220 likes | 588 Views
日本におけるLRT整備の現状と課題 ~事例から考える~. 下村 仁士 (特定非営利活動法人 全国鉄道利用者会議). 本論の構成. LRT に対する補助制度の現状 LRT 導入の成功事例(富山、堺) 困難に直面している事例(宇都宮、岡山など) 成功と困難への直面とを分ける要因. 1. LRT に対する補助制度の現状. LRT に対する支援制度 ここ 10 年間で補助制度が整備される 「都市交通システム事業」 基幹的な交通機関として LRT や BRT を整備 整備対象になるには地区用件を備える必要あり LRT 整備の総合的支援制度
E N D
日本におけるLRT整備の現状と課題~事例から考える~日本におけるLRT整備の現状と課題~事例から考える~ 下村 仁士 (特定非営利活動法人 全国鉄道利用者会議)
本論の構成 • LRTに対する補助制度の現状 • LRT導入の成功事例(富山、堺) • 困難に直面している事例(宇都宮、岡山など) • 成功と困難への直面とを分ける要因
1.LRTに対する補助制度の現状 • LRTに対する支援制度 ここ10年間で補助制度が整備される • 「都市交通システム事業」 基幹的な交通機関としてLRTやBRTを整備 整備対象になるには地区用件を備える必要あり • LRT整備の総合的支援制度 ・LRT整備計画を策定 ・軌道敷の道床やバラスト:道路事業者が整備 ・電停のシェルターなど:都市交通システム整備事業 ・鉄軌道事業者に対して:LRTシステム整備費補助
1.LRTに対する補助制度の現状 • 地域公共交通総合連携計画 ・「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」 に基づき、地域における合意形成の結果として策定 ・鉄道活性化総合支援パッケージ 鉄道軌道運送高度化事業 →LRT整備を重点的に支援 ※補助率がLRTシステム整備費補助より有利 ・鉄道軌道運送高度化事業:補助率1/3 ・ LRTシステム整備費補助:補助率1/4
2.LRT導入の成功事例 • 富山市 ・「公共交通を軸としたコンパクトシティ」 の発想にもとづくまちづくり ・JR富山港線の活性化構想 地元住民からの要望が顕在化していたが、 北陸新幹線整備との関連で、富山港線の 存廃問題が浮上。 ・平成15年 具体的な検討 「富山港線の高架化・バス代替ではなく、 LRTの整備を」 まちづくりと、公共交通事業の経営との整合性
2.LRT導入の成功事例 ・「富山総合交通戦略」 →地域公共交通総合連携計画 ① 市内電車環状化 (軌道運送高度化実施計画) ② 大手線および総曲輪線道路環境整備工事 ③ 総曲輪地区くらしのみちゾーン道路整備事業 ④ 富山駅付近連続立体交差 ⑤ 富山駅付近土地区画整理事業 ⑥ ICカードの利用拡大事業 ⑦ コミュニティバス運行事業
2.LRT導入の成功事例 ・特徴的な点 ① 行政がLRT整備に積極的 ② もともと軌道系公共交通機関が充実していた。 (富山地方鉄道の存在) ③ JR西日本も比較的地域社会に協力的 →事業者間の関係が安定 ④ 目立った市民運動はないものの、同じ北陸内 での鉄道存続運動の影響は無視できない。 ※万葉線、えちぜん鉄道
2.LRT導入の成功事例 • 堺市 ・市の東西を結ぶ軌道系交通機関の整備構想 ・平成6年 提言書「鉄軌道整備のあり方について」 「鉄道軌道整備基金」 ・平成11年「東西鉄軌道事業」 臨海部新都市と旧市街地を結ぶ 平成13年 「LRTが導入機種として優れる」 ・平成15年 具体的な検討 地方公営企業方式での整備は困難 PFI方式など民間活力を導入 上下分離方式の適用
2.LRT導入の成功事例 ・市民団体の動き LRTに対する疑問を提起 ・LRTはパーキング&ライドの整備とあいまって 役割を果たすのでは? ・軌道整備による都心部の活性化への疑問 ・魅力ある街づくりが優先されるべき →堺市との間で質問書と回答書のやり取り 市民団体のスタンス スローガンは「LRTをぶっ潰そう」 しかし、東西軸の交通機関の必要性、 LRTの有用性は否定せず
2.LRT導入の成功事例 「堺市東西鉄軌道事業企画提案」 平成18年9月 ・公設民営方式 施設の整備費用を堺市が負担する。 運営は民間が運賃収入でまかなう。 運営には、東西鉄軌道の運行と施設の 保守保全などを含む。 ・運営を行う区間は早期開業区間 ・事業着手時期は平成19年度中を目指す
2.LRT導入の成功事例 「堺市東西鉄軌道事業企画提案」 【応募】 ・南海電気鉄道と阪堺電気軌道の共同提案 「東西鉄軌道と阪堺線の相互直通および阪堺線との 一体運営に関する提案」 →経営主体に関する唯一の提案 「堺市東西鉄軌道(LRT)事業」の運営事業者に関する 公募型プロポーザル 平成19年2月 ・応募者は2社1件のみ 「審査結果」 南海電気鉄道と阪堺電気軌道を経営予定者として特定
2.LRT導入の成功事例 ・堺市のLRT整備の課題 ・シャープが堺浜に大規模工場建設 ※用地買収が必要になる可能性あり ※延伸区間の経営主体は白紙 ・堺駅~堺東駅の車種 阪堺線からの乗り入れを低床車にできるか? ・新線と阪堺線を一体的に経営する問題 阪堺線の用地を市が無償借り入れ (固定資産税免除)→堺市内のみ ※阪堺電気軌道は堺市内区間について新会社設立 ※大阪市内は別会社:相互直通の実施は未定。
2.LRT導入の成功事例 ・特徴的な点 ① 行政が長期的構想で軌道系公共交通機関 の必要性を認識 ② 交通事業者との安定的な関係 (阪堺電気軌道、南海電気鉄道) ③ 反対運動もみられたが、LRTの必要性等 については認識を共有化できた。 ④ 経済的環境がLRT整備を求める状況に。
3.困難に直面している事例 • 宇都宮市 東西の交通軸の交通機関を整備すべきという問題意識 ・平成7年 「宇都宮都市圏総合都市交通計画協議会」 基幹バスに高規格化 ・平成9年 「新交通システム検討委員会」 基幹バス→LRT or HSSTに機種を見直し ・平成13年 「新交通導入基本方針」 導入機種としてLRTが有力に ・平成15年 「新交通システム導入基本計画策定 調査報告書」 栃木県が慎重姿勢(事業費の規模と採算性)
3.困難に直面している事例 ・宇都宮市:LRTに対する市民意識の醸成を目指す 市民サイドの動き 「雷都レールとちぎ」 栃木県の方向性転換→LRT推進の姿勢へ ・バス事業者の反発 LRT整備により、バス事業者が経営困難に陥る懸念 ・政治問題化 ・「LRTに反対する会」 民主党の研究会が母体 ・次の宇都宮市長選挙での争点
3.困難に直面している事例 • 岡山市 ・平成3年頃から中心市街地空洞化への問題意識 →岡山商工会議所(都市委員会)中心 →都心再生プロジェクトとして、路面電車の 延伸・環状化が提案される。 岡山商工会議所都市委員会を母体に、 RACDA(路面電車と都市の未来を考える会) ・市も公共交通強化への意識 「路面電車走行空間改築事業」を受けて 路面電車延伸の事業化を開始(平成9年頃) しかし構想は白紙になってしまう。
3.困難に直面している事例 ・問題点 RACDAは「鉄道愛好者(趣味者)の集団」という 大方の認識。 市民に賛同される活動となりえなかった。 →市民に対するLRT整備への意識醸成に失敗 政治・行政・事業者との距離感のおき方の難しさ。 ・最近の動き JR吉備線のLRT化構想を目指した動き(RACDA) 一部事業者や政界を巻き込んだ動きもある。 行政の認識や、事業者間調整については未知数。
4.成功と困難への直面とを分ける要因 • 成功事例の共通点 ・行政の積極的姿勢 ・既存事業者の協力的姿勢 富山市:富山地方鉄道(地域交通に積極的関与) JR西日本(資産の円滑な継承と支援) 堺市:南海電気鉄道と阪堺電気軌道の関与 ・市民の動き:実はさほど重要ではない? →スタンスの取り方の難しさ 富山市:周辺の鉄道存続運動が後押し (万葉線、えちぜん鉄道etc) 堺市:反対派も街づくりの視点で共通の問題意識
4.成功と困難への直面とを分ける要因 • 困難に直面している事例の共通点 ・プロジェクトの政治問題化 宇都宮市:選挙の争点に (民主党が反対姿勢、一部保守系も) ・市民間の対立 宇都宮市:推進派 「雷都レールとちぎ」 反対派 「LRTに反対する会」 ・市民団体のスタンスの問題 宇都宮市:一部関係者が行政・政治に深く関わる。 岡山市:一部関係者が特定の事業者と深く関わる。
4.成功と困難への直面とを分ける要因 • 困難に直面している事例の共通点 ・事業者の調整 宇都宮市:関東自動車をはじめとしたバス事業者 (経営困難を理由とした反対姿勢) 岡山市:LRT化構想路線周辺の他バス事業者 (路面電車事業者がエリアを侵食する構図、 歴史的にも対立の構図が先鋭的。) とくに重要なポイント 行政の積極的姿勢 事業者の安定的な関係 市民の一致した方向性
日本におけるLRT整備の現状と課題~事例から考える~日本におけるLRT整備の現状と課題~事例から考える~ 終