁 3)「患者の権利」を保証し、「医療の質」を向上するために、何をなす べきかの議論が背景に押しやられている。 「公」を減らして「民」をふやした「二階建ての医療保険制度(米国型
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医療崩壊加速 政府・財界が推し進める医療「改革」の愚 1/45
日本における医療制度改革論議の特徴 1)医療費抑制のみが声高に論じられている。 「小さな政府」論に基づく医療費の公的給付抑制(自己負担増) 2)医療におけるビジネス・チャンスの拡大をめざす勢力が医療の「規 制改革」を主導している。 市場原理・競争原理の導入(官製市場の打破) 株式会社病院 混合診療の解禁 3)「患者の権利」を保証し、「医療の質」を向上するために、何をなす べきかの議論が背景に押しやられている。 「公」を減らして「民」をふやした「二階建ての医療保険制度(米国型 の医療保険制度)」を目指す勢力が力を強めている。 2/45
医療制度改革を巡る議論での「キーワード」 市場原理・競争原理の導入 (官製市場の打破) 「公」を減らして「民」をふやす (二階建ての医療保険制度) 患者の選択の幅を広げる 3/45
国民負担率 %(国民所得比) 71.0 (71.4) 63.7 (68.2) 52.7 (58.4) 47.7 (49.3) 35.9 (44.8) 32.6 (37.8) 4/45
「国民負担率を抑制しなければならない」と、「国民負担率を抑制しなければならない」と、 国民の恐怖感を煽ることの欺瞞 「負担の重さ」を強調することで、「給付(国民への還元)が低レベルである」事実から国民の目をそらしている 「国全体の負担」という言い方で、「分担の不公平」を隠蔽している 負担の実態を反映していない 社会保障水準を抑制するための数値手段として用いられている (企業の公的負担を増やさないための数値手段) 5/45
著しく低い日本の社会保障還元率 還元率(%) 75.6 59.0 58.6 53.2 41.6 6/45
日本は企業の公的負担率が著しく低い GDP比 (%) 14.0 11.7 9.1 7.6 (経済産業省「経済社会の持続的発展のための企業税制改革に関する研究会」 2005年8月) 7/45
日米国民負担比較(50歳、自営業、4人家族)日米国民負担比較(50歳、自営業、4人家族) 課税収入700万円(1ドル=118円)として比較 日本 米国 (2005年) 所得税 107万円 110万円 住民税(州税) 60万円 40万円 国民年金 32万円 115万円 医療保険 61万円 264万円(169万円) 総計 260万円 529万円(434万円) 国民負担「率」を下げると、実際の国民負担は上がる。 8/45
無保険社会アメリカ 民間医療保険(市場原理で運営) 1億9820万人 公的医療保険(市場原理で落ちこぼれる人々への救済制度) メディケア(高齢者・障害者) 3990万人 メディケイド(低所得者) 3760万人 無保険者4580万人 総人口 2億9110万人 (アメリカ国勢調査局調べ、2004年) 9/45
日米医療費比較 米国 日本 GDPに占める医療費の割合 14.0% 8.0% 一人あたり医療費$5,021 $2,131 民間負担$2,716 $1,441* 税負担$2,306 $ 690* 米保健省調べ、2001年 (*は日本での公民負担割合からの計算値) 10/45
「民」の医療保険制度はなぜ高くつくのか? 1)非効率的な運営 医療損失:徴収した保険料のうち実際に医療に使う支出 「民」の81に対して「公」は98 利幅を拡大するためのコスト削減 2)「サクランボ摘み(いいとこ取り)」の弊害 「民」が健常者のみを集めて医療保険を設定 「公」に有病者が集中して、その負担が増す 11/45
入院期間超短縮化によるコスト削減 病名/手術 標準入院期間 扁桃摘出術 8ー12時間 出産 1日 乳ガン手術 1日 胆嚢摘出術 1日 虫垂炎手術 1日 脳卒中 1日 肺炎 2日 冠動脈バイパス手術 4日 心筋梗塞 4日 From “HMO consumers at risk: States to the rescue” (Families USA, Washington DC, 1996) 12/45
家族/患者へのコスト・シフト 入院期間の短縮/在宅医療の増加 医療費支出統計に現われない労力負担 13/45
二階建て医療保険制度の悪性サイクル 民間保険の保険料上昇 民間保険によるサクランボ摘み 無保険者の増加 無保険者・準無保険者の 公的負担の増加 医療費負担増加 サービスカット 公的保険の被保険者が 準無保険者化 14/45
無保険者が病気になったら・・・ 虫垂炎の例 大口顧客にはディスカウント 個人顧客(無保険者)には定価 虫垂炎入院での請求額 (ニューヨーク・メソディスト病院) 病院 執刀医 無保険 $14,000 $2,500 民間保険 $ 2,500 $ 600 メディケア $ 7,800 $ 589 メディケイド $ 5,000 $ 160 15/45
5月28日ー6月5日 入院・手術 請求額(6月25日現在 : $1=123円) $50,229.52(617万8230円) 病院から $ 4,738.00 ( 58万2774円) 医師達から $54,967.52 (676万1005円) 計 16/45
「官製市場の打破」が招いた負担の逆進性 ニューヨーク州では州法で医療費の定価を規制していた (コストの30%以上のマージンを取ってはいけなかった) 97年に定価規制を撤廃 現在、ニューヨーク州ではマージンが87%(平均)に上昇 カリフォルニア州:規制撤廃後マージンは178%に上昇 メリーランド州:規制を続けているのでマージンは28%に抑制 17/45
医療費借金地獄 複利返済 返しても返しても借金がなくならない 苛酷な借金取り立て 「取り立て会社」による債務取り立て 家屋に対する抵当権の設定 裁判所・弁護士の費用も債務に加算 債務者に対する逮捕状の請求(「肉体差し押さえ」) 医療費負債による個人破産の急増 個人破産の直接的原因の第二 個人破産の半分以上で医療・疾病が寄与 非営利病院の苛酷な借金取り立てが社会問題に イェール大学付属病院での苛酷な借金取り立てが問題に なった後、コネチカット州は州法を改正、医療費負債の 利子を年5%に制限 18/45
テネット社(米国第2の病院チェーン) 113病院、27,726床 2002年 売り上げ 1兆7000億円(前年比15%増) 税引き後利益 1200億円(前年比51%増) $ 60 50 40 30 20 10 0 02/10 01/10 00/10 株価の推移(2年間) 19/45
営利病院の経営戦略 1)強引な手法による市場寡占化 例:競争相手の病院を買収して閉鎖 2)コストを抑えるための「合理化」 ベテラン看護婦の解雇、不採算部門の切り捨て 3)非営利病院よりも高い患者への請求 4)大病院チェーンには例外なく組織的診療報酬不正請 求などの違法行為の前歴 20/45
コロンビアHCA創始者 テキサス州エルパソ市の2病院買収がスタート 最盛時350病院を保有 1997年診療報酬不正請求事件で退任 Richard Scott 21/45
株式会社病院の商法 モデスト・ドクターズ・メディカル (テネット社) $1,519 $ 547 $1,733 $6,599 サンフランシスコ・ジェネラル(非営利) $120 $ 50 $ 97 $950 項目 胸部X線 血液像検査 血清生化学検査 頭部CT 22/45
($) 60 40 20 0 60 50 40 30 20 10 0 1/1/2002 Jan ‘01 Jan ‘03 Jan ‘04 Jan ‘02 11/1/2001 11/1/2003 1/2/2001 3/2/2001 5/2/2001 7/1/2001 9/1/2001 3/1/2002 5/1/2002 7/1/2002 9/1/2002 1/1/2003 3/1/2003 5/1/2003 7/1/2003 9/1/2003 11/1/2002 テネット社株価の暴落(2002年10月) 診療報酬不正請求・必要のない心臓外科手術 23/45
#ナショナル・メディカル・エンタープライズ (テネット社の前身) 90年代初め 精神科での患者強制入院スキャンダル後CEO就任 #2002年のスキャンダル後退任 #退任前にストック・オプションで得た株を1億2千万ドルで売却 #ワールドコムの株価暴落で関連企業を告訴 Jeffrey Barbakow 24/45
米巨大病院チェーンの犯罪歴 (毎年末に巨額の示談金を支払うことが恒例化) 2000年12月 HCA社 診療報酬不正請求事件で連邦政府と 970億円で示談成立 2002年12月 HCA社 診療報酬不正請求事件で連邦政府と 1090億円で示談成立 2004年12月 テネット社 不必要な心臓手術を施行した患者(被害者) 750人に410億円での示談を提示 2004年12月 ヘルスサウス社 診療報酬不正請求事件で連邦政府と 340億円で示談成立 25/45
ヘルスサウス社創始者 リハビリテーション病院・ 外科センターのチェーン 元呼吸療法士 粉飾決算・企業詐欺で訴追 6年間で計27億ドル Sarbanes-Oxley 法の最初 の訴追例 2005年10月アラバマ州知事 に対する50万ドル贈賄で起訴 Richard Scrushy 26/45
1984ー95年 全米3645 病院での調査 133 病院が非営利から営利病院に転換 81 病院が営利から非営利病院に転換 転換前1−2年と転換後1−2年のデータで比較 病院が営利化されると死亡率が上昇 非営利→営利 営利→非営利 入院1年後 死亡率 患者一人当たり 入院費 0.266 → 0.387 0.256 → 0.219 $8,379 →$10,807 $7,204 →$7,486 Rand Journal of Economics 33, 507 (2002) 27/45
混合診療の問題 保険診療と自由診療の混合を認めない 症例:46歳男性クモ膜下出血 術後血管攣縮による死亡・後遺症の発生 ニモジピンにより抑制(3割が2割となる) 欧米ではニモジピン使用が標準的治療となっている 日本ではニモジピンが認可されていないので、使用した場合は混合診療の禁止に触れる。 28/45
混合診療の問題 1)財力によるアクセスの不平等を容認 2)似非医療が横行する危険 「先端医療」 安全性と有効性が確立されていない 患者は実験台 3)医療保険本体がアビュースされる危険 4)保険医療が空洞化する危険 29/45
混合診療先進国 中国の実態 1980年代始め、医療に市場原理を導入 公立病院も民営化・独立採算制に 無保険者の増加 公的保険は「基礎的医療」にしか適用されない。 高価な検査・薬剤・手術は保険外 医師の給料は歩合制 高い検査・治療を患者に「セールス」して収入を確保 患者は前金を要求され、払えなくなった時点で退院 退院患者の4割が中途退院 30/45
混合診療導入がめざすもの 国民がもっとさまざまな医療を受けたければ、「健康保険はここまでですよ」、後は「自分でお払いください」というかたちです。 金持ち優遇だと批判されますが、金持ちでなくとも、高度医療を受けたければ、家を売ってでも受けるという選択をする人もいるでしょう。 (週刊東洋経済/2002.1.26号) 規制改革・民間開放推進会議議長 宮内義彦 31/45
Nimodipine が認可されなかった経緯 製薬会社は「脳代謝改善薬(認知症の薬)」と、広い効能での認可申請をめざしたが、「脳代謝改善薬」の認可見直しの時期と重なったために、認可されなかった。 「クモ膜下出血術後脳血管攣縮の予防薬」としての臨床試験は一切行われなかった。 32/45
大腸癌治療薬オキサリプラチンの認可が遅れた背景大腸癌治療薬オキサリプラチンの認可が遅れた背景 1994年 イリノテカン製造承認(Y社) 1996年 欧州でオキサリプラチン承認 1997年 Y社がデビオファーム社よりオキサリプラチンの 販売権取得 1998年 海外の臨床試験データに基づく承認制度スタート 2002年 米国でオキサリプラチン承認 2004年 3月、Y社が輸入承認申請 2004年 6月、EUで大腸癌治療薬の販売権独占が問題に サノフィ サンテラボ社 オキサリプラチン アベンティス社 イリノテカン 33/45
混合診療:問題のすり替え エビデンス(証拠)が明らかな診療行為については保険診療に含めるのが本筋:「混合診療が認められていない」ことが問題なのではなく、「必要な治療が保険診療に含まれていない」ことが問題。 米連邦政府が運営する高齢者医療保険では、ある治療に保険適用を認めるかどうかの審査を患者が請求できる。 34/45
「医療改革」の「外圧」 日米規制改革及び競争政策イニシアチブ(「年次改革要望書」:米通商代表部が毎年作成) これまでは郵政改革がメイン・ターゲットだったが、次の大きなターゲットは医療改革(混合診療と株式会社の病院経営参入) 「米国大使館、米国生命保険協会、在日米国商工会議所、日本の外務省もすべて、『郵政の次は医療』と口をそろえる」 (アエラ 2005年4月18日号) 35/45
高齢化と医療費の関係(国際比較) 医療費(対GDP%) アメリカ フランス スウェーデン 日本 高齢化率(%) 36/45
医療保険制度 「民」と「公」の違い 「民」(米国型) 応益負担 不平等・不公平であるだけでなく、社会全体の 医療費負担も高くつく。 「公」(西欧・日本型) 応能負担 平等・公平であるだけでなく、社会全体の医療 費負担も安く上がる。 37/45
医療制度改革を巡る議論での「キーワード=幻想」医療制度改革を巡る議論での「キーワード=幻想」 市場原理・競争原理の導入(官製市場の打破) 質の向上を保証しない 資本力の強い者が市場を制圧する 医療とは「人の命をかたにとる」商売 「公」を減らして「民」をふやす(二階建ての医療保険制度) 所得格差に基づく医療差別の制度化 「公」と「民」による「つけの押しつけ合い」 患者の選択の幅を広げる 市場原理の下では、逆に患者の選択の幅は狭まる 医療における「選択」:時間的・物理的条件が限られている 社会全体の医療の質を上げる努力をすることが本筋 38/45
日本医療「タイタニック」化の危機 「民」の保険は一等・二等・三等の船客を差別する制度 「公」を減らして「民」を増やした保険制度への移行は、日本が誇る「皆保険丸」を氷山にぶつけようとする行為と変わらない 1912年4月2日ベルファスト港から出航するタイタニック号 39/45
結語 日本の医療は、 「公的給付の抑制」と「ビジネス・チャンスの拡大」 からではなく、 「患者の権利」と「医療の質」 から攻める。 40/45