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医事法2009

医事法2009. 東京大学法学部  21 番教室              nhiguchi@j.u-tokyo.ac.jp 樋口範雄・児玉安司 第7回 2009 年6月3日(水) 16:50 ー 18 : 30 第5章 医師の応招義務 1) 医師の応召義務・診療義務とは何か。 2) なぜ医師には診療義務があるのか。なぜ弁護士に受任義務はないのか 参照→ http://ocw.u-tokyo.ac.jp/. 2008年度 医事法試験問題.

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医事法2009

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Presentation Transcript


  1. 医事法2009 • 東京大学法学部 21番教室             nhiguchi@j.u-tokyo.ac.jp樋口範雄・児玉安司 第7回2009年6月3日(水)16:50ー18:30 第5章 医師の応招義務 1) 医師の応召義務・診療義務とは何か。 2) なぜ医師には診療義務があるのか。なぜ弁護士に受任義務はないのか 参照→http://ocw.u-tokyo.ac.jp/

  2. 2008年度 医事法試験問題 • 問2 医師法第19条1項は「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と定めている。現在のわが国においてこの条項に関連して問題となる状況を2つあげ、それらについて論じてください

  3. 巻頭言(秋田医報1324: pp4-6. 2009)http://www.mfukuda.com/isikai/ishino_ousyougimu.htm 医師の応召義務と新型インフルエンザ秋田県医師会副会長 福田光之 • 医師には応招義務が課せられており、大きな威嚇効果を発揮している。 医師法19条1項には、「診療に従事する医師は、診察や治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と定められている。・・・ この医師法19条の最大の問題は「正当な事由」の範囲が狭すぎること、具体性を欠くことにある。「正当な事由」の解釈が示されたのは、50年以上前の行政通知である。それには「医師の不在又は病気等により、事実上診療が不可能な場合に限られる」と厳しく限定しており、これが今もそのまま通用している。・・・ (今回問題にするのは)「新型インフルエンザ」(「新イ」)対策へ医師の参加の件である。「新イ」対策への参加は医師として吝かでないが、医師の責務・責任なのか?倫理観なのか?好意なのか?と言う疑問は解けない。勿論、「新イ」患者、疑い患者から診療を求められればそこには応招義務が発生するが、この辺のことが論じられないまま「新イ」対策が進められている。これで良いのだろうか。

  4. 私が得た結論は、「新イ」対策の場合、少なくとも応招義務などの法的な縛り、義務はなく、唯一、拠り所を見出すとすれば、医師が「新イ」対策に参加しなければ「医師としての品位、品格」が問われる、と言うところだけの様である。・・・私が得た結論は、「新イ」対策の場合、少なくとも応招義務などの法的な縛り、義務はなく、唯一、拠り所を見出すとすれば、医師が「新イ」対策に参加しなければ「医師としての品位、品格」が問われる、と言うところだけの様である。・・・ •  「新イ」対策は国が主導して行う危機管理対策である。協力者である医師や医療機関、医師会に対策の責任を負わせ過ぎていないだろうか。 •  国では、感染は普く生じるのだから医療関係者や医療機関を特別視できない、との考えで医療機関や医療関係者への保障は全く考えていないようであるが、感染し、時には死亡することもあり得る危険な業務へ無防備のまま参加を呼びかけること自体に疑問を感じてしまう。 •  私は国や県に対し、協力する医療従事者の立場でプレパンデミックワクチン、パンデミックワクチンの優先投与、充分なPPE材の配給、抗インフルエンザ薬の予防服薬、労災認定を要求したいと考えている。

  5. 以下の仮の事例について論じなさい。 • A医師は開業医であるが、新型インフルエンザについて自分と看護師を守るため次のような対応をすることにした。発熱などインフルエンザの症状を告げて診療を求められた場合、発熱外来など他の機関へ行くよう告げるというものである。 • A医師のもとへ電話で高校生Bが発熱し、診てもらえるかという電話がかかった(あるいは、タクシーで診療所に乗り付けてきた)。だが、A医師は診療を拒んで発熱外来へ行くよう勧めた。Bは発熱外来へ回ったが、そこでは新型インフルエンザの有無に重点を置いた検査が行われ、後にわかったX病の発見が遅れ、Bは重大な障害を負った。

  6. 医師の応招義務 医師法19条1項「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」 字義を見ると・・・  診療に従事する医師  診察治療の求め  正当な事由 他の医療従事者にも同様の規定

  7. 医師の応招義務 家庭医であるR医師は、骨関節症に関する治験に参加し、一定の成果が出たので、それに関する研究報告に参加するため、メルボルンで開かれる学会に出席することになった。 メルボルンまでの飛行機の中で、急病人が出て、乗務員が呼びかけた。「誰かお医者さんはおられませんか」。R医師は、心臓発作が出るような患者を診た経験は多くないので躊躇した。この場合、R医師はどうすべきだろうか。

  8. 航空機内での急病人と医師の役割・法の役割 2つの行き方 A 制裁型   医師に救助義務(応招義務)を課し、それに応えないようなら刑事罰を科す。実際に手当をした場合に過失があれば民事責任を問う。さらに行政処分も考える。    ◎刑事制裁・民事賠償・行政処分のトリプル・パンチ B 支援型   医師に善意で立ち上がるよう制裁のない義務を宣言する。実際に手当をした場合に過失責任免責を定める。結果が悪くても、民事賠償もなければもちろん行政処分もないことにする。    ◎リーガル・リスクを低くして、善意の行動を促す。

  9. 航空機内の急病人と医師の役割・法の役割 実際の2つの法律【緊急事務管理と応招義務】 A 民法698条「管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない」  →697条「義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。) B 医師法19条「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」(罰則なしの規定) ◎明らかに支援型の対応をしている

  10. 一部の医師の思考 1 民法698条は助けにならない    なぜなら医師には応招義務があるので適用されないから 2 関与して結果が悪いと過失責任を問われ訴えられるおそれがある 3 だから寝たふりをするなどで、知らないふりをしよう

  11. 法律論としての誤り 1 寝たふりは安全か    →応招義務が航空機内にも適用があるとするなら、法律家は、(不作為の)業務上過失致死傷罪で追及する可能性あり    →誰かその航空機内に当人が医師と知っている人がいると莫大なリスクあり 2 しかし、そもそも制裁型の法が適切かという問題がある

  12. 法律論としては 1 航空機内の医師には応招義務なし     だから民法698条の適用あり 2 航空機内の医師には応招義務の適用はあるがそれには罰則もない。したがって、民法698条の「義務なく」というほどの義務ではないので、やはり民法698条は適用される *いずれかの解釈で、医師は安全のはず なぜならそれが常識的な結果だから   常識=法 善意の医師の行為を促進する 

  13. 立法論としては • 日本版の救命行為促進法を作り、明確に医療者を含む救助者に過失免責を認めるべきである • アメリカの全部の州とカナダの一部の州で採用されている Good Samaritan Act (よきサマリア人法)は、医師会が推進したもの

  14. 妊婦死亡事件―病院の受入れ拒否 <妊婦死亡>墨東病院当直は研修医1人 2人体制維持できず 2008年10月23日15時1分配信毎日新聞 妊娠中に脳内出血を起こした東京都内の女性(36)が7病院に受け入れを断られた後に死亡した問題で、最初に受け入れを断った都立墨東病院(墨田区)の当直医は「シニアレジデント」と呼ばれる研修医だったことが分かった。10月は研修医が1人で当直する日が4日あったという。墨東病院は6月、シニアレジデント当直の場合は「原則として母体搬送の受け入れを制限する」と関連団体などに文書で通知していた。 経営する都病院経営本部によると、墨東病院の産科は6月末に医師1人が退職したことから、当直2人体制を維持できなくなった。このため関係者に対し、7月からの土・日曜と祝日の当直体制について「1人当直である上に、シニアレジデント当直の場合もありますので、ハイリスク分娩(ぶんべん)への対応は困難」と、受け入れ制限を文書で伝えていた。 シニアレジデントは2年間の初期臨床研修を終え、専門医を目指してさらに研修中の後期臨床研修医。都によると、今回受け入れを拒否した医師は免許取得から4年だった。 こうした状況は今回の問題が発覚した後も変わっていないといい、都病院経営本部の谷田治・経営戦略担当課長は「何かしなければいけないが、これという改善策は現段階で思い浮かばない」と話している。 Q 東大病院など他の病院も含めて医師法19条1項上の問題はあるか。

  15. 医師の応招義務 弁護士等との比較  契約の締結強制 罰則の有無  規定の性格 歴史的変遷

  16. 医師の応招義務 19条1項の法化   ①行政処分の根拠   ②民事賠償の根拠   ③刑事制裁の根拠 正当化   医業独占 医療の公共性 制裁型の対処で医療をよくする

  17. 正当事由 正当事由と認められる場合(つまり、断ることのできる場合)   ①医師の不在、病気などで診療不可能な場合。   ②専門外の診療で、それを患者が了承した場合(ただし、了承しなければ応急の処置その他できるだけのことをする)。   ③休日夜間診療体制が整備されている地域で、そこでの受診を指示する場合(ただし、症状が重篤で応急的な措置が必要な場合は別である)。   ④勤務医が自宅で診療を求められたとき(緊急時は例外)。 正当事由と認められない場合(つまり、断れない場合)   ①軽度の疲労、酩酊。   ②診療費の不払い。   ③休診日、診療時間外。ただし上記③参照  ④診療の必要な場合の往診の求め。

  18. 弁護士の受任義務 • 司法書士法21条「司法書士は、正当な事由がある場合でなければ依頼(簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く。)を拒むことができない」と受任義務が明定され、おまけに75条で100万円以下の罰金まで規定されている • 弁護士=依頼人からの自由と独立

  19. 冒頭の試験問題について 【解答のポイント】 1)本条がいわゆる応招義務(応召義務)を定める規定であり、現在はその違反に対し罰則がないという点を押さえておく必要がある。さらに、それにもかかわらず、法的な意義が認められている。これまで実例はないが行政処分の理由になるとされてきた他、その後の判例学説は、具体的事例によって、不作為による業務上過失致死傷罪という刑事罰の適用と、民事上の不法行為責任の根拠になりうるとしてきた。

  20. 2)以上を前提にして、本問については、まず「2つの状況」という言葉が多義的でありどう解釈するかは難しかった側面がある。出題者としては、現実に生じている問題を指摘し、それが応招義務違反との関係で議論されている場合を2つあげてもらうという趣旨だったが・・・。2)以上を前提にして、本問については、まず「2つの状況」という言葉が多義的でありどう解釈するかは難しかった側面がある。出題者としては、現実に生じている問題を指摘し、それが応招義務違反との関係で議論されている場合を2つあげてもらうという趣旨だったが・・・。 たとえば、1つの例は、そもそも医師法19条の適用があるかないかが問題となる事例、もう1つの例は、医師法19条の適用はあると考えられるが、適用除外となる「正当な事由」に当たるか否かが問題となる事例をあげると、複数の事例を挙げる意味が明確になる。 ①航空機内で急病人が出て、「お医者さんはおられませんか」と言われた場合が前者の例となる。19条の解釈次第では、そもそもこれは応招義務の問題とならない可能性がある。具体的には、この場合の医師は「診療に従事する医師」とはいえないとして、法律とは無関係に、医療倫理に従って行動するか否かだけが問題となり、善意で診察に当たった場合は民法の緊急事務管理の過失免責規定の適用がなされる。 ②これに対し、救急で診療を依頼された患者を診療中の医師や病院が断るケースでは、その正当事由が問題となる。専門の医師が不在の場合、いても他の患者にかかりきりで受け入れられないという場合のように、医師不足問題につながるケースがある。また、従来から診ている患者だがこれまで診療費を支払ったことがないとか、あるいは酒乱で暴れたことがあるとか、 • ★漢字の誤りについて •  漢字はなかなか難しいですが、次のような誤りには今後注意してください。 • 1 幣害 → 弊害 • 2 責任の追求 → 責任の追及 • 3 権利の保証 → 権利の保障 • 4 それにも関わらず → それにもかかわらず •    実際には関係している場合にいうので、関わらずは誤り。漢字を当てるなら「拘わらず」になります。 • 5 専問医 → 専門医 • 6 急救  → 救急

  21. さらには、すでに入院している患者で病院としてはすでに医療的対応は十分であるとしているの患者の方で応招義務を主張して退院を拒むケースなど、診療拒否が患者の問題に起因するケースもある。さらには、すでに入院している患者で病院としてはすでに医療的対応は十分であるとしているの患者の方で応招義務を主張して退院を拒むケースなど、診療拒否が患者の問題に起因するケースもある。 これらは、いずれも医療現場で困難な課題として意識されているものであり、容易な解答はないが、次のような整理をすることはできるかもしれない。それは現代における19条(応招義務)の意義をもう一度考えてみるということである。 1)19条は、医師の数がずっと少数で、医療に関する国民の自由選択制というような言葉の裏付けがなかった時代に制定されたものである。そうだとすると、救急の場面を除けば、患者は、ある医師が断っても別の医師のもとへいける可能性が高い。しかも、19条に罰則が削除されていることを考え合わせると、正当事由を緩やかに解する可能性が高くなっているということでもある。

  22. 2)仮に正当事由に当たらないとしても、19条違反がどのような法的効果を持つかは吟味に値する。ここでも、結局、救急患者が診療を断られて死亡したり、症状が極度に悪化したという場合以外では、実は、法的効果がある可能性は低い。現実的にみて行政処分もありそうにない。2)仮に正当事由に当たらないとしても、19条違反がどのような法的効果を持つかは吟味に値する。ここでも、結局、救急患者が診療を断られて死亡したり、症状が極度に悪化したという場合以外では、実は、法的効果がある可能性は低い。現実的にみて行政処分もありそうにない。 3)そのように考えてくると、救急患者についてだけ、とりあえず救命措置を図る義務として応招義務を再構成することの方が、実態に即したものではないかとも考えられる。

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