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内容. 設備投資と拡張に関する意思決定 資本予算の編成 資本予算のモデル DCF法 DCF法と業績評価のコンフリクト 目的整合性のために. はじめに. 設備投資と拡張に関する意思決定 どのような企業においても、時には、次期以降の財務業績に影響する重要なプロジェクトについて、どこに、どれだけの資金を投入するかについて、決定しなければならない 本章では、次年度だけではなく、より長期にわたって財務業績に影響するプログラムやプロジェクトの計画とコントロールについて、考える. プログラムやプロジェクトの資本予算. 資本予算 capital budgeting
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内容 • 設備投資と拡張に関する意思決定 • 資本予算の編成 • 資本予算のモデル • DCF法 • DCF法と業績評価のコンフリクト • 目的整合性のために
はじめに • 設備投資と拡張に関する意思決定 • どのような企業においても、時には、次期以降の財務業績に影響する重要なプロジェクトについて、どこに、どれだけの資金を投入するかについて、決定しなければならない • 本章では、次年度だけではなく、より長期にわたって財務業績に影響するプログラムやプロジェクトの計画とコントロールについて、考える
プログラムやプロジェクトの資本予算 • 資本予算 capital budgeting • 次年度以降、長期に渡って財務業績に影響する投資を実行し、資金調達することに関する長期計画 • 3つのフェーズがある • 投資案の識別 • どの投資をするかの選択(データ収集を含む) • 投資の事後的な監視(=事後監査) *会計担当者は通常、第1のフェーズには関わらないが、第2.3 フェーズでは重要な役割をはたす • 会計情報の利用法の1つは、将来の事象を予測することにあり、資本予算決定の結果もその1つ
DCFモデル • 割引キャッシュフローモデル discounted-cash-flow(DCF)model • 貨幣の時間価値を考慮に入れ、プロジェクトのCIFとCOFに着目した資本予算モデルで、最も広く用いられている • 『手にした鳥1羽は、藪の中の鳥2羽分の価値がある』 =いま手元にある$1は5年後に受け取る(または使う)$1よりも 価値がある • 建物や自動車の利用にはコスト(賃借料)がかかるように、貨幣の利用にもコスト(利息)がかかるからである
DCFモデルの主な側面 • DCFモデルでは2つの主な側面がある • 純利益ではなく、期待されるCIFとCOFに着目する • 今のCOFの価値と将来のCIFの価値とを比較する • DCF法は複利の理論に基づいている • 次項から複利について学ぶ
補論B 複利計算と現価係数表 • 利息の本質 • 定義&“利息”の考え方の適用範囲 • 利息計算の方法 • 単利計算と複利計算 • 複利計算の“効果”を確認 • 現在価値と現価係数表 • 1㌦の現在価値 • 1㌦の普通年金の現在価値 • 特に、利子率と現在価値の関係について
利息の本質 • 利息とは、貨幣の利用にかかるコスト • 自動車やボートを借りると、レンタル料が必要になる • 同様に、利息は貨幣のレンタル料である
利息”の考え方の適用範囲 • 利息には常に支出が伴うとは限らない • 借入資金→いわゆる利息 • 自己資金→“機会費用”の概念に基づく利息 • 資金の調達源泉に関係なく、あらゆる資金について“利息”を考慮しなければならない
単利計算と複利計算 • 単利計算 simple interest • 一定額の元本に利子率をかけて計算する • 複利計算 compound interest • 毎期、増加する元本に利子率をかけて計算する • 元本額は、前期に累積された利息金額の分だけ増加 • 累積利息が元本に加えられ、時期の元本の金額となる
例題 • 年利10%で金融機関に$10,000を預金する。3年後に口座残高の全額を引き出すまで、預金は貯めたままにしておく • 単利計算では・・・・ • 3年後の預金残高は、$13,000
例題 ~続き~ • 複利計算では・・・・ • 複利計算では、利息にも利息がつく • 元本の金額が、毎期ごとに変化 • 3年後の預金残高は、13,310㌦
複利計算の効果 • 単利計算と複利計算の比較 • 複利計算においては利息にも利息がつくため、預入期間が長ければ長いほど、その残高の差は大きくなる • 単利計算の場合(前述の例) • 10年後20,000㌦、20年後30,000㌦、40年後50,000㌦ • 複利計算の場合(前述の例) • 10年後25,937㌦、20年後67,275㌦、40年後452,593㌦
複利計算の効果 • 前述のような複利計算を手作業でやるなら、すぐに膨大な作業となる • そこで、計算を簡単にするために、複利表が考案された • ここでは資本予算に最も有用な2つの計算表について考える • 1㌦の現在価値 • 1㌦の普通年金の現在価値
$1の現在価値 • 将来のCIFやCOFを現在(第0時点)の価値で表すには?? • 今、$1を投資したとする。年利6%とすると • 1年後・・・$1×1.06=$1.06 • 2年後・・・($1×1.06)×1.06=$1.124 • 一般に、$1を利子率ⅰ%で投資した場合、n年後の価値は (1+ⅰ)n
$1の現在価値 • 現在価値 present valueを計算するには前述の計算の逆を行う • 1年後に受け取る$1の現在価値について考える • 利子率を6%とすると • 現在価値‥ $1÷1.06=0.9434㌦ • 今、0.9434㌦を投資したならば、1年後には$1を受け取れる • 2年後に受け取る$1の現在価値 • 複利計算 • 現在価値‥ $1÷(1.06)2 =$0.8900
$1の現在価値 • 一般に、利子率ⅰ%でn期後に受け取ったりする金額Sの現在価値は S PV= (1+ⅰ)n • 現在価値は「割引価値」とも呼ばれる • 現在価値を計算する手続き→割引計算 • なぜ価値を減らすのであろうか? • キャッシュが現在ではなく、将来において受け取られたり、支払われたりするから
例題 • 3年後に$1,000を支払うことを約束した期間3年で利息のつかない地方債に、複利計算で6%の利回りを確保したいと考えている。この地方債にいくらまでなら投資すべきか? 現在価値 将来受け取る金額 0年後 1年後 2年後 3年後 時間の経過に対して、割引計算(評価の引き下げ)を行う ? $1,000
例題 ~続き~ S PV= (1+ⅰ)n だから、PV=$1,000÷(1.06)3 =$1,000÷1.191016=$839.619283 • つまり、$839.62までなら支払ってもよい
$1の現在価値 • 表1を使えば、先の例題はすぐに解ける • 表1の期間3期の行と利子率6%の列の交点の係数を読む • $1,000×0.8396=$839.60 6% 3 0.8396
例題2 • 図表1を参照し、以下の金額の現在価値を求めなさい • 3年後に受け取る2,000㌦、但し利息は3% • 2,000㌦×0.9151=1,830㌦ • 10年後に受け取る2,000㌦、但し利息は3% • 2,000㌦×0.7441=1,488㌦ • 10年後に受け取る2,000㌦、但し利息は8% • 2,000㌦×0.4632=926㌦ • 注意 • 利子率が高くなるほど、現在価値は小さくなっている
$1の普通年金の現在価値 • 普通年金 ordinary annuity • 長さの等しい連続した期間の各期末に、同額づつ発生する一連のキャッシュ・フローのこと • 例えば、3年間に渡り、各期末に$1,000の支払を約束された公債 • 複利計算で毎年6%の利回りを得たい • いくらまでなら購入してもよいだろうか? • 図表1を用いて計算すると‥ • 1年後の$1,000 →$1,000÷1.06=$943.4 • 2年後の$1,000 →$1,000÷(1.06)2=$890.0 • 3年後の$1,000 →$1,000÷(1.06)3 =$839.6 • 943.4+890.0+839.6=$2673.0以下なら購入してよい
$1の普通年金の現在価値 • 前述の問題も表を使えばすぐに解ける • 表2の期間3期、利子率6%の交点の係数を読む • 2.6730×$1,000=$2,637 6% 2.6730 3
公式 • 一般に、利子率 i、長さの等しい連続した期間 nの各期末に、同額づつ発生する一連のキャッシュ・フローの現在価値(PVA) • 1 1 • PVA= 1- • i (1+ i)n • *表2に記載されている係数は、この公式で計算できる
例題 • 図表2を参照し、以下の普通年金の現在価値を求めなさい • 3年間に渡って毎年2,000㌦を受け取る、但し利子率は3% • 2,000㌦×2.8286=5,657㌦ • 10年間に渡って毎年2,000㌦を受け取る、但し利子率は3% • 2,000㌦×8.5302=17,060㌦ • 10年間に渡って毎年2,000㌦を受け取る、但し利子率は8% • 2,000㌦×6.7101=13,420㌦ • 注意 • 利子率が高くなるほど、現在価値は小さくなっている
正味現在価値(NPV) • 正味現在価値 net present value(NPV)method • 資本予算への最も一般的なDCFアプローチ • 最低目標利益率を用いて、将来に予想される全CFの現在価値を計算する • 最低期待利益率はプロジェクトのリスクに依存する • リスクが高いほど期待利益率も高い • 率は、資本コストを基に決められる • 必要利益率 棄却率 割引率 とも呼ばれる • マネージャーは、必要利益率を用いて、プロジェクトから発生する全ての期待CFの現在価値合計額(=正味現在価値:NPV)を計算する • 合計額がプラス →「プロジェクトを採用」 • 合計額がマイナス→「プロジェクトは不採用」
NPVの意味 • NPVがプラスならプロジェクトを採用するべきである • なぜか? • NPVがプラスということは、プロジェクトのCIFの現在価値が、プロジェクトのCOFの現在価値を上回っているということであり、プロジェクトの採用によって、企業価値が増大するということを意味するからである • また、いくつかの投資案からの選択を行う際には、NPVの最も大きい投資案を選択するべきである
事例研究 • University of Arizona の建物・グラウンド担当マネージャーは、芝生メンテナンス設備の購入を検討している • 設備を購入すると能率が高まり、年間$2,000の営業CFを節約できる • 設備の耐用年数は4年 • 正味処分価値はゼロ • 設備の価格は$6,075 • 最低期待利益率は年10%
NPV法の適用 • NPV法を適用するには、図表11-1に示した3ステップを用いる • 1.関連する期待CIFとCOFの図を作成(必ずしも作成しなくても良い) • 図表11-1の右側は、CFをどう表すかを示す • COFにはカッコをつけてある • 0年度(取得時)のCOFを忘れないように • 2.各期待CIFとCOFの現在価値を求める • 補論Bの図表1から、各年度のCFの現価係数を探し、各期待CIFとCOFに掛ける • 例えば、第2年度における2,000㌦のキャッシュの節約額は、今の2,000㌦×0.8264=1,653㌦の価値がある • 3.各年度の現在価値を合計する • この合計額が、プロジェクトのNPVである • プラスならプロジェクトを採用、マイナスなら不採用
分析 • 期待CIFの現在価値は? • 4年間に渡る2,000㌦のCIFの現時点(第0年度)における価値は、6,340㌦ • 期待COFの現在価値は? • マネージャーは、上記のCIFを得るために、現時点(第0年度)での6,075㌦だけを支払えばよい • 正味現在価値はプラスかマイナスか? • 従って、NPVは6,340㌦-6,075㌦=265㌦であり、プラス • 結論 • よって、この投資案は採用すべきである
最低利益率の影響 • 最低期待利益率はNPVに大きく影響する • 最低期待利益率が高いほど、各将来CIFの現在価値は低くなる • なぜか? • 利益率が高いほど、いま投資のために保有するのに比べて、キャッシュを待つことのコストが多くかかってしまうから • 利益率が高いほど、プロジェクトのNPVは低くなる • 例示~図表11-1のNPV • 利益率10%→NPV:265㌦ • 利益率16%→NPV:-479㌦(図表11-1と同様に計算して) • 期待利益率が10%ではなく16%であるならば、6,075㌦という設備価格では、このプロジェクトは採用すべきではない
NPVモデルの仮定 • NPVモデルを用いるには2つの大きな仮定をおかねばならない • 確実な世界を仮定すること • 予測CIFとCOFが特定の期間に確実に発生すると考える • 完全資本市場を仮定する • 追加のキャッシュが必要であれば、いつでも同じ利率で借りられる (この利率は、最低期待利益率である) • これらの仮定が満たされれば、NPVモデルが最も優れたモデルとなる
留意事項 • しかし現実の世界には、「確実性」も「完全資本市場」もない • ただし、他のモデルの仮定はさらに現実的ではないので、通常はNPVモデルの方が望ましいとされる • NPVモデルは万能ではないが、一般的には、コストと便益の規準を満たしている • すなわち、NPVモデルに基づいて意思決定をすることの便益は、それを適用するコストよりも大きい • モデルを精緻化しても、コストに見合うほどには意思決定を改善しないことが多い
減価償却とNPV • NPVの計算には減価償却は含めない • なぜか? • NPVはCIFとCOFに基づいており、収益と費用という会計上の概念は用いないから • 減価償却費は、CFではなく、長期に渡って利用する資産のコストを各期間に配分する方法である • 資産コストのCOFは既に記録・計算されているので、将来のCFから減価償却費を控除すると二重計算になってしまう(1度目は購入時に、2度目は資産の耐用年数に渡って)
DCFモデルにおける感度分析とリスク評価 • 将来は不確実なので、実際のCIFは期待もしくは予測とは異なる • 不確実性について検討するために、感度分析を用いる • 実際のCFが期待CFと異なった場合の財務的な結果がわかる • 感度分析によれば、例えば、耐用年数やCFの予測が変化したらNPVはどうなるかといった、「What-if」問題に答えが得られる • 感度分析を理解する最良の方法は実際にやってみることである
例題 • 図表11-1の例 • CIFが予測の2,000㌦を下回ると分かった • では、年間CIFが2,000㌦をどれだけ下回れば、NPVはマイナスになるであろうか?
解答 • NPVがゼロとなる点におけるCIFは、「損益分岐点」CFである • NPV=0 • (3.1699×CIF)-6,075㌦=0 • CIF=6,075㌦÷3.1699 • =1,916㌦ • ※「3.1699」は補論Bの図表2より(←流入額・流入時期が均等) • 従って、年間CIFが1,916㌦よりも低い場合、NPVはマイナスとなるので、プロジェクトは却下すべきである • 年間CIFがわずか2,000㌦-1,916㌦=84㌦(4.2%)減るだけで、マネージャーは意思決定を変更することになる
留意事項 • マネージャーは感度分析をよく利用する • 起こりうる将来の事象について、迅速な回答が得られるから • また、変化にどれだけ敏感かを示すことにより、あるプロジェクトにどれだけリスクがあるかを示すこともできる • プロジェクトは、変化に敏感であるほど(=CFの変化によって、NPVが大きく変化すればするほど)リスクが高いといえる • 感度分析を簡単に扱えるソフトウェアがたくさんある • 感度分析は複雑になりがち‥ • 全ての計算を手で行なうのは面倒‥ • マネージャーと会計担当者は、全てコンピューターに任せておけば良い