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こどもの脱水. 倉敷中央病院 小児科 シニアレジデント 2 年目 柴田 敬. 今日の話の内容. 小児の脱水症の評価 小児の脱水症の治療 小児の胃腸炎. 脱水における小児の特徴. 体内水分量・細胞外液の割合が大人より多い 水分の生理的必要量が多い 水分へのアクセスが難しい 以上の理由により脱水に陥りやすい。. 体重に占める体内水分量、細胞内液量、細胞外液量の割合と経年変化. 年が小さいほど水を必要とする理由は ‥. ① 代謝が活発 ② 体重あたりの体表面積が大きく、不感蒸泄が多い ③ 腎濃縮力が未発達であり、溶質の排泄により多くの尿量を必要とする.
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こどもの脱水 倉敷中央病院 小児科 シニアレジデント2年目 柴田 敬
今日の話の内容 • 小児の脱水症の評価 • 小児の脱水症の治療 • 小児の胃腸炎
脱水における小児の特徴 • 体内水分量・細胞外液の割合が大人より多い • 水分の生理的必要量が多い • 水分へのアクセスが難しい 以上の理由により脱水に陥りやすい。
体重に占める体内水分量、細胞内液量、細胞外液量の割合と経年変化体重に占める体内水分量、細胞内液量、細胞外液量の割合と経年変化
年が小さいほど水を必要とする理由は‥ ① 代謝が活発 ② 体重あたりの体表面積が大きく、不感蒸泄が多い ③ 腎濃縮力が未発達であり、溶質の排泄により多くの尿量を必要とする
次の内、絶対点滴が必要なのは? ①5歳の女児。朝から水様便が4回あり。機嫌よく、肌にもつやがあり、食事は食べないが、水分はしっかり取れている。尿も普段通り出ている。 ② 2歳の男児。朝から水様便2回、嘔吐6回。少し不機嫌で尿は出ているがいつもよりは少ない。バイタルは正常。食事はとらず、水分はとっても吐いてしまう。 ③ 8ヶ月の女児。朝から水様便6回、嘔吐10回以上。 ぐったりしていて、たたいても反応が鈍い。粘膜は乾燥し、頻脈で脈も弱い。朝から尿は出ていない。経口摂取はほとんどできていない。 ④ 1歳の男児。朝から水様便3回、嘔吐なし。機嫌よし。 でも、怖そうなお父さんが、「点滴してくれや」と言っている。
脱水の評価 • 意識レベル 不機嫌、興奮状態、ぐったり、意識障害 • 呼吸状態 多呼吸(代謝性アシドーシスのため)、 呼吸回数減少、あえぎ呼吸(脱水から呼吸中枢の抑制) • 循環の状態 頻脈、血圧低下、冷や汗、網状斑、capillary refill≧3秒
脱水の評価 • 軽度(3~5%) 意識清明または多少不機嫌、血圧・心拍数・呼吸数は正常、 尿量減少、capillary refill 3秒未満 • 中等度(6~10%) 易刺激性・傾眠傾向、頻脈、 眼球と大泉門の陥凹、粘膜の乾燥、ツルゴール低下、 四肢冷感、蒼白 • 重度(10~15%) 傾眠・昏睡、微弱な脈拍・血圧低下、多呼吸または呼吸抑制 無尿、 眼球と大泉門の陥凹著明、涙の枯渇、 粘膜のひからび、ツルゴールの著明な低下、 著明な四肢冷感、網状斑、capillary refill 3秒以上
次の内、絶対点滴が必要なのは? 脱水無し ①5歳の女児。朝から水様便が4回あり。機嫌よく、肌にもつやがあり、食事は食べないが、水分はしっかり取れている。尿も普段通り出ている。 ② 2歳の男児。朝から水様便2回、嘔吐6回。少し不機嫌で尿は出ているがいつもよりは少ない。バイタルは正常。食事はとらず、水分はとっても吐いてしまう。 ③ 8ヶ月の女児。朝から水様便6回、嘔吐10回以上。 ぐったりしていて、たたいても反応が鈍い。粘膜は乾燥し、頻脈で脈も弱い。朝から尿は出ていない。経口摂取はほとんどできていない。 ④ 1歳の男児。朝から水様便3回、嘔吐なし。機嫌よし。 でも、怖そうなお父さんが、「点滴してくれや」と言っている。 軽度 重度 どきどき
正解は? 絶対点滴が必要なのは③ と言うことで脱水症の治療のお話。
脱水症の治療 • 輸液療法 欠乏量の補充 維持輸液 輸液中に進行する喪失に対する補充 そして、 ①どれくらいの量を ②どんな組成で ③どれくらいの速度で投与するかを考える。
欠乏量の補充 中等度以上の脱水と判断したら・・・ • 静脈路または骨内ルートを確保して、生食もしくは乳酸加リンゲル液を20mL/kg手押しで10~20分で急速投与する。 (この時に糖を含む液やNaが130mEq/L未満の低張液を用いてはならない。高血糖、低Naを防ぐため。) • 1回ごとに状態を再評価して改善されるまでこれを繰り返す。
先ほどの③の子が普段の体重が8.0kg 来院時の体重が7.1kgとすると・・・ 20mL×8=160mL の生食を10~20分ほどかけて投与する。 例えば
欠乏量の補充 等張性脱水であるとして、水分と電解質欠乏量の目安 • 水分欠乏量 脱水の程度(体重に対する百分率)×体重 • ナトリウム欠乏量 水分欠乏量×80mEq/L • カリウム欠乏量 水分欠乏量×30mEq/L
欠乏量の補充 • 欠乏量から最初にボーラスで投与した分は引いておく。 • 維持輸液に加え、欠乏量の半分を最初の8時間で、残りの半分を残りの16時間で投与する。 (煩雑さや安全性を考え、欠乏量を24時間均等に割って投与しても良い。) • ただし、排尿が確認されるまでは輸液にカリウムを加えない。 (だいたい1号液ぐらいの組成になるはず。)
維持輸液 • 維持輸液の目的 脱水の阻止 電解質異常の阻止 ケトアシドーシスの阻止、蛋白質異化の阻止
維持輸液 輸液ペースに直すと
維持輸液 • 維持輸液に必要な電解質量 ナトリウム:2~3mEq/kg/day カリウム:1~2mEq/kg/day • 蛋白質異化を最小限に抑えるのに必要なカロリー 毎日のカロリー必要量の20% →維持輸液に5%のぶどう糖が含まれていればよい
つまり • Na 30~35mEq/L、K 20~25mEq/L、グルコース5%の輸液を先ほどの維持量で投与すればOK。 • つまりこれ⇒ 体重10kgの子供なら ソリタT3を40mL/hrで 投与すればよいことになる。
平均的な下痢便の成分 ナトリウム:55mEq/L カリウム:25mEq/L 重炭酸塩:15mEq/L 胃液成分の平均値 ナトリウム:60mEq/L カリウム:10mEq/L 塩化物:90mEq/L 輸液中に進行する喪失に対する補充 消化管からの喪失で低カリウム血症を生じることが多い。 下痢では代謝性アシドーシスを生じやすく、 嘔吐では代謝性アルカローシスを生じやすい。
輸液中に進行する喪失に対する補充 • 喪失量を予測するのは難しいので、喪失した分を補充する。 • 1~6時間毎に喪失速度に応じて行う。 例えば、 4時間で200mLの下痢をした場合、200mLの補充溶液を50mL/hrで次の4時間で投与する。 (補充液の組成は喪失液の電解質濃度に近いものを選ぶ。)
今日の本当のメインは? ①5歳の女児。朝から水様便が4回あり。機嫌よく、肌にもつやがあり、食事は食べないが、水分はしっかり取れている。尿も普段通りでている。 ② 2歳の男児。朝から水様便2回、嘔吐6回。少し不機嫌で尿は出ているがいつもよりは少ない。バイタルは正常。食事はとらず、水分はとっても吐いてしまう。 ③ 8ヶ月の女児。朝から水様便6回、嘔吐10回以上。 ぐったりしていて、たたいても反応が鈍い。粘膜は乾燥し、頻脈で脈も弱い。朝から尿は出ていない。経口摂取はほとんどできていない。 ④ 1歳の男児。朝から水様便3回、嘔吐なし。機嫌よし。 でも、怖そうなお父さんが、「点滴してくれや」と言っている。
胃腸炎 • ほとんどがウイルス性。 • 多いのがノロウイルス、ロタウイルス。 (他、アデノウイルス等) • ほとんどは自然に治るが、脱水にならないように注意。 (細菌性腸炎でも自然に治るものが多い。) • 止痢薬は利点が少なく、副作用を起こす可能性があるため一般にはお勧めしない。 (ロペミンなんてもっての他。)
経口補水療法 • 電解質とグルコースが適切な割合で混ざった経口補水液を使う、飲む輸液。 (適切な浸透圧で電解質やカロリーを補える。) • 発展途上国における、下痢による死亡率を減少させた。 • 経静脈輸液より廉価で安全。
経口補水療法 • 最初の3~4時間で50~100mL/kg飲ませる。 • その後は下痢や嘔吐のたびに下記の量を飲ませる。 ・10kg以下の子なら60~120mL ・10kg以上の子なら120~240mL
二次性乳糖不耐症 • 便の臭いがすっぱい時は二次性の乳糖不耐症が疑われる。 • ミルラクト(乳糖分解酵素)を哺乳前に飲ませたり、乳糖除去ミルクに変えてもらったりする。 飲ませ方のこつ • 少量を回数多く飲ませる。 • 最初はティースプーン1杯(5cc)から始めて、これを1~5分おきに飲ませる。 • 母乳orミルク栄養児の場合は母乳orミルクを少量ずつあたえるでも可。 • 多くの場合無理に乳糖除去ミルクに変える必要はない。
制吐剤 • 嘔吐の症状が強い時は制吐剤を使用してあげる。 • ナウゼリン坐剤もしくはプリンペランシロップ。 • ただし、実際はあまり効かない? • 小児は錐体外路症状(フラフラ・震え・筋肉が硬くなる)が出やすいので、使用は最小限にとどめる。 (海外の教科書やガイドラインでは不必要とされていることが多いよう。)
救急外来での点滴 • とは言っても、嘔吐でうまく飲めない子には軽度の脱水であっても点滴を考慮。 • その場合はソリタT1を点滴して様子を見てみる。200mLを1本。大きい子(20~25kg以上)では500mLを1本。
胃腸炎の時の飲み物食べ物① ~飲み物~ 電解質と浸透圧を考慮 ○ 経口補水液、イオン飲料 △ スポーツドリンク × 炭酸飲料、清涼飲料、フルーツジュース、お茶 栄養として 母乳、ミルクはOK 電解質とグルコースの割合が不適切 浸透圧高すぎ 電解質も グルコースも含まれない
胃腸炎の時の飲み物食べ物② ~食べ物~ • 乳児への母乳やミルクを止める必要はない。 • 年長児では可能であればできるだけ早期に食事再開を。炭水化物(米、小麦、ジャガイモなど)、赤身の肉、ヨーグルト、フルーツ、野菜などがよい。脂肪性食品や単糖の多い食品は避ける。
御清聴ありがとうございました。 もう起きてもいいよ。