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図形の知覚と視覚誘発電位の関係 ー図形の形の効果(30)ー. 伊藤元雄(愛知学院大学心身科学部) . 目 的. 正三角形,円形のような基本的な幾何学的図形の視覚誘発電位( VEP )を 下方提示 で比較したこれまでの実験では, 三角形の初期の N1 波(平均頂点潜時約1 40 ms )の振幅は円形よりも有意に大きく , 上方提示 でも N1 波の潜時帯に対応した P 波(約 130ms )に三角形>円形の傾向が認められている (伊藤, 2006 )..
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図形の知覚と視覚誘発電位の関係ー図形の形の効果(30)ー図形の知覚と視覚誘発電位の関係ー図形の形の効果(30)ー 伊藤元雄(愛知学院大学心身科学部)
目 的 • 正三角形,円形のような基本的な幾何学的図形の視覚誘発電位(VEP)を下方提示で比較したこれまでの実験では,三角形の初期のN1波(平均頂点潜時約140ms)の振幅は円形よりも有意に大きく,上方提示でもN1波の潜時帯に対応したP波(約130ms)に三角形>円形の傾向が認められている(伊藤,2006).
この規定要因としての一つとしては図形の形(角度性)の効果が考えられるが(伊藤, 1999a),佐部利・伊藤(2002)では,上方,下方の提示下で縦長から横長へと変化する四角形のN1波,P波の振幅は漸次減少しており,図形の方向(方位)の効果も認められている. • 今回の実験では,N1波,P波の変化に対するこれらの要因の関与の程度等を調べるために,下方,上方提示の両事態で菱形・楕円(2)×垂直・水平(2)という2要因配置の実験を行ってみることにした.
方 法 • 実験参加者心理学専攻者8名(男女各5名,平均35.1歳,範囲22-63歳) • 刺激の提示(Figure1) • 下方,上方(提示視野2) • 菱形,楕円(形2)×垂直,水平(方向2) +対照刺激としてのブランク図形(1) • 改良型4 chs.tachistoscope • 提示時間:100ms,輝度:37cd/m2 • random配列の各1試行(15回提示)を1sessionとし,計2sessions実施
VEPの記録 • EEG電極配置 (Figure 2) • 8 chs.polygraph 360 system (フィルタ-特性0.5-30Hz) • 14 chs.data recorder XR-510 • signal processor 7T17 • 標本化時間:2ms,解析時間:512ms (刺激前:100ms,刺激後:412ms) • 加算回数は1試行につき15回×2施行 • X-Y plotter 7470A
結果と考察 • 刺激前100msの平均電位を基線とし,図形刺激の波形から対照刺激の波形を減算して被験者ごとの差波形(30回加算)を算出. • 総平均差波形(8名)(Figure 3)菱形,楕円ともに,部位I5の下方提示では初期N1波(平均頂点潜時134ms),後期P2波(232ms),それに上方提示でN1波にほぼ潜時帯が対応した初期P波(128ms)が明瞭であるが,P2波に対応した後期N波は認められない.
Figure 3 Grandaverage of subtracted waves in each cndition(8 subjects).
総じて振幅における菱形>楕円という今回の結果は,これまでの実験における正三角形,円形の場合に類似している.総じて振幅における菱形>楕円という今回の結果は,これまでの実験における正三角形,円形の場合に類似している. • 下方提示の初期N1波(平均頂点潜時134ms),上方提示の初期P波(124ms),下方提示の後期P2波(232ms)の平均振幅の変化(Figure4)
Figure 4 Averaged amplitudes of Location I5 in each condition. Vertical lines indicate SDs.
振幅に関する形(菱形・楕円)×方向(垂直・水平)のANOVAの結果,下方提示のN1波の場合,形の主効果,方向の主効果はともに有意(F[1,7]=5.60,p <.0498, 6.27, p <.0408)であり,交互作用は有意差なし. • 初期N1波振幅に関する方向,形の寄与率を算出してみると,方向は約53%,形は約47%であった.
上方提示の初期P波振幅に関するANOVAでは,方向の主効果のみが有意(F[1,7]=6.17,p<.0419)であり,ちなみに寄与率は方向約73%,約形27%であった.上方提示の初期P波振幅に関するANOVAでは,方向の主効果のみが有意(F[1,7]=6.17,p<.0419)であり,ちなみに寄与率は方向約73%,約形27%であった. • さらに,下方提示の後期P2波振幅に関するANOVAでは,形の主効果のみが有意(F[1,7]=8.10,p<.0248)であり,ちなみに寄与率は方向約28%,形約72%であった.
下方提示の初期N1波(平均頂点潜時134ms),上方提示の初期P波(128ms),下方提示の後期P2波(232ms)の平均頂点潜時の変化(Figure5)下方提示の初期N1波(平均頂点潜時134ms),上方提示の初期P波(128ms),下方提示の後期P2波(232ms)の平均頂点潜時の変化(Figure5) • 潜時に関する形(菱形・楕円)×方向(垂直・水平)のANOVAによれば,下方提示のN1波の場合,方向の主効果のみ有意 (F[1,7]=8.54,p <.0223)であった.
Figure 5 Averaged latencies of Location I5 in each condition. Vertical lines indicate SDs.
上方提示の初期P波潜時に関しては, 形,方向,交互作用ともに有意差なし. • 下方提示の後期P2波潜時に関しては, 形の主効果のみが有意(F[1,7]=7.92, p<.0260)であった. • 潜時に関しては,これまでの実験でも一義的な結果は得られておらず,さらに検討が必要である.
結果のまとめ • 下方,上方提示における菱形>楕円の振幅の傾向は正三角形,円形に類似している. • 形,方向とも振幅の変化が統計的に有意な下方提示の初期N1波では形が約47%,方向が約53%の寄与率であった. • 下方提示の後期P2波において,菱形が楕円より有意に振幅が大きいことが特徴的であった.
寄与率の算出の仕方 • 菱形値D1,D2,楕円値O1,02とする. • 垂直値V1,V2,水平値H1,H2とする. • (D1+D2)/2=M1 (O1+O2)/2=M2 (M1-M2)/M1=G1 • (V1+V2)/2=N1 (H1 +H2)/2=N2 (N1-N2)/N1 =G2 • 形の寄与率=G1/(G1+G2)×100 方向の寄与率=G2/(G1+G2)×100
引用文献 • 伊藤元雄 1999 視覚誘発電位による形の知覚に関する心理生理学的研究 あるむ Pp.1-223. • 伊藤元雄 2006 幾何学的形態に対する視覚誘発電位-刺激提示位置の効果- 愛知学院大学論叢心身科学部紀要,2,1-7. • 佐部利真吾・伊藤元雄 2002 図形の知覚と視覚誘発電位の関係ー図形の形の効果(25)ー 日本心理学会第66回大会発表論文集,379.