通信遅延を考慮したタスクスケジューリングの近似アルゴリズムに関する研究

通信遅延を考慮したタスクスケジューリングの近似アルゴリズムに関する研究通信遅延を考慮したタスクスケジューリングの近似アルゴリズムに関する研究三重大学大学院　工学研究科　情報工学専攻計算機ソフトウェア研究室坂上　知英

はじめに • 並列処理システムの性能を最大限に発揮 • タスクスケジューリングが重要 • スケジューリング問題のNP完全性 • 近似アルゴリズムが重要

タスク間の依存関係 T1 T2 T3 T4 T5 T6 レベル・　DAG（非循環有向グラフ）　 G=（V,E)で表現　　頂点：　タスク　　有向辺：　依存関係 0 1 2 レベル2のDAG

通信遅延とは T1 T1 T1 プロセッサプロセッサ T2 時刻時刻 P1 P1 P2 0 0 1 1 T2 2 2 T2 通信遅延なし 3 4 通信遅延あり・　異なるプロセッサ間の通信時間（通信遅延τ＝２）

通信遅延とは P1 P2 P3 P1 P2 0 T1 T2 T3 0 T１ T２ T３ 1 1 T1 T3 2 2 T4 T5 T2 3 3 T４ T５ T4 4 4 T5 T6 5 5 T6 6 T６ 7 （通信遅延τ＝２）通信遅延を考慮した場合通信遅延を考慮しない場合

P1 P2 P3 0 T1 T1 1 T2 2 T3 T4 3 複製なし P1 P2 P3 0 T２ T３ T４ T1 T1 T1 1 T2 T3 T4 2 複製ありタスクの複製通信遅延τ＝1

本研究の前提 ①　使用できるプロセッサ数は無制限 ②　タスクの実行時間は１ ③　各プロセッサ間の通信遅延時間は整数τ（τ≧１） ④　タスクの複製を許す

（Papadimitriou、Yannakakis、1990） ・　一般のDAGについてNP完全・　一般のDAGに対して近似精度２のアルゴリズム・　近似精度２より良いアルゴリズムがあるかどうかを未解決　問題として提示（河田ら、2001）・　DAGのレベルを2に限ってもNP完全・　DAGのレベルが2、3のとき、それぞれ近似精度1.5、　1.7　　のアルゴリズム・　任意のレベルのDAGについては未解決これまでの研究結果

近似精度 レベル 3 4 5 ・・・ L ＰＹ 2 河田ら 1.7 本研究 1.67 1.84 1.92 ・・・本研究の結果 • DAGのレベルが L （3以上）のとき、の多項式時間近似アルゴリズムを考案各手法の近似精度 • e-valueを用いたときの近似精度の限界は

アルゴリズムの概要 DAG、通信遅延τ e-valueの計算スケジューリングスケジュール

本研究ではe-valueを変形して利用 e-valueについて・　タスクvは時刻e(v)より前にスケジュールできない vの開始時刻の下界として利用・　スケジューリングに利用（Papadimitriou、Yannakakis、1990）

e-valueの計算 T1 T２ T３ T４ T５ T６帰納的に計算

e-valueの計算 ・　先祖をe-valueの降順にソート p：先祖の数 τ：通信遅延時間

① ② ③ スケジューリングの概要

スケジューリング① 最適スケジュールプロセッサ 0 • 　すべての先祖を同一プロセッサ　　にスケジュール時刻

スケジューリング② • 　　　　　　　　　を別のプロセッサにスケジュール～～ • 　通信を待って、　　　　　　　を同一プロセッサにスケジュール～以下 vの開始時刻は

スケジューリング③ 0 τ＋１レベル0 1 ・ vのレベルは L 2 L-1 時刻以下ならばOK ～

スケジューリング③ 0 0 1 2 いくつか別のプロセッサにスケジュール L‐1 時刻

スケジューリング③ L-1 L-2 2 0 2 2 3 L‐1 時刻 L-1

スケジューリング③ : vと同一プロセッサに残っているレベルiのタスクの個数

計算量 全体で・　e-valueの計算・　スケジューリング

近似精度の限界 近似精度が限界最適解： • 　下界にe-valueを使用

近似精度の限界 最適解：レベル 0 レベル 1 レベル L-1

近似精度： 近似精度の限界：おわりに • 本研究では、 Papadimitriouらが提示した未解決問題に取り組み、任意のレベルのＤＡＧに対するスケジューリングアルゴリズムの近似精度を改善した。 L : DAGのレベル • Papadimitriouら、本研究で定義したe-valueを下界として使用した場合の近似精度の限界を示した。

おまけ

通信遅延を考慮したタスクスケジューリングの 近似アルゴリズムに関する研究