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おいしさの心理学. 広島修道大学 今田純雄. 社会福祉施設栄養管理関係職員研修会 主催:姫路市保健福祉政策課 場所:姫路市職員会館 3F 講義室 日時:平成 16, 11, 5 14:00-16:00. かれこれ... ・ 20 年ほど,食行動について調べてきました. ・こんな単純なことが説明できない.... Why we eat what we eat.
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おいしさの心理学 広島修道大学 今田純雄 社会福祉施設栄養管理関係職員研修会 主催:姫路市保健福祉政策課 場所:姫路市職員会館 3F 講義室 日時:平成16, 11, 5 14:00-16:00
かれこれ... ・20年ほど,食行動について調べてきました. ・こんな単純なことが説明できない... Why we eat what we eat. 私たちは日々さまざまなものを食べている.しかし,どのような仕組みによってある食物を食べるようになり,他の食物を食べないようになるのだろう.ある食物を好きになったり,嫌いになったりするのはどのような仕組みによるものなのだろう....
本日は... ・おいしさを軸に食べるという行動について考えていきます. ・心理学では,食物のおいしさという発想をしません. ・おいしさは体験されるものであり,”こころ”で感じるものです. ・おいしさ体験 ・おいしさ/ まずさの学習
おいしい 苦痛(強度・刺激性・熱など)をもたらせないこと 身体不調(嘔吐・下痢など)が後続しないこと 親近性が高いものについては,変化がないこと 栄養効果(カロリー)が見られること 快な(楽しい)状況で摂取されること 好きな(好ましい)人と一緒に摂取すること まずい 行動 食べる/ 食べない 食行動 の結果
おいしさ体験 9種類のおいしさ ・おいしさには9種類のものが考えられます.
おいしさの諸相(9つのおいしさ): 1.からだで食べるおいしさ 2.目で食べるおいしさ 3.鼻で食べるおいしさ 4.口で食べるおいしさ 5.頭で食べるおいしさ 6.気持ちで食べるおいしさ 7.つくって食べるおいしさ 8.一緒に食べるおいしさ 9.感謝して食べるおいしさ
1.からだで食べるおいしさ • おいしさ体験の基本 • つよい満足感:快体験の原点
空腹感(解消)と食物(食行動)との関係性の学習(Bruch, H.) 苦痛→摂食で解決→苦痛の種類(空腹感)を学習→空腹感と食物の関係を学習 食障害: 苦痛を区別できない. 空腹でなくても食べる. 空腹であっても食べない.
何を食べてもおいしい 摂取回数に応じて ”好き”になっていく 1.からだで食べるおいしさ • おいしさ体験の基本 • つよい満足感:快体験の原点 • 食の基本:”可愛い子は,飢えさせよ” • 空腹感(解消)と食物(食行動)との関係性の学習(Bruch, H.) ・おいしさを”体験”することによって,徐々に”おいしさ”とは何を学んでいく. 食物レパートリーの拡大
目で食べるおいしさ • 何をしているのか? • 心理機能は? • おいしさを予期(期待)している • 予期した方向と一致していると… • 予期した方向と一致していないと… 実験
快 [ばら]の絵を見せられると[ばらのニオイ]はより快に評価される.[蒸れた靴下]の絵を見せられると[蒸れた靴下のニオイ]はより不快に評価される. 例外? 不快
強度 [ばら]の絵を見せられると[ばらのニオイ]はより強く評価される.
目で食べるおいしさの心理 • おいしさを予期(期待)している • 予期と同方向なら,おいしさ倍増… • 予期と逆方向なら,まずさ一層… ・並んで食べるラーメンはおいしい? • 並ぶからおいしい(それだけの”労力投資”をしているのだから,おいしくないと”心理的バランス”がうまくとれない:認知的不協和理論からの説明). • 予期と同方向だと,評価はより以上に高まる(そこそこおいしければ,とてもおいしいと感じられる) .
3. “鼻”で食べるおいしさ ニオイには2種類のものがある. 前鼻腔嗅覚
“鼻”で食べるおいしさ • “目”で食べるおいしさ同様に: • おいしさを予期する(前鼻腔嗅覚). • 今,まさにおいしく食べる準備状態に入る. • ニオイ→イメージ(予期)→おいしい! イメージが異なると...実験→
食べる前にバラをイメージする おいしい? 食べる前にトイレをイメージする おいしくない? 不思議な”味”のチューインガムそのおいしさは?
平均評定値 (快) (不快)
“舌”で”あじ”のすべてを説明できる? 4. “口”で食べるおいしさ 乳頭(味覚乳頭)→味蕾→味受容器(味覚神経) 教科書的な説明
味覚(基本味) 嗅覚(前鼻腔性,後鼻腔性) 皮膚感覚(触,圧,温,冷,痛) 筋運動感覚 (聴覚) (視覚) 複合感覚 (口腔感覚) としての“味” 五感(六感)で! “口で食べるおいしさ” 味は味覚だけでつくられるものではない
“口”で食べるおいしさ 実験 後鼻腔嗅覚 食物 前鼻腔嗅覚
コーヒーと砂糖水を区別できる? • アイマスク,鼻栓をする • 醤油 vs. (ショ糖+食塩)の溶液 • コーヒー飲料 vs. ショ糖溶液 • レモン果汁 vs. クエン酸溶液 2者択一の場合,正答率は30-35%(ただし50%が基準)基準をきびしくすると,ほとんどできない... 結果
皮膚感覚(触覚,冷覚,温覚,痛覚)+筋受容感覚+深部感覚 → 変化の知覚(物理化学的形態の変化,口腔内での移動) 口で食べるおいしさ(まとめ) 1)”あじわう”とは複合感覚 味=視覚+聴覚+味覚+嗅覚+触覚
5. 頭で食べるおいしさ 認知(思考,観念,予期)によって,おいしさは変化する. ・「自然食品」はおいしいか? ・ミネラルウォーターは水道水よりもおいしいか? 実験
●「自然食品」はおいしいか? vs. 一般的なスーパーマーケットで購入した他種類の食品添加物が使われているソーセージ 「自然食品」の店で購入した食品添加物があまり使われていないソーセージ
添加物あり,なしウインナーにおける2群の平均評定値(おいしさ)添加物あり,なしウインナーにおける2群の平均評定値(おいしさ)
●「自然食品」はおいしいか? 「無添加ウィンナー」 ・見た目は,おいしくない. ・食べてみて,あまりかわらない. ・成分を聞いて,ややおいしい. ・「安全・危険」を聞いて,おいしい. おいしさは容易に変化する(変動する). おいしさは,“情報”に敏感(特に,「危険」情報に).
ミネラルウォーターはおいしい? • 「あなたは,水道水とミネラルウォーターの,どちらがおいしいと思いますか」 1 水道水 o人 2 どちらかというと,水道水 1人 3 おいしさは変わらない 5人 4 どちらかというと,ミネラルウォーター 16人 5 ミネラルウォーター 10人 (81.2%)
ミネラルウォーターはおいしい? 「それでは,水道水とミネラルウォーターを飲み比べてもらいます」
2.08 3.38 3.60 3.26 ミネラルウォーターはおいしい? • 「あなたは,どちらの水の方がおいしいと感じましたか」 予想 評価 1水道水o人 1.0 2 どちらかというと,水道水1人 2.0 3 おいしさは変わらない 5人 3.0 4 どちらかというと,ミネラルウォーター16人 4.0 5ミネラルウォーター 10人 5.0 4.09
ミネラルウォーターはおいしい? まとめ • 80%の学生がミネラルウォーターと答えるが,ブラインドで評価させると,両者のおいしさ評価に違いはない. • 15人(47%,約半数)の学生は,5試行中1回以上は「水道水」を選択している! ミネラルウォーターはおいしいはずだ. → だから,おいしい.
ネガティブな感情(怒り,恐怖,悲しみ,緊張) ネガティブな感情(怒り,恐怖,悲しみ,緊張) 食行動 ポジティブな感情 (喜び・安心感) 6. 気持ちで食べるおいしさ ・Macht & Simons(2000)の調査結果
感情と空腹感・食欲との関係(相関係数)N=246, ***p<.001, **p<.005, *p<.01
感情と空腹感・食欲との関係(相関係数)N=246, ***p<.001, **p<.005, *p<.01
ネガティブな感情(悲しみ,怒り) なんでもいいから食べたい 気分を転換したい ポジティブな感情 ( 喜び ) おいしいものが食べたい 楽しく食べたい うれしいとき(喜び)においしいものを食べてこそ,そのおいしさがわかる 悲しいときに食べてもおいしさはわからない...??
ネガティブな感情 ストレス 再自制の予期 摂食欲求の充足 促進 過食 促進 痩身体型への願望 日常的なダイエット 自制:self-control 慢性的な欲求不満
7. 一緒に食べる食べるおいしさ ・Birchの諸研究: 子ども:一緒に食べると嫌いなものも好きになる 子ども:好きな先生の好物は好きになる ・de Castroの諸研究:社会的促進 米国人:共食者数が増えると摂取量も増える ・ヒトは社会性動物: 一人だと,“人恋しく”なる.
めんどうです. “みじめ”です. テレビと向かい合って一人で食べるのは寂しいです. 牛丼屋へ行ってきます! ハンバーガーチェーンへ行ってきます! うぅーん,確かに.出張へでてもホテルの室内では食べないなぁ.. 学生(特に一人暮らし)の生活をみていて思うこと: 自炊(中食,レトルト等, OK!)の方が,安上がり,簡単,手っ取り早いのでは...?
7. 一緒に食べる食べるおいしさ ・Birchの諸研究: 子ども:一緒に食べると嫌いなものも好きになる 子ども:好きな先生の好物は好きになる ・de Castroの諸研究:社会的促進 米国人:共食者数が増えると摂取量も増える ・ヒトは社会性動物 集団の中にいると安心する 観察学習(模倣),同調行動をとる 仲間意識(集団の凝集性)を高める 嫌いなものでも食べてしまう→徐々に好きになる 集団規範に従う→食べる→徐々に好きになる
直接的,間接的な他者の存在 一緒に作ることの楽しさ 8.つくって食べるおいしさ 好奇動機,操作動機を満足させる 試行錯誤学習を楽しむ 仮説検証実験を楽しむ 安全に対する安心感 関与することの満足感 ..... 心理学領域での研究はほとんどありません. 個人的な経験を述べさせてもらいます.
冬の時期は寒く,雪が降れば家の中に閉ざされます.冬の時期は寒く,雪が降れば家の中に閉ざされます. 今年の冬は井戸ポンプが凍結し,水道管も破裂しました.
食物好悪の理由:幼児と大学生の比較(長谷川・今田, 2001;長谷川・今田・坂井,2001) 大学生はイメージを食べている. 大学生は楽しい思い出とおいしさを関連づける. つくって食べるおいしさ 好奇動機,操作動機,試行錯誤学習,仮説検証実験を楽しむ 楽しい思い出(記憶,イメージ)を喚起させる食物はおいしい 一緒に作ることの楽しさ
そうよ! 僕たち,思い出作りの最中だい! 人は思い出を食べている 牛乳きらい! 納豆大好き! ひみつ! 桜もち! さわら! ヨシ牛一番! おいしいものが一杯ある人とは楽しい思い出が一杯ある人
変わりゆく日本社会,家庭,食卓 9.“感謝して”食べるおいしさ ハレとケの区別がなくなっている? 毎日がごちそう,毎日がハレ(ケ) ケの復活が必要では? 常備菜の復活が必要では?