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ニコチン依存の本質. 2010.7.21 羽鳥裕 (医)はとりクリニック 神奈川県医師会理事 川崎市内科医会会長 CCI 川崎 産業医 http://hatori.or.jp yutaka@hatori.or.jp. ニコチン依存は、身体的依存と心理的依存がある ニコチン代替療法により身体的依存による離脱を緩和できる 心理的依存は喫煙による離脱症状緩和などの思い込みあり 喫煙者は喫煙の弊害を矮小化しやすい シナプス伝達不全の鬱病と共通の病態 禁煙したいのに禁煙できない と感じる病態でなく、 好きで吸っている 禁煙する気がない と考える病態に本質あり.
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ニコチン依存の本質 2010.7.21 羽鳥裕 (医)はとりクリニック 神奈川県医師会理事 川崎市内科医会会長 CCI 川崎 産業医 http://hatori.or.jp yutaka@hatori.or.jp
ニコチン依存は、身体的依存と心理的依存があるニコチン依存は、身体的依存と心理的依存がある • ニコチン代替療法により身体的依存による離脱を緩和できる • 心理的依存は喫煙による離脱症状緩和などの思い込みあり • 喫煙者は喫煙の弊害を矮小化しやすい • シナプス伝達不全の鬱病と共通の病態 • 禁煙したいのに禁煙できない と感じる病態でなく、 • 好きで吸っている 禁煙する気がない と考える病態に本質あり HATORI Yutaka 2008.5.31
米国公衆衛生長官報告書「ニコチン依存」(1988年)米国公衆衛生長官報告書「ニコチン依存」(1988年) 「喫煙習慣の本質はニコチン依存症」 • 英国王立内科学会報告書「英国におけるニコチン依存」(2000年) ・中止することの困難性 ヘロインやコカイン、アルコールと同等 ・耐性の強さ アルコールやヘロインと同等、コカインより強い ・離脱症状の強さ アルコールやヘロインより弱いが、コカインより強い • 米国AHRQ たばこ依存治療ガイドライン(2000年) 「ニコチン依存症は再発しやすいが、繰り返し治療することにより完治しうる慢性疾患である」 • 9学会合同 禁煙ガイドラン(2005年) 「喫煙は喫煙病という全身疾患(依存症+喫煙関連疾患)」 「喫煙者は積極的禁煙治療を必要とする患者」 HATORI Yutaka 2008.5.31
喫煙を続けると脳内報酬系が過剰に活性化される喫煙を続けると脳内報酬系が過剰に活性化される • 脳内報酬系神経ドーパミンが減少、 • ニコチン欠乏が報酬系の機能不全がおきると、 • 気分不快、いらいら、おちつかない • 喫煙すると、一時的に離脱症状が消えるだけ。 • ニコチン血中濃度の低下は、徐々に漸増するストレスと感じる • 喫煙を続けるとニコチン切れのストレスを感じる • 多量喫煙者の自殺率は非喫煙者の二倍以上 HATORI Yutaka 2008.5.31
家族の喫煙で肺がん死は約2倍に 喫煙は、様々ながんやメタボリックシンドローム、インフルエンザの発症の危険性を高めることがわかっている。一方、こうしたリスクは、喫煙者本人だけのものではない。 実は、たばこから立ち上る副流煙中のニコチンや発がん物質などの有害物質の濃度は、喫煙者が吸いこむ煙(主流煙)の数倍から数十倍と濃く、受動喫煙のリスクは高い。「副流煙中の有害物質の粒子は小さく、長時間空気中に浮遊するだけでなく、肺の奥深くまで入りこんでしまう」 また、たばこから立ち上る副流煙だけでなく、喫煙者が吐き出す呼気にも有害物質は含まれる。一酸化炭素や揮発性有機化合物などの有害物質は、喫煙後数十分にわたって呼気中に残り、周囲の空気を汚染する。つまり、「家庭内に喫煙者がいる場合、『たばこはベランダで吸っているから大丈夫』とはいえないということ。家族へのたばこの害を軽減するためには、屋外で吸った場合にも、喫煙後30分程度は家の中に入らない配慮が必要だ」 空気清浄機を使っても、有毒なガス成分は除去できない。 受動喫煙を続けると、様々な疾病のリスクが高まる。最も象徴的なのが肺がんだ。非喫煙者の妻が、1日20本以上の喫煙をする夫を持つ合、非喫煙者の夫を持つ人に比べて肺がんで死亡する率が約2倍も高くなってしまう。このほか、乳がんやぜんそく、早産、子供の中耳炎、歯周病などの危険性も高まる。
軽いタバコ • ライト・マイルドは、低ニコチン、低タールではない 詐欺的商法 • 葉に含まれるニコチン量は変わらない • 代償性喫煙が起きるので、摂取ニコチン量は変わらない • 一酸化炭素ヘモグロビンは増える、ニトロサミンは増える • 副流煙発生量は増える 非喫煙者には迷惑 • 低臭気タバコ プロジェクト・ステルス 環境タバコ煙暴露量増加 HATORI Yutaka 2008.5.31
タバコとタバコ関連病の流行モデル 日本 アメリカ、EU、NZ HATORI Yutaka 2008.5.31
主流煙 喫煙時 • 高温燃焼時 最高900度C • 副流煙 自然燃焼時 (吸引してないとき) • 低温燃焼時 最高600度C • タバコ煙の成分 • 粒子相、ガス相 いずれにも発がん物質、気道毒性、心毒性 • 発生が意図されたもの • ニコチン、アンモニア、アセトアルデヒド • 燃焼副産物 • ベンゾピレン、ダイオキシン、ホルムアルデヒド • 高温で分解されるので、副流煙の方が有害物質が多い HATORI Yutaka 2008.5.31
ニコチン • 副流煙中に大量の遊離塩基が含まれる • 遊離塩基は、燃焼時に葉から遊離し、生体吸収後は生体膜を通過 • ニトロサミン • たばこ煙には多量のニトロサミン 腺組織の発がんに関与 • ガス相のニトロサミンは、受動喫煙の主要な発がん物質 HATORI Yutaka 2008.5.31
多環芳香族炭化水素 • ピレン、ベンゾピレン、アントラセンなど • 発がん物質、発がん補助、気道刺激 • ダイオキシン • 多種多様、最高毒性のダイオキシンがたばこにあり • 低温燃焼で発生しやすい • たばこ栽培には農薬制限がない 塩素系農薬が多い • 化学工場の廃棄煙濃度の200倍 • 鉛 • テオブロミン、グリチルリチン • 気管支拡張作用 タバコ煙を吸収させやすくする HATORI Yutaka 2008.5.31
一酸化炭素 • 赤血球運搬能を低下 • 二次性多血症、血栓 • 血管内皮の損傷 • アイドリング時に1%(10,000PPM) たばこ主流煙では3-4% • 喫煙1時間後、患者呼気からは10PPM(室内環境基準)をこえる • アンモニア • 主流煙のpHをあげることで多くのニコチンを吸収させる • アンモニア含有は副流煙が多い • 副流煙の方が刺激性が強いのはこのため • アルデヒド • たばこ添加物質のグリセリンが燃焼すると出る • ニコチンの依存性を形成 HATORI Yutaka 2008.5.31
脳内報酬系ドパミン作働性シナプス • ニコチンはアセチルコチン受容体に作用してドパミン放出を促進する • 喫煙による急激なニコチン濃度上昇は、一過性のドパミン過剰放出を起こす • ドパミン過剰放出によって負のフィードバックが起こり、シナプス前ニューロンのドパミン放出能力が低下し、シナプス後ニューロンのドパミン受容体数が減少する • ニコチンのない状態では、シナプスの機能不全が起こる
ニコチン濃度の変化 離脱症状 発現 離脱症状 発現 喫煙 喫煙 喫煙 30~40分 30~40分
米国医療研究品質局(AHRQ)プライマリケアのための禁煙治療ガイドライン(5A)米国医療研究品質局(AHRQ)プライマリケアのための禁煙治療ガイドライン(5A)
米国医療研究品質局(AHRQ)禁煙の動機強化のための5つのR米国医療研究品質局(AHRQ)禁煙の動機強化のための5つのR
9学会合同禁煙ガイドライン2005年12月発表 • タバコを吸うのは、ニコチン依存症と関連疾患からなる「喫煙病」 • 喫煙者は積極的禁煙治療を必要とする「患者」 • 医師・歯科医師は、タバコを吸わない社会習慣の定着を目指して指導性を発揮すべき • 医療従事者が行うべき禁煙治療 • 日常診療での禁煙治療 • 集中的禁煙治療 • 薬物療法 • 行動療法 • 禁煙政策への積極的関与 • 禁煙環境の整備 • 喫煙防止教育 Circulation Journal 69, Supple IV, 1005-1103. http://www.twmu.ac.jp/DNH/byouki/index.html 日本循環器学会、日本呼吸器学会、日本小児科学会、日本産婦人科学会、日本口腔外科学会、日本公衆衛生学会、日本心臓病学会、日本肺癌学会、日本口腔衛生学会
ニコチン依存症 [対象患者の4条件]以下のすべての要件を満たす者であること (1) ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)で、ニコチン依存症と診断 されたものであること。(2) ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の者。(3) 直ちに禁煙することを希望している患者であること。(4)「禁煙治療のための標準手順書」に則った禁煙治療について説明を受け、 当該治療を受けることを文書により同意している者であること。[施設基準] (1) 禁煙治療を行っている旨を、保険医療機関内の見やすい場所に掲示していること(2) 禁煙治療の経験を有する医師が1名以上勤務していること(3) 禁煙治療に係る専任の看護師又は准看護師を1名以上配置していること(4) 禁煙治療を行うための呼気一酸化炭素濃度測定器を備えていること(5) 保険医療機関の敷地内が禁煙であること。 なお、保険医療機関が建造物の一部分を用いて開設されている場合は、当該 保険医療機関の保有又は借用している部分が禁煙であること。(6) ニコチン依存症管理料を算定した患者のうち、喫煙を止めたものの割合等を、 所定用紙用いて、社会保険事務局長に報告していること。 HATORI Yutaka 2008.5.31
厚生労働省健康局長通知「診療報酬の算定方法を定める件」等の改正等について2006年3月6日・保発第0306012号厚生労働省健康局長通知「診療報酬の算定方法を定める件」等の改正等について2006年3月6日・保発第0306012号 • ニコチン依存症管理料の新設 • 初回(1週目) 230点 • 2、3、4回目(2、4、8週目) 184点 • 5回目(最終回)(12週目) 180点 • 対象患者(以下の条件をすべて満たす者) • TDS(タバコ依存スクリーニング)で依存を診断 (全喫煙者の54%が陽性) • ★ブリンクマン指数(1日本数×年数)200以上(若年者は困難) • 標準手引書での治療に文書で同意(日程通り5~7回の通院を確約) • 施設基準 • 経験医師(非常勤でも可、経験の程度は記載なし) • 専任の看護職員(看護師又は准看護師、専従でなくても可) • 呼気一酸化炭素測定器(薬事法承認番号のある機種) • 医療機関の敷地内禁煙(屋外喫煙所不可) • 算定要件 • 禁煙成功率を地方社会保険事務局長へ報告(毎年7月) • ★初回算定日から1年を超えないと再算定不可
バレニクリン(チャンピックス)の処方 • 1週 禁煙の開始予定日を決めその1週間 前から服用する 1日目~3日目 0.5mg錠を1日1回食後(朝、昼、 夕は問わない) 4日目~7日目 0.5mg錠を1日2回朝、夕食後 • 2週 8日目に禁煙を開始する 8日目~84日目 1mg錠を1日2回朝、 夕食後 ■12週 ★新薬扱いなので2週間処方のしばりがあり、3ヶ月間で7回の 来院が必要になります。
禁煙成功率 アップ ニコチネルTTS 特別調査の成績 ニコチネルTTS貼付終了時の禁煙率79.86%(222/278例)貼付終了16週後の禁煙率79.34%(169/213例) ニコチネルTTS特別調査 調査票収集症例数:329例 有効性解析対象:278例 16週の追跡調査の対象:213例 HATORI Yutaka 2008.5.31
禁煙成功率 アップ 算定回数別の指導終了9ヵ月後の状況ー禁煙指導開始から1年後ー 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 合計(n=2,456) 32.6 4.6 33.3 23.9 5.6 1回目で中止(n=459) 13.5 4.4 37.5 33.3 11.3 2回目で中止(n=418) 22.2 4.5 34.7 30.1 8.4 3回目で中止(n=480) 4.0 31.9 35.2 24.6 4.4 4回目で中止(n=425) 40.7 3.8 31.3 19.5 4.7 5回目終了(n=764) 45.7 5.5 30.1 16.8 2.0 禁煙継続 1週間禁煙 失敗 不明 無回答 HATORI Yutaka 2008.5.31 平成19年度診療報酬改定結果検証に係る特別調査 ニコチン依存症管理料算定保険医療機関における禁煙成功率の実態調査結果概要(速報)
心血管系危険因子の変化 JNCⅥ JNC7 HATORI Yutaka 2008.5.31 Arch.Intern.Med,157,2413,1997、JAMA,289,19,2560,2003より作成
Fletcher BMJ 1645:1977 HATORI Yutaka 2008.5.31
喫煙するひとは糖尿病になりやすい(The Osaka Health Survey) 31本以上 30本以下 20本以下 過去喫煙 非喫煙 0 0.5 1 1.5 2 Suematsu C, et al. Diabetes Care. 1999. (倍) HATORI Yutaka 2008.5.31
受動喫煙は糖尿病にも悪い • 喫煙が糖尿病の発症リスクを増す • 喫煙習慣のない人でも受動喫煙にさらされるとリスクが高くなる • 受動喫煙が糖尿病にも悪い この研究は、米国の4,500人以上の男女を対象にしたコホート研究であるCARDIA(Coronary artery risk development in young adults)で行われた。医学雑誌「British Medical Journal(電子版)」に発表された。1985年から86年にかけて喫煙習慣の調査と健診を行い、15年後に追跡調査した。経口ブドウ糖負荷試験を行ったところ、喫煙者の22%は血糖値が高く出て、多飲、多尿などの糖尿病の症状が出ていた。 喫煙習慣のない場合でも受動喫煙に常にさらされている人では、血糖値の異常がみつかる比率が高くなっていた。受動喫煙の危険がまったくない人は12%未満だったが、受動喫煙にさらされている人では17%に増加した。 研究では、喫煙は糖尿病と同じように冠動脈疾患に関連しており、また糖尿病と冠動脈疾患は高血圧や肥満、高脂血症などの危険因子を共有していることが指摘されている。 たばこの煙が耐糖能とインスリン分泌能に影響するのではないかと推測 HATORI Yutaka 2008.5.31
喫煙する人は、関節リウマチになる危険性が高い喫煙する人は、関節リウマチになる危険性が高い 国内でも約70万人 このリウマチの原因は体全体を蝕む自己免疫性疾患の一つ この慢性関節リウマチのなり易さは、遺伝的な因子によりある程度決まっており、ある種の遺伝的背景を持つ人では、危険率が高い その一方で、喫煙などの生活習慣により、自己免疫疾患になるリスクが高くなる 喫煙歴のある人ではリウマチになる危険率が高く、またその人の遺伝的な体質とも密接に関係している 研究では、関節リウマチの患者さん858名と、対象として健康な人1,048名について、採血して遺伝子検査を行い、その結果と喫煙などの生活習慣に関する情報 リウマチ患者さんには、共通なタンパク質のエピトープ(shared epitope, SE)の遺伝子がある このSE遺伝子の数(コピー数といいます)が、患者さんによって異なり、よく悪性度の高い人ではコピー数が多くなる その結果、SE遺伝子が1個をもつ人で、喫煙歴のある人では、リウマチになる確率が7.5倍高い SE遺伝子を重複して2個持つ人では、更にそのリスクが15.7倍にまで上昇 HATORI Yutaka 2008.5.31
喫煙と消化性潰瘍 胃潰瘍の再発防止に関しては「薬を飲むことよりもたばこをやめること」がより重要。 1日60本以上の重喫煙者の胃潰瘍再発率は、70.0%。 HATORI Yutaka 2008.5.31
受動喫煙 • 環境タバコ煙(副流煙と呼出煙)をすわされること • EPAによると 環境タバコ煙はグループA発がん物質 • WHO 環境タバコ煙をグループ1 発がん物質 • 喫煙者との同居は 心疾患死亡リスクを30%増加 • 1991 Glantz • 安全なレベルの受動喫煙は存在しない WHO2001 • 分煙のみでは、受動喫煙被害を防止できない HATORI Yutaka 2008.5.31
バージャー病 喫 煙 歯周病