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松山赤十字病院 モーニングカンファレンス 2012.9.20. 急性消化管出血 松山 赤十字 病院 胃腸センター 岡本 康治. 消化管出血の徴候. 吐血 :一般に出血源 は Treiz 靭帯より 口側に存在。 喀血等と 鑑別が 必要 下血:黒色便を排泄する現象。 60-100ml 以上の出血を来すと便が黒色 へ。 一般に出血源は上部消化管に存在。 下部消化管からの出血であっても腸管内に長く停滞すると便は 黒色を呈する。服用薬剤や摂取した食物について問診必要 。 血便:赤色あるいは暗赤色の便。 一般に出血源は下部消化管に存在。
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松山赤十字病院 モーニングカンファレンス 2012.9.20松山赤十字病院 モーニングカンファレンス 2012.9.20 急性消化管出血 松山赤十字病院 胃腸センター 岡本 康治
消化管出血の徴候 吐血:一般に出血源はTreiz靭帯より口側に存在。 喀血等と鑑別が必要 下血:黒色便を排泄する現象。60-100ml以上の出血を来すと便が黒色へ。 一般に出血源は上部消化管に存在。 下部消化管からの出血であっても腸管内に長く停滞すると便は 黒色を呈する。服用薬剤や摂取した食物について問診必要。 血便:赤色あるいは暗赤色の便。 一般に出血源は下部消化管に存在。 上部消化管からの出血であっても急速に大量の出血を来し、 短時間に腸管内を通過した場合は血便となることがある。
プライマリ・ケア 1:バイタルサインのチェック、血管確保、 輸液、血液検査など 2:問診 3:出血量の推定(重症度診断) 4:輸血の必要性
バイタルサインからみた出血量の推定と重症度判定バイタルサインからみた出血量の推定と重症度判定
急性出血に対する血液製剤の使用指針(厚生労働省)急性出血に対する血液製剤の使用指針(厚生労働省)
疫学 上部消化管出血(70~80%) ① 胃潰瘍(30.3~42.4%) ② 十二指腸潰瘍(7.6~23.0%) ③ 急性胃粘膜病変(AGML)(約10%) ④ 食道静脈瘤破裂(約10%) ⑤ 悪性腫瘍(1.8~6.8%) ⑥ Mallory-Weiss症候群(2.1~6.4%) 小腸出血(5%) 大腸出血(20~30%) ① 虚血性大腸炎(4.0~31.9%) ② 痔核、肛門病変(4.0~25.4%) ③ 腸炎(3.3~21.9%) ④ 大腸癌(2.8~18.5%) ⑤ 大腸ポリープ(0.4~17.4%) ⑥ 潰瘍性大腸炎(3.4~12.5%) ⑦ 大腸憩室出血(1.8~7.9%)
診断 吐血、下血、血便 吐血 下血(黒色便) 血便 緊急上部消化管内視鏡 緊急下部消化管内視鏡 異常なし 異常なし カプセル小腸内視鏡、バルーン小腸内視鏡 止血 止血
胃十二指腸潰瘍の2大原因 ① H.pylori菌感染 ② アスピリンを含む非ステロイド性抗炎症薬 (Nonsteroidal anti-inflammatory drugs:NSAID) ・非アスピリンNSAID:解熱鎮痛作用 ・低用量アスピリン:抗血小板作用
NSAIDと抗血栓剤 (ロキソプロフェン、 ジクロフェナク等) 解熱鎮痛目的 非アスピリンNSAID NSAID 抗血小板目的 低用量アスピリン(以下アスピリン) (腸溶剤、緩衝剤等) 抗血小板目的 抗血栓剤 アスピリン以外の抗血小板剤(以下抗血小板剤) (チクロピジン、 クロピドグレル等) 抗凝固剤 抗凝固目的 (ワルファリンカリウム、ヘパリンナトリウム等)
欧米 本邦 胃潰瘍 十二指腸潰瘍 びらん 胃潰瘍 十二指腸潰瘍 びらん 胃十二指腸粘膜傷害の程度 非アスピリン NSAID アスピリン 14~30% 5.9% 5~18% 5.3% 63.1% 15.5% 14.9% 1.9% 3.9% 42.6% 加藤 元嗣: CLINICIAN NO.576, 2009
細胞膜リン脂質 NSAIDと病態 ホスホリパーゼA2 選択的COX-2阻害薬 アラキドン酸 阻害 アスピリン COX-2 COX-1 (不可逆的阻害) 非アスピリンNSAID (可逆的競合阻害) プロスタグランジン (以下、PG) トロンボキサン (血管収縮、血小板凝固作用) PG 炎症、疼痛、発熱を仲介 胃、十二指腸粘膜の保護
出血性胃十二指腸潰瘍(508例) NSAIDとH.pylori出血性胃十二指腸潰瘍(508例) NSAIDとH.pylori NSAID(+) 208例(40.9%) NSAID(-) H.pylori(-) 71例(14.0%) NSAID(+) H.pylori(-) 110例(21.6%) H.pylori(+) 327例(64.4%) NSAID(+) H.pylori(+) 98例(19.3%) NSAID(-) H.pylori(+) 229例(45.1%) <対象・方法> 2002年1月から2009年12月までの8年間に当センターで内視鏡的止血術を施行した出血性胃十二指腸潰瘍508例を対象とし、NSAID使用歴の有無より、NSAID群と非NSAID群の2群に分類した。さらにNSAIDをアスピリンと非アスピリンNSAIDに分類し、その使用歴によりNSAID群をアスピリン群(アスピリン使用例)、併用群(アスピリンと非アスピリンNSAID併用例)、非アスピリンNSAID群(非アスピリンNSAID使用例)に分類した。各群ごとにその臨床像と内視鏡像を遡及的に比較検討した。 川崎啓祐, 蔵原晃一, 他:消化器内科51, 2010.
出血性潰瘍症例508例の内訳 併用群 18例(3.5%) アスピリン群 65例(12.8%) 非NSAID群 300例(59.1%) 非アスピリンNSAID群 125例(24.6%) 川崎啓祐, 蔵原晃一, 他:消化器内科51, 2010.
出血性潰瘍症例508例の推移 143 (51.8%) 157 (67.7%) 76 (27.5%) 49 (21.1%) 4(1.7%) 14(5.1%) 43 (15.6%) 22(9.5%) 前期232例 (2002年~2005年) 後期276例 (2006年~2009年) 川崎啓祐, 蔵原晃一, 他:消化器内科51, 2010.
各群の臨床像、内視鏡像と治療成績の比較 川崎啓祐, 蔵原晃一, 他:消化器内科51, 2010.
出血性胃十二指腸潰瘍自験508例のまとめ ・ 出血性胃十二指腸潰瘍508例中、アスピリン/非アスピリンNSAID併用例は18例(3.5%)であった。 ・ アスピリン/非アスピリンNSAID併用群はアスピリン群、非アスピリン NSAID群、非NSAID群と比較して来院時Hb値、血清H.pyloriIgG抗体陽性率が低値であった。 ・ NSAID使用例、特にアスピリン使用例は増加傾向にあり、それに伴い アスピリン/非アスピリンNSAID併用例も増加傾向にあり、今後更なる 検討を要すると考えた。 川崎啓祐, 蔵原晃一, 他:消化器内科51, 2010.
薬剤散布法 局注法 (安価で簡便) 機械的止血法 (組織障害が少ない) 組織凝固法 (手技的に容易) トロンビン エタノール アルギン酸ナトリウム 純エタノール局注 HSE局注 クリップ 結紮法(EVL) ヒータープローブ バイポーラプローブ(Gold probe) APC 出血性胃十二指腸潰瘍に対する内視鏡的止血法 内視鏡的止血術
HSE Hypertonic saline and epinephrine (10%NaCl 20ml + ボスミン1-2ml) 局注法 APC(argon plasma coagulation)法 血管収縮、フィブリノイド変性と 周囲組織の膨化による血栓形成。 露出血管周囲に1-2mlずつ数カ所に局注。 (総量10-20mlまで) 組織障害は比較的弱いが総量が増えると潰瘍が大型化する。 非接触型。 アルゴンガス放出と放電による組織の熱凝固。 深部組織への凝固作用が少なく安全。 径の太い露出血管に対して効果不十分。
出血性胃潰瘍 82歳男性。吐血。 頭痛に対してロキソプロフェン屯用。HP(+) エタノール局注後 APC後
第2病日 第6病日
出血性胃潰瘍 76歳女性。タール便。 NSAID(-) HP(+) HSE 局注後 APC後
第7病日 第36病日
止血後の潰瘍治療のフローチャート 除菌によらない治療 (PPI、H2RA) NSAID使用なし HP陰性 HP陽性 NSAIDの中止 HP陽性 除菌 NSAID使用あり NSAIDの投与継続 1)PPI 2)PG製剤(ミソプロストール)
低用量アスピリン療法での イベント発症予防と消化管出血の頻度 -24文献(66,000例)のメタ解析結果- イベント発症予防効果(number needed to treat per year) 心筋梗塞の一次予防 SALT study . Lancet 1991 脳卒中の二次予防 US Physicians Health Study. NEJM 1989 555人に1人予防 106人に1人予防 消化管出血発症頻度(number needed to harm per year) 248人に1人発症 消化管出血 0 200 400 600 Derry et al. BMJ,32,1183-1187,2000.
出血性胃十二指腸潰瘍の発症予防のために ・抗凝固療法、線溶療法の開始前には上部消化管内視鏡検査と 便潜血検査を施行する。 ・胃十二指腸潰瘍の既往のある患者には、H. pylori除菌療法を 検討する。 ・ハイリスク症例にNSAIDを投与する際には PPI の併用投与を考慮する。 • NSAID潰瘍のハイリスク要因 • 高用量・複数のNSAIDの使用 • 2. 潰瘍の既往 • 3. ステロイドの併用 • 4. 抗血小板薬・抗凝固薬の併用 • 5. H.pyroliの合併 • 6. 75歳以上の高齢者 • 7. 全身疾患(心、肺、肝疾患など)の合併
今後の課題 ・わが国における消化性潰瘍の大部分はHP感染、NSAIDが原因である。 前者に対しては、最近問題となっている除菌失敗例に対するメトロニダ ゾールを含む再除菌治療も2007年8月に保険認可され、主要な問題は解決しつつある。NSAID潰瘍の予防に関しても一部のPPIが保険適応となり、他のPPIも保険適応となる可能性がある。 ・出血性胃十二指腸潰瘍症例数は増加傾向にあり、さらにNSAID使用例、特にアスピリン内服者の増加傾向が著明である。この傾向は、近年指摘されているアスピリンの内服症例数自体の急増を反映している可能性があり、非アスピリンNSAIDとの併用例の問題を含め、今後、予防対策を講じたうえで更なる検討を要すると考える。
小腸用カプセル内視鏡 充電器 小腸用カプセル内視鏡 EC-1 受信装置 アンテナユニット ビュワー (リアルタイムモニター) ワークステーション WS-1(ハードウェア、モニター、プリンター)
検討:対象・方法 当センターにおいて2008年6月から2012年6月までの 4年1カ月間にCEを施行した226例を対象として、 その臨床像を遡及的に検討した。
対象226例の臨床像 *平均±SD(range) (原発性小腸癌 2例)
対象群の検査施行契機 OGIB以外112例 (49.6%) overt ongoing 57例(25.2%) 226例 previous overt 26例(11.5%) occult 31例(13.7%) OGIB 114例 (50.4%)
対象群の内視鏡像および診断 有所見 154例 ( 68.1%) 異常なし 72例(31.9%) 226例 潰瘍性病変 75例(33.2%) その他 1例(0.4%) 腫瘤性病変 39例(17.3%) 血管性病変 39例(17.3%)
対象群の内視鏡像および診断 その他 1例(0.4%) 226例 潰瘍性病変 75例(33.2%) 腫瘤性病変 39例(17.3%) 血管性病変 39例(17.3%)
OGIB症例とOGIB以外の症例の比較 *平均±SD 止血 7例 切除 2例 切除 1例
症例 3 NSAID関連潰瘍 60歳代、女性:overt ongoingOGIB 関節リウマチに対してampiroxicamを数年間常用. HSE局注 空腸 クリップ+HSE HSE局注後
初診時 NSAID中止3ヶ月後
OGIB症例 適応外症例 潰瘍性病変(炎症性病変) 症例 180歳, 男性.NSAID関連潰瘍(低用量アスピリン) 症例 377歳, 男性:AA型アミロイドーシス カプセル内視鏡 バルーン内視鏡 カプセル内視鏡 カプセル内視鏡 症例 232歳, 女性:Behçet病 症例454歳, 男性:Whipple病 カプセル内視鏡 カプセル内視鏡 カプセル内視鏡 カプセル内視鏡
OGIB症例 適応外症例 腫瘤性病変 症例 571歳, 男性:GIST 症例 741歳, 女性:原発性小腸癌 カプセル内視鏡 バルーン内視鏡 カプセル内視鏡 バルーン内視鏡 症例 677歳, 男性.転移性小腸癌(肺癌の小腸転移) 症例 848歳, 男性:濾胞性リンパ腫 バルーン内視鏡 カプセル内視鏡 バルーン内視鏡 カプセル内視鏡
OGIB症例 適応外症例 血管性病変 症例 948歳, 女性:Angioectasia 症例 1166歳, 男性:Angioectasia カプセル内視鏡 バルーン内視鏡 カプセル内視鏡 カプセル内視鏡 その他 症例 1040歳, 男性:Meckel憩室 症例 1265歳, 男性:Angioectasia カプセル内視鏡 バルーン内視鏡 カプセル内視鏡 カプセル内視鏡
今後の課題 ・当センターではバルーン内視鏡に加えカプセル内視鏡導入後 OGIB症例が増加し、内視鏡的止血術施行例も増加している。 ・小腸疾患診療に際し個々の検査の特性を生かし、バルーン内視鏡、 カプセル内視鏡、さらにはCT、小腸X線造影検査を効率的に組み合わせた診療体系の確立が望まれる。