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超伝導空洞入門. ~設計から運転まで~. 山本 康史(KEK加速器). Contents of this lecture. Introduction What is “Superconducting cavity”? RF design Mechanical design Cavity testing, surface treatment, inspection Other components for cavity assembly Cryomodule assembly & testing
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超伝導空洞入門 ~設計から運転まで~ 山本 康史(KEK加速器) 2012年ILC夏の合宿@佐賀
Contents of this lecture • Introduction • What is “Superconducting cavity”? • RF design • Mechanical design • Cavity testing, surface treatment, inspection • Other components for cavity assembly • Cryomodule assembly & testing • Beam operation with Superconducting cavity 2012年ILC夏の合宿@佐賀
① Introduction 2012年ILC夏の合宿@佐賀
なぜ超伝導空洞なのか? • おそらく今回の合宿に参加されている方の大半は超伝導空洞なるものを初めて耳にされたのではないかと思います。 • かくいう私もKEKに就職するまでその存在すら知りませんでした。 • しかし、それはある意味当然のことで、日本国内で超伝導空洞の研究開発を行っているところはKEK唯一つで、しかもグループも限られております。 • 21世紀になって、加速器は放射光施設や医療用なども含めて、かなり一般的な存在になってきておりますが、そこに使われている加速装置は全て常伝導(銅などの金属)の空洞なのです。 2012年ILC夏の合宿@佐賀
② What is “Superconducting cavity”? 2012年ILC夏の合宿@佐賀
超伝導空洞って何なのよ? • ニオブ(Niobium)で出来ている(鍍金で行う場合もある) • 超伝導状態で動く(転移温度:9.4K) • 4.2K(あるいは2K)の(超流動)液体ヘリウムで冷却される • 少量の電力で高加速勾配が得られる(表面抵抗が非常に小さい) • 大きな断熱真空層に入っている(侵入熱の防止) • 磁気シールドに覆われている(超伝導体は磁場を嫌う) • 空洞内の真空レベルは10-8Pa相当である(宇宙空間は10-11Pa) • 空洞内表面は鏡面のようにピカピカである(不純物が少ない) 極限状態で動いている粒子加速装置!!! 2012年ILC夏の合宿@佐賀
ニオブって何よ? • 原子番号 : 41 • 原子量 : 92.9 a.m.u. • 比重 : 8.57 • 結晶構造 : 体心立方構造 • 融点 : 2750K • 沸点 : 5017K • 超伝導特性 : 第二種超伝導体 Nbはこの中で最も転移温度が高い金属なのです。 2012年ILC夏の合宿@佐賀
超流動ヘリウムって何よ? • Helium 4は大気圧下では4.2Kで液体になる(常流動) • さらに冷やすと、2.17K(ラムダ点)以下で一部が超流動になる • 超流動になると沸騰が収まる • 超流動ヘリウムは摩擦の無い液体である(噴水効果など) • 超流動はマクロの量子現象である 動画があれば見せる 2012年ILC夏の合宿@佐賀
超伝導空洞の簡単な歴史 強引に一枚のスライドにまとめてみました。 2012年ILC夏の合宿@佐賀
高校3年の時の物理の教科書より 2012年ILC夏の合宿@佐賀
世界で使われている(た)超伝導空洞 X-FEL ILC Project-X • BNL • ERL • CERN • LHC, LEP • CORNELL • CESR, ERL • DESY • X-FEL, TESLA, HERA, PETRA • FNAL • Project-X • IHEP • BEPC-II • Jefferson Lab. • CEBAF, 12GeV upgrade • KEK • TRISTAN, KEKB, Super KEKB, STF, cERL • ORNL • SNS HEPL CESR SNS LHC LEP-II KEKB (Crab) TRISTAN STF/cERL KEKB 1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2012年ILC夏の合宿@佐賀
Other types of cavities for proton or heavy ion driver HWR RFQ @INFN-Legnaro QWR @ANL Spoke Multi-cell Spoke 2012年ILC夏の合宿@佐賀
Cryomodule with superconducting cavity for Accelerator 実際に加速器で運転する場合は、超伝導空洞に液体ヘリウムのためのジャケットを付けて、それらを大きな断熱真空層に入れた状態にする。 S1-Global @STF Quantum Beam @STF LHC @CERN Crab cavity @KEKB Accelerating cavity @KEKB 2012年ILC夏の合宿@佐賀
…っで、結局なんで超伝導空洞を使うの? • Q値が高い(~1010) • 熱損失が少ない • 加速勾配が高い(~35MV/m) • 高周波のエネルギーがほとんど利用可能 • ビームを通すのが楽(70mm) • ビームパイプの径を大きく出来る • 小さいスペースで高加速が得られる • KEKBの場合だと、超伝導と常伝導とでは3倍程度異なる 2012年ILC夏の合宿@佐賀
超伝導空洞って良いことだらけなの? • 大型冷凍設備 • 高圧ガス保安法への対応 • 取り扱いが大変 • 高価である • ランニングコストがかかる 2012年ILC夏の合宿@佐賀
③ RF design 2012年ILC夏の合宿@佐賀
最も簡単な空洞の例① d • 図のようなPill-box cavityを考える • 加速モード:TM010 • 軸上に加速電場 • 周方向に磁場 • Z方向の長さはRFの半周期 • 500MHzだと30cm • 1.3GHzだと約11.5cm E e– (x, y, z) ↓ (ρ, φ, z) B R 2012年ILC夏の合宿@佐賀
Pill-box空洞のTMモードの解 Jm(x): Bessel function umn: n-th root of Jm(x) TMmnp (TM modeのため) m: φ n: ρ p: z 真空のインピーダンス 本当はさらに時間変化の因子e-iωtがかかる 2012年ILC夏の合宿@佐賀
TM010の解を求めてみよう 先程の式に、m = 0, n = 1, p = 0 を代入する。 Ez Hφ 位相が90°ずれているということ e– ρ/R 0.77 つまりTM010モードの場合、軸上の電場が最大で、かつ磁場は0となり、 ビームを加速するのに適していることになる。 TM010モードのことを、加速モード、あるいはfundamental modeともいう。 2012年ILC夏の合宿@佐賀
最も簡単な空洞の例② • ビームを通してみる(Pill-boxから変形) • 実際の空洞にはビームの通り道(ビームパイプ)が付いており、また、高周波(RF)を送り込む入力結合器が取り付けられている。さらにビームが生み出す高調波を取り出すためのポートも取り付けられている。 • 加速によるエネルギー • ビームが通過する際は、時間変化をする電場を感じながら空洞内を通り抜けることになる。 • したがって、ビームの得るエネルギーは以下の式で表される。 e+ 2012年ILC夏の合宿@佐賀
最も簡単な空洞の例③ • ビームが空洞内を通り抜ける際に、様々なモードを励振していく(Wakefieldの存在)。 • 高調波(Higher Order Mode)の存在 • 代表的な高調波 • TM110(dipole) • TM011 (monopole) • TE111 (dipole) モノポールの代表的なHOM TM011 2012年ILC夏の合宿@佐賀
空洞内をビームが通過する際に何が起こるか?空洞内をビームが通過する際に何が起こるか? • 敢えて視覚化すると以下の図のようになっているものと思われる。 • 実際の空洞内には、RFも送り込まれており、これにビームから生じるwake fieldが重ね合わされてかなり複雑な状態である。 空洞内の電磁場=RF + wake 2012年ILC夏の合宿@佐賀
最も簡単な空洞の例④ Beam TM110 Dipole Mode(Crab mode) H E TE111 Dipole Mode Beam E H 2012年ILC夏の合宿@佐賀
Multi-cellへの移行 • Single cellから2 cellへ移行する • TM010モードは境界条件より2つに分離する(TM010-1, TM010-2) π Mode 隣り合うセル同士でRFの周期が 180°ずれている もっとも加速に適したモード π/2 Mode 隣り合うセル同士でRFの周期が 90°ずれている ということはILCの空洞の場合9セルなので… 2012年ILC夏の合宿@佐賀
以上は、ごく基本的な事柄です。 つまり、解析的に解ける形状、ということです。 しかし、実際の空洞はビームパイプやらRFの通るポートや高調波を取り出す ポートなどが付いてて複雑なので、もはや解析的には解けません。 したがって、現実的な空洞形状の設計にはシミュレーションを使うことに なります。 シミュレーションは色々開発されておりますが、大概は有料です。 しかも高いので、一般の人には手が出るものではないでしょう。 CERN Libraryなどとは大分違います。 シミュレーションには主に有限要素法が使われます。 2012年ILC夏の合宿@佐賀
RF設計に用いる計算コード • 2 Dimension • Super Fish(昔から良く使われている) • CLANS(HOM計算に特化している) • 3 Dimension • MW-Studio (最も汎用性の高いコード) • MAFIA (MW-Studioの古いバージョン) • HFSS (米国社製) • GDfidL (CERNでよく使われている) • OMEGA 3P (SLAC独自のコード) ※空洞が形状が一旦決まったら、さらにビームを通してみた影響も 見積もる必要があり、その際にもコードを用いて計算する。 2012年ILC夏の合宿@佐賀
超伝導空洞のセル形状を決めるパラメータ Beam Pipe Half cell λ/4 E. Kako 2012年ILC夏の合宿@佐賀
Super Fishを用いた計算 f = 1300.99 MHz, W = 0.0071 J, Po = 5.80 mW Eacc = 1.0 MV/m, Esp = 1.98 MV/m, Hsp = 3314 A/m Esp / Eacc = 1.98 Hsp / Eacc = 3314 A/m / MV/m = 41.4 Oe/ MV/m R / Q = 56.7 Ω x 2. G = 271 Ω Rs = 26.8 nW, Q0 = 1.01 x 1010 E. Kako 2012年ILC夏の合宿@佐賀
Multi-cellへの拡張 Dependence on Cell Taper & Radius of Beam Pipe E. Kako 2012年ILC夏の合宿@佐賀
高調波(trapped mode)の処置 E. Kako 2012年ILC夏の合宿@佐賀
最も危険な高調波(TE-iris mode) 9-cell K. Umemori Cell shape of TESLA 1-cell このモードはアイリス部に 捕獲されるモードで、周波数が TM011モードに近い。 TEなので、ビームを横方向に 蹴るような影響を及ぼす。 しかし、エンドセルを非対称に することで、周波数を微妙に ずらすことが出来る。 2580MHz, Rt/Q=3.1Ω/cm2 courtesy of Umemori-san 2012年ILC夏の合宿@佐賀
3 Types of Cavities for ILC, FEL & ERL TESLA Two HOM couplers Same structure TESLA-like Stiffer structure for reduction of effect of LFD KEK-ERL (ML) Two HOM dampers with ferrite Larger beam pipe with groove Much better HOM damping than above two cavities 2012年ILC夏の合宿@佐賀
超伝導空洞に関係するパラメータ① 常伝導の表面抵抗 電磁場のエネルギー 空洞の壁面損失 超伝導の表面抵抗(BCS抵抗と残留抵抗の和) 空洞のQ値(Quality factor) BCS抵抗 2012年ILC夏の合宿@佐賀
超伝導空洞に関係するパラメータ② Geometry factor 空洞のQ値(Quality factor) 加速勾配 R/Q(Shunt impedance) 2012年ILC夏の合宿@佐賀
具体的に数値を入れてみよう!① 270Ω (シミュレーションから求まる) 12nΩ 3nΩ 15nΩ (典型的な値@1.8K) 100kPa ~1kPa 4.2K 漸近値が残留抵抗と見なせる λ point (2.17K) 2012年ILC夏の合宿@佐賀
具体的に数値を入れてみよう!② (シミュレーションから求まる) Eacc = 41.6MV/m 1.038m(空洞の全長) 超伝導空洞に100W程度のパワーを投入しただけで これだけの加速勾配が得られる!!! (ビームを加速できる、とは言っていないことに注意) 1.8 x 1010 100W が、1個あれば、41.6MV/mの加速勾配が立てられる! 2012年ILC夏の合宿@佐賀
④ Mechanical design 2012年ILC夏の合宿@佐賀
RF設計を行った空洞が実際に製作可能かどうか?RF設計を行った空洞が実際に製作可能かどうか? • 如何に優れたRF設計でも、実際に作れないと意味が無い。 • さらに、製作時に2Kの液体ヘリウム環境下で運転される、という点も考慮する必要がある。 高圧ガス法に則った設計を行う必要がある。 ① 製作時に耐圧・気密試験に合格すること ② 高圧ガス保安協会の認可を受けること ③ (運転時には)各都道府県庁の認可を受けること • あまり複雑な工程にすると、コストと時間がかかる。 • 取り扱いも大変になる。 2012年ILC夏の合宿@佐賀
空洞の機械振動の計算 Mechanical Vibration Modes; 972MHz 空洞の機械振動を計算するために、 ANSYSやABAQUSなどのコードを用いる。 1. Multi-cell Mode (I) f = 87 Hz 2. Multi-cell Mode (II) f = 169 Hz 4. Tuner Mode (I) f = 294 Hz 41. Single-cell Mode(II) f = 3.91 kHz Ks : Total Stiffness of Jacket & Tuner E. Kako 2012年ILC夏の合宿@佐賀
⑤ Cavity testing, surface treatment, inspection 2012年ILC夏の合宿@佐賀
KEK Tsukuba Campus South CFF (Cavity Fabrication Facility) East West ATF/ATF2 STF North 2012年ILC夏の合宿@佐賀
Outline of STF Cryogenic liquefier EP No.2 2012年ILC夏の合宿@佐賀 tunnel underground
Typical Process for Vertical Testing as received from a vendor surface treatment (bulk EP∼100μm) f0 & Field flatness measurement Optical inspection annealing >96% surface treatment (light EP ∼20μm, degreasing, HPR) Optical inspection pre-tuning Two weeks per one cycle ☠ failure Cryomodule test V.T. success 2012年ILC夏の合宿@佐賀 Cavity string
Cavity diagnostic system at STF 396 carbon resistors 182 PIN photo diodes 8 second sound sensors Radiation monitor Electron probe 2012年ILC夏の合宿@佐賀
空洞性能試験(縦測定)に向けた準備 Fit check for EP bed CP around flanges After HPR During HPR HPR system 2012年ILC夏の合宿@佐賀
空洞性能試験(縦測定)の様子 2012年ILC夏の合宿@佐賀
縦測定と運転時の違い • 縦測定 • 連続的励振 • 1.0 x 1010 @35MV/m • 無反射条件(数百W) • 横測定(運転時) • パルス的励振(1.5ms/5Hz) • 0.8 x 1010 @31.5MV/m • 大きな反射(数百kW) • ビームが通る際は無反射になる 縦測定の方が実験設備が小さくて楽 2012年ILC夏の合宿@佐賀
無反射条件での空洞内からの電磁波の消失 下の画像は空洞に送り込んでいるRFを切った瞬間の写真です。 光は1秒間に30万km移動できますが、 上の写真によると超伝導空洞内では1秒経っても、 まだ依然としてその一部が空洞内に留まっている、 ということを意味します。 これはすごい!!! 2012年ILC夏の合宿@佐賀
Q0 vs. Eacc Curve 超伝導空洞の性能を評価する上で最も基本的となるグラフ 35.4MV/m Power limit 37.2MV/m Cell #1 heating 9.2MV/m power limit ILC spec.に到達するためには、35MV/mで0.8 x 1010に達している必要がある 2012年ILC夏の合宿@佐賀
ILC spec.に達しなかったもの ところが、様々な理由により空洞性能は制限されてしまう! こういう空洞は何故性能が出なかったのかを調べることが非常に重要!! そのためのツールとして、STFで以下の3つが開発された。 ↓ 温度/X線マッピング装置、内面検査カメラ、局所研磨装置 (STF3種の神器) 2012年ILC夏の合宿@佐賀