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ペアレントトレーニング 研修 . H 25. ○ . ○~ △ . △ 京都ペアレントトレーニング 研究会 北村 龍二. 研修の予定. 1.ペアレントトレーニングの概論 月 日 2.行動の分析 月 日 3.環境の調整とスモールステップ 月 日 4.強化と強化子 月 日 5.困った行動を減らすには 月 日 6.まとめ(修了式) 月 日 (時間は全日15時~ 17 時を予定しています) . 本日の予定.
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ペアレントトレーニング研修 H25.○.○~△.△ 京都ペアレントトレーニング研究会 北村 龍二
研修の予定 1.ペアレントトレーニングの概論 月日 2.行動の分析 月 日 3.環境の調整とスモールステップ 月 日 4.強化と強化子 月 日 5.困った行動を減らすには 月日 6.まとめ(修了式)月日 (時間は全日15時~17時を予定しています)
本日の予定 <前半>講義15:00~16:30 Ⅰ.ペアレントトレーニングの定義と歴史 Ⅱ.ペアレントトレーニングの内容と進め方 Ⅲ~Ⅷ.実際の流れ Ⅸ.評価方法 Ⅹ.ペアレントトレーニングの効果と課題 <後半>16:30~17:00 ・質疑応答
Ⅰ.ペアレントトレーニングの 定義と歴史Ⅰ.ペアレントトレーニングの 定義と歴史
Ⅰ-1.ペアレントトレーニングの定義 親訓練(parent training)とは、親が行動原理を使って子どもの問題を扱えるように、親を訓練することである(免田、伊藤、大隈、中野、陣内、温泉、福田、山上、1995)。 ・・その背景には、親は自分の子どもに対して最良の治療(協力)者になることができるという考えがあり、ペアレントトレーニングを通して子どもの行動をどう捉えたら良いのか、その行動にどう対応をすれば良いのかを具体的に学んでいくことで、子どもの望ましい行動を伸ばし、親自身の育児ストレスを軽減させることもできます。
Ⅰ-2.ペアレントトレーニングの歴史 <第1期(1960年~1975年)> 親訓練という治療方法が子どもの問題に対して効果が あるのか検証がおこなわれた時期 <第2期(1975年~1985年)> 親訓練プログラムの般化について研究の焦点が当た るようになった時期。また、プログラムの効果が最大に なる為にはどのようなセッションとカリキュラムを立てれ ば良いのかも検討 <第3期(1985~現在)> 子どものSST、教師訓練、親から親への訓練プログラ ムの効果、父親参加の問題などの研究等 免田賢(2011)親訓練研究の歴史と展望ー効果的プログラムの開発に向けてー(その1)、 佛教大学教育学部学会紀要 第10号、63-72.
Ⅰ-3.本邦での親訓練プログラム <大別すると2つの流れに> 1.肥前式親訓練プログラム(免田ほか、1995) 本邦初の最も体系的なプログラム(1991) AD/HDに対する肥前式プログラム(2001) 2.奈良方式並びに精研式プログラム(上林、斎藤、北、2003) UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のプログラム(Whiteham,1998)とマサチューセッツ医療センターに所属していたBarkley(1995)のものを国内向けに修正
Ⅰー4.肥前式親訓練プログラムのテキスト 山上敏子監修(1998)お母さんの学習室―発達障害児を育てるための親訓練プログラム―.二瓶社 大隈紘子・伊藤啓介監修(2005)AD/HDをもつ子どものお母さんの学習室.二瓶社
Ⅰ-5.肥前式と奈良方式・精研式との違いーAD/HDに対するプログラムを中心にーⅠ-5.肥前式と奈良方式・精研式との違いーAD/HDに対するプログラムを中心にー <1.肥前式親訓練プログラム> 行動療法と行動変容アプローチに基づく典型的なプログ ラム。具体的な行動目標を掲げ、行動獲得と問題行動の 減少の行動記録を元にそれに対する具体的な方法を家 庭でのホームワークを通して検討を行っていく行動変容 アプローチ <2.奈良方式・精研式> 親子関係の改善を主眼として、子どものセルフエスティー ムの向上、ならびに参加家族間のサポート機能を高める ことに重点を置く。その為、各セッションは全体のSST方式 で進め、ロールプレイを多用するなどの特徴を持つ。
Ⅰー6.プログラムの大まかな比較 佛大式親訓練プログラム(※) 奈良教育大学方式
Ⅱ.ペアレントトレーニングの 内容と進め方Ⅱ.ペアレントトレーニングの 内容と進め方
Ⅱー1.プログラムの内容(佛大式を基に)スケジュール(時間)10:00~12:00 隔週Ⅱー1.プログラムの内容(佛大式を基に)スケジュール(時間)10:00~12:00 隔週
Ⅱー3.実施の形態(2グループの場合) 1.前半講義 → 2.後半グループ (保護者) (スタッフ)
ペアレントトレーニングの流れ ①.お子さんに対して、「できるようになって貰いたい行動」「止めて貰いたい行動」を それぞれ5つずつ挙げて貰い、その中の1つを今後の「標的(目標)行動」として設定 ②.標的(目標)行動を決定 (例:ちゃんとご飯を食べる → 夕食中は「ごちそうさま」まで着席して食べる) ③.目標行動の前後関係を分析( 行動分析 ) きっかけ → 反 応 → 結 果 (テレビが見たい) (立ち歩く) (テレビが見られる) (嫌いなおかずが出る) (立ち歩く) (食べなくても済む) ④. 「きっかけ」を変えてみる~「環境調整」 (例:テレビを消す・DVDに録画等、場所・時間の構造化等) ⑤.社会的に望ましい行動に対して報酬~「強化と強化子」 ⑥.できない時の手助け ⑦.困った行動を減らす対応を考える(Ⅳ・Ⅴを行っても改善が見られない場合) (計画的な無視・レスポンスコスト・タイムアウトなど)
宿題1(※) お子さんのお名前 記入年月日年月日 1.お子さんに、できるようになって欲しいことを5つ書いて下さい。また、できるように なって欲しい順に番号を付けて下さい。 ・自分でズボンをはいて欲しい⑤ ・一人でウンチをして欲しい③ ・言葉を喋って欲しい① ・オモチャを片付けて欲しい④ ・気持ちを自分でコントロールして欲しい② 2.お子さんに、やめてもらいたいことを5つ書いて下さい。また、やめてもらいたい 順番に番号を付けて下さい。 (身辺自立はできているが、「やる気」の問題が大きいお子さんの例) ・だらだらして中々宿題に取りかからない⑤ ・食事の時に立ち歩くこと① ・乱暴な言葉を使うこと④ ・自分の思う通りにならないと泣く② ・状況に合わない発言、行動をすること③ (※)事前に配布
Ⅲ-1.目標行動の設定 先の宿題の中から1つ、今後取り扱う目標行動を決めます。 <どちらの目標行動が取り組みやすいでしょうか?> ①「ハードル」が低く成功しやすい行動 ②クリアできたら大きな自信となる難しい行動 お子さんやお母さんに「成功体験」を積んで貰う為にも「できる だけハードルの低い行動」を選びましょう(※)。また、トレーニ ングの実施期間が約3ヶ月であるために、「長期間の支援が必 要な行動」は目標行動としては難しい傾向があります。 (※)自傷行為などの「緊急性を要する行動」に対しては、優先して取り組む場合もあります。
Ⅲ-2.目標行動の選択 以下の「やめてもらいたい行動」のうち、目標行動として取り組みやすい ものは何でしょう?(番号は保護者の希望) ・だらだらして中々宿題に取りかからない⑤ ・食事の時に立ち歩くこと① ・乱暴な言葉を使うこと④ ・自分の思う通りにならないと泣く② ・状況に合わない発言、行動をすること③ おそらく・・①か⑤の何れかではないでしょうか? ただ、目標行動は、あくまで「保護者が納得したもの」を選びます。 スタッフが一方的に決めた行動では、保護者のモチベーションも低 いので、効果が期待しづらい傾向もあります。(家庭場面・家族関係等)
Ⅲ-3.目標行動の具体的化 「夕食中は『ごちそうさま』まで着席して食べる」という目標 行動の場合、より具体的にするために①~④を確認 ①数量化→立ち歩いた時間や回数は記録可能ですか? ②他の人が正確にその内容を把握できますか? ③それ以上細かい行動には分けられませんか? <IBSOテスト(The Is the Behavior Specific and Objectivetest) > ④5W1H(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どうやって)の中で利用できそうな情報はありますか?
IBSOテスト 項目1 <項目1.目標行動は数量化できますか?> (夕食中は『ごちそうさま』まで着席して食べる) 子どもの行動は、例えば5分間に何回、また、1日に何回起 きるか数えることができますか?あるいは、子どもがその行 動を実行するのに要する時間を計測することができますかす なわち、その行動が今日何回生じたかあるいは何分生じた かを報告することができますか?~「はい」 →行動が数量化できると正確な情報の共有もでき、対応が効果的かどうかも判断できます。 (例)「1時間に何回暴言を言うのか」 「1時間のうち座っていられる時間は何分なのか」など
IBSOテスト 項目2 <項目2.他の人が聞いてもその人が何を観察したらよいか正確に知ることができますか?> (夕食中は『ごちそうさま』まで着席して食べる) 子どもの「直して貰いたいこと・できるようになって欲しいこと」 を他の人に話した時、その人が何を観察すれば良いのかを正 しく知ることができますか?すなわち、子どもがその行動を行っ た時、それを実際に見落とすことなく見ることができますか? ~「はい」 →他人に説明した際に「何を見れば良いのか」が正確に分かる 内容だと、相手にも伝わりやすいだけでなく、保護者もより意識 的に対応しやすくなります。
IBSOテスト 項目3 <項目3.目標行動は、それよりもさらに小さい行動に分けることができませんか?> (夕食中は『ごちそうさま』まで着席して食べる) 「直して貰いたいこと・できるようになって欲しいこと」は さらに細かい行動に分類できますか?~「いいえ」 →行動が更に細分化できる内容だと、どこに焦点を当てて支援をしたら良いのかが分かり辛くなってしまうので、行動は「それ以上細かくならない」くらい具体的にしましょう。 (例)服を自分で着てほしい ①身ごろをかぶる→②右手を出す→③左手を出す→④身ごろを下ろす
Ⅲ-4.目標行動の決定 ①数量化→立ち歩いた時間や回数は記録可能ですか? ②他の人が正確にその内容を把握できますか? ③それ以上細かい行動には分けられませんか? <IBSOテスト> (The Is the Behavior Specific and Objectivetest) ④5W1H(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どうやって)の中で利用できそうな情報はありますか? 以上の4点を考慮すると・・「食事の時に立ち歩くのを止めて欲しい」よりも 例えば、「夕食中は『ごちそうさま』まで着席して食べて欲しい」の方 がより具体的な目標行動になったと思われます。 目標行動は保護者に事前配布した宿題1を参考にグループワークで決定します 保護者は前半の講義を通して、自分が書いた宿題1の内容が抽象的であったこ とに気が付きます。(「しっかり」「ちゃんと」「気持ちを分かって」「周りの空気を読 んで」等の抽象的な表現が多く見られます)
宿題1 お子さんのお名前 記入年月日年月日 1.お子さんに、できるようになって欲しいことを5つ書いて下さい。また、できるように なって欲しい順に番号を付けて下さい。 ・自分でズボンをはいて欲しい⑤ ・一人でウンチをして欲しい③ ・言葉を喋って欲しい① ・オモチャを片付けて欲しい④ ・気持ちを自分でコントロールして欲しい② 2.お子さんに、やめてもらいたいことを5つ書いて下さい。また、やめてもらいたい 順番に番号を付けて下さい。 (身辺自立はできているが、「やる気」の問題が大きいお子さんの例) ・だらだらして中々宿題に取りかからない⑤ ・食事の時に立ち歩くこと① ・乱暴な言葉を使うこと④ ・自分の思う通りにならないと泣く② ・状況に合わない発言、行動をすること③
ペアレントトレーニングの流れ ①.お子さんに対して、「できるようになって貰いたい行動」「止めて貰いたい行動」を それぞれ5つずつ挙げて貰い、その中の1つを今後の「標的(目標)行動」として設定 ②.標的(目標)行動を具体化 (例:ちゃんとご飯を食べる → 夕食中は『ごちそうさま』まで着席して食べる) ③.目標行動の前後関係を分析( 行動分析 ) きっかけ → 反 応 → 結 果 (テレビが見たい) (立ち歩く) (テレビが見られる) (嫌いなおかずが出る) (立ち歩く) (食べなくても済む) ④. 「きっかけ」を変えてみる~「環境調整」 (例:テレビを消す・DVDに録画等、場所・時間の構造化等) ⑤.社会的に望ましい行動に対して報酬~「強化と強化子」 ⑥.できない時の手助け ⑦.困った行動を減らす対応を考える(Ⅳ・Ⅴを行っても改善が見られない場合) (計画的な無視・レスポンスコスト・タイムアウトなど)
Ⅳー1.行動分析(目標行動とその前後関係を分析)Ⅳー1.行動分析(目標行動とその前後関係を分析) 目標行動とその前後関係(きっかけ・結果)を分 析することを行動分析(※)と言います。行動分 析は子どもの行動を捉える際の大きな手立てと なります。(※)行動分析は行動療法の基本的な 考え方です。
Ⅳ-2.目標行動の行動分析 目標行動が、「夕食中は『ごちそうさま』まで着席して食べる」の場合、 その「きっかけ」と「結果」を観察記録して貰います 好きなアニメがテレビで 立ち歩く アニメが見られる 流れている 嫌いなおかずがある 立ち歩く 怒られるが食べ ずに済む
宿題3 お子さんの名前( ) 記入日 年 月 日 お子さんに、できるようになってもらいたい行動( or やめてもらいたい行動 )は です その行動が起きる状況を以下の流れに沿って記載して下さい。 きっかけ → 行 動 → 結 果 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )
( 宿題 2 )Ⅳー3.行動分析の記録例① (回数の記録)お子さんの名前( ) 記入日 年 月 日お子さんに、できるようになってもらいたい行動( or やめてもらいたい行動 )は夕方、居間でご飯を食べる時は立ち歩くのを止めて欲しいです その行動が起きる状況を以下の流れに沿って記載して下さい。 きっかけ → 行 動 → 結 果 (好きなアニメがテレビで ( 立ち歩く ) ( アニメが見られる) 流れている) (嫌いなおかずがある) ( 立ち歩く ) ( 怒られるが食べずに済む )
行動分析の記録例②ー持続時間の記録ー (標的行動)夕方、居間でご飯を食べる時は立ち歩くのを止めて欲しい その行動が起きる状況を以下の流れに沿って記載して下さい。 きっかけ → 行 動 → 結 果 (好きなアニメがテレビで ( 立ち歩く ) ( アニメが見られる) 流れている) (嫌いなおかずがある) ( 立ち歩く ) ( 怒られるが食べずに済む )
Ⅳー4.行動分析と記録をする際の工夫 観察や記録をする時に、一日中子どもの様子を 見ることは難しいので、例えば、 「観察・記録しや すい時間帯や場所」を選びましょう。 (例)・夕食の片づけが終わった7時~7時半の間 ・朝起きてから顔を洗うまでの15分間 ・学校から帰宅後の10分間など
Ⅳー5.行動分析、観察・記録から分かることⅣー5.行動分析、観察・記録から分かること ・過去と現在の記録を比較することで、子どもの客観的 な進歩が分かります。 ・記録を通してその進歩が規則的、もしくは不規則なの かが分かります。 ・記録は子どもへの支援方法が適切であるかどうかの 判断基準にもなり、今後の支援のヒントも得られます。 ・支援者が自信を失ってしまった際にもこれまでの記録 を見ることで、子どもの進歩を改めて確認することも できます。
Ⅳー6.行動分析をしても分かりづらい時にはⅣー6.行動分析をしても分かりづらい時には 丁寧に行動の前後関係を分析しても、子ども の目標行動の「きっかけ」や行動を維持・強め ている「結果」が分かりにくい時もあります。 そのような時は、「できている時」と「そうでな い時」の違いを考えてみましょう。 →例えば、「どうして今日は座っていられたのか?」「どうして、この時間は静かだったのか?」など普段との違いを意識しましょう!
ペアレントトレーニングの流れ ①.お子さんに対して、「できるようになって貰いたい行動」「止めて貰いたい行動」を それぞれ5つずつ挙げて貰い、その中の1つを今後の「標的(目標)行動」として設定 ②.目標行動を具体化 (例:ちゃんとご飯を食べる → 夕食中は『ごちそうさま』まで着席して食べる) ③.目標行動の前後関係を分析( 行動分析 ) きっかけ → 反 応 → 結 果 (テレビが見たい) (立ち歩く) (テレビが見られる) (嫌いなおかずが出る) (立ち歩く) (食べなくても済む) ④. 「きっかけ」を変えてみる~「環境調整」 (例:テレビを消す・DVDに録画等、場所・時間の構造化等) ⑤.社会的に望ましい行動に対して報酬~「強化と強化子」 ⑥.できない時の手助け ⑦.困った行動を減らす対応を考える(Ⅳ・Ⅴを行っても改善が見られない場合) (計画的な無視・レスポンスコスト・タイムアウトなど)
Ⅴー1.環境調整(主に「きっかけ」へのアプローチ)Ⅴー1.環境調整(主に「きっかけ」へのアプローチ) 「夕方、居間でご飯を食べている時に立ち歩くのを止めて欲しい」と いう標的行動があり、その行動の前後関係を分析した結果、例えば、 きっかけ → 行 動 → 結 果 (アニメを見たい) (立ち歩く) (アニメが見られる) という流れが確認されたとします。環境調整は主に「きっかけ」へのアプ ローチになりますので、「テレビを付けない」「アニメを録画する」など の方法も考えられます。また、「環境調整」には、TEACCHに代表されるよ うな、物理的な構造化(場所・手順の工夫)や時間の構造化(スケジュー ルなどの利用)やPECS(絵カードでのコミュニケーション)等も含まれ、 特別な方法と言うよりは、「人が生活しやすくなる為の工夫」と考えても よいのかもしれません(大人の場合でも、信号機、イラストでの説明書、 駐車場の白線・男子トイレの的など環境の工夫は数多く挙げられます)。
Ⅴー2.環境を変えてみる 例:食事中の離席が多いA君 ・テレビがついている→ 食事中はテレビを消す ・玩具が近くにある→子どもから見えない場 所に玩具置き場を作る ・食べているのが自分だけ →食事のタイミングを 家族で合わせる
Ⅴー3.課題・教材の工夫 例③:着席困難なCさん ・Cさんは10秒も座っていることが困難で、立ち歩きながら指先で唾をねとねとさせて 遊ぶことが多い女の子です。また、食べ物の絵や写真を飽きずに眺め、時にはパズルに手を 出すこともありました。そこで着席訓練の課題を「切り分けた料理の写真をのりで貼りあわせ ること」にしました。その結果、Cさんの着席時間は確実に伸びていきました。 ☆ポイント☆ ・Cさんの好きな手触りを唾からのりに変える。 ・好きな料理の写真を使う。 ・興味のあったパズルを課題として利用する。 子どもの好きな色や形・手触り・音などがあれば課題に取り入れましょう。また問題と思われ る行動(唾遊び)も似たような感覚が得られる課題(のり遊び)だとそちらへの移行が可能にな ることがあります。 ・教材は「見てわかりやすいもの」を選ぶ ・例えば形のカードを用いて形の名前を教える場合だと、カードと机の色が大きく異なっていた方が、より分かりやすい教材になります。そして小さなカードよりも大きなカードを利用しましょう。また、言葉の指導で絵や写真のカードを用いる際には、余分な背景をなくして、できるだけ単純にすることも大切です。
Ⅴー4.指示の出し方 <指示は正確に出しましょう> 「お風呂のお湯を止めておいてね」という指示だと、子どもは溢れる寸前にお湯を止 めるかもしれません。またすぐに溜まっていないのに止めるかもしれません。確かに 指示にはきちんと応じているのですが、こちらの意図したようにはなっていません。こ のような場合には「この線までお湯が溜まったら止めておいてね」というように、より 正確(具体的)な指示を与えることで、子どもが混乱せずに指示に従えるでしょう。 <簡潔・明瞭な指示をしましょう> 指示を出す声の大きさや早さも注意が必要です。矢継ぎ早に繰り返すよりも、指示 の語数を最低限にし、言葉での指示は1回につきひとつの内容にしましょう。子ども が聞いて確実に理解できるように「はっきり・ゆっくり・単純な」指示を心がけるように してください。(動作での指示も同様)また、指示内容は一貫したものにし、子どもの 注意がこちらにむいた時にすることが重要です。
Ⅴー5.場所・手順の工夫 • 「どこで」すればよいのかを伝えるためには(物理的構造化) ①視覚的な手がかりの利用 ②活動と場所の対応 集中しなければならない活動の場所には、子どもの気になる ものや音がないように • 「いつ・いつまで」を伝える方法・スケジュールの利用(時間の構造化) ①子どもの理解能力に合わせる ②実行可能なスケジュールを作る ③難しい活動と易しい活動のバランスをとる
Ⅴー6.ワークシステム • 「何を・どれだけ・いつまでやるのか・終わったらどうするのか」を伝える方法(ワークシステム) ①左から右へのシステム③色合わせのシステム ②シンボルによるシステム ④文字によるシステム • 「どのように行なうか」を伝える工夫(課題の組織化) ①文脈・場面の指示 ④1対1の対応 ②左から右への系列 ③完成品の提示 ⑤ジグの利用(視覚的な手がかりの利用。例えば、着替えの時に何 を準備したら良いのかが分らないお子さんの場合ですと、紙にパンツ、 シャツ、パジャマなどの絵が1つずつ描いてあれば、それに実物を合 わせていくことで、着替えの準備ができるという訳です。)
ワークシステムの実例 <左から右、上から下のシステム> 活動の順序に合わせて材料を左から右へ、 あるいは上から下へ順番に並べましょう。 つまり一番左、または上にあるものが最初に する活動になります。このようにワークシステム とは、何をするのかを伝え、左、あるいは上から 始めた活動材料、あるいはカードがなくなって しまえば終了とわかるようにしたものです。また 最後つまり右か下にごほうびのカードをつけること もあります。お子さんは活動を終了したら、次の活動が 何かを知るためにスケジュール表を見に行くし、あるいは ごほうびカードを持ってごほうびをもらいに行くでしょう。
環境調整の実例 • たすくスケジュール コミュニケーションカード(音声+絵)を使って、一日のスケジュールをどなたでも手軽に組み立てることができるスマートデバイス向けアプリです。 たすく株式会社HPより (許可を得て抜粋)
ペアレントトレーニングの流れ ①.お子さんに対して、「できるようになって貰いたい行動」「止めて貰いたい行動」を それぞれ5つずつ挙げて貰い、その中の1つを今後の「目標行動」として設定 ②.標的(目標)行動を具体化 (例:ちゃんとご飯を食べる → 夕食中は『ごちそうさま』まで着席して食べる) ③.目標行動の前後関係を分析( 行動分析 ) きっかけ → 反 応 → 結 果 (テレビが見たい) (立ち歩く) (テレビが見られる) (嫌いなおかずが出る) (立ち歩く) (食べなくても済む) ④. 「きっかけ」を変えてみる~「環境調整」 (例:テレビを消す・DVDに録画等、場所・時間の構造化等) ⑤.社会的に望ましい行動に対して報酬~「強化と強化子」 ⑥.できない時の手助け ⑦.困った行動を減らす対応を考える(Ⅳ・Ⅴを行っても改善が見られない場合) (計画的な無視・レスポンスコスト・タイムアウトなど)
Ⅵー1.社会的に望ましい行動に報酬をー強化と強化子ーⅥー1.社会的に望ましい行動に報酬をー強化と強化子ー 「強化」とは、結果として行動の頻度や強さが強まることを言 い、この例では「立ち歩くこと」が強化されています 「強化」が生じる為には、本人にとってプラスな「結果」 が必要となります。つまり「プラスな結果」が「強化子」と なっているのです。
Ⅵー2.「社会的に望ましい行動」を強める為にⅥー2.「社会的に望ましい行動」を強める為に 「夕食中は『ごちそうさま』まで着席して食べる」という目標行動があり、 その行動と行動の前後関係を分析した結果、 きっかけ → 行 動 → 結 果 (アニメを見たい) (立ち歩く) (アニメが見られる) という流れが確認されたとします。そしてこの場合は、「アニメが見られる」という「強化 子」が「立ち歩く」という行動を強めていた(強化)と考えられます。そのため、実際の対 応としては、「立ち歩く」という行動と相容れない行動(着席する)を強めることが求めら れます。そして、その為には、「立ち歩かないで夕ご飯を食べ終える」→「アニメが見られ る以上に良いことが起きる」という流れが生じれば、立ち歩きは減少すると思われます。 「立ち歩くことの結果」<「立ち歩かないで夕食を食べ終えた結果」を導きたい場合、 「立ち歩くことの結果」=①アニメが見られる 「立ち歩かないで夕食を食べ終える結果」=②() なので、① < ②となる何かが必要となります。つまり、アニメよりもより強力な強化子 が求められるのです。