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心理療法概論. # 6 2014/5/26 精神 分析・力動的心理療法 担当:岩佐和典. 今日のメニュー. 1.前回の質問 2. 精神分析・力動的心理療法 3 .今日のまとめ. 前回の まとめ. ・フロイトは夢分析と症状解釈を重視した ・精神分析の主な分派として,ユング,アドラー, 新フロ イト派,自我心理学,対象関係論 , 自己心理学 がある ・力動的心理療法は精神分析の方法と考えを援用している ・ 防衛 解釈→症状 解釈 ・ 転移解釈・抵抗解釈:徹底操作 ・精神分析的な言葉による介入: 支持 - 表出スペクトラム
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心理療法概論 #62014/5/26 精神分析・力動的心理療法 担当:岩佐和典
今日のメニュー 1.前回の質問 2.精神分析・力動的心理療法 3.今日のまとめ
前回のまとめ ・フロイトは夢分析と症状解釈を重視した ・精神分析の主な分派として,ユング,アドラー,新フロ イト派,自我心理学,対象関係論,自己心理学がある ・力動的心理療法は精神分析の方法と考えを援用している ・防衛解釈→症状解釈・転移解釈・抵抗解釈:徹底操作 ・精神分析的な言葉による介入:支持-表出スペクトラム ・主な防衛機制として,抑圧,投影,合理化,反動形成, 退行などがある。 ・過去の対人関係が治療者との間で反復される現象を転移 や逆転移と呼び,対象関係の反映と考える。 ・治療抵抗には変化への両価的感情が影響しやすい
力動的心理療法の言語的な介入手段 ☆言語的な介入手段を「表出-支持スペクトラム」で捉える ・表出:無意識を意識化して,症状を積極的に治療する ・支持:無意識を意識化せず,現実適応をサポートする →現代的な精神分析では,支持も重視されている ☆表出的な方法は侵襲的であり,心の安定を崩しかねない →患者の病理が重い場合は,支持的な介入を試みる 表出 支持 解釈 直面化 明確化 詳述の 奨励 共感の 明示 忠告と 賞賛 是認
力動的心理療法の方法:解釈 ☆患者がまだ意識してない事柄を解釈して伝える ・防衛解釈:その人が陥りがちな防衛機制を扱う →非機能的なパターンを解釈し,徹底操作する。 …徹底操作:何度でも指摘する。やりぬく。 ・症状解釈:防衛解釈後,症状の意味を解釈する →症状が生まれた経緯や,症状が果たす役割等 ・転移解釈:面接で再現される対象関係を解釈 ・抵抗解釈:治療の進展と共に生じる抵抗を解釈 ・患者が「情緒的洞察」できるよう助ける。 →患者が意識化しかけているタイミングで解釈
転移解釈:内的対象関係の変容 ☆関係の記憶たる内的対象関係は,非言語的な手続き的記憶 →そのため,実際に治療関係の中で実演しないと扱えない ☆転移-逆転移を解釈し,対象関係の理解と変容を目指す。 変容を 目指す 病理的な 対象関係 対象関係 の追体験 洞察 反証 転移 逆転移 解釈 再現
転移解釈の実例 映像を見てみましょう G. Gabbardによる模範面接
治療同盟の重要性:望ましい治療関係 ☆Bordinによる治療同盟の3要素モデル:協働作業的な関係 ☆治療同盟の質が,治療の成果に与える影響に関する研究 ・治療法の違いよりも,治療効果に与える影響が大きい ・患者自身による治療同盟の評価が,最も影響が大きい ・治療への良性の期待が,治療同盟と成果を促進する →慎重に傾聴し,患者への信頼を示す温かな対応が有効 患者の感情を非評価的な態度で探索することが有効 Task:課題 変化のために取り組む具体的な活動への合意 Goal:目標 望まれる治療成果の共有 Bond: 絆 治療的2者関係における情緒的な結びつき
力動的心理療法の典型的な目標 ☆患者ごとに主訴は異なるが,一般的な目標も存在する ・葛藤の解決:無意識の葛藤を意識化し,解決する ・真実の探求:現実を直視し,本当の自己を発見する ・内的対象関係の理解:病理的な対象関係が,いかに 患者の対人関係や心的生活に影響するかを理解し, 新たな関係のあり方を模索していく ・無意識的な意味の発見:症状や防衛の意味を探る ・心理化能力の改善:他者の心の状態を推測する能力の 偏りを理解し,不適応的な心理化を改善していく ※協働作業的に目標をすり合わせ,進行と共に見直す ※逆説的だが,目標を強調し過ぎると,行き詰まりやすい
力動的心理療法の効果に関するエビデンス ☆背景:実証に基づく心理学的実践(ESPP) →厳密にデザインされた実証研究によって得られた 各種療法の効果についての情報を,事例個別の情報と 組み合わせて実践するという方針:エビデンスの重視 ☆力動的心理療法と,治療効果の実証的なエビデンス →長年,力動的心理療法はESPPの周辺に追いやられていた ・治療法をマニュアル化することの難しさ ・効果測定という方法論への馴染まなさ →無作為割付試験(RCT)実施の難しさ 「力動的心理療法は治療効果のエビデンスが無い」
力動的心理療法の効果に関するエビデンス ☆力動的心理療法側の変化と努力 ・マニュアル化された治療方法と効果測定法の整備 ・力動的心理療法に有利な研究方法の提案 →近年,ようやくエビデンスが収集され始めた ☆治療効果のエビデンスを提供する実証研究 ・効果研究:治療を受けていない場合や,他の療法を 受けた場合と,治療効果を比較する研究:RCTが代表 ・プロセス研究:終結までの面接プロセスを細かく分析し 治療のどういった側面が有効か調べる研究 ・実地研究:現場の治療データから効果を調べる研究 ・メタ分析:複数の効果研究をまとめて結論を出す研究
力動的心理療法の効果に関するエビデンス ☆力動的心理療法の治療効果 ・うつ病:認知行動療法(CBT)と同程度に有効 ・病的悲嘆:治療を受けない場合と比べて有意に改善 ※重要他者の喪失:解釈,一般他者の喪失:支持 ・パニック障害:リラクセーション法よりも有効 ・社交恐怖:CBTと同程度に有効 ・全般性不安障害:初期はCBTと同等,中期は劣る ・PTSD:行動療法,催眠療法と同程度に有効 ・身体表現性障害:60%以上の患者が十分な改善 ・神経性大食症:CBTと同等か,それ以上に有効 ・パーソナリティ障害:CBTと同程度かそれ以上に有効 →研究数は限られるが,治療効果が支持されている
力動的心理療法の効果に関するエビデンス ☆力動的心理療法の何が効果を生むのか:プロセス研究 ・患者自身による治療同盟の評価 ・解釈の正確さ:良好な治療同盟が解釈の正確さを促進 ・セラピスト側の治療方針の一貫性 ・感情のこもった礼節ある口調 ・適切なユーモアの使用(パニック障害の場合) ☆どんな人・どんな場合に,より効くのか ・治療への動機付けが高い場合に,効果が大きい ・治療に現実的な期待を抱いていると,効果が大きい ・患者が治療目標に集中していると,効果が大きい ・質の高い対象関係を示す場合,効果が大きい ・感情表現の量と質が改善すると,全体の効果も大きい
力動的心理療法と「エビデンス」 ☆力動的心理療法の専門家集団の風土 →エビデンスを重視しない,職人気質の集団 ☆力動的心理療法家は力動的心理療法だけを行う →エビデンスの無い疾患に対しても実施しがち ☆研究知見の軽視と,実証研究への意欲の低さ →科学的な知見が生かされず,生み出されない ☆専門家集団が,全体として変化していく必要性 →患者の幸福に寄与する援助の追求が課題
今日のまとめ ・フロイトは夢分析と症状解釈を重視した ・精神分析の主な分派として,ユング,アドラー,新フロ イト派,自我心理学,対象関係論,自己心理学がある ・力動的心理療法は精神分析の方法と考えを援用している ・防衛解釈→症状解釈・転移解釈・抵抗解釈:徹底操作 ・精神分析的な言葉による介入:支持-表出スペクトラム ・主な防衛機制として,抑圧,投影,合理化,反動形成, 退行などがある。 ・過去の対人関係が治療者との間で反復される現象を転移 や逆転移と呼び,対象関係の反映と考える。 ・治療抵抗には変化への両価的感情が影響しやすい ・力動的心理療法には様々な目的がある。 ・力動的心理療法のエビデンスが提出されてきている