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ユーモアの翻訳. 通訳翻訳特論 2009.10.28. ユーモアの伝統的理論1. アリストテレス:笑いは醜悪や下品と密接に関係している キケロ:滑稽の本質はある種の下劣と奇形のなかにある デカルト:「驚き、または憎悪、時にはその両方が入り混じった」喜びの表現 ベーコン:奇形が第一の理由 ホッブス:笑いという激情は、他人の、あるいは以前おのれが有していた欠点と比較して、唐突に自己の優越性を認識するために生じる突然の勝利感である. ユーモアの伝統的理論 2. カント:張りつめた期待感が突然無に変わるとき笑いが生じる
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ユーモアの翻訳 通訳翻訳特論 2009.10.28
ユーモアの伝統的理論1 • アリストテレス:笑いは醜悪や下品と密接に関係している • キケロ:滑稽の本質はある種の下劣と奇形のなかにある • デカルト:「驚き、または憎悪、時にはその両方が入り混じった」喜びの表現 • ベーコン:奇形が第一の理由 • ホッブス:笑いという激情は、他人の、あるいは以前おのれが有していた欠点と比較して、唐突に自己の優越性を認識するために生じる突然の勝利感である
ユーモアの伝統的理論2 • カント:張りつめた期待感が突然無に変わるとき笑いが生じる • アンリ・ベルクソン:人の身体が成す態度、振る舞い、動きは、単純な機械を連想させる程度に比例して笑いを惹き起こす。・・・精神的なものが問題となっているところで、人の肉体的なものに私たちの注意を向けさせるすべての出来事は滑稽である • ハーバート・スペンサー:意識がだしぬけに大事から小事へ移ると、開放された神経の力が最小抵抗のチャンネルに沿って消費される。それが笑いという動作だ。 • フロイト:笑いの特徴である口元のゆがみとひきつりは、乳飲み子が母親の乳房から口を話すときの飽食しきった表情にまず現れる。ほほえみが、緊張開放というほかの快楽的プロセスと結びついたのも、この原初的な快楽の充足感のためであったかもしれない。
アーサー・ケストラー • ユーモアの論理構造 • ・予想外であると同時に極めて論理的 • ・相容れない二つの規範 • ・ある情況や趣向が、それぞれ一貫しただが互いに相容れない二つの思考基準(あるいは連想脈絡) → いわゆる「お呼びでない」状況(植木等)
Attardoのユーモアの理論 • スクリプトの対立/不調和 →別々の読みを生み出す言葉の使い方 Attardo, S. (2002). Translation and Humour: An Approach Based on the General Theory of Verbal Humour (GTVH), The Translator 8/2
スクリプトの定義 ■スクリプトは、あるテーマについての意味情報の集合体であり、ある社会の文化的知識を体現している。それは一連の期待あるいはウェイトをつけた選択として表現される。 → ユーモアを社会的基盤を持つものととらえる
優越感superiorityと不調和incongruity • 両者のうち一方だけではユーモアは説明できない 1) ほとんどの不調和な行為は社会的産物や人物のものとされ、inferiorなものになる 2) アイロニーを含む不調和行為は優越感を生む
不調和と優越感、つづき • 3)ほとんどの不調和は最終的に解決され、優越感を生む(ユーモアを笑うとき、自分のウィットを仲間に示す) • 4)ある種の不調和はユーモラスであるとして習慣化される(ステレオタイプ)
Asimakoulasの理論 • 言語的ユーモアは社会的・認知的期待と関連している • 即ちノームの受け入れnorm acceptanceとノームの衝突 norm opposition、あるいはそのいずれかである
実例1 • 何か事件か事故があり、警察官が叫んでいる Please disperse. There is nothing for you to see here. しかし、画面には数人しかいない
実例2 Frank: Jane, since I met you I’ve noticed things I’ve never knew were there before: birds singing, the drew glistening on a newly-formed leaf, stoplights. This morning I bought something for you… It’s an engagement ring…
・これは何がおかしいのか ・norm oppositionであり(赤信号にはいつも気づくべきだ)、同時にnorm acceptanceである(Frankのcaricatureとしての性格付け)。
実例3parodic allusions I don’t want any more trouble like you had last year on the south side…understand? That’s my policy. ギリシャ語訳 And I do not want trouble like last year. That’s my policy.
だじゃれによるparody • 「垢ふきんちゃん」 • 「星のおやじ様」 • 「王様の耳に念仏」 • 「縁の下のヴァイオリンひき」 • 「小津の魔法使い」 何の変哲もなく淡々と流れる魔法使いの日常を描いた名品 • 「長距離旦那の孤独」 片道2時間、25年ローンの重荷を背負って旦那は通う・・・その孤独を描き尽くす問 題作 (荒尻戸作)
だじゃれ2 • 甘えん坊将軍 • あるブスの少女ハイジ • 強いロシアの夢プチン(ロシアの潜水艦事故で乗組員全員死亡) • 俺たちの年金、ねエーン金 • 妻茶髪、息子金髪、俺白髪(期待はずれの落差) ―東森勲・吉村あき子(2003)『関連性理論の新展開』
実例4Register Incongruity • Protecting the safety of the queen is a task that’s gladly accepted by the Police Squad. For however silly the idea of a queen might be to us, like Americans, we must be gracious and considerate hosts. * norm acceptance / norm opposition cultural convention
その訳 • We gladly accepted to take over her protection. • It doesn’t matter that the queen looks ridiculous to us. • We have to keep our high standards as hosts. * すべてformal
原文 Jane: How could you have done something so vicious? Ludwig: It was easy , my dear. Remember that I spent two years as a building contractor. ギリシャ語訳 How could you have done this? Easily! Don’t forget that I worked two years as a contractor. 文化的含意1
Elaine: Would you like something to read? Old lady: Do you have anything light? Elaine: Uhhhhh… how about this leaflet, famous Jewish sports legends? Would you like to read something? Do you have anything light? What would you say about this? “Legen Athletes of the Jews”? 文化的含意2
Holdenのユーモア • 同一の表現をいろいろな状況で繰り返し使うことから生まれるおかしさ • その文彩はオリジナルであり、劇的な効果を生んでいる。
Holdenのユーモア • He started handling my exam paper like it was a turd or something. • 「先生は何かきたない物でもあつかうように僕の答案をひねくりはじめた。」(橋本訳) • 「先生は僕の答案を、まるでクソかなんかをいじるみたいにいじりやがんのさ。」(野崎訳) • 「先生は僕の答案を、まるで糞か何かを触るみたいな感じで手に取った。」(村上訳)
Curcoの関連性理論による説明 • 意図的なユーモアは、世界のある側面について非明示的にある種のコメントをすることで成り立つ • 話し手は聞き手に対し、自分以外の誰かの発言を語り、同時にその誰かの発言に対して距離を置く(echoic use) • その発言は、解釈のための文脈と衝突する • 不調和incongruityが生まれる
Coulson (2001) のframe-shifting • 推論を行うために知識の要素にアクセスし、それを再構成すること • “getting” verbal humor frequently requires the integration of information from distinct knowledge domains or schemas (Coulson 2001, Norrick 1986). • Semantic/Pragmatic reanalysis that reorganizes existing elements in the message-level representation into a new frame • the semantic reorganization that occurs “...when incoming information deviates from that predicted by the contextually evoked frame” (Coulson 2006)
Frame-shifting • When I asked the bartender for something cold and full of rum, he recommended his wife. Ask (Speaker, Bartender, Q) Q: Recommend (Drink) Cold (Drink) Rum (Drink) Wife-of (w, Bartender) Frigid (w) Alcoholic (w) Insult Request
Cultural Frame-shifting? • 翻訳 • 翻案
関連性理論とユーモア1 • The interpretation of jokes, for example, typically involves a contextual garden-pathing: jokes encourage the addressee to access a range of contextual assumptions, only to finally reject them in favour of a new set of assumptions. The re-interpretation, involving a sudden burst of processing activity as new context is accessed, produces a special kind of brain activity, which may be monitored and ‘experienced’ or ‘felt’ as humour. A further more dramatic physical reaction may sometimes ensue – laughter. (p. 209) • (See Curco (1997) for a relevance theory account of humour.) p. 168-169 • Pikington, Adrian (2000) Poetic effects: a relevance theory perspective
関連性理論とユーモア2 • ジョークの受け手は通常のやり方で処理しようとする=最小の処理努力によって最大の文脈効果を得ようとする。 • しかし語り手は途中で「認知的不協和」=incongruityの要素を導入する • 受け手は処理の連鎖が突然中断されたことに驚き、新しい情報を容認できるような再解釈を行う • 受け手は語り手によって「迷路」garden pathに誘われたことを知る。 • 驚き、incongruityの理解、効率的な問題解決という要因が、満足感を生み、笑いを引き起こす。 • (Jodlowiec, 1991; Curco, 1995; Yus Ramon, 1997)
関連性理論とユーモア3 • He: Your nagging just goes in one ear and out the other • She: That is because there is nothing in between to stop it. • 女性は発言を文字どおりにとり、慣習的なフレームをシフトさせる(extra effort) • これは予期しない展開であるため、聞き手は字義的意味の文脈を作るというextra effortによって意味的一貫性(coherence)を作る • この余分な処理努力は、「関連性」がアップグレードされるので意味がある。 • この応答は最初の発言の敵対的な意図を押さえ込むため、通常の応答よりも意味があり、面白みと笑いを引き起こす。(余分な処理努力のコストに見合う) Kotthoff (1999)
関連性理論とユーモア4 • 矛盾した推意から生じるジョーク • ばかげた想定を用いて生じるジョーク • ばかげた推意に基づくジョーク • 2つの矛盾する想定に基づくジョーク • メトニミーにより生じる推意 • パロディ:直接引用+エコー的ほのめかし+自分はそうは思わないという態度 ―東森勲・吉村あき子(2003)『関連性理論の新展開』
結論 • ユーモアの分析はカエルの解剖のようなものだ。 興味を持つ人はほとんどいないし、カエルはそのために死ぬ。 ―E. B. ホワイト