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歯科領域にみられる健康格差と ヘルスプロモーション

歯科領域にみられる健康格差と ヘルスプロモーション. NPO 法人日本むし歯予防フッ素推進会議 研修セミナー 2007 年 9 月 2 日 東京仕事センター 東北大学大学院歯学研究科 国際歯科保健学分野 相田潤. 健康の地域格差. がんの標準化死亡比(男、 2000 年). (引用、国立がんセンターがん対策情報センター : http://ganjoho.ncc.go.jp/public/statistics/pub/todoufuken.html ). がんの標準化死亡比(女、 2000 年).

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歯科領域にみられる健康格差と ヘルスプロモーション

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  1. 歯科領域にみられる健康格差とヘルスプロモーション歯科領域にみられる健康格差とヘルスプロモーション NPO法人日本むし歯予防フッ素推進会議 研修セミナー 2007年9月2日 東京仕事センター 東北大学大学院歯学研究科 国際歯科保健学分野 相田潤

  2. 健康の地域格差

  3. がんの標準化死亡比(男、2000年) (引用、国立がんセンターがん対策情報センター:http://ganjoho.ncc.go.jp/public/statistics/pub/todoufuken.html)

  4. がんの標準化死亡比(女、2000年) (引用、国立がんセンターがん対策情報センター:http://ganjoho.ncc.go.jp/public/statistics/pub/todoufuken.html)

  5. 3歳児う蝕有病者率(2000年) (%) (%) 60-100 50-59.9 40-49.9 30-39.9 20-29.9 0-19.9 (経験的ベイズ推定値)

  6. 健康格差は、今に始まったことではない健康格差から、社会的決定要因へ健康格差は、今に始まったことではない健康格差から、社会的決定要因へ

  7. 英国政府による健康格差の報告 The Black report (1980)The Achesonreport (1998)

  8. 社会階層による標準化死亡比の較差とその広がり社会階層による標準化死亡比の較差とその広がり 社会階層により 死亡比に格差が存在する (英国。1930-32年のSMRを指標とした) (Department of Health 1999, UK)

  9. なぜ、社会経済階層間に健康格差が存在するのか?偶然?医療の恩恵が平等でないから? 社会経済背景が健康に影響するから?

  10. 英国のSMRの経年推移(1950-52年を基準の100としている)英国のSMRの経年推移(1950-52年を基準の100としている) Public health act (1875) (水道供給, 下水処理, 動物処理の管理 ) NHSのスタート (1948) 死亡率の減少は、 19世紀から始まっていた

  11. 結核菌の発見 化学療法 死亡率 (百万人当たり) BCG 結核 百日咳 はしか 病原体の発見 予防接種の普及 死亡率 (15歳未満百万人当たり) 病原体の発見 サルファ剤 死亡率 (15歳未満百万人当たり) 抗ウイルス剤 医学の進歩と死亡の減少

  12. 社会の変化が死亡率の減少に最も大きな貢献 • 居住環境 • 衛生状態 • きれいな水が利用できること • 栄養の改善 • 一世帯人口の減少 (McKeown 1979) • 医療技術は寿命の延長に17%の貢献 (Tarlov 1996)

  13. ヨーロッパのう蝕の減少には • フッ化物歯磨剤を含めた社会背景が65%の貢献 • 歯科医療は3%の貢献 (Nadanovsky and Sheiham 1995)

  14. 健康の社会的決定要因(Social determinants of health) (Dahlgren G, and Whitehead M in the Acheson Report ,1998)

  15. WHO:Commission on Social Determinants of Health 日本語版アドレス http://www.prof-tt-publichealth.com/pdf/solidfacts.pdf

  16. 3歳児う蝕の地域差と社会経済背景の関連

  17. 3歳児う蝕有病者率の地域格差 (%、2000年度) (経験的ベイズ推定値) (%) 60-100 50-59.9 40-49.9 30-39.9 20-29.9 0-19.9 相田潤,安藤雄一,青山旬,丹後俊郎,森田学. 経験的ベイズ推定値を用いた市町村別3歳児う蝕有病者率の地域比較および歯科保健水準との関連. 口腔衛生学会雑誌.2004.54.566-576

  18. う蝕有病者率と所得 (%) う蝕有病者率 平均課税対象所得 (万円)

  19. う蝕の分散に対する説明変数の寄与 合計 39.4 % Aida J, Ando Y, Aoyama H, Tango T, Morita M.An ecological study on the association of public dental health activities and sociodemographic characteristics with caries prevalence in Japanese 3-year-old children.Caries Res.2006.40.466-472

  20. 3歳児う蝕有病者率と関連のあった変数と寄与率(%)3歳児う蝕有病者率と関連のあった変数と寄与率(%) (%) 有意でなかった変数: 歯科保健指導受診回数・ 行政の常勤歯科医師の有無               行政の常勤歯科衛生士の有無・ 人口当たりの歯科医師数

  21. 健康は社会により決定されるため、格差が生じる健康は社会により決定されるため、格差が生じる

  22. (近藤克則 検証「健康格差社会」 2007)

  23. 社会経済背景の変化でみた 大人の時点での健康指標 Poulton R, Caspi A, Milne BJ, Thomson WM, Taylor A, Sears MR, Moffitt TE. Association between children‘s experience of socioeconomic disadvantage and adult health: a life-course study. Lancet. 2002 Nov 23;360(9346):1640-5.

  24. なぜ、社会的決定要因が個人の健康を左右するのか?なぜ、社会的決定要因が個人の健康を左右するのか?

  25. (近藤,2006)

  26. 歯科疾患の不平等を説明するモデル ーMaterialist モデルー • Materialモデル:社会経済的状態により、食物や医療などの入手しやすさが異なる。所得が大きな要因。 • Materialistモデル:所得や学歴だけでなく、社会における個人の立場が重要。 • 定期的歯科受診は、高い階層に多い。 • 砂糖の多い食品は安いことが多い。フルーツや野菜の入った食べ物は高い。 Sisson KL.Theoretical explanations for social inequalities in oral health. Community Dent Oral Epidemiol 2007; 35: 81–88.

  27. ―文化・行動モデル― • 喫煙・飲酒・食生活・口腔清掃といった、保健行動や文化の中での行動が、社会階層により異なり、健康格差を引き起こすモデル。 • このモデルは、健康教育による行動変容を起こす介入に結びつく。しかし、こうした介入は、SESの高い層での改善は起こすが、低い層では改善されず、健康格差を拡大してしまう。行動を決定する、社会・政治・経済的な文脈を理解し、そこに働きかけることが必要。 • 保健行動が悪いことを、個人の責任にするのではなく、個人にそうさせた社会的要因を明らかにして対策する方向に、変わるべきである。

  28. ―心理社会的ストレスモデル― • 社会階層の低い人々では様々なストレスが多い。ストレスによる生理的メカニズムにより発病が増える(直接作用)。 • また、ストレスにより喫煙や飲酒、甘い食べ物が増加することで病気が増える(間接作用)。 • 歯周病とストレスの直接作用(異論もある)。う蝕(行動を介した間接作用)は研究も少なくよくわからない。ストレスと歯科疾患の関係は、遠い? • social capital と健康

  29. ― Life course モデル― • 他の3つのモデルを、人生を通しての経験として同時に取り入れることが出来る。 • 蓄積モデルと、臨界期モデル • 歯科疾患の格差では、両方とも支持されている

  30. 健康は個人だけの問題ではない。社会の影響とは?健康は個人だけの問題ではない。社会の影響とは? • まったく同じ意識や知識をもった子どもが、別々の中学校(片方はとても荒れている。片方はとても優秀)に行った場合、喫煙をする可能性は異なるでしょう。(cf.Rose) • あなたが子どもで、1人っ子だった場合と、10人兄弟の末っ子だった場合とでは、親が歯を磨いてくれる時間や、定期健診に連れて行ってくれるかどうかは異なるでしょう。 →これらは、個人を超えた社会環境の影響

  31. 健康は個人だけの問題ではない。社会の影響とは?健康は個人だけの問題ではない。社会の影響とは? • 学校で歯科健診をすると、極端にう蝕が多い子どもがいる。校長先生もその生徒の名前は覚えている。う蝕が多いだけでなく、様々な問題をかかている家庭であったり、健康への意識が低い家庭の子どもが、歯の健康にも手が回らなくてう蝕が多いのだ。 • こうした要素は程度の差こそあれ多くの生徒が持っている。そうした要素が多いほど、う蝕が多い傾向にある。

  32. 健康への社会の影響のより顕著な例 • 過去の産業革命や、現在のグローバリゼーションといった社会の変化 • 1990年代後半の日本の自殺者の増加

  33. 歯科疾患も、個人の保健行動や社会経済状態だけでなく、社会の影響を受けている地域社会が3歳児のう蝕経験に 及ぼす影響の検討 -マルチレベルモデルを用いた分析-歯科疾患も、個人の保健行動や社会経済状態だけでなく、社会の影響を受けている地域社会が3歳児のう蝕経験に 及ぼす影響の検討 -マルチレベルモデルを用いた分析- Aida J, Ando Y, Oosaka M, Niimi K, Morita M. Contributions of social context to inequality in dental caries: a multilevel analysis of Japanese 3-year-old children, Community Dentistry and Oral Epidemiology, (In press, 23-Oct-2006 accepted)

  34. 地域A 地域B 個人の健康は,属する地域の影響を受けている. 不健康な人が同じ地域に集まるのではなく,地域の影響 で健康が左右される(Ni-Hon-San Study). 個人の健康は,「個人の保健行動」や 「個人の生物医学的要因」だけで決まるのか? 個人の健康は,個人の生物医学的要因や行動だけでなく, さまざまな社会環境の影響を受けている. Social determinants of health という概念が究明されてきた.

  35. 毎年新しい3歳児が 健診を受診する にも関わらず, 有病者率の高い地域, 低い地域は 毎年概ね同じである. 何らかの地域の 影響があるのでは? 病気の発生を 高める地域 病気の発生を 減らす地域 3歳児う蝕有病者率の市町村疾病地図(相田ら,2005年)

  36. しかし どれくらいが個人の影響・地域の影響なのか 乳歯う蝕では研究されていない ? X%が 個人の要因で う蝕が発症 (100-X)%が 地域社会の要因で う蝕が発症

  37. 目的 3歳児の,う蝕経験と 地域社会との関連を 検討すること.

  38. 方法②-層別無作為抽出 全国を9つの地域ブロックに分けた. ↓ 各地域ブロック内の市町村を,2000年のう蝕有病者率をもとに, 3段階に分類した. ↓ 各段階から人口に応じ, 1または2市町村ずつ44市町村を 無作為に抽出した. ↓ 抽出市町村の3歳児歯科健康診査の受診者を調査対象とした.

  39. Multilevel分析による分析結果(n=3086) dmftの全分散を100%とした時の説明量 個人間の分散 地域間の分散 未知の 地域要因 質問紙の 地域要因 質問紙の 保健行動 未知の保健行動や 個人の社会経済状態 3歳児う蝕も、個人の行動・社会経済的状態だけでない、 地域社会の影響を受けている

  40. う蝕のばらつきが,個人レベルだけでなく,地域レベルでも生じており,3歳児う蝕に対する地域社会の関連が有意に示された.う蝕のばらつきが,個人レベルだけでなく,地域レベルでも生じており,3歳児う蝕に対する地域社会の関連が有意に示された. • 一人当たりの飲食料品小売店数がう蝕を増加する方向に有意に関連していた. • 平均所得・公民館の数がう蝕を減らす方向に有意に関連していた.

  41. 平均でみた健康の改善は格差の縮小を伴うのか?平均でみた健康の改善は格差の縮小を伴うのか?

  42. 社会階層による標準化死亡比の較差の広がり 全体的な改善にも関わらず 格差は拡大をしている (英国。1930-32年のSMRを指標とした) (Department of Health 1999, UK)

  43. 3歳児う蝕の地域格差も減少はしていない (%) う蝕は減少しても、格差は減少していない (年)

  44. 集団全体の健康は改善していても、その恩恵は社会背景により平等ではない。ほとんど改善していない人々も存在する。そのため、全体的な健康の改善以上に、健康格差の減少が、世界各国で公衆衛生・保健政策の目的になっている。格差の存在を認めることが、格差解消への第一歩となる。集団全体の健康は改善していても、その恩恵は社会背景により平等ではない。ほとんど改善していない人々も存在する。そのため、全体的な健康の改善以上に、健康格差の減少が、世界各国で公衆衛生・保健政策の目的になっている。格差の存在を認めることが、格差解消への第一歩となる。

  45. 歯科疾患は 2兆5882億円 (億円) 格差は,医療費として 健康な人の重荷にもなる 生活習慣病の国民医療費             (平成14年)                *全国民医療費は31兆1240億円.                * 「2005年 国民衛生の動向 」 214ページより引用,改変                *歯科医療費には病院歯科も含む

  46. 社会的決定要因による健康格差への対策とは?社会的決定要因による健康格差への対策とは?

  47. 社会的決定要因が 人々を川に突き落とす 上流と下流の図

  48. “Upstream-downstream!” 「上流と下流!」 ふと、流れの速い川の岸に立っていると、おぼれている人の叫び声が聞こえてきました。 そこで、私は川に飛び込み、手を差し伸べ、岸にあげて、人工呼吸をしました。 おぼれた人が、息を吹き返すと、また助けを求める叫び声が聞こえてきました。 仕方なしに、私は川に飛び込み、彼に手を差し伸べ、岸まであげて、人工呼吸を施しました。 彼が息を吹き返すと、また助けを求める叫び声が聞こえてきました。もう選択肢はありません。 私は川に飛び込み、この繰り返しは、果てしなく続きました。 私は、川に飛び込み、岸にあげて、人工呼吸を施すだけで、精一杯でした。 分かってください。 私には、上流に分け入って、どんな地獄が彼らを川に突き落としているのかを 確認する時間なんてなかったんです。 McKinlay, J. (1979). A case for refocusing upstream: the political economy of health , In Patients, physicians and illness (ed. E. Jaco), pp.96-120. Basingstoke, Macmillan.

  49. 経済格差が大きく、貧困層では売春が数少ない職となる社会・地域で、エイズが蔓延・・・経済格差が大きく、貧困層では売春が数少ない職となる社会・地域で、エイズが蔓延・・・ • いい治療薬を開発する • 遺伝子治療を開発する • コンドームを使うべきと健康教育をする • 売春は止めるべきと教育する 分かってください。 私には、上流に分け入って、 どんな地獄が彼らを川に突き落としているのかを 確認する時間なんてなかったんです。

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