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1 薬物 動態 _2010. 以下の文章は薬物代謝について書かれている。誤っているものはどれか。 1. 胆汁中に排泄された薬物は腸で再吸収される。 2. 薬物が消化管で吸収されると初回通過効果が見られる。 3. 副腎皮質ステロイドはグルクロン酸抱合を受ける。 4. 代謝により毒性が生じる薬物が存在する。 5.CYP ( Cytochrome P450 )はエタノールの代謝に大きく影響する。. 1 薬物 動態 _2010. (解答) 5. 1. 腸肝循環のことである。 2. 消化管で吸収された薬物は門脈を通って肝臓に入り、一部は代謝される。
E N D
1薬物動態_2010 以下の文章は薬物代謝について書かれている。誤っているものはどれか。 1.胆汁中に排泄された薬物は腸で再吸収される。 2.薬物が消化管で吸収されると初回通過効果が見られる。 3.副腎皮質ステロイドはグルクロン酸抱合を受ける。 4.代謝により毒性が生じる薬物が存在する。 5.CYP(Cytochrome P450)はエタノールの代謝に大きく影響する。
1薬物動態_2010 (解答) 5 1.腸肝循環のことである。 2.消化管で吸収された薬物は門脈を通って肝臓に入り、一部は代謝される。 3.薬物によって異なる。例えば、サリチル酸はグリシン抱合を受ける。 4.例えば、ベンゾピレン(benzopyrene)はCYPにより代謝され、発癌性を持つ。 5.ADH(アルコール脱水素酵素)とALDH(アセトアルデヒド脱水素酵素)の影響が大きい(特にALDH2)。
1薬物動態_2010 薬物代謝に関して書かれている以下の文について誤っているものを1つ選べ。 1.脂溶性の薬の代謝に関して特に重要な役割を演じているものは、チトクロムP450である。 2.すべてのCYPが肝での活性が強い。 3.P450は多種・多其質多酵素系である。 4.其質特異性が低いことが、1種類のCYPが誘導され多くの薬の代謝が亢進したり、また2つ以上の薬が共存するとお互いに相手の薬の代謝を阻害し、薬物相互作用の原因となる。 5.多種・多其質多酵素系であるというとことと薬物代謝酵素活性の二相性変動との間には関連性がある。
1薬物動態_2010 (解答)2 (解説) 1.肝ミクロソームに局在する。ほとんどの薬について主要な代謝部位は、その活性の強さとその重量から肝臓である。 2.肝での活性が特に強く、他の臓器の活性は1/5~1/30ぐらいであるが、CYP3A4の活性は小腸では強い。 3.CYPの特徴は多数の分子種の異なる酵素があり、かつ其質特異性が低い。 4.多くの其質(薬)が同じCYPにより代謝される。 5.其質特異性が低いゆえに、初めは其質特異性の強い薬が弱い方の薬の代謝を阻害するが、種々の脂溶性の化合物により酵素誘導を受け、自己の代謝ばかりでなく他の数多くの薬の代謝をも促進する。
1薬物動態_2010 次の項目のうち正しいのはどれか。 1.投与量が一定ならば、薬物の最高血中濃度は剤型、投与法によって変わらない 2.経口投与は吸収面積が大きく、薬物投与法のなかでも最も吸収が安定している 3.薬物の吸収は、薬の溶解性、濃度、吸収部位の血液循環、吸収面積等が関与する 4.薬の結合の場を同じくする2つの薬物を投与すると、一方が他方の薬を追い出すので遊離型が多くなり、中毒の危険性がある 5.循環系に入った薬物は、血中蛋白と結合した結合型と遊離型が動的平衡を保つ 6.クマリン、フェニルブタゾン、ジアゼパム、トルブタミドは血中で遊離型が多い
1薬物動態_2010 (解答) 3,4,5 (解説) 1.同一用量の薬剤を服用しても、吸収,組織分布,肝代謝,腎排泄など薬物体内動態の個人差により、血中薬物濃度は等しくならないことがある。よって不正解。 2.経口投与では、薬剤が肝臓に送られるため代謝による影響を受けることになる。肝臓の代謝能力は高く、薬理物質が患部に届くまでに肝臓で代謝されるので投与された薬理物質が体内循環血液中に取り込まれる量の割合は低い。よって不正解。 3.上記通り、薬物の吸収には上記の条件が関与する。正解。 4.上記通り正解。 5.上記通り正解。 6.クマリンは、抗菌作用、エストロゲン様ホルモン作用、光感作促進、抗血液凝固を持ち、グレープフルーツ(ジュース)の摂取により薬物の血中濃度が急速に高まって害を及ぼす。フェニルブタゾンは、血漿タンパクと強い結合力を有するため、併用した他のタンパク遊離が起こり、遊離薬物の作用が増強する。ジアゼパムは経口投与されると速やかに吸収されて作用を発現する。筋注での作用の発現は、はるかに遅く不安定である。ジアゼパムは脂溶性に富み、そのため血液脳関門 (BBB) を容易に通過する。トルブタミドとは、インスリンを注射するほど重度ではない糖尿病の方に使われる薬剤である。よって不正解。
1薬物動態_2010 Q.以下のBBB(Blood Brain Barrier)に関する記述のうち、正しいものを1つ選べ。 1. ドパミンやレボドパはBBBを通過しやすい。 2.イオン化している水溶性物質ほど通過しやすい。 3.分子量が大きい物質ほど通過しやすい。 4.BBBを通過しやすい薬物のほうが眠気やふらつきなど中枢神経系への影響があらわれやすい。
1薬物動態_2010 (解答) 4 (解説) 1.ドパミンは通過できない。レボドパはわずかに通過してドパミンに変換される。 2.非イオン化物質・脂溶性物質が通過しやすい。 3.分子量が大きいと通過できない。
※問題5はたぶん出ないので省略 1薬物動態_2010 Ccr50ml/minの患者に、レボフロキサシン(クラビット錠100mg)を投与する。 この患者に対するレボフロキサシンの投与で、最も適切なものを選択せよ。 なお、腎機能正常の患者の場合、100mg/12h(1日2回、1錠ずつ)とする。 また、尿中未変化体排泄率は80%とする。 1.100mg/1day 2.60mg/12h 3.100mg/12h 4.10mg/12h 5.40mg/12h
1薬物動態_2010 (解答) 1 (解説) G=1-0.8*(1-50/100)=0.6 投与量=100*0.6=60 投与間隔=12/0.6=20h=1day 投与量:60mg/12h, 100mg/1day ただし、錠剤のため、60%というのは難しい。よって、正解は1。
2その他 臨床薬理学_2010 (薬を投与するときに血漿濃度を測定し、これに基づいてここの患者に最も適したと用法を決めることを何というか。ひとつ選べ) 1.TDM 2.MAC 3.PAM 4.BBB
2その他 臨床薬理学_2010 正解:1 解説:TDM(therapeutic drug monitoring)は抗てんかん薬のphenytoinのような 投与量によっては毒性が出現する薬物などで使用されている。 MAC(minimum alveolar concentration)は全身麻酔薬に使われる指標で、 50%のヒトが侵害刺激に反応しなくなる麻酔薬の濃度であり、MACが小さいほど作用は強い。 PAMはプラリドキシム(pralidoxime)で、有機リン化合物(農薬)中毒と診断されたときに 投与され、有機リン化合物と強く結合し、コリンエステラーゼの活性を取り戻し、呼吸筋の麻痺を回復させる。 BBBは血液脳関門(blood-brain barrier)の略で、血液と脳の間の物質交換を制限する機構である。 パーキンソン病の治療においてDopamineは血液脳関門を通過しないため、 その前駆体であるL-Dopaの投与が必要となる。
3-1自律神経作用薬_2010 問題 以下の副交感神経に作用する薬物のうち、脳血液関門を容易に通過し中枢作用を現すものとして誤っている薬物を1つ選べ。 a. アトロピン b. ドネペジル c. ネオスチグミン d. トリヘキシフェニジル e. フィゾスチグミン
3-1自律神経作用薬_2010 解答 c. ネオスチグミン <解説> a. atropine(抗ムスカリン性作用薬):血液脳関門を通過するため中枢における抗ムスカリン性作用も現れ、Pakinson症状の一部を消失させる。 b. donepezil(コリンエステラーゼ阻害薬):血液脳関門をつうかするため、アルツハイマー型認知症の認知症症状の進行抑制に用いられる。現在、一番使用されているコリンエステラーゼ阻害薬である。 c. neostigmine(コリンエステラーゼ阻害薬):正電荷をもっているので生体膜の透過性が低く、血液脳関門を通過しにくいので中枢作用を現さない。 d. trihexyphenidyl(抗ムスカリン性作用薬):血液脳関門を通過するため、ベラドンナアルカロイドとしてかつてPakinson病治療薬の主流であった。しかし抗コリン作用が時として強いため、特に高齢者には用いられない。 e. physostigmine(コリンエステラーゼ阻害薬):血液脳関門を通過するため、中毒量を投与すると、中枢神経系のムスカリン性受容体を刺激して興奮作用を現し、不安、不眠、振戦、けいれん、後に呼吸・循環の抑制が現れる。いずれの作用もatropineで拮抗される。この中枢作用が副作用となるので全身投与されることはなく、点眼のみである。
3-1自律神経作用薬_2010 交感神経作用薬に関する以下の文章について、間違っているものはどれか? ただし答えは1つとは限らない。a. カルベジロールは全ての心不全患者に対して使用可能である。b. ドパミンは、心原性ショックの治療に有用である。c. フェノキシベンザミンは、心拍出量増大と頻脈をもたらす。d. フェントラミンは、本態性高血圧の治療に用いられる。e. 交感神経終末抑制薬であるレセルピンは、パーキンソン病を起こしうる。
3-1自律神経作用薬_2010 解答: a,d (解説)a:誤りである。カルベジロールはα1遮断作用とβ遮断作用を持ち、血管を弛緩させ血圧を下げることで心臓の負担を減らすため、慢性心不全の治療に用いられる。しかし非選択性のβ遮断薬であるため、喘息をもつ患者には禁忌である。 b:正しい。ドパミンはα1受容体を刺激して腎・腸間膜・脳などの血管を拡張し、各臓器への血流を増す。ショック時には腎循環が障害されるため、腎血管を拡張して腎血流を増すドパミンの作用は、ショック改善に有効である。 c:正しい。フェノキシベンザミンはα遮断薬であり、血管平滑筋のα1遮断作用で血圧を低下させる。また、α2受容体にも親和性があり、神経終末のα2受容体を遮断して交感神経のノルアドレナリン放出を促進するため、心臓に対するβ受容体刺激により心拍出量増大と頻脈が起こる。そのため、結果として血圧はあまり下がらない。 d:誤りである。フェントラミンは褐色細胞腫による高血圧をよく低下させる。この降圧作用を利用して褐色細胞腫を診断するのが、レギチンテストである。 e:正しい。レセルピンは代表的なノルアドレナリンデプリーター(枯渇薬)であり、中枢神経系のノルアドレナリン・セロトニン・ドーパミンを枯渇させる。そのため、パーキンソン病の他にも、消化性潰瘍や鬱を起こしうる。
3-1自律神経作用薬_2010 以下のうち、不適切な組み合わせはどれか? ただし答えは1つとは限らない。 a. アテノロール ― インスリン使用中の患者 b. ネオスチグミン ― 喘息 c. プロプラノロール ― 喘息 d. MAO阻害薬 ― チョコレート e. アドレナリン ― 局所麻酔薬
3-1自律神経作用薬_2010 解答: b,c,d (解説) a:適切である。アテノロールはβ1選択性β遮断薬なので、インスリン使用患者にも用いることができる。不適切なのは、肝臓でのβ2受容体を介したグリコーゲン分解による血糖上昇作用を抑制する 非選択性β遮断薬である。ただし、アテノロールでも 低血糖症状の1つである頻脈の発現をβ1遮断でマスクしてしまうため、注意が必要である。 b:不適切である。ネオスチグミンはコリンエステラーゼ阻害薬であり、気管支収縮などのムスカリン性作用が現れるため気管支喘息を増悪させる。ちなみに、このようなムスカリン性作用は、副交感神経遮断薬であるアトロピンで拮抗される。 c:不適切である。プロプラノロールは非選択性β遮断薬なので、β2受容体を遮断して喘息患者では発作が増悪し生命の危険を伴う。 d:不適切である。MAO阻害薬使用中に チラミンを多く含む食物をとると高血圧発作を起こす。これは、MAO阻害薬が神経終末中のノルアドレナリンの分解を抑えてシナプス顆粒中の貯蔵量を増やし、チラミンにより大量のノルアドレナリンが放出されるためである。 チョコレートの他にも、チーズ・赤ワイン・ビールなどにチラミンが多く含まれている。 e:適切である。アドレナリンはキシロカインなどの局所麻酔薬と併用すると、血管収縮作用により局所麻酔薬の血管への吸収を遅らせて持続時間を延長し、その効果を増大させる。
3-1自律神経作用薬_2010 以下の選択肢から正しいものを選びなさい。ただし1つとは限らない。 (1)重症筋無力症の治療中、患者が腹痛と呼吸困難を示した。身体症状として、(2)唾液の過剰分泌、縮瞳、(3)血圧の低下も見られた。(4)薬剤の過剰投与によるものであるかどうか確認のテストを行ったところ、筋力が低下したため、(5)解毒剤を投与した。 1. 下線部(1)に関して、ネオスチグミンは、経口投与され、コリンエステラーゼを可逆的に阻害することにより、アセチルコリンが酢酸とコリンに分解されるのを防ぐ。 2. 下線部(2)に関して、ムスカリン受容体はGタンパク共役型受容体であり、唾液腺組織では、 cAMPが増加している。 3. 下線部(3)に関して、血圧が低下したのは、アセチルコリンがM3受容体を活性化することにより、NOが産生され、NOがアデニル酸シクラーゼを活性化し、cAMPの産生を増加することで、血管が拡張されたためである。 4. 下線部(4)に関して、エドロホニウムを用いて行われ、テンシロンテストとも呼ばれ、筋力が低下すればコリン作動性クリーゼの状態を示す。 5. 下線部(5)に関して、使用した解毒剤はアトロピンであり、アトロピンは、緑内障患者において眼内圧を上昇させ、前立腺肥大の患者において排尿困難を助長するため、投与してはならない。
3-1自律神経作用薬_2010 解答4、5 1. 誤 作用は正しいですが、ネオスチグミンは消化管からの吸収が悪いため、経口投与でなく注射によって投与します。これに対してピリドスチグミンは経口投与可能です。(標準薬理学第6版p.178) 2. 誤 M3受容体刺激により、PLC(ホスホリパーゼC)活性化が活性化され、PIP2を加水分解し、DGとIP3(セカンドメッセンジャー)産生となるため、「cAMPが増加」は不正解です。(標準薬理学第6版p.55、82) 3. 誤 正しくは、NOが「グアニル酸シクラーゼ」を活性化し、「cGMP」の産生を増加する、です。NOは以前、内皮細胞由来血管弛緩因子(EDRF)と呼ばれていたものです。アセチルコリン、ブラジキニン、ヒスタミン、サブスタンスPがこの作用により、平滑筋弛緩作用を示します。なお、血管に対しては交感神経による支配が副交感神経による支配よりも優位です。(標準薬理学第6版p.58) 4. 正 エドロホニウムは作用の発現が速く持続時間の短い性質から、重症筋無力症の診断や、重症筋無力症を抗コリンエステラーゼ薬で治療中、その投与量が適切かどうかの検査に用います。テンシロンテストで症状が良くなれば、無力症性クリーゼ(myasthenic crisis)、悪くなれば、コリン作動性クリーゼです。(標準薬理学第6版p.179、コリン作動性クリーゼの仕組み:標準薬理学第6版p.187~188) 5. 正 2点重要です。1点目として、ネオスチグミンとアトロピンは反対の作用を示し、コリン作動薬によるアセチルコリンの過剰効果は、アトロピンにより遮断されます。2点目として、アトロピンは、緑内障と前立腺肥大による排尿困難に対しては禁忌です。(標準薬理学第6版p.177~178、183)
3-1自律神経作用薬_2010 問題 以下の文章のうち、正しいものを選べ。ただし1つとは限らない。 a.エフェドリンは高血圧の患者に処方される。 b.ドパミンはパーキンソン病患者に処方される。 c.ピンドロールは喘息の患者に処方される。 d.アトロピンは緑内障の患者に処方される。 e.プロプラノロールは労作性狭心症の患者に処方される。
3-1自律神経作用薬_2010 (解答)e.プロプラノロールは労作性狭心症の患者に処方される (解説) × a.エフェドリンはβ1受容体を刺激して心拍出量が増すので、血圧が上昇する。したがって低血圧に処方される。 × b.ドパミンは血液脳関門を通過することができないので、パーキンソン病には作用しない。その代わりにドパミンの前駆体であるL−dopaが用いられる。 × c.ピンドロールはβ1非選択性のβ遮断薬なので、β2遮断作用によってむしろ気管を収縮させるので喘息患者への使用は禁忌である。 × d.アトロピンは抗コリン作用を有するので、瞳孔括約筋の緊張がとれて散瞳が生じる。その結果、シュレム管が圧迫されて眼内圧が上昇する。このためアトロピンは緑内障には禁忌である。 ○ e.プロプラノロールはβ2遮断薬であり、心収縮量が減る。このため心筋の酸素消費量が減り、労作性狭心症の患者に用いると有効である。
3-1自律神経作用薬_2010 以下のアトロピンについての文章の中で、正しいものはどれか。2つ選べ。 a. アトロピンは麻酔前投薬として用いられる。 b. アトロピンは前立腺肥大の患者に処方される。 c. ニコチン性受容体でのアセチルコリンの作用を阻害するので、アトロピンは有機リン化合物の中毒の治療に有用である。 d. アトロピンは縮瞳薬として使われる。 e. アトロピンは洞性除脈の治療に用いられる。
3-1自律神経作用薬_2010 (解答) a,e 解説 アトロピンの臨床応用についての問題である。(参考 標準薬理学第6版p.182~p.183) ○a. 唾液や気道分泌を抑制して麻酔薬の導入を容易にするためと、術中に発生する迷走神経反射による除脈と血圧低下を予防するため、アトロピンが麻酔前投薬として使われる。 ×b. アトロピンは前立腺肥大による排尿困難をさらに強めてしまうので禁忌である。 ×c. アトロピンは有機リン化合物のムスカリン性作用には拮抗するが、ニコチン性作用には拮抗しない。それ以外は文章の通り。 ×d. アトロピンは眼を散瞳させるので散瞳薬として用いられる。 ○e. アトロピンは低用量投与した場合以外は頻脈を引き起こすので除脈の治療に用いられる。
3-2筋弛緩薬 局所麻酔薬_2010 25歳女性が手術中に吸入麻酔を受けた。彼女にはサクシニルコリンも投与されていた。数分後、彼女の心拍数は毎分120回まで上昇し、中核体温も40.5℃まで上昇した。 この状態の患者に投与されるべき薬剤の作用機序を以下から選べ。 (A) 筋小胞体からのカルシウムイオン放出を抑制する (B) 運動終板におけるアセチルコリンの競合的拮抗薬である (C)GABA受容体アゴニストであり、神経興奮の抑制を促進する (D) プロスタグランディンの生合成を抑制する (E) 神経線維の膜電位依存性ナトリウムイオンチャネルを抑制する
3-2筋弛緩薬 局所麻酔薬_2010 (A) 本問は3段階から成り立っている。①患者がどのような状態に陥ったか診断する。②その症状に対して、どの薬剤を投与すべきか考える。③その選択した薬剤の作用機序を解答する。以上をふまえ、考えていくと、①全身麻酔、サクシニルコリン、中核体温の上昇といったキーワードから、患者は「悪性高熱症 malignant hyperthermia」を発症したと考えられる。②悪性高熱症に対する唯一の特効薬である「ダントロレン」が選択として妥当である。③ダントロレンの作用機序は選択肢(A)にある通り、筋小胞体からのカルシウムイオン放出を抑制することであり、それにより骨格筋を弛緩させる。副作用として筋力低下と慢性投与による肝毒性が挙げられる。 他の選択肢はそれぞれ(B)非脱分極性遮断薬(クラーレ curare、パンクロニウム pancuronium、ベクロニウム vecuroniumなど)、(C)バクロフェン baclofen、(D)アスピリン aspirin、(E)リドカイン lidocaineの説明である。悪性高熱症には解熱鎮痛剤であるアスピリンが効かない。
3-2筋弛緩薬 局所麻酔薬_2010 筋弛緩薬に関する次の文章のうち、正しいのはどれか。ただし、答えは一つとは限らない。 a)サクシニルコリンが気管内挿管に用いられるとき、筋弛緩が起こるのは脱分極性遮断という現象が起こることによる。 b)クラーレに比べて、サクシニルコリンは作用の持続時間が長い。 c)クラーレは副交感神経と平滑筋の間のシナプス伝達を特異的にブロックする。 d)ツボクラリンの効力は、d体でもl体でも同等である。 e)喘息患者にクラーレを投与してはならない。
3-2筋弛緩薬 局所麻酔薬_2010 〈解答〉a,e 〈解説〉 a)サクシニルコリン(succinylcholine,SCC)はNmニコチン性受容体と結合してレセプターチャネルを開き、終板電位を発生させる。サクシニルコリンはコリンエステラーゼで分解されにくいので、持続性の終板電位となり、そのため最初に1回活動電位が発生するが、電位依存性Naチャネルはその後不活性化状態から戻ることができず、再び活動電位を発生させることができない。このような現象を「脱分極性遮断」という。よって正解。 b)サクシニルコリンは投与後まもなく線維束性収縮を起こすため、1分以内で筋弛緩を発現するが、血中の偽コリンエステラーゼによって分解されるので、数分で効果は消失する。一方、クラーレは注射後3~4分で作用が発現し、持続時間は30分程度である。 c)クラーレは骨格筋のNmニコチン性受容体と結合し、アセチルコリンと受容体の結合を競合的に阻害する。なお、平滑筋のシナプス伝達はムスカリン受容体を介して行われる。 d)ツボクラリンはd体が活性を有する(_d-_tubocurarine)。 e)クラーレには副作用としてヒスタミン遊離作用と血圧低下があるため、喘息の発作・気管支の痙攣を起こすことがある。したがって、クラーレを喘息患者に投与することは禁忌である。よって正解。 ちなみに、クラーレのヒスタミン遊離効果を克服したのが、パンクロニウム(pancuronium)やベクロニウム(vecuronium)であり、特にベクロニウムは作用発現が速いので、現在最もよく使用される。
3-2筋弛緩薬 局所麻酔薬_2010 リドカインについて正しくないのはどれか。 A)リドカインは電位依存性Na^+^チャネルを阻害し、心室細動の発生を抑制する。 B)リドカインはよくアドレナリンと併用される。 C)リドカインは抗不整脈薬でもある。 D)リドカインはコリンエステラーゼにより分解されるので、主に肝臓で代謝される。 E)リドカインの効果は酸性部位では弱まる。
3-2筋弛緩薬 局所麻酔薬_2010 <解答>D <解説> A)リドカインは電位依存性Na^+^チャネルを阻害することで、活動電位の伝導を可逆的に抑制することにより神経インパルス伝導を抑制する。 B)リドカインの作用を持続させる目的でアドレナリンのような血管収縮薬が併用される。 C)リドカインは重要なⅠb型の抗不整脈薬である。 D)リドカインは主に肝臓で分解されるが、これは、コリンエステラーゼによって分解されないアミド型の薬剤だからである。 E)リドカインなどの局所麻酔薬の多くは塩基性薬物であり、酸性部位では細胞膜を通過しにくくなり効力が減弱する。 よって、Dが誤り。
3-2筋弛緩薬 局所麻酔薬_2010 神経筋接合部遮断薬について述べた以下の文のうち、間違っているものをひとつ選べ。 (A)ツボクリンクラーレを投与した後コリンエステラーゼ阻害薬を用いれば、筋弛緩は回復する。 (B)パンクロニウムは血液脳関門を通過する。 (C)ダントロレンは骨格筋小胞体からの異常なカルシウムイオン放出を抑制する。 (D)サクシニルコリンは高カリウム血症には禁忌である。 (E)神経筋接合部遮断薬が遮断する受容体はNm型である。
3-2筋弛緩薬 局所麻酔薬_2010 <答え>(B) <解説> (A)正しい。d-tubocurarineはアセチルコリンと競合的に拮抗するので、アセチルコリン濃度を上げれば筋弛緩が回復する。 (B)間違い。ツボクリンクラーレのヒスタミン遊離作用を弱くしたのがパンクロニウム、ベクロニウムであるがこれらはBBBを通過しない。 (C)正しい。ダントロレンは生理的な脱分極によるCa2+放出には強い作用がないがCa2+によるCa2+放出を抑制する。 (D)正しい。サクシニルコリンによる脱分極で筋細胞からK+が流出するが、高カリウム血症になりやすい状況では心停止を起こすこともあり危険。 (E)正しい。これらの薬はシナプス後膜に存在するNmニコチン性アセチルコリン受容体に対する作用薬及び競合拮抗薬である。
3-2筋弛緩薬 局所麻酔薬_2010 以下の文章のうち、正しいものはどれか?ただし1つとは限らない。 a)低カリウム血症はサクシニルコリン投与の副作用である。 b)ネオスチグミンはサクシニルコリンによる筋弛緩に拮抗する。 c)クラーレは全身麻酔薬の効果を補助する。 d)ダントロレンは悪性高熱症の治療に使われる。 e)低血圧はベクロニウム投与の副作用である。
3-2筋弛緩薬 局所麻酔薬_2010 <解答> c,d <解説> a)誤り。SCCによる脱分極により、筋細胞からのカリウムイオンの流出が起こるため、低カリウム血症ではなく、高カリウム血症になる。 b)誤り。ネオスチグミンはコリンエステラーゼ阻害薬である。サクシニルコリンの筋弛緩は終板部位での持続性脱分極によるものであるため、コリンエステラーゼ阻害薬で拮抗されない。 c)正しい。クラーレは全身麻酔薬の補助薬である。全身麻酔薬のみで骨格筋の弛緩を得るためには麻酔の深度をかなり深めなければならない。筋弛緩薬を用いることにより浅い麻酔で手術可能にすることができる。 d)正しい。悪性高熱症は、全身麻酔薬による筋小胞体のリアノジン受容体からの異常なカルシウムイオン放出により筋収縮が起こり発熱する病気である。ダントロレンはこのカルシウムイオン放出を抑制する作用を持っている。 e)誤り。低血圧はクラーレのヒスタミン放出による副作用である。ベクロニウムはこの作用を克服したものである。
4-1向精神薬_2010 イミプラミンは、 1.アドレナリンの血圧上昇作用を減弱させる。 2.ピロカルピンの眼圧降下作用を増強する。 3.トリへキシフェニジルの副作用に効果的である。 4.てんかん治療に用いられる。 5.心筋梗塞の回復初期の患者に投与するのは禁忌である。
(解答) 5 4-1向精神薬_2010 (解説) イミプラミンなどの三環系抗うつ薬は、ノルアドレナリンとセロトニンの再取り込みを阻害することによりうつ症状を改善する。 副作用は、抗コリン作用による口渇・尿閉・便秘・排尿障害・視調節障害や、α1受容体ブロックによる起立性低血圧など多岐にわたり、注意を要する。 緑内障・心筋梗塞の回復初期・前立腺肥大症の患者への投与は禁忌である。 1.交感神経末梢へのノルアドレナリン再取り込みを抑制し,受容体部位へのアドレナリン作動性を上昇させ,アドレナリン投与による昇圧作用を増強させる。 2.抗コリン作用により、ピロカルピン(コリン作用薬)の眼圧降下作用は減弱する。 3.トリへキシフェニジルの副作用は、抗コリン作用による尿閉・視力障害・口渇・便秘などが主であるが、イミプラミンの抗コリン作用との相加作用により、症状が悪化する危険がある。また、精神錯乱、興奮、幻覚等が増強されることがある。 4.むしろ痙攣閾値を下げ、てんかん発作を誘発する危険性がある。 5.α1受容体ブロックと交感神経末梢へのノルアドレナリン再取り込み抑制によるノルアドレナリン濃度上昇や、抗コリン作用により、心拍出量の増大・頻脈・不整脈などが現れる。特に心筋梗塞の回復初期の患者に投与するのは禁忌である。うつ病は急性心筋梗塞患者によく認められる病態である。
4-1向精神薬_2010 どれが抗精神病薬の副作用として正しくないか? 1.パーキンソン症候群 2.血圧上昇 3.眠気 4.高プロラクチン血症 5.尿閉
(解答)2 4-1向精神薬_2010 (解説) 1.黒質・線条体のD2受容体遮断による 2.α1受容体遮断作用により、血圧は低下するはずである 3.H1受容体遮断による 4.PRL-RIHがdopamineそのもので、弓状核のD2受容体を遮断するのでプロラクチン遊離が促進される 5.抗コリン作用による
4-1向精神薬_2010 癲癇の欠神発作の第一選択薬と第二選択薬はどれか? 1.フェノバルビタール 2.バルプロ酸 3.カルバマゼピン 4.フェニトイン 5.エトサクシミド
4-1向精神薬_2010 (解答)第一選択薬→2.バルプロ酸第二選択薬→5.エトサクシミド (解説) phenobarbital,phenytoin,carbamazepineは欠神発作以外に有効。 valproic acidは欠神発作以外にも部分発作や強直間発作にも有効であるが、ethosuximideは欠神発作にのみ有効である。
4-1向精神薬_2010 Q. この中でどの抗精神病薬が、高プロラクチン血症という副作用をもつでしょう? 1. イミプラミン 2.マプロチリン 3.クロルプロマジン 4.フルオキセチン 5.クロザピン
(解答)3 4-1向精神薬_2010 (解説) クロルプロマジンは、ドーパミン神経系のA8,10(辺縁系)のD2受容体をブロックするが、同様にA12(弓状核)の受容体もブロックするので内分泌系の副作用が起こる。 ドーパミンはプロラクチン抑制ホルモンで、弓状核を起始核とするドーパミンニューロンから分泌されるので、そこをブロックすることでプロラクチンの遊離を促進してしまい、高プロラクチン血症となる。
4-2全身麻酔薬_2010 次の全身麻酔薬に関する文章の中から正しいものを選べ。 a. 吸入麻酔薬は、より血中への溶解度が高ければより導入が早い。 b. 吸入麻酔薬は、MACが小さいものほど作用が強い。 c. イソフルレンは、呼吸抑制や血圧低下を起こす。 d. チオペンタールは、呼吸疾患の患者に使われる。 e. 笑気は巨赤芽球性貧血を引き起こすことがある。
4-2全身麻酔薬_2010 (解答)b.c.e (解説) a. 吸入麻酔薬の溶解度が高いものほど、肺胞内での分圧を高めるために多量のガスが血中に溶け込む必要があるので、分圧の上昇速度が遅く、導入までには時間がかかる。 b.MAC(minimum alveolar concentration)とは、50%のヒトが侵害刺激に反応しなくなる麻酔薬の濃度のことで、MACが小さいものほど作用は強い。 c. イソフルランは、呼吸抑制作用があり、血圧を低下させる吸入麻酔薬である。 d. チオペンタールは、呼吸抑制作用があり、呼吸疾患の患者には使われない。 e. 笑気は、 ビタミンB12を酸化することによって、巨赤芽球性貧血や白血球減少症などを引き起こすことがある。
4-2全身麻酔薬_2010 正しい文を選べ a. ニューロレプト麻酔は意識を保ったまま痛みを無くす b. 脂肪に溶けやすいほど麻酔作用は弱い c. 静脈麻酔薬は再投与すると効果が長くなる d. ケタミンはemergencyphenomenaを引き起こす
4-2全身麻酔薬_2010 正解 a、d 解説 a 正しい。強力な神経遮断薬と鎮痛薬を併用することにより、意識を保ったまま痛みを無くす。 b 誤り。 脂肪に溶けやすいほど中枢抑制作用は強い(リポイド説)。 c 誤り。 静注麻酔薬は再投与しても、再分布により蓄積が多くなるだけで効果は長くならない。 d 正しい。 ケタミンの副作用に幻覚・悪夢などがある。
4-2全身麻酔薬_2010 全身麻酔に関する正しい文章を選べ。ただし、答えはひとつとは限らない。 a.静脈麻酔薬は麻酔の維持に使用される。 b.笑気は呼吸抑制を起こすことがある。 c.悪性高熱症はハロタンによって引き起こされることがある。 d.イソフルレンはカテコラミンと併用することができる。 e.ケタミンは幻覚を引き起こすことがある。
4-2全身麻酔薬_2010 (解答)c,d,e (解説) a.静脈麻酔薬は導入・覚醒は早いが、代謝・排泄が遅いため調節が困難なため麻酔の導入に使用される。 b,笑気は無痛作用は強いが、筋弛緩作用や呼吸抑制はない。 c,悪性高熱症はハロタンなどの吸入麻酔薬やサクシニルコリンなどの神経筋接合部遮断薬を用いた際に、ごくまれに引き起こされる遺伝性疾患である。そのため使用には家族暦を聞いておく必要がある。 d,イソフルレンはカテコラミン感作しないため併用することができる。逆にハロタンはカテコラミン感作し、不整脈を引き起こす恐れがあるので併用できない。 e,ケタミンの心刺激作用により幻覚、悪夢が引き起こされることがある。この治療にはジアゼパムやハロペリドールを用いる。
4-2全身麻酔薬_2010 全身麻酔について誤った文章を選べ。(答えが一つとは限らない。) 1. ケタミンは緑内障手術には禁忌である。 2. ハロタンによって全身麻酔をした数日後に、重篤な肝障害を起こすことがある。 3. イソフルレンはカテコラミンにより感作され不整脈が起こる。 4. ミダゾラムを使用すると、順行性健忘症が起こることがある。 5. チオペンタールには即効性があり、鎮痛作用と筋弛緩作用に富む。
4-2全身麻酔薬_2010 答え 3、5 (解説) 1. ケタミンは眼圧を上げる作用があるので、緑内障手術には禁忌。 2. ハロタンは一般的には安全であるが、ごくまれに肝炎(1/35,000)を起こす。 3. イソフルレンはカテコラミンに対して感作しない。感作されるのはハロタンであるのでこの文章は誤り。 4. ミダゾラムにはこの作用があり抗不安効果も優れているので、小児や神経質で不安の強い成人の前投薬としては適切である。 5. チオペンタールは即座に麻酔導入できるが、鎮痛作用や筋弛緩作用には乏しい。よって誤り。