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京都ジフテリア禍事件. 1948年、85名の死者を出した予防接種 事故は、多くの謎が秘 められており、製薬会社、 厚生省、占領軍、はて は731部隊 まで絡む 戦後史の秘密が隠され ていた。. 薬害第一号 薬害問題の原点. ジフテリアとはどんな病気か. ジフテリア菌による気道上部の炎症 ひどい風邪の様なもの 暖房、栄養状態の悪いときに猛威--戦中 飛び石感染---流行の抑制が難しい 飛沫感染、堅強な人なら発症しない
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京都ジフテリア禍事件 1948年、85名の死者を出した予防接種 事故は、多くの謎が秘 められており、製薬会社、 厚生省、占領軍、はて は731部隊 まで絡む 戦後史の秘密が隠され ていた。 薬害第一号 薬害問題の原点
ジフテリアとはどんな病気か • ジフテリア菌による気道上部の炎症 • ひどい風邪の様なもの • 暖房、栄養状態の悪いときに猛威--戦中 • 飛び石感染---流行の抑制が難しい • 飛沫感染、堅強な人なら発症しない • 弱者が突然発症 • 後麻痺--これが致命的 • ジフテリア菌が毒素を出し各部に麻痺 • 脳麻痺、心臓麻痺、筋肉麻痺 • 予防接種はジフテリア毒素に対する抗体
史上最大の予防注射事故 Sir Graham Wilson, “Hazards of Immunization”, Athone Press, University of London, 1967.
ジフテリア予防接種液の製造 北京系菌種 ホルマリン マルタン 培養菌 明礬 上澄み液 を捨てる 生理的食塩水 37度 ときどきゆする 沈殿 分注
事件の経過 • 1948年6月 予防接種法 受けないと罰金 • 11月4日、5日第2回接種 15561人 • 腕が紫色に腫上り発熱、麻痺、続々入院 • 11月13日玉木正子ちゃん死亡 • 11月19日までに12名が死亡 • 11月24日ジフテリア毒素が原因と発表 • 11月29日再び死亡者が増加 • 1月15日中村博雅くんが68番目に死亡 • 被害者数606名に達する
原因不明の発熱・麻痺症状 • 接種薬の不良か? • 国家検定を受け検査済み • 同一場所でも全員ではなく一部しか発症しない • 接種時のミスか? • 京都市内の9箇所で同時発生 • アレルギーか? • 9箇所だけにしか発生せず • 特異体質に作用する異物の混入か? • 発生数が多すぎる 直接体内に細菌が入るので喉から感染するジフテリアの症状とは異なる
地域での発症状況 1013を使わなかった府下の他市では発生せず 1013を使った所でも発生していない所もある
ロット1013の一部に残留毒素 ( 1948年12月4日衆議院厚生委員会) 厚生大臣の国会答弁 : 4個のコルベンに分けて作られたものの一本に毒素が残留していた。同一のロットとして検査申請されていたため、抜き取り検査をすり抜けた。(厚生省の責任ではない)製造者を告訴する。
ホルマリン量の不足 • なぜホルマリン量が少なかったか? • 入れ忘れではない • 0.4%のところが0.3%になった • 柴山報告書(厚生省ファイル) • 「5㍑に対して23ccないし25ccだが10ccのメスピペットを用いた。」 • 0.5%25=10+10+5 • 0.3%15=10+5 • 1回半と2回半の間で手順の混乱? • 記録の混乱 • 組織的繰り返しミス
8本抜取で見つからないか? • P=750C8/1000C8=9.9174% • 1000本中250本毒性であれば8本抜き取りで2本毒性が期待される。 • 毒性のものが全く抜き取られない確率はむしろ低い。 • しかし、起こり得ないとまでは言えない
10日も後に島根で被害 • 9日微研からの電報で配布停止 • 9日 「ジフテリア チュウシャ ミアワセ」 • 11日 「ジフテリア1013ゴウ、キョウトデシヨウノウチ フクサヨウ ツヨキモノアリ」 • 朝日新聞記事 • 12日「1013号トキソイドが原因、大きな被害なし」 • 12日に1013以外で再開決定 • 15日 野波村で実施/ 13日 御津村で実施 • 16日 御津村で被害発生/17日 五十猛村で実施 • 17日 厚生省からの電報( 1013以外を用いて続けろ?) • 「オオサカニッセキ ロット8ノ シヨウノゾク イサイフミ」
島根の被害は別ロット • 島根に送られた100本の1013は使われなかった • 別ロットのものを使って16名が死亡 • 1012 島根 • 1013 京都 • 1014 島根 この全てが見逃される確率は0.0976%でしかない
実は2コルベンが毒性 501番から1000番 1番から500番 • M.Kurokawa, R.Murata ,Japanese Journal of Medical Science & Biology vol14 249(1961)
木箱を開けての抜き取り検査 • 1ロット1000本は8つの木箱に梱包されていた。2月6日には16ロットが検査されているが、本当に128の木箱を開けて抜き取ったのだろうか? • 検査官:「検査の詳細は覚えていない」 <これは魚の木箱>
裁判の結果(1961年確定) • A理事長 病気で実務には加担せず • 罰金500円 禁固二年執行猶予二年 • T副所長 部下を信頼してまかせきり • 禁固一年執行猶予三年 • K主任 ロットを分けた過失致死罪 • 実刑 禁固1年 • Y検査官 検査官には実態は見ぬけない • 無罪 • 厚生省 ロットが4つに分けられた被害者
隠された不合格品 • 12月2日受け付けのほとんどが不合格で、検査ミスで合格とされたものが注射された
1948年ジフテリア禍のまとめ 84名の死者を出す史上最大の接種事故 原因は滅菌ホルマリンの注入不足 国の検査が見逃した原因は「手抜き」 国は不良品多発を隠して接種を実施 なぜそこまで無謀な予防接種を強行したのか? そんなに予防接種の緊急性があったのか?
予防接種は緊急だったのか? • 上が寸詰まりのゆがんだグラフ • ゼロがあるから対数でもない • 変化が大きい1945年以前が書いてない 国立感染症研究所細菌第二部 高橋元秀、小宮貴子、岩城正 昭「ジフテリア」(感染症情報センター『感染症発生動向調査週報』
Diphtheria Epidemics 10 終戦と共に激減 戦時に大増加 8 6 予防接種開始時 にはすでに沈静化していた 4 2 高度経済成長で栄養 暖房状態が良くなり消滅 に向かった 0 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990
予防接種はGHQの指示 緊急の必要もない予防接種をなぜ急いだか? 1948年当時の政策決定権はGHQ 予防接種薬製造推進はGHQ指令が根拠 GHQ文書の解読が必要
GHQ文書とは 講和条約締結でGHQが閉鎖された時に全文書をヴァージニア州アレキサンドリアの旧海軍倉庫にそのまま保存 日本政府の意向にかかわらず30年後に公開され国会図書館がマイクロフイルム化 マイクロフィッシュ30万枚1000万ページで、索引は一部しか整備されていない 保健関係は未整理だが高級副官部文書にコピーがあることを手がかりに立命館のデータベースを利用 現代史の貝塚
予防接種の開始 日本人の健康をとても心配する それにしても性急
実施への経過(公文書館資料) 安請け合いで窮地に 1946年 • 2月28日:ジフテリア予防接種施行計画を作製GHQに提出 • 3月14日:6月1日から9月30日までに実施と各県に指示 • 5月10日:コレラ等の夏季伝染病対策のため延期しても良いと打電 • 7月11日:伝染病研究所に検定を依頼 • 7月30日:9月1日から実施し、10月30日までに報告すべし • 8月1日:メーカーに割り当て数量を示し直ちに納入を指示 • 8月5日:「ジフテリア」予防用細菌学製剤検定規定を告示 • 8月7日:文部省体育局長に協力を依頼 • 9月6日:10月30日までの報告は第1回のもので、第二回は10月末日までとし、その結果は11月15日までに報告するよう通牒 • 9月13日:各製造業者は各府県への毎週の配布状況を報告せよ。 • 1946.12 指示が良く伝わらなかった1月には完了予定(GHQ文書) • 1947.7GHQに47年度計画提出—9月中に完了予定(GHQ文書)
GHQの起案文書 実は米軍の都合
予防接種開始の背景 伝染病地帯に上陸した米軍の恐怖心 米軍に取り入ろうとする厚生官僚の思惑 技術的・経済的遅滞によるワクチン製造の遅れ 言い訳を重ねて、後がなくなった厚生省のあせり
事件処理での重要な事実 「不幸な偶然」説の流布 実際は検査の「手抜き」 補償問題のごまかし 「国の敗訴は免れない、早い目の補償を」 報道規制 映画干渉の実例 検査サンプルの接収 米軍406部隊 GHQ文書で明らかに
まとめ • GHQ文書の発掘でジフテリア禍事件の根本原因が明らかになった。 • 技術的にもスケジュール的にも無理な接種は厚生省官僚の米軍への「おもねり」に起因している。 • 薬害を隠蔽するゆがんだ厚生行政がジフテリア禍事件で定着した。 • ジフテリア禍事件は現代史の縮図 • 戦争とジフテリア流行の関係 • 731部隊との関係