140 likes | 379 Views
新エネルギー普及と CO 2 排出削減 -ロジスティック曲線を組み込んだラムゼーモデルによる経済分析-. 畠瀬 和志 神戸大学大学院経済学研究科 研究員. 新エネルギー普及の経済モデル. 経済成長モデルを用いたモデル化 DEMETER ( van der Zwaan et al , 2002 )、 ENTICE-BR ( Popp, 2006 )、 WITCH ( Bosetti et al , 2008 )など 最も一般的な経済成長モデルである「ラムゼーモデル」を適用
E N D
新エネルギー普及とCO2排出削減-ロジスティック曲線を組み込んだラムゼーモデルによる経済分析-新エネルギー普及とCO2排出削減-ロジスティック曲線を組み込んだラムゼーモデルによる経済分析- 畠瀬 和志 神戸大学大学院経済学研究科 研究員
新エネルギー普及の経済モデル 経済成長モデルを用いたモデル化 • DEMETER(van der Zwaan et al, 2002)、ENTICE-BR(Popp, 2006)、WITCH(Bosetti et al, 2008)など • 最も一般的な経済成長モデルである「ラムゼーモデル」を適用 • GDP(総生産)が資本・労働・エネルギーから生産されると仮定し、その内のエネルギーが複数の技術から構成されると仮定 • 経済全体をモデル化し、複数のエネルギー普及経路を同時に計算 ロジスティック曲線とLearning by Doingを用いたモデル化 • 松本・近藤(2009):ロジスティック曲線・コンジョイント分析・Learning by Doing(習熟効果)を組み合わせてモデル化 • 内田・氷鉋 (2008):新エネルギーの需要関数とLearning by Doingを組み合わせてモデル化し、ロジスティック曲線で計算結果を補整 • これらのモデルは、経済全体をモデル化するのではなく、ひとつの新エネルギーの普及のみをモデル化している
本研究のモデルの特徴 本研究のモデル • 世界を1経済地域とみなし、ラムゼーモデル(経済成長モデル)を適用(世界経済ではなく、日本経済を計算することも可能) • エネルギー技術には「化石エネルギー」「新エネルギー」の2種類が存在すると仮定(現実にはもっと沢山あるが、抽象化) • 経済成長と新エネルギー普及を同時に計算。新エネルギー普及はロジスティック曲線とLearning by Doingによりモデル化。 他研究のモデルとの違い • 新エネルギー普及と化石エネルギー使用減少を同時に計算。エネルギー技術の数をさらに増やすことも可能。 • 内田・氷鉋(2008)、松本・近藤(2009)が特定の新エネルギーをモデル化しているのに対し、本研究では経済全体をモデル化 • 最適な新エネルギー普及経路を計算する「最適化モデル」である(内田・氷鉋(2008)、松本・近藤(2009)は「予測モデル」)
新エネルギー普及とロジスティック曲線 ロジスティック曲線による新技術普及のモデル化 • Mansfield(1961):新技術の普及経路はロジスティック曲線によってモデル化出来ることを、鉄鋼・石炭・鉄道・醸造の各産業の実証分析によって示す • 新技術のシェアSt の増加は、一般に以下の式に沿う 本研究における新エネルギー普及のモデル化 • エネルギーEt を (1-St) Et + StEt (化石エネルギー+新エネルギー)に分け、新エネルギーのシェアStにロジスティック曲線を適用 • 経済成長モデルと組み合わせるため、不等号を用いる
新エネルギー普及とロジスティック曲線(続き)新エネルギー普及とロジスティック曲線(続き) • ロジスティック曲線の係数 a は新エネルギー普及の速度を決める • 係数a は社会経済的慣性(新エネルギー普及における抵抗)を決めるパラメータと解釈出来る • 係数a が小さいほど社会経済的慣性は大きく、新エネルギー普及の速度が遅くなる
エネルギー価格とLearning by Doing(習熟効果) Learning by Doingによる新エネルギー価格変化のモデル化 • Wright(1936):空軍基地における飛行機の累積生産数が2倍になる毎に労働(生産)コストが一定割合だけ低下する現象を発見 • 技術の経験蓄積が対数線形的なコスト低下をもたらす現象は、「Learning by Doing(習熟効果)」としてモデル化される • 本研究では、新エネルギーの価格低下にLearning by Doingを適用 • Wt には、新エネルギーの累積容量を用いる(次ページの式) 化石エネルギー価格変化のモデル化 • 化石エネルギー価格pF,tは資源採掘に伴って上昇すると仮定
ラムゼーモデル・ロジスティック曲線・Learning by Doingの結合 Ramsey model Learning by doing Logistic curve
気候変動モデル • 簡略化されたCO2蓄積モデル(Grubb et al, 1995)を適用 • 人為起源CO2排出の計算 • 自然起源CO2排出の計算(van der Zwaan et al, 2002より)
シミュレーションのシナリオ • CO2の安定化目標値を500ppmに設定し、この目標値を超えない水準を維持しつつ効用Utの総和を最大化するCO2削減経路を計算 • 新エネルギー普及を決定づける要素である、 • 社会経済的慣性(ロジスティック式の係数) • Learning by Doingの度合い(経験指数) が最適なCO2削減経路にどう影響するかを調べる 各シナリオにおけるパラメータ設定 STC: Slow Technological Change FTC: Fast Technological Change LL: Low Learning HL: High Learning
計算結果:CO2削減経路 • FTC+HLシナリオ(社会経済的慣性が小さくLearning by Doingの度合いが大きい)においては、21世紀初頭はあまりCO2削減を行わず、21世紀中頃以降に急速なCO2 排出削減を行うのが望ましい • それ以外の条件では、 21世紀初頭からコンスタントにCO2削減を行うことが望ましい
計算結果:新エネルギー普及の経路 • Learning by Doingの度合いが大きい(HLケース)ほど、より速やかに新エネルギーに転換することが望ましくなる • 社会経済的慣性が大きい(STCケース)ほど、より速やかに新エネルギーに転換することが望ましくなる
計算結果: CO2削減による経済的損失 • CO2削減を行えば、行わない場合に比べ経済全体の生産量が減る • このGWP(世界総生産)の損失は、Learning by Doingの度合いに強く依存する(Learningの度合いが大きければ損失が小さい) • Learning by Doingの度合いが同じならば、社会経済的慣性に関わらず、21世紀初頭と22世紀以降のGWP損失が同じか近い値になる
政策的な結論 • 計算結果によると、社会経済的慣性が小さく同時にLearning by Doingの度合いが大きい条件(FTC+HL)では、21世紀初頭にはあまりCO2 排出削減を行わないことが望ましい • 上記以外の条件(STC+LL, STC+HL, FTC+LL)では、21世紀初頭からコンスタントにCO2 削減を行うことが望ましい • → 現実には、社会経済的慣性は大きいため、CO2 削減は21世紀初頭からコンスタントに行うことが望ましい • 計算結果によると、社会経済的慣性が大きいほど、またLearning by Doingの度合いが大きいほど、より速やかに化石エネルギーから新エネルギーに転換することが望ましい • → 現実には、Learning by Doingの度合いが分からないため、21世紀初頭からの新エネルギー普及が望ましいかどうか結論できない • → しかし、仮にLearning by Doingの度合いが大きいとすると、21世紀初頭においては、社会経済的慣性によるコスト増加にさほど影響されずに低コストで新エネルギー普及とCO2削減が出来る
今後の課題 モデル開発について • エネルギー技術の数を現実に合わせて増やし、モデルをより現実に近付ける • 日本経済におけるロジスティック曲線の係数a、Learning by Doingの経験指数bの実証分析を行い、パラメータを確立する • ロジスティック曲線を用いたモデルとは別に、オーソドックスな経済モデルを開発して、計算結果を比較する 環境資源工学会の方々に期待すること • モデル化するエネルギー技術の数は何個くらいが適当か、どのエネルギー技術をモデル化すべきかをご教示頂きたい(モデルの制約上、現実にある全てのエネルギー技術を扱うことは出来ないため) • ロジスティック曲線の係数a、Learning by Doingの経験指数bの実証分析において、データの提供等をご協力頂ければ有難い • 資源処理の分野において、経済シミュレーションがお手伝い出来ることはないか(あるいは、何を期待するか)ご意見を伺いたい