< 10 > 自由売買 禁止 命令の費用 ～ < B2 > 売春・酒・麻薬の禁止～

1. 課 題 <10> 自由売買禁止命令の費用～<B2> 売春・酒・麻薬の禁止～ B2自由取引の利益と禁止の費用  <N5章 pp.57-68> 1<5章>売春・酒・麻薬の禁止 2社会的に有害な財・サービス? 3★★比較優位と交易の利益

2. Q読解力チェック pp.57-68 • 第5章 (pp.57-68) の主旨･用語を理解した? • 相互に利益のある交換・比較優位とは? p.57,59 • 「人類最古の職業」売春のネバダと他の都市の性病率の違いは? その理由は? ｐ.67, ６３ • 禁酒法時代に殺人率が上がった理由は? p.59-60 • コカインは1914年以前は希釈して飲んだのに(例? p.61),注射や鼻からの吸引になった理由は? p.60-2

3. 1 <5章> 売春･酒･麻薬の禁止 • 「相互に利益のある交換行為」の禁止 • 売春： ネバダ州では合法 • 酒： 禁酒法時代（1920-33年） • 麻薬： 1914年以前はコカインも合法 • 禁止命令の効果  小さな成果・大きな費用 • 目覚ましい成果をおさめることはできない • 生産・流通・使用への独特な副作用：費用・死者

4. 自発的取引は相互に利益 • 完全競争市場 ： 誰もが自由に取引 •  <B><B1>: 社会余剰の最大化 + 比較優位 • あらゆる自発的な取引  ＋ 相対取引 • 自発的： (予想)便益B ＞ (予想)費用C • But事後的な後悔はありうる  情報費用 • ∴ 事前的には互いに余剰S（利益）は正

5. 禁止による独特の副作用：生産･流通 • 売手への取り締まり  売手の費用↑ • ∵ 買手への取り締まりより，効率的だから • 買手への取りまりも併用（オトリ捜査）  買手の費用↑ • ∴「非合法な」商品価格P↑  取引↓ • 契約の執行  犯罪･暴力に比較優位：殺人↑ • 余剰最大化  高価格･高収益商品（B↑,C↓）

6. 禁止による独特の副作用：使用 • 逮捕リスク  高価格商品の集約的使用 • 高濃度な酒 & 麻薬の過剰使用 死者↑ • 情報不足  低品質&低信頼性の消費 • 性病，メチルの酒，殺虫剤入り麻薬  死者↑ • ∴禁止命令下では「買主の危険負担」も大 • 性病・エイズ，30倍の急性アル中死亡率，…

7. Q1　確認： 膨らむC・上がらぬB • 麻薬対策のケース p.65-6 • コカインの輸入阻止のため90年代に費やされた年間$20億，その価格への効果は?(4%) • 更に2%引き上げる費用は? ($10億) • ノーベル賞経済学者ベッカーらが最近推計した年間麻薬対策関連費は? ($1000億) • 結局，麻薬需要の減少への効果は?

8. Q演習問題(p.67-8)1-2 • 度数ではなく量のみに課税すると，酒類の消費パターンはどう変わる? • ハードリカーの相対価格↓  需要量↑ • 賄賂を使う・使わないｽﾋﾟｰｸｨｰｼﾞｰ(p.58)では，常連客のタイプは異なる? • 賄賂の負担  高品質酒の仕入れ + 手入れの確率↓  高価格に見合う高所得者

9. 2社会的に有害な財・サービス? • 社会的に有害?な財・サービス?  社会通念 • 宗教的・倫理的・温情主義的 • 中絶，売春・ポルノ，麻薬・酒・煙草（中毒） • <D> 負の外部効果（=外部不経済） • 煙草（副流煙･医療費），麻薬・酒（暴力･犯罪） • But 多様性  対策： どう禁止･隔離･課税or自由? • 中絶･ポルノ･売春，煙草･酒･麻薬

10. Q2　２つの麻薬対策：取締強化vs.教育 • M(05)は，麻薬取締強化は麻薬関連の犯罪を増加させる点で，反麻薬教育の利点を指摘。以下の仮定を使い説明すると? • 麻薬の需要の価格弾力性は小さい •  非弾力的な理由は? より長期には? • 麻薬関連の犯罪は麻薬への支出額に依存 •  麻薬の売上高： P×Q

11. A2　反麻薬教育が犯罪を減らす理由 • 禁止下の取締強化　　　　　　教育推進 D D S2 S S D2 P P Q Q

12. Q演習問題(p.67-8)3-4 • ネバダとニュージャージーの売春市場の（人口差調整後の）取引量Qと価格Pは? • 禁止： S&Dの左方シフト  Q↓, P ? or ★↑ 次頁 • なぜ「最も中毒性の強い」煙草が合法? • すでに供給・需要の両サイドで巨額の投資 • ∴生産者・消費者・税務当局の一定の支持 • But 禁煙運動と長期的展望は？  荒井(12)&Q3

13. A演習3　ネバダより少なくなる売春 • 売春公認のネバダ　★禁止のニュージャージー D2 D S2 S S D P P Q Q

14. 参考： 喫煙・禁煙の経済学 • 千本以上の論文･多様なモデル 荒井(12) • 合理的嗜癖モデル： データ適合性は大きい • 自由主義･強い個人 外部不経済以外では非介入 • 時間非整合的選好モデル： 小 but 医師が支持 • 温情主義･弱い個人 政府等による介入・統制 • 温情主義者の同様な問題  未成年・若者 • 結婚・性行為・賭け事・運転・欠席・…

15. Q3　迷惑なら全面禁止? • 次のような財･サービスは禁止すべきか? • 多数の人が長年愛用しているが， • 本人にも関係者にも，健康･生命上のリスク大 • 独立･合理的な主体　 ウインター(09, 5-6章) • 非合理性： 不完全情報・広告  合理的中毒 • 外部不経済： 副流煙・医療費  死の見返り

16. 3★比較優位と交易の利益 • 財生産の絶対優位と比較優位 M(05) • 絶対優位生産性に基づく生産者間の比較 •  より少ない生産要素で同量生産可能 • 比較優位機会費用に基づく生産者間の比較 •  より少ない機会費用で同量生産可能 • 互いに比較優位に特化 交易の利益 • ∵ 分業&特化により生産物の総量が増加

17. Q4生産可能な2財の組み合わせは? • 下の２人のYとXの連続的な関係のグラフ? • 凡才君が絶対優位・比較優位にある財の生産は?

18. A4　生産可能性曲線PPCと絶対優位 • 天才君のPPCが常に凡才君の上方 • ∴天才は共に絶対優位 • ウナギもマツタケも！ • 共に8時間で多く生産 • 凡才は共に絶対劣位 • ★But 松茸Xは比較優位 Y 天才 Y=-1/2 X + ２４ 24 8 凡才 Y=-1/4 X + 8 32 48 X

19. Q5★★ 機会費用と比較優位　 • 松茸生産の機会費用 ＝ 犠牲にした鰻 • 天才君の松茸生産の機会費用は?(鰻0.5尾) • 凡才君の松茸生産の機会費用は?(鰻0.25尾) • ★凡才君が比較優位にある財は?(機会費用の低い松茸) • ★★逆に天才君が比較優位を持つ財は? (鰻) • 両者の鰻の機会費用： 松茸2本と4本  上記の逆数 • ★★天才は松茸･鰻の両方で比較優位を持ちうる?

20. ★★ 分業&特化による交易の利益 • 鎖国（交易禁止or自給自足）状態の例 • 凡才国： X=16,Y=4，天才国：X=24,Y=12 • 社会（世界）の総生産量： 松茸40本,鰻16尾 • 比較優位への特化と生産量・消費量の増加 • 凡才国： X=32，天才国： X=12,Y=18生産↑ • 凡才の松茸15本と天才の鰻5尾を交換（鰻＝松茸3本） • 凡才： X=17,Y=5，天才： X=27,Y=13消費↑

21. ★ 自由貿易によるトレードオフの克服 • 鎖国消費A  生産特化B  開国後消費C •  互いに利益（消費量の増加）: パレート優位 Y Y 凡才 Y=-1/4 X + 8 24 天才 Y=-1/2 X + ２４ C 12 B A A C 8 B 48 32 24 16 X X

22. 自由取引・比較優位の含意 • 「市場化時代」に重要な個人のスキル? • 絶対優位でなくても，比較優位を自覚&養成 • 「市場↑  分業↑」時代には，特化のチャンス • 国家や世界の公共・経済政策の基本? • 自由取引・自由貿易(N7部)は，相互に利益 • 温情主義的な禁止・介入は，低便益&高費用

23. 本日のポイント 要点 • 売春・酒・麻薬の禁止命令の効果? • 自発的取引の禁止は，低成果・高費用(副作用) • ∴自由取引&自由貿易の相互利益が基本 • 比較優位による職業選択･自由貿易は生産量↑ • 事実（麻薬： 教育）価値観（温情 vs. 自由） • 次回準備　N6章 & <☆B3> コースの定理

24. 麻薬・煙草関連の参照文献紹介 • M(05): マンキュー 『経済学<1> ミクロ編』 • 麻薬取締強化 vs. 撲滅教育の推進： p.148-50 • 比較優位： ３章 • ウィンタ― (09) 『人でなしの経済理論』バジリコ • トレードオフ・医療経済学　<B3> 腎臓売ります • 荒井 (12)『喫煙と禁煙の経済学』 中公新書 • 消費財としての煙草の特質，モデル紹介，政策